ウェブ時代をゆく」での好きを貫くことについて「勤勉」という表現に違和感を感じて一昨日「現代という時代において、遊び人が賢者になるための道」というエントリを書いたのだが、そういう私も、例えば極端な例として、寝るのが好きだから毎日寝てばかりいるという人に対して「好きを貫いていて実に素晴らしい」と感じるかといえばそうではない。 ただしこの場合にも、寝るのが好きすぎてより快適な睡眠を追及するあまりレム睡眠に代わる睡眠理論を打ち立ててしまったというようなことになるとやはりこの人は好きなことに没頭していて素晴らしいということになる。

では、望ましい「好きを貫く」とそうでないものとをわけるものとは何なのか。マトリックスにして考えてみた。

次の表は、私が知っている中で、好きを貫いた結果がポジティブに作用した事例を類型化してまとめてみたものである。

パターン名
内容
事例
消費者→生産者パターン
没頭した結果、消費者から生産者に転じる。 ・ゲーマーがゲーム開発会社を設立
・寝るのが好きすぎてレム睡眠に代わる新しい理論を確立(上述のとおり単なる仮定)
派生能力習得パターン
好きなものを追求する過程で様々な派生的能力が身に付く。 ・日本のゲームに飽き足らず海外のゲームに手を出して英語能力が向上
人脈形成パターン
共通の没頭対象を持つ人とのつながりが将来につながる。 ・御手洗氏Doom大会優勝→伊藤穣一氏との出会いの事例
"Connecting the dots"パターン
没頭していた内容が将来思わぬところで役立つ。 ・カリグラフィを学んだことが後にMacの設計に役立ったジョブズの事例

次に、このマトリックスに基づいて私が今まで見聞きしてきた事例を中心に、好きなことに多くの時間を費やしている事例をいくつかケーススタディとして考えてみる。

【「好きを貫く」ケーススタディ】

  • ネトゲのQuakeIIに没頭するあまり、ping値の良い対等な状況でライバルたちと戦うために単身韓国遠征に出向いたSさん
    QuakeIIへのひたむきな情熱に関係者は感動、その後の人脈形成パターンにつながる可能性あり。また、こうした企画を立案し実践する能力が向上しているという意味では派生能力習得パターンにも該当する可能性あり。将来ゲームの企画・開発を職業として選択した場合には"Connecting the dots"にも当てはまる。

  • ドラクエが好きで好きでたまらなくて、キャラクタをレベル99まで育ててはまた作り直すということを毎日繰り返しているAさん
    キャラクタ作り直しの際に自分なりのキャラクタ育成戦略を練り直したり、いかに短い時間でキャラクタを育てるのかを徹底的に研究したりしている場合には派生能力習得パターンに該当する可能性あり。ただし、基本的にはどのパターンにも該当せず結果としては×の可能性大。

  • テニスが好きでたまらなくて休日にはひたすらテニスばかりやっているYさん
    ドラクエのケースと同じく、創意工夫があれば派生能力習得パターン。そうではない場合にも基礎体力向上という意味では派生能力向上パターンに該当。また、対戦相手との関係が人脈形成パターンに発展する可能性もある。テニスのルールやテニス大会の運営方法などに疑問を感じ始めてテニス協会で積極的に新制度の提案などを行い始めると消費者→生産者パターン。

  • テレビを見るのが好きで、空いた時間にはひたすらテレビばかりみているUさん
    テレビで得た情報が知識としてもりもりと集積されていく場合には派生能力習得パターン。例えば鈴木健が大学時代に「情報の8割はテレビから入手している」と発言していたことは関係者の中では有名。ただし、ただだらだらとカウチポテト状態でテレビを流し続けているだけだと基本的には×。

  • ネトゲばかりやっている私の場合
    自己評価としては、派生能力獲得パターン。詳細については「ゲーム脳は社会性を育み、人に人生の厳しさを教える」や「仮想空間が浮き彫りにするもの」、「初心者であり続けること」などを参照のこと。

最後に、整理して考えるためにこのように分類してはみたものの、前回のエントリに書いたように、没頭できる対象があるのなら役に立つかどうかなどと考えずに突き進んでいけばいいのではないかというのが私の基本スタンスであることには変わりない、ということを付け加えておきたい。

関連エントリ
梅田望夫氏が言うように、好きなことを貫いて仕事にしていくためにはどのようにすればよいのか
知識が摘み取る創造力の芽


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