8月4日〜8月6日まで、楠さんshi3zさんたちと
高度ICTリーダー特論という授業の講師として九州大学に来ている。

講義のトップバッターをつとめたのはshi3zさんだったのだが、
この講義の内容というのが私にとってはかなりショッキングな内容で、
草食動物が肉食動物と目が合ってしまったような気持ちになったので、
エントリを書こうと思う。

shi3zさんのプレゼンは、要約すれば、
「IT業界は戦場であり、その自覚がない者は駆逐される。
現状では日本は敗北を繰り返したIT敗戦国であり、その事実を直視すべきだ。
敵わない規模の敵に対しては、ゲリラ戦の戦術で戦っていかなければならない。
では、ゲリラ戦で勝つにはどうすればよいか」
という内容のものだった。

思うに、テクノロジーベンチャーが技術で世界に認められていくためには、
大きく二つのパスがあるのではないか。

一つ目のパスは、shi3zさんが言うように、現在シェアを取っている相手を
仮想敵国と見なし、敵の領土を奪い取るために様々な戦術を繰り出していく
方法である。

もう一つのパスは、外に対して積極的にアピールはせず、明確な敵も設定せず、
技術を磨き、いつか誰かの目に止まる日を待つ方法である。

前者の方法は、IT業界の勢力図変遷の歴史に目を向ければ、
IT業界の歴史はまさにこの方法を用いた領土の奪い合いの歴史だったわけで、
表だって書けないようなこともしばしば行われていた、という話も聞いている。
(アプレッソ自身がターゲットになって「領土略奪作戦」を受けたこともある)

後者の方法は、待っているだけでいかにも受け身なように見える一方で、
iPod背面の鏡面加工に新潟の町工場の技術が使われたり、
F1のホイールが100%富山製だったり、
会津オリンパスが内視鏡の分野で圧倒的シェアを誇っていたりするのは、
後者に近い方法でそのようになったのでないか、と推測するわけである。
(これらの分野については素人なので、間違えていたら教えてください)

shi3zさんの言うように、ソフトウェアの世界で日本が国際競争力を失って
「IT敗戦国」になっているのは誰も否定できない事実で、
原材料を伴わない複製が可能なソフトウェアの世界に身を置いている以上、
狭い範囲で使われるソフトウェアよりも、広い範囲で使われるソフトウェアを
志向したいという気持ちはあるわけだけれど、
IT業界を戦場と考えて敵を駆逐していく、というスタイルをとらずとも、
競争力のあるソフトウェアはつくれるんじゃないかな。

shi3zさんのプレゼンはおもしろかったし、
学生の人に良い刺激になったと思うけれど、
ここまでやらないと自分でソフトウェアを作っていくことができないのか、
と、敷居を高くしてしまったのではないかと少し心配なところもある。

とりあえず、私は私のやり方で良いソフトウェアの開発を志向していこう。