2008年05月30日
大手メディアによるIT業界ネガティブキャンペーン
まず、同座談会の@ITとITProの掲載記事を読み比べてみてほしい。同じ座談会でも、ずいぶんと印象の違う記事になるものだ。
・@IT記事: 「10年は泥のように働け」「無理です」――今年も学生と経営者が討論
・ITPro記事: 「IT技術者はやりがいがある仕事か」---学生とIT産業のトップが公開対談
もちろん、問題があるなら指摘すべきだし、悪いことを書くなとは言わない。
しかし一連の@ITの記事は、特にネガティブに取れる箇所ばかりを意図的に取り上げているように思えてならない。釣り記事で注目を集めようということなのかもしれないが、釣り専門の個人ブロガーがブログに書くならまだしも、大手メディアがこういうことを連続でやるというのは一体どういう了見なのだろうか。
IPA主催の学生とIT業界の人との座談会は、前回も今回も、パネラーの人選はもっとやり方があったのではないかと思う。それで以前、「IT業界不人気の理由は?」をパロディー化してこんな記事を書いたりもした。
学生にIT業界を知ってもらい、興味を持ってもらおうというIPAの意図は結果的には逆効果だったかもしれない。IPAのやり方は適切ではなかったかもしれないが、仮にもIPAは「情報処理推進機構」なのであって、少なくともIPAにはIT業界の悪い部分を噴出させてネガティブイメージを広めよう、という意図はなかったはずだ。
それが、大手メディアの記事を通じて、IT業界が非常に悲惨な業界であるように伝わってしまったら、同じ業界に身を置く人間としてこんなに悲しいことはない。
客観的に見れば、実に滑稽な光景である。
例えば車が好きで車関係の雑誌の出版社に入った人が、メーカーの新製品説明会の取材記事で、ネガティブなやり取りを強調するような記事を書いたとする。これは傍から見れば、「あれ、車が好きで入ったんじゃなかったんだ?」と首を傾げてしまう行為だし、そうした記事を何度も掲載すれば、雑誌の品格も疑われるだろう。
前回の「IT業界不人気の理由は?」でも、私が直接知っている範囲でも、何人もの学生がIT業界に対して「絶対就職してはいけない業界」というイメージを持ったようだ。ある程度経験を積んだ熟練の技術者向けの記事であるなら、どこまでが釣りでどこまでが事実なのか自分自身で判断することもできるだろう。しかし学生を対象としたこうした座談会の掲載記事において、ネガティブな部分をピックアップして助長するような一連の記事を掲載していくのは、一時的には注目が高まることはあれ、中長期的には自分自身で墓穴を掘っている行為であるように思えてならない。
もちろん、そもそもの話として、IPAの企画はもっと魅力的なものにできると思う。ぜひ、次回以降はこの記事のような企画を。ぜひ。
追記:
下記の矢野さんのブログに、@IT記事のタイトルにも使われている「10年は泥のように働け」は、そもそもまったく異なる意味のものだ、という指摘がある。
「泥のように働く」の元々の話がIPA討論会での意味合いと全然違っている - 矢野勉のはてな日記
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この記事へのコメント
大手外資→起業という輝かしい系歴を持ち、福利厚生も充実している環境にいた方にはそうでもないかもしれませんが。
いろいろと刺激がある業界なので私としては楽しいと思いますが・・・
確かに悲惨な体験もありましたけど、自分で決められる範囲は他業界よりもあるんじゃないですかねー
個人的には以下の記事が中立的視点からの記述かなと思っております。(実際に参加したわけではないので何とも言えませんが)
「http://d.hatena.ne.jp/next49/20080529/p1」
ただ「大手ITメディアによるIT業界ネガティブキャンペーン」を見る度に、同業者に足を引っ張られるような国内のIT分野(ここではITメディアも含めた広義のIT分野)はこの先、どうなの? と思ってしまいますが。
>2006年3月19日 ... 岑康貴さん(四年生)
本人だったら年齢的にメディアで書くことの意味すら分からない可能性があります。
@ITの記事は左斜め上から読むってことでいいのでは?
以前、IT業界は華々しい!といったようなメディアの煽りが散々ありましたが、悪い点は当時もあったと思います。
ただ、IT業は割と業界の中での格差がひどい部類に感じます。
待遇等がいい企業にいれば、そうそう悪い部分は見えないと思いますが、ゼネコン体質の業界だけあって企業毎の格差も大きいです。
TV業界でも、フジにいる人と4次5次請けでは圧倒的に格差があります。
私としては@IT自体、悪い記事だけでなく、前向きな記事もあると感じます。
ピックアップした@ITの記事や「新3K」という言葉にある揶揄は、実感として当然のものと感じます。
SI業界は結局「滅私奉公」の世界です。
私は、地場で公共系の元請けの立場にいましたが、経営陣の言葉は、この記事にあるよう言葉とほぼ同じでした。
滅私奉公の果ては、病休による脱落でしたが…
結局、華々しいのは一部のクリエイティブを気取ったWeb系の人たちだけで、
実際のところは、世間を知らない学生にすら魅力を語れないのが現状かと思いますよ。
私見で申し訳ありませんが、
元記事に否定的な意見が多いので、あえて肯定てきな意見をコメントさせていただきました。
あと変化は確かに早いけどそれがまたおもしろいという。
まぁ中小企業の話ですが、底辺をささえる中小企業がそんな現状であり、大手企業がそれを促している以上、メディアが過剰だとは言えないと思いますね。
私自身、後輩の学生には負の部分をすべて話した上で、それでもIT業界に入りたいなら歓迎しますと言っています。
