アドバイスというのは他の人に対する助言なわけだから、基本的にはそれなりにありがたく受け止められるはずのものなのだが、世の中にはあまりありがたくないアドバイスというものがあり、その原因は、本人が自覚的かどうかは別として、裏側にアドバイス以外のものが隠れていることが多いように思える。

1. 自慢
人生における何らかの意味での先輩が、後輩に対して、アドバイスという形で、過去の苦労や輝かしい実績や知識といったものをひけらかしたい欲求を満たす。

2. 注意する側にまわる喜び
自分が規範とする尺度で見て許せない行為に遭遇した場合に、そういうことはやめた方がいいのだという一般化した物言いで、自分がこれまでに人から言われてきたことを別の人間に対して指摘し、自分も注意できる側に回ったのだという、規範内における勝者としての立ち位置を確認する。

3. 負けていないことのアピール
学生における学業の成績や、スポーツ選手における記録に見られるような、自分が今、最も気にしている能力について勝ち目のない相手に対して、自分が一言いえそうな点を見つけるとそこに飛びつき、アドバイスという名目で、このように勝っているところもあるのだというアピールを行う。

4. 俺流の押し売り
仕事のやり方や進路の選択について、自分とは異なるやり方をしている人を目にしたときに、まず脊髄反射的に、あるいは直感で、このようにすべきなのだと自分のやり方を説明し、それが流暢に説明できたことについて、俺って説明うまくなったなというような清々しさを感じ、アドバイスと自己表出の快感とを錯覚する。


一言でまとめれば、これらはアドバイスがエゴの排泄行為になっているケースである。

このような形でのエゴの表出は、誰もが持っている人間の弱さであるわけだが、このようにまとめて見ると、昔自分が酔ったときにやってしまった痛いアドバイスのことが思い出されて何とも悲しい気分になる。こういうことはすぐに変わるようなものではないかもしれないが、自己嫌悪の中でよく反省し、人の振り見て我が振りなおし、少しでも成長していきたいものである。

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