■不要な機能 見直しで節約

 介護保険で車椅子(いす)や介護用ベッドなどの福祉用具を借りた場合、同じ用具でもレンタル料の差は5倍以上になるケースもある。しかし、法外に高いレンタル料でも9割は介護保険でカバーされるため、利用者はなかなか高いことに気付かないのが現実だ。どのような点に気を付け、用具を選んだらよいのだろう。(牛田久美)

 東京都内の主婦、小林和子さん(45)=仮名=は、布団での寝起きが難しくなった義母(83)のため、介護用ベッドを借りることにした。事業所から「1カ月の料金差はほんの数百円ですから」と勧められ、多機能な介護用ベッドを契約。ところが、すぐに不要な機能が多いことに気付いた。

 「ベッドが上下する機能は、寝たきりの人を世話するには腰痛予防に便利。でも、義母は自分で起き上がれる。高さを固定したかったが、ボタン操作も複雑で不用意にボタンを押すと、ベッドが上下してしまったり、背もたれを起こそうとしたら足が上がっちゃったり…」と苦笑い。

 複雑なベッド操作に辟易(へきえき)し、数カ月後、背もたれだけが動くベッドに借り換えた。価格は月1700円から1500円に。利用者負担はわずか200円の節約だが、レンタル料の9割は介護保険でカバーされるので、毎月2千円が余分に支払われていた計算になる。

 「介護保険にとっては大きな節約ですね。介護度の進行に合わせて交換できるのがレンタルの良いところ。きちんと選ぶのは大切だと思いました」

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 横浜市が調べたところ、転落防止のためにベッドに取り付ける「ベッド柵(さく)」のレンタル料は神奈川県内の平均で月560円(自己負担は1割)。これに対し、同じ商品を月に3千円で借りている人もおり、レンタル料の差額は最大5・4倍に上った。

 同市は県内平均の2倍以上の価格でレンタルしている事業所に事情を確認。1月末には、2倍以上のレンタル料を支払う利用者263人に「利用状況のお知らせ」を発送した。以来、価格を下げる事業所も出ており、「効果が表れ始めている」(横浜市の松本均介護保険課長)という。

 高額なレンタル料を払う利用者にその旨を通知するなどの取り組みは現在、全国101の自治体に広がっている(準備中を含む)。横浜市の特徴は希望小売価格を知らせたこと。買うと7千円、借りると月2千円のつえは、約3カ月で新品を買えることなどがすぐ分かる。

 もう一つの特徴は、通知の対象が「2倍以上」という分かりやすさ。松本課長は「市民に分かりやすいよう、平均の2倍以上を支払う利用者にお知らせしたが、本来、1・9倍でも高い。すべての利用者に、自分がレンタルしている用具の適正価格に関心を持ってほしい」と話している。

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 ■安ければよいわけでもない

 同じ福祉用具でも、レンタル料は事業所によって大きく異なる。この差はなぜ生まれるのだろう。

 業界最大手「フランスベッド」(東京都新宿区)の大工原(だいくはら)弘さんによると、レンタル料にはモノの価格のほか、搬送、消毒、保管などのサービス価格が含まれる。

 中でも価格への影響が大きいのは、新商品が出るまでの期間の長短と、その際に商品入れ替えをするかどうかの企業判断だ。

 同社では介護用ベッドの事故を防ぐため、新商品が開発されると、レンタル品もすべて新商品に入れ替える。その費用は億単位に上る。「入れ替えを行うかどうかは、経営者の倫理に委ねられているのが現状です」(大工原さん)

 こうした商品交換を行わない会社ではレンタル価格は一般に安くなるが、旧型ベッドがレンタル市場に流通し続ける結果になる。

 経済産業省は介護用ベッドの事故が相次いだのを受け、平成19年から重大製品事故の公表を始めた。しかし、誰もがこうした情報をチェックしているわけではない。業者が安全に対する考え方や価格の内訳などを十分に公開しない中、利用者らが安さだけを追い求めることに警鐘を鳴らす声もある。

 福祉用具レンタルの実態調査報告(20年、テクノエイド協会)では「利用者にとってサービス内容の分かりやすさと、利用しやすさを両立できる仕組みが重要」と明記。福祉用具のレンタルをめぐる意識改革が急務だ。

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