STAGE  1ST
 2ND
 3RD
 ☞FINAL
―――――――――――――――


――やって来ましたファイナルステージ! 精鋭中の精鋭五人をクリアして完全制覇なるか! それとも誰かがこの凄腕チャレンジャーを止めるのか!

――なお、このステージでは今まで黒子役に徹していた小瀬川選手と鹿倉選手が“解禁”になります。つまり臼沢選手に協力し、番人の条件を積極的に阻止していいことになってます。

――ただし当然のことながら通しや三味線は反則だっ!

――それではいきましょう……ファイナルステージ最初の番人はこいつだぁっ!



【STAGE】4-1

宮永咲/清澄高校1年

条件:半荘の収支がプラマイゼロ


咲「よろしくお願いします」

塞「来たかぁ……」

胡桃「また割られたらトラウマだね」

塞「眼鏡つけるのが怖いわ」

白望「条件リンシャンじゃないんだ」

咲「あっ、はい、その……そっちはけっこう対策されたりしたので……」

胡桃「なんかシロのこと怖がってない?」

塞「足組んで気怠そうにしてるし無表情だし、ぱっと見友好的ではないか」

咲「あ、いえ、そうじゃないんです。うちの部長が……小瀬川さんは私の天敵だって」

白望「は?」

咲「ひっ、ごめんなさい……」

塞「ほらシロ、怖がらせないの。大丈夫よ、目つき悪いけど怒ってないから」

胡桃「動物で言ったらナマケモノだから」

塞「むしろデクノボーだから」

白望「それは豊音でしょ……」

胡桃「“ちょーデクノボーだよー”って喜んでたね」

咲(服装的にかな……?)

塞「それで、なんで天敵なの? 実際のとこ宮永さんの方が強いと思うけど」

白望「同感……」

咲「えっと……小瀬川さんはマヨヒガだから、方向音痴の私じゃすぐ迷い込んで出られなくなるって……」

塞「なんだそりゃ」

胡桃「そんなわけないよね。またあの人が適当なこと言っただけでしょ」

白望「……観覧席まで帰れなくなる」

塞「そういうことじゃないでしょ」

胡桃「案内板だらけなのに迷うわけないしね」

咲「……実は来るとき場所がわからなくなって部の仲間に連れてきてもらいました」

塞「えぇ……」

白望(髪がナビになるわけじゃないのか……)



胡桃「半荘の収支ってことはあれだよね」

咲「はい。半荘丸々打つことになります」

白望「だよなぁ……だる……」

塞「しょうがないでしょ。オーラスだけじゃ宮永さん不利すぎるし」

胡桃「っていうかみんなで和了り放棄すればプラマイゼロなんて不可能だよね。オカの分も計算するんでしょ?」

咲「そうなんです。だから実戦形式じゃないと」

塞「そういう狡い手なしで、真剣勝負の結果で白黒つけるってことね」

白望「じゃあ塞は塞ぎっぱなし」

塞「ここってポイントだけだから。半荘休みなくなんて三途の川が見えるって」

胡桃「おや、川へはいっちゃいけないったら」

白望「グララアガア……」

咲「あっ、『オツベルと象』ですか?」

胡桃「知ってるの?」

塞「岩手っ子のケンジ・ミヤザワネタが通じるとは」

咲「読書ぐらいしか趣味がなかったので……」

白望「文学少女……」

胡桃「塞と一緒だね」

塞「いやいや、私ぐらいじゃ読書家って言えないでしょ」

胡桃「ポエマーだから」

咲「えっ」

塞「ちょっ」

白望「中学の時くれた自作のポエム帳は家宝にする」

塞「もう燃やしてってば!」

咲「燃やして……燃やしてよぉ……」

胡桃「同じトラウマ持ちだった……?」



塞「じゃあ始めようか……さァかかってくるがいいよ……嶺上の白百合!」

 キイイイィィィン!

胡桃「ちょっとありきたりすぎない?」

白望「塞にしては普通だよね」

塞「どうすりゃいいっての」

胡桃「もっとこう、かっこつけてみました感がほしいね」

白望「それでいてイタい感じの」

塞「注文の多い……」

咲「……『狂咲くるいざきの姫百合』とか」

塞「え?」

咲「あっ、いえ、なんでもないです」

白望「文学少女……」


――試合前に若干メンタルを抉られていた両選手ですが、さすがは全国経験者。気持ちを切り替えブレずに闘牌を繰り広げています!

――そして迎えたオーラス! さあ点棒をプラマイゼロに、ついでに黒い歴史も清算することができるかっ!?


胡桃「ここからが本番だね」

塞「点数状況確認していいかな。宮永さんは……」

咲「21600です。満貫条件ですね」

塞「誰から和了ってもツモってもトップにはならないか」

白望「これも調整したのかな……」

胡桃「こっちも誰が和了ってもいいけどね」

塞「泣いても笑ってもこの1局で決まるわけだ」


――配牌を終え、無言のまま1巡2巡と進んでいくこのひりつく感じ……まさに佳境を迎えています! 序盤に大きな動きはなし! ここから誰が抜け出すのか!


塞「門前じゃ無理かな……チー」

胡桃「ポン」

塞「一気に荒れたね」

咲(荒れにも負けず)

胡桃「ポン」

白望「自風かぁ……」

咲(風牌かぜにも負けず)

塞(ん……愚形だけど張れたな。ちょうどスジ引っかけになるからハマってくれれば儲けもんか)

咲(ハメられもせず)

白望「……堅いなぁ。鳴かせてくれない」

咲(喰いもされず)

塞「筒子……怖いな」

咲(そういうものに――私はなりたい!)

咲「カン!」


――来たあっ! 臼沢選手の切った①筒を大明槓!


塞(この流れはまずい……最大出力で……!)


――塞げるのかっ!? 引けるのかっ!?


咲「――ツモ! ホンイツ・発・嶺上開花……8000です」

hai006


胡桃「ぎゃー!」

塞「ぬぎゃー……やられたかぁ」


――ついに、ついにチャレンジャーの進軍に終止符が打たれました! 止めたのは……ん?


白望「ちょいタンマ……まだ終わってない」

咲「え?」

塞「いや、悔しいけど29600でギリ達成でしょ。五捨六入だから」

白望「ドラめくってない……今採用してるルールだと明槓のドラは後めくりで、嶺上開花の場合も槓ドラの効果ある」

胡桃「あ! じゃあこれめくって2枚以上ドラ乗ってたら」

塞「ハネ満確定だ……」

咲「……そうですね。それだとプラマイゼロにはならないですね。じゃあ、めくります――」


――真の決着はこのドラに託された! さあ運命の槓ドラは……!


dora3


咲「……①筒……!」


  ★CLEAR★


――なんと宮永選手の槓子に丸々乗った、いや、乗ってしまったぁーっ!


咲「ウソ……槓ドラが乗るなんて……」

胡桃「やった! 塞の勝ちだよ!」

塞「あっぶなぁー、首の皮一枚つながった」

咲「……負けちゃいました。そういう塞ぎ方もあるんですね」

塞「いや、ただ普通に塞ごうとしてただけなんだけど」

白望「いいでしょ、クリアはクリアで」

胡桃「点数的には倍満で逆転トップだったね」

咲「あはは、複雑な気分です。それじゃあ失礼します」

塞「あれ、そっちから帰るの?」

咲「緊張しておしっこ行きたくなっちゃって……」

胡桃「そっちトイレないよ」

咲「あれ? でも確かあっちに……あれ?」

塞「不安だ……」

白望「……案内する」

胡桃「シロが!?」

塞「メンドくないの!?」

白望「お小水のついでに……」

咲「あ、じゃあお願いします。そっか、お小水って言えばいいんだ……」

白望「べつにいいんじゃないの、おしっこはおしっこで」

咲「おしっこだと子どもっぽくないですか? お小水だと上品な感じで」

塞「みんな見てる前で連呼しない方がいいんじゃないかな」

胡桃(黄金ペア……!)


――お花を摘んでスッキリしたところに次なる門番が待ち構えます! この花は楽には摘めないぞっ!



【STAGE】4-2

花田煌/新道寺女子高校2年

条件:半荘1回打ってトバない


煌「私が最上位ステージに選ばれるのは買いかぶりだと思いますが、選んでいただいた以上は全力を尽くします!」

塞「こっちとしては条件キツいね。狙ってもトバすのってそうそうできることじゃないのに」

胡桃「私とシロが和了り役かな」

白望「積極的に狙っていいらしいから、塞は塞ぐのに集中でいいと思う……」

塞「そうね、二人に任せるわ」

煌「三対一……因果応報でしょうか。でもこれはこれで自分の実力を試せるいい機会だと思いましょう。他校の実力者に胸を借りるまたとない機会、すばらです!」

胡桃「やった。生すばらだよ」

煌「え?」

塞「あ、ごめん。うちの部の子がね、花田さんの口癖気に入っちゃって。今部でちょっと流行ってるの」

煌「なんと」

塞「他校の選手見るの大好きな子がいてね。その子が“ちょーすばらだよー!”って言ってたのがかわいくてみんな真似しちゃって」

胡桃「エイちゃんは発音できなくて“シュバラ!”になってたね」

塞「ごめんね。イヤだったらやめるから」

煌「いいってことですよ。自分の言葉で誰かが元気になってくれるなら、嬉しいことです」

白望「はぁ、すばら……」

塞「シロの言い方だと全然すばらくないんだけど……」



白望「また半荘丸々打つのか……だる……」

塞「最初からやっちゃって大丈夫? 半荘丸々だとけっこう精神的に疲れるよ。やる方もだけど」

煌「それはなによりです。私が止められなくても次の番人の助けになれるわけですからね」

塞「捨てゴマ上等ってわけね……さァかかってくるがいいよ……地上の煌星きらぼし!」

 キイイイィィィン!


――♪風の中のす~ばら~……

――っと、熱唱している間にも淡々と局が消化され東四局まで来ました。花田選手の命の灯火がじわじわと削られています。


塞(正直塞ぐの全然キツくないな。順調に削れてるし、このペースなら間に合いそう。先生が難易度見誤ったのかな)

白望「ロン。6400」

煌「はうっ!?」

塞(お、直撃取ってくれた。ありがたいなぁ。これで残り5千ちょい。南場丸々残ってるから充分いける――――!? なんだ……一気に負担が大きく……)

煌「さすがに厳しいですね……ですがこのまま終わってしまっては……応援してくれているチームメイトや後輩たちに合わせる顔がありません!」

塞「背水の陣でイイ笑顔するなぁ……」

胡桃「全然諦めてないって顔だね」

煌「ふふふ……諦めという言葉をローマ字で書いてみてください。英語でaは否定の接頭辞ですよね?」

塞「どういうこと?」

白望「unとかdisみたいにnotの意味になるやつでしょ。アシンメトリーとか」

胡桃「a-Kirameってことかな」

煌「そうです。つまり諦めとはnot煌! 私じゃなくなることを意味するのです!」

塞「おお、なんかすごい」

白望「もうダメだ……帰ろう」

胡桃「諦めない!」

塞「煌ろ!」


――花田選手が土俵際で粘る! 残り5千点を割ることなく南三局、親番を迎えました! 点棒を取り戻すチャンスだ! チャレンジャーは残り2局で引導を渡せるのか!


塞「ぐうぅ~~……!」

煌(流局と安和了りで2局流れたのはよかったけど、全然手が進みませんね……)

胡桃(張った――七対子・赤1。ツモでも直撃でも3200削れる。けど……)

白望(塞も塞ぎっぱなしで限界近そう……)

胡桃(これ和了ればオーラスが楽になるけど……塞が持つかな)


――ここで聴牌した鹿倉選手が小瀬川選手のお株を奪う長考に入った!


胡桃「決めた……リーチ!」

塞「えっ!?」


――おっとぉ! 公式戦では見られなかった鹿倉選手のリーチが入った! ファイナルステージは好きに打っていいのを忘れたのかぁ!?


煌(鹿倉さんは本来リーチしない打ち筋のはず……役なしでしょうか。でもノミ手で和了るとオーラスが苦しくなる。ということは直撃で一気に勝負を決めようということですね)

白望「カン」

煌(大明槓!?)


――なんだ!? 小瀬川選手、九索の大明槓で役なしになってしまった! しかも花田選手のツモ順を飛ばしてしまったぞ! 直撃を取りたい鹿倉選手とここにきて仲間割れか!


煌(違う、直撃狙いじゃない。他の二人から出ればフリテンになってしまうのにリーチした本当の狙い……!)

白望(胡桃がするはずないリーチを掛けた……たぶんこれが正解)

塞(っ! もしかしてシロ……こういうこと?)

塞「カン」


――なんと、和了りにはほど遠い臼沢選手も続いて大明槓! 前の対局者・宮永咲の残留思念が漂っているのか!? しかし切ったのは鹿倉選手の和了り牌! これでツモるしかなくなったぞ!


塞(胡桃、あとは頼んだ……!)

胡桃「――ツモ! リーチ・ツモ・七対子・赤1――」

煌(2000・4000なら残り1200……)

胡桃「裏2! 3000・6000!」

煌「すばらぁ!」


  ★CLEAR★


――いったあぁぁぁ! “トバない女”花田煌、撃沈! まさに初体験!


塞「ぶはぁ~~っ! キツかったぁ……」

煌「……初めて、トバされてしまいました……」

胡桃「ショック?」

煌「なんってことはないですね! むしろ清々しい気分です。もっと強くなろうと思えました」

塞「すばら」

胡桃「すばら」

白望「すばら」

煌「それにしてもキッチリ二つめの槓裏を乗せてくるとは……みなさんのチームワークには恐れ入りました」

胡桃「え? むしろ邪魔だったんだけど。直撃取ろうと思ったのにシロが鳴いてツモ順飛ばしちゃうから」

煌「え、この局で決めようとしたのでは?」

胡桃「そうだけど塞が和了り牌切っちゃうからフリテンになるし。もう和了ってオーラス勝負だと思ったら裏乗ってラッキーだったね」

白望「あれ、リーチしたのドラ増やしてって意味じゃなかったんだ」

胡桃「普通にやってもダメだと思ったから自分にとってのセオリー外やってみただけ」

塞「私もシロがカンできるとこ切るから、そうなのかなって」

白望「それ切ったのたまたま……」

塞「……じゃあクリアできたの完全に運が良かっただけ……?」

白望「偶然の力借りてやっとクリアできるレベルってことでしょ」

胡桃「運も実力のうち!」

煌「みなさんの信頼関係が、理屈では量れない見えない道筋を照らし出していたのですね。すばらです」

塞「なんか試合に勝って勝負に負けた感」

白望「これがキラメンタリズム……」


――新たな宗教が立ち上がりそうでしたが、握手を交わして別れ際もすばらぁ!

――ファイナルステージも残り三人、このまま最後まで突っ走ることができるのか!



【STAGE】4-3

松実玄/阿知賀女子学院2年

条件:1局中ドラを占領する


玄「番人・松実玄、ただいま参りましたっ!」

塞「いらっしゃ~い」

胡桃「ものすごく今さらだけど、番人の方が来るって変だよね。普通チャレンジャーが番人の待ち構えるところに行くでしょ」

塞「それは会場の都合じゃ……」

白望「いちいち退室してまた入るのダルい……」

玄「あの……打つ前に1枚いいですか?」

胡桃「写真?」

玄「趣味なので。今日も記念にと」

塞「じゃあ私撮ろうか」

玄「あ、大丈夫です。自撮りで慣れてるので」


胡桃「撮れた? 見せて」

塞「おお~ほんとだ、上手いね」

玄「えへへ……」

胡桃「他にどんなの撮ってるの?」

玄「気になったらなんでも撮ってます。風景だと毎年桜が咲いたらとか」

白望「桜……吉野山」

塞「あ、奈良だっけ」

玄「はい。地元です」

塞「いいね。うちはあんまり桜の有名どころないからなぁ」

胡桃「卒業旅行で行っちゃう?」

塞「その時期じゃまだ咲いてないんじゃない?」

玄「例年開花は三月下旬ですね」

塞「ギリいけるか……?」

玄「お越しの際はぜひ松実館をば」

白望「宿泊代は塞の労働で……」

塞「おい」

胡桃「和服似合いそうでしょ?」

玄「確かに」

白望「厨房もいける」

玄「わぁ、お料理できるんですか?」

塞「いやそんな、普通の家庭料理だよ」

胡桃「得意料理は?」

塞「え、なんだろ……里芋の煮っころがしとか」

玄「採用です!」



塞「で、この条件ってつまり……」

玄「みなさんが1枚でもドラを引いたらその時点でクリアです」

胡桃「赤ドラも含むんだよね?」

玄「はい。8枚のうち1枚です」

白望「……逆に8枚全部引かれたらその時点で負け」

塞「引くまでに和了ったり和了られたりしてもチャレンジ失敗か」

胡桃「なんか自信が見え隠れしてるね」

玄「皆さん強いので点数勝負だったら難しいけど、この条件なら誰にも負けない自信があるのです。いつでも始めちゃってください」

塞「……じゃあお言葉に甘えて。さァかかってくるがいいよ……亢竜こうりょう玄人バイニン!」

 キイイイィィィン!


――親決めの前に早くも発動したぞ! 勝負はもう始まっている!

――そしてこのドラが明暗を分けるか……っ!


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塞「ドラが五筒……!」

胡桃「ちょっと難しくなったね」

白望「赤ドラとかぶるから引けるドラは実質6枚……」

塞「まあそれでも6枚もあるんだから」


――まずは配牌が済みましたが誰もドラを掴めていません!


胡桃「そうも言ってられない気がする」

白望「同感……」


――6枚限りの勝利のパスポートはどこに眠っているのか!


玄「えっ!?」

塞「ん?」

玄「え、そんな……まさか……」


――おっとぉ! 考えてみればいつもかなりの確率で配牌から複数枚ドラを抱えている松実選手の手にもドラが1枚もないぞ!


塞(なんかすごい動揺してるな。ただこっちは和了られたら終わりだからなぁ)

胡桃(上家としては鳴かれないように牌絞るべきだね)

白望(下家でできるのはツモ順飛ばすこと……)


――小瀬川選手の三度の邪魔ポンにより少なめの松実選手の捨て牌も三段目に突入! 未だドラの五筒・赤五萬・赤五索いずれも白日の下に晒されず!


玄(なんで……さっき控室ではちゃんときてたのに……ドラ切ってないのに……!)

塞(ぐぅ……さすがにファイナルはみんなプレッシャーがすごい……あと3巡、誰か引いて!)

玄「カン!」

塞「えっ!?」

胡桃(ドラ増やすなんてこっちが有利になるだけなのに)


――ここで松実選手がまさかのカン! チャレンジャーチームの誰かが新ドラを持っていればクリアだぞっ!


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玄「ドラは――また五筒!」


――乗らない、乗らなぁい!

――そしてついにラスヅモが回ってきたっ! 果たしてどんな結果が待ち受けているのか!


胡桃「これが最後のチャンス――」

塞「胡桃お願い、引いて……」

胡桃「――ダメだった」


――流局ゥゥゥ! 結局最後までドラは見えませんでした!


塞「ダメだったかぁ……ノーテン」

胡桃「張ったかどうかは意味ないでしょ」

塞「一応形式的に……最後だし」

胡桃「まあそうだね。ノーテン」

白望「テンパイ」

玄「……テンパイです」

塞「あれ、松実さんも持ってなかったんだ」

胡桃「それでなんかビックリしてたの?」

玄「はい……結局、全部……」

白望「王牌かぁ……」


――これは予想外の展開! チャレンジャーはドラを引けず、しかし番人もまたドラを呼び込めず! 仕切り直しかっ!?


玄「……私の負けです」

塞「いやーでも誰も引けなかったわけだし」

玄「私の勝利条件はドラを“占領する”です。他家の手に渡らなくても、自分が1枚も持ってないんじゃ占領したとは言えません……」


――どうやら本部の判定が出た模様です…………

――勝者、チャレンジャー臼沢塞!


  ★CLEAR★


塞「いいのかな」

白望「実際文言からすれば妥当でしょ」

塞「……条件が“他家に引かせない”だったら負けてたわ」

胡桃「どうだろね。条件によって塞ぎ方変わってくるし」

玄「うぅ……おかーさん……大切なドラが塞がれちゃったよ……」

塞(事情は知らないけど罪悪感がヤバい……胡桃、慰めてあげてよ)

胡桃(泣かせたのは塞なんだから自分でやる!)

塞(そうかもしれないけど……)

白望「まあ麻雀で思いどおりにいかないなんてよくあることだし……」

塞(ぶっ込んだ!)

玄「……そうですよね。うん、よくあることです」

塞(意外とすぐ立ち直った)

玄「それでは……あっ、足に力が入らない……」

胡桃「立ち上がれないの?」

塞「気力使い果たしたかな。私もちょっとつらい」

玄「……あの~、園城寺さんにやってたの、私にもやってもらえませんか……?」

白望「……充電?」

玄「はい!」

塞(ここでくるのか……松実玄!)


――松実選手が小瀬川チェアを堪能したところでタイムアップです。

――さあ、さあさあ残るステージはたった二つ……次なる番人も控室でたっぷり充電済み!

――ついにここでヤバいコンビが登場だぁーっ!



【STAGE】4-4

鶴田姫子/新道寺女子高校2年

条件:役満を和了る


――3局を要しましたが白水選手が7翻を和了って事前の仕込みが完了しました。ここからが本番です!


姫子「よろしくお願いします」

塞「よろしくね」

胡桃「まいひめコンビか」

塞「通り名がかっこいいよね」

白望「かわいそうなエリス……」

塞「そうじゃない」

姫子「誰ですか?」

塞「いやその、『舞姫』って小説の登場人物で……ごめんね、この人すぐ下らないこと言うから」

姫子「森鴎外でしたっけ?」

塞「そうそう。国語の授業でやったの」

胡桃「豊音が“ちょーかわいそうだよー”って泣いてたね」

姫子「感受性すごか……どがん話なんですか?」

塞「えっと……」

白望「エリートが留学先で女の子を孕ませて廃人にして逃げる話」

塞「言い方!」

姫子「えぇ……」

胡桃「間違ってはないよね」

塞「女子校で教えると絶対主人公ディスの嵐になるって先生も言ってたなぁ」

姫子「知らんやった……ぶちょーとのコンビ名を冠した有名な小説がそがんデカダンス文学やったなんて……」

胡桃「すごいショック受けてるね」

塞「思い入れあったのかな」

胡桃「新しく名付けてあげる?」

白望「白鶴はくつる

姫子「おぉ……白水の白に鶴田の鶴……いいですね!」

塞「それお酒の名前であったような」

胡桃「おじいちゃんがよく飲んでる日本酒だね」

姫子「却下です」

白望「水田すいでん

姫子「おぉ……白水の水と鶴田の田……って、ただの田んぼじゃないですか」

塞「かっこつかないね」



塞「――さて、いよいよ問題の東三局か……」

姫子「配牌すっ前から塞いじゃってください」

塞「もちろん全力でいくよ……さァかかってくるがいいよ……約束の舞姫!」

 キイイイィィィン!

胡桃「あ、舞姫つかった」

白望「オリジナリティーがない……」

塞「いいでしょ、響き綺麗だし。約束の水田じゃおかしいし」

姫子「稲作対決になっちゃいますね」


――どうだっ! 配牌はどうだっ! 臼沢バリアは効いているのかっ!?


姫子(さあ……役満おいでませ!)

塞(うおおおぉ! プレッシャーがハンパない!)

姫子(……確かに圧は感じたけど萬子染めで充分役満見える配牌)


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姫子(ドラは索子か……どの道こん手なら必要なかね。やっぱい部長との絆が塞がれるわけがなか!)


――鶴田選手の手が着々と高まっていく! 臼沢親衛隊の二人も和了りに向かっているがなかなか手が進まない!


胡桃(聴牌が遠い!)

白望(んー……最善手選んでるとは思うんだけど……)

姫子(張った……!)

hai020


姫子(ダマで13翻ある。ばってんここは――)

姫子「リーチ」j2

塞「きた……」

姫子(宣戦布告や。かわすっもんならかわしてみぃ!)


――残り巡目も充分なこの状況で番人が聴牌! チャレンジャーはかなり疲弊している様子! 鶴の一声が轟いてしまうのか!?


胡桃「シロと違って迷いがないね」

白望「生き急ぎ……」

姫子「部長とは中学からずっと積み重ねてきたもんがあっけん、簡単に破らるっもんじゃないです」

塞(ぐうぅぅ……きっつ……ヤバいなこりゃ……ここまで手貸してくれたシロと胡桃には悪いけど、さすがにゲームオーバーかな……走馬燈が……)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

胡桃『ちょっと! ポイ捨て』

塞『しーっ! ヤンキー相手につっかかんないで!』


白望『ねえ塞、南部せんべいの袋が開かないんだけど……』

塞『だーめ。運動もしないのに食べすぎ。太るよ』


胡桃『占いなんて信じてるの? バカみ』

塞『しーっ! 女子の夢を否定すると孤立するって!』


白望『ねえ塞、ドア開かないんだけど。ちょっと外の空気吸いに……』

塞『だーめ。サボる気でしょ。ちゃんと部屋の片づけ済ませてからね』


胡桃『トイレ? なんで一緒に行くの、きもちわ』

塞『しーっ! 言葉を選びなさい!』


白望『あれ、塞のノートが……開かない……』

塞『だーめ。答え写そうとしたでしょ。宿題くらい自分でやりなさい』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


塞「……ふふ……中学からの積み重ねだって?」

姫子「……?」

塞「こちとら小学校からの腐れ縁じゃーい!」


――チャレンジャーが息を吹き返したか! 不適に笑ってるぞぉ!


姫子(引けん……ばってん河から染め手は見えんやろ。いずれ誰かからこぼるっか)

塞(まずい、もう安牌が……字牌に頼るしかないか)

胡桃(とりあえず北切ってしのぐけど、次危ないの引いてきたらどうしよ……)


――あーっと! 臼沢選手、一萬が浮いている! チャレンジャーの命も風前の灯火だぁ!


白望「……ちょいタンマ」

白望(あと4巡なら現物が間に合う、けど……)

白望「決めた。変だけどこれで」m4


――なんと小瀬川選手、二向聴から無スジ押し! しかしこれは鶴田選手の和了り牌だぁ! 安目だと9翻、裏ドラが九萬の時のみ条件達成。和了――らないっ!


姫子(八萬は私視点2枚見え……裏ドラ九萬でいけるとは思うけどキッチリ高目の一萬で決めたか。3枚残りやし、ここはスルーや)

塞「うー……スジで」m1

姫子(1巡遅かったか……一萬より先に四萬が出っとはな)

胡桃「助かった」m1

姫子(ぐっ……!)


――ギリギリセェェェフ! 鶴田選手、フリテンになってせっかくの高目一萬が出和了りできない! タイミングの妙!


姫子(大丈夫……誰も張っとらんはず。最後にツモればよか)

塞(ダメだ、和了りにはとても向かえない)

胡桃(とにかく振り込まないようにして、あとは塞が塞いでくれるのを信じる!)

白望(クズ配牌だったのは逆によかったかも。誰も鳴かなければ海底は南家の塞に行くから)


――膠着状態が続く中、ついに番人の最後のツモ番だ! 掴めるのかあぁぁ!


姫子(このラスヅモで――――四萬!? ……へえ、高目は塞がれたか。ばってん、裏ドラ乗せれば関係なか!)

姫子「ツモ!」

hai021


塞「ぐはぁー!」

胡桃「くっ……!」

白望「…………」

姫子「リーチ・ツモ・平和・一盃口・チンイツ。裏ドラは……」


――現状10翻、しかしながら八萬は本人が2枚使い、残り2枚は臼沢・鹿倉両選手の手の中に! つまり……


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姫子「え、九萬じゃなか……!?」


――四萬で和了った時点で番人の敗北は確定していたっ!


  ★CLEAR★


塞「ふー、裏裏で12翻……危なかった」

姫子「そんな……こん積み重ねが負けるわけ……」

塞「積み重ねって?」

姫子「……いつも一緒に寝てます。同じ部屋で同じ時間に」

胡桃「こっちはよく一緒の布団で寝てるよ」

姫子「えっ!?」

塞「誰かの家に泊まると布団足りなくて二人で使ったりするんだよね」

白望「雪国は人肌が基本……」

姫子「人肌……っ!」

塞「いやそれはウソ」

姫子「いや、けどこっちは服の貸し借りとかしてます。時にはお揃いで」

胡桃「日常的にやってるよね」

姫子「えっ!?」

塞「パジャマ借りたり部屋着にシャツとかハーパン借りたり」

白望「胡桃のは小さくて着られないけど」

胡桃「うるさいそこ!」

塞「そういやシロのTシャツうちにあったわ。普通に使っちゃってるけど」

白望「べつにいいよ……うちにも塞の紛れ込んでるし。胡桃が着たらぶかぶかでB系になるけど」

胡桃「うるさいそこ!」

姫子「アウターだけじゃなくパジャマやシャツまで……いやでも、私とぶちょーは同じ寮やけん、背中の流し合いなんかしちゃってます!」

塞「……それもいつものことだなぁ」

胡桃「湯船ギリギリだよね」

姫子「家のお風呂で一緒に!?」

塞「いや、違うの。小さい頃の話ね」

白望「今でもたまに入ってるでしょ」

塞「シロが昔お風呂で寝て溺れかけたから心配でつい……」

姫子「……腕、ケガしたとき、あーん、って食べさせてくれて」

胡桃「デフォルトだね」

姫子「くっ!」

塞「シロがダルがって要求してくるから……私は雛鳥に餌運ぶ親鳥かっての」

姫子「まさか口移し!?」

白望「いやそこまでは」

姫子「……いろいろ完敗です」

塞「まあほら、今回は三対一だったから。二対二のコンビ打ちだったらまた変わってたかも」

胡桃「鳴いて味方に海底回すこともできるしね」

白望「海底ついてたら数え役満……」

姫子「……そうですね、次があったらコンビ打ちでリベンジします!」

塞「相方交換してもおもしろいかもね」

胡桃「白水さんとシロが組んだら白白コンビ」

塞「あはは。鶴田さんと胡桃ならアニマルコンビだ」

白望「ちょっと豊音に似てる」

姫子「私ですか?」

塞「あ、それ思った。目元っていうか下睫毛美人なところが」

姫子「そがんこと……」

胡桃「生き別れの姉妹だったり」

塞「無理があるなぁ。豊音三月生まれだし」

姫子「あ、私も三月生まれです」

胡桃「一年差なら可能性あるね。下睫毛姉妹結成」

塞「コンビ名は姉……鶴……」

白望「お……豊姫とよひめ

姫子「なんか由緒ありそうですね」

塞(危うく音姫って言いそうになったな)


――雀士の宮殿も永遠ではない! 栄光への道はすでに照らされているっ!

――チャレンジャー臼沢塞率いる宮守幼馴染チーム、ついにここまで辿り着きました!

――ファイナルステージ最後の番人、ファイナルの中のファイナルに待ち構えるのはもちろんこいつだぁ!



【STAGE】4-5

宮永照/白糸台高校3年

条件:4回連続で和了る


照「驚いた。まさか出番が来るとは思わなかったよ」

塞「私も驚いてる。まさかメロンパン食べながら登場するとは思わなかったわ」

照「急に呼ばれたから」

胡桃「ポロポロこぼさない!」

白望「これがラスボスかぁ……」

照「……なにもわかってないね」

塞「はい?」

照「麻雀は数ある競技の中でも複雑なルールで四人対戦と、脳を酷使せざるを得ない」

白望「なんか始まった」

照「加えて半荘に費やす時間も長く体力がいる。つまり集中を維持するには膨大なエネルギーが必要」

胡桃「それで?」

照「即効性のエネルギー源として砂糖が有効なのは常識。試合前のアスリート、本番前の音楽家なんかも甘いものを摂る。棋士も試合中に食べてるでしょ?」

塞「つまり甘いものを食べるのは麻雀のためだと」

照「そう。女子はカロリーを気にするけど、雀士は摂らなきゃ強くなれない。頭使えば消費するから太らないし」

白望「わかる」

塞「それは体質じゃ……」

照「そしてこのメープルメロンパンはカロリーの王様。板チョコやショートケーキが300kcalキロカロリー前後なのに対し、一個で600kcalを誇る」

胡桃「高っ!」

照「ほんとはホイップクリーム乗せたかったけど時間がなかった」

塞「胸焼けするわ」

照「おいしい……んぐっ!?」

胡桃「喉につっかえた?」

塞「飲み物持ってこなかったの?」

照「忘れて……た……」

白望「……これ、水飲んで」

照「んん…………ぷはぁ……助かった。ありがとう」

胡桃「シロが世話焼く側ってレアだよね」

塞「ラストバトルなのに緊張感ないなぁ」



照「ごちそうさま。じゃあやろうか」

胡桃「その前に手拭く!」

塞「えっと、最初は普通に打っていいんだよね」

照「そう。私が和了ったら次から塞ぐ流れで」

塞「普通に考えればこんな条件じゃこっちが圧倒的有利なんだけど……」

胡桃「相手がチャンピオンだからね」

白望「最初に和了ったときからカウントスタートだから実質3回連続だしなぁ……」


――さあ対局が始まりました! 臼沢塞の試練の道もここが終着駅……長い旅の終わりにはどんな結末が待ち受けているのか!


白望「――ツモ……1000・2000」

照「はい」

塞(やっぱり東パツは様子見か。次は宮永さんの親番……来るかな)


――まずは小瀬川選手の手堅い三色手。続いて東二局は……親が早そうだ!


照「――ツモ。500オール」

白望「ふう……じゃあ」

胡桃「最後の大勝負だね」

塞「いくか…………さァかかってくるがいいよ……白夜びゃくや天照あまてる!」

 キイイイィィィン!

照「あまてる?」

胡桃「アマテラスじゃなくて?」

塞「いや、アマテラスの別名というか……細かいことは気にしない!」

白望「最後なのにグダグダ……」

照「まあまあ。闘牌がグダらなければいい」


――皆の雀士スイッチが入ったか、一本場が始まると同時に顔付きが引き締まる!


照「――ツモ。2100オール」

塞「和了られた……っ!?」

胡桃「まだ2回、焦らない!」

白望「最後に和了られなければいい……」

塞「……そうね、宮永――咲さんにも鶴田さんにも和了り自体は取られてたわけだし」

照「二本場」


――宮永選手、2連続の和了り! そして今回も配牌が良い!


塞(ぐっ……凄まじいプレッシャー……!)

胡桃(止められる気がしない!)

白望(まずい……)

照「――ツモ。6200オール」


――またまた来たぞ、これで3連続! 後がなくなったチャレンジャーチームの沈黙が重い! しかし和了った番人もなぜか怪訝な表情をしているぞ!


照(変だ……手が入りすぎて打点を下げられない。大事を取って和了り拒否はしなかったけど、これが吉と出るか凶と出るか……)


――いよいよ運命の三本場! ここで宮永選手が和了れば臼沢一行のチャレンジ失敗、和了れなければ見事クリアとなります! 麻雀の神様はどちらに微笑むのかぁぁ!?


照(ここにきて配牌が悪い……やっぱり臼沢さんは手強い。私もチャンピオンとしての矜持をもって――この手を倍満に仕上げる!)

塞(疲労感がハンパない……この状態で流局まで宮永さんを抑えられる……? シロか胡桃が和了ってくれれば一番いいんだけど)

白望(んー……手が重い)

胡桃(なんてクズ配牌!)


――なんかみんなツモが噛み合ってないぞ! 最後の最後で塩試合という実況泣かせのこの状況からいち早く抜け出すのは誰だっ!?


塞「ポン!」

胡桃(塞が動いた……?)

白望(そっか、じゃあ……)

塞「チー!」

照(見え見えの喰いタン……守備を捨てて全速力で和了りに来たか。放銃が怖くないの?)

白望「ポン」

照(ツモ順飛ばされた……なるほど。読みの精度が高い小瀬川さんが妨害したり鳴かせたりでアシストに回ってる。こっちの手が整うまでに和了る賭けに出たか)

胡桃(いつロンって言われるかヒヤヒヤする!)

照(鹿倉さんは和了りに向かわず中張牌から切ってる。私が高い手作らなきゃならないから鳴けないと踏んで、臼沢さんに山読みしやすいように情報あげてるのか。あわよくば小瀬川さんが鳴いてくれるってところかな)

塞(なんとなくいけるかなーと思って仕掛けてみたら聴牌できた……けどこの待ち薄そうだなぁ……)


――臼沢選手、ノミ手をノベタンに受けたが残り1枚! ここで宮永選手が追いついたぁ!


照「リーチ」

塞「来た……っ!」

照(間に合った……あとはめくり合い勝負。とはいえ他の二人は私に通って臼沢さんの待ってそうな牌を切るだろうな。でもいつだってこのぐらいの不利は覆してきた)

塞「ふうー、ふうぅぅ……」

胡桃(さすがに限界じゃないの……?)

白望(公式戦でもないし、べつに無理することもないのに……)

塞「……ん? なーに変な目で見てんの」

照「無理もないよ。臼沢さん、顔色悪いし汗もすごい」

塞「なに、ここまで来て棄権しろっての?」

照「そういうわけじゃないけど、そうなっても誰も責めないと思う」

塞「ん、心配してくれてありがと。でもまァ、らくしょーってことで」


――なんという根性だ臼沢塞! 熊倉監督ももう止めない! 我が子を千尋の谷に落とす熊がここにいた!


照(なんとなく最初に見えたこと……臼沢さんは“親切な人”寄りで貧乏クジ引くタイプ。それでも腐らずやって来られたのは……)

照「止めないの?」

白望「塞がやるっていうならまあ……」

胡桃「塞の好きにすればいいよ」

照「ずいぶん信頼してるんだね、お互いに」

塞「どうだか」

照(三人とも小学校からの幼馴染って言ってたっけ。少し羨ましい……私も小学生のときに麻雀から離れてなかったら……あの家に残ってずっと家族で打ててたら……咲ともそんなふうにわかり合えていたのかな……)


――さあどうなる! 引けるのか! 流れるのか! チャンピオンか! チャレンジャーか! 決まるのかああぁぁぁ!


塞「――ツモ! 引けたぁ……!」


  ★CLEAR★


――決着ゥーッ! これまで盟友に救われた場面も多かった臼沢選手、最後は自身の手で勝利を掴み取りましたぁー!

――これにて4つのステージすべてをクリアー! おめでとうチャレンジャーチーム! おめでとう臼沢塞!


照「……まいった。クリアおめでとう」

塞「ありがと……でもこっちは三人がかりだったし、モノクルも強化してもらってこんなギリギリだったから本来ならボロ負けだわ」

照「大本は臼沢さんの力なんだし他家との呼吸なんかも実力のうち。こっちも東一局は塞がれない条件付きだったし。自信持って」

塞「……うん、宮永さんにそう言ってもらえるとうれしいな」

照「私も臼沢さんと打ててよかった。なんだか心の奥の意地みたいなのも塞いでもらった気がする…………じゃあ私は戻るから、この後も頑張って」

塞「え?」

照「臼沢さんならやれるかもしれないから……応援してる」


――見事ファイナルステージまでの二十人をクリアしたチャレンジャーですが……これより更なる高みに挑みます! エクストラステージ突入だあぁーっ!


塞「……いや聞いてないんだけど」

白望「なにこれ……」

胡桃「サプライズ? なんなの?」

塞「だってチャンピオンを倒したわけで……」


――チャレンジャー臼沢塞率いる幼馴染三人組を迎え撃つ三銃士の入場です!


小蒔「…………」

塞「霧島の眠り姫!」

爽「ギャラ出ねーかな」

塞「神居古潭カムイコタンの赤獅子!」

良子「ノーウェイノーウェイ」

塞「伊予国いよのくに神口かみくち!」

爽「神代さん今日は九面の神様みんなとつながってんのかな?」

良子「順々におりてくるのでしょう」

爽「こっちも全員連れてきたし雲も充電ばっちりだし、楽しくなりそうだな!」

良子「うちのキングも昂ぶっているようで、すでにいろいろ呼んでますね。プロ代表として負けられません」


――さあエクストラ、通称神ステージ開始です! 臼沢塞、神を超えろ!


白望「なにこの罰ゲーム……もう帰っていいかな……」

胡桃「あとは塞に任せよっか」

白望「じゃあこっちは抜けるんで三人ご一緒に」

爽「それもおもしろそうだけど全員一緒ってわけにはいかないんだよなぁ」

良子「台本からすると私は最後が望ましいですね」

小蒔「……はやく……終わらせないと……おやつ……」

爽「神代さんが完全にトランス状態だし、とりあえず行ってもらう感じかな」

白望「塞、大丈夫?」

胡桃「ギブアップしてもいいんじゃない?」

塞「…………」

白望「あれ……塞?」

塞「…………う、うおおおおあぁぁぁ! やってやる! やってやるうぅ!」

胡桃「塞が壊れた」

塞「こうなったらみんな塞いでやる!」






――これはすごい! 臼沢選手、エクストラステージの三人までもクリアしてしまったあぁー!


白望「すごい……」

胡桃「根性だね」

塞「…………はぁ……はぁ…………おえっ……もう、限界……」


――今度こそ正真正銘のラストステージです!


塞「終わる、あと一人で……!」


――最後の最後に立ちふさがるは皆さんご存じ、日本最強のアラフォー・小鍛治健夜あああぁぁっ!


健夜「アラサーだよ!」

 ガシャァァァン!

塞「ぎゃあああぁぁぁ!」

胡桃「えっ……」

白望「塞!」


――なんと、ここでついに臼沢選手のモノクルが割れてしまったぁ! さすが日本最強は格が違った! それとも数々の死闘ですでに崩壊寸前だったのか!?


白望「塞! しっかり……」

胡桃「ちょっと誰か! 早く来て!」

塞「ううぅ……」


――しかしながらノーマルステージを全てクリアし、エクストラステージの裏ボスまで戦い抜いたその勇姿は胸を打つものがありました! 臼沢選手に万雷の拍手を!


―――――――――
――――――
―――



エイスリン「ダイジョウブ? ホントニ?」

塞「なんともないって。出場校の人たちでお疲れさま会やってるんでしょ? 豊音もサインもらいたいだろうし、早く行こうよ」

豊音「でもほんとにびっくりしたよー。モノクル割れて思いっきりガラスが飛び散ってたんだもん」

トシ「だから言っただろう、保険かけてあるって」

塞「保険って最初はお金のことだと思ったけど対策のことだったんですよね」

豊音「すごいよねー。最初からずっと塞の体を守ってくれてたんでしょ? エクストラステージに出てきた三人で」

エイスリン「カミサマ、バンノウ!」

トシ「こんなお遊び企画で怪我させるわけにはいかないからね。いつ割れてもいいようにスタンバイしてもらったんだよ」

豊音「先生ちょー顔広いよー」

トシ「ほんとに割られちゃうとは思ってなかったんだけどねえ。小鍛治健夜は底が知れないわ」

塞「事前に聞いてたとはいえ、目の前で破裂してさすがに取り乱しちゃいました」

エイスリン「イタクナイ?」

塞「ぜーんぜん。少しも体に当たらなかったから。なんかヒーローの気分?」

豊音「なんかうれしそうだねー?」

塞「えー、だってさぁ……あのときのシロと胡桃の焦りようといったらさぁ!」

白望「…………」

胡桃「…………」

トシ「いやあ、出演者みんなには安全だって事前に言っといたんだけど二人には伝えるの忘れてたねえ」

塞「シロは真っ先に駆け寄ってくるしさぁ!」

豊音「シロのあんな素早い動き見たことなかったよー」

エイスリン「ニンジャ!」

白望「…………」

塞「胡桃はパニックになって助け呼んでるしさぁ!」

豊音「いつもの5倍ぐらい叫んでたよー」

エイスリン「ツキニホエロ!」

胡桃「…………」

トシ「塞、あんた愛されてるねえ」

塞「いやーあはは。小学校からの腐れ縁ですけどねぇ!」

白望「だる……」

胡桃「心配して損した」






久「あ……来たわね、本日の主役が。お疲れさま」

塞「お疲れさま。あれ、竹井さん一人?」

胡桃「ぼっちなの?」

エイスリン「イップク?」

久「やーね、お花摘みに行ってただけよ。さ、会場入りましょ」

豊音「色紙いっぱい持ってきたよー」

白望「とりあえず寝られるとこ探そう……」

トシ「今日の功労者の三人は特等席だよ。最初ぐらいはシャキッとしな」

久「落ち着いたら後でまた話しましょうね。うちの部員にも会ってもらえるとありがたいわ」






豊音「来たよー」

久「あら皆さんお揃いで。主役の務めはもういいの?」

塞「主賓席にいると落ち着かないから」

胡桃「脇役人生だからね」

エイスリン「ニョウボウヤク?」

白望「庶民気質……」

久「みんな一回りして戻ったところで良いタイミングね。ねえみんな――」

優希「あーあ、のどちゃんが出てたらクリアできたかもしれないのにな」

和「だから言ったでしょう。私はつき合いで観覧に来ただけで、オファーは断りました。塞ぐとか塞がないとか、そんなオカルトありえません」

久「ちょっと和! 宮守のみんな来たから……」

咲「あ、臼沢さん……」

塞「…………」

和「え!? あ、ごめんなさい……」

白望(あれだけ体張って頑張ったのに全否定されちゃキツいよなぁ……)

久「いやほら、あの子も悪気があるわけじゃないのよ。本人のスタンスってだけで……」

和「そうです。私は信じませんけどべつに否定するわけじゃないというか、ありえないことを信じるのも自由というか、何にすがろうと勝手にすればいいというか、いや、そんなことが言いたいわけじゃなくて」

まこ「完全にテンパっとるな」

優希「のどちゃんもうやめろ! 言えば言うほど泥沼だ!」

和「違うんです、私はただこんな世迷い言で祭り上げられる臼沢さんに同情するというか」

まこ(本人の前でばっさり否定するのはまずいと思ってフォローしようとするあたりは成長したとも言えるか……?)

久「まあもういいじゃない。和、臼沢さんも打ち続けて疲れてるだろうし、ね」

和「……はい。すみませんでした……」

まこ「いやあすいません臼沢さん」

塞「いえべつに……」

久「メガネ大変だったわね。今は不便じゃない?」

まこ「わしなんかメガネがないとしょっちゅう頭ぶつけたりして大変でのう」

塞「あはは。私は度が入ってるわけじゃないから生活に支障はないわ」

まこ「やっぱり力を増幅させる感じの道具っちゅうことですか?」

塞「そんなところかな」

和「そんなオカルトありえません」

咲「あ」

和「はっ! つい反射的に!」

塞「…………お前その口塞いでやる! 物理的に塞いでやる!」

豊音「うわー! 塞がキレたよー!」

エイスリン「オチツケ! イカリガミヲホロボスゾ!」

トシ「ふ、人の能力は塞げても自分の感情は塞げなかったようだねえ」

胡桃「そーゆーのいーから止める!」

白望「塞って報われない体質だよなぁ……お疲れさま、宮守の苦労人」



おしまい


―――――――――――――――
STAGE  1ST
 2ND
 3RD
 ☞FINAL