2012年03月16日

マイクロソフト西脇資哲氏に学ぶプレゼンとデモの秘訣

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昨日はマイクロソフトの西脇さんのMIJS会員向けエヴァンジェリスト養成講座に参加してきた。

前職のオラクル時代に一度、現職のマイクロソフトで一度、計二回西脇さんのプレゼンとデモを見てすっかりファンになった私は、その彼がプレゼンとデモの秘訣を披露してくれるということで、これは参加しない手はないだろうと思い、イベントの開催告知が届くや否や、すぐに参加申し込みをしたのだった。

特にエンタープライズ分野の仕事をしている人は西脇さんのプレゼンを見たことがある、という人も多いのではないかと思うが、西脇さんはドラマチックなストーリーの組み立て、聴衆を惹きつける身振り手振りなど、一般にプレゼンテーションが苦手と思われがちな日本人の中にあって、会場がまるでひとつの映画作品を見ているかのような空気に包まれるプレゼンをする人である。

とても勉強になる内容だったのでブログで書いても問題ないかと確認したところ、OKとの回答をいただいたので、以下に私が講義を聴きながらメモした内容を書く。

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■ はじめに
今日の講座はプレゼンテーションとデモンストレーションに関する講座。
オラクルに13年いて、今はマイクロソフトにいる。

エヴァンジェリストという仕事は、会社の製品や取り組みを、自社の製品を好きでない人に対しても、魅力的に伝える仕事。

マイクロソフトにはエヴァンジェリストが17,8人いる。
その中で自分だけが唯一担当製品を持っていない。

IT業界だけでなく、化粧品メーカーや生命保険会社等の他業種の会社で講座を開くことも多い。
国会議員向けの講座も開いたりもしている。

プレゼンテーションのワークショップなどでは例えば「目の前のリンゴについてのプレゼンテーション」を行い、ビデオに撮って、「姿勢が良くない」等とそれぞれ改善点を指摘しあったりするが、これは「感想」を述べるトレーニングに近いため、プレゼンテーションとデモンストレーションはこれでは上手くならない。

アメリカでは小学校や中学校でプレゼンの教育がある。
例えば「あなたが一番大好きなおもちゃを説明」が教育現場で題材として使われている。
大好きなおもちゃは誰が買ってくれたもので、自分にとってそれはどんなものなのか。
どんな生地のもので、その生地を自分はなぜ気に入っているのか。

こうした「体験」を語ることがプレゼンテーション。

■ 何を伝えるのか
一番最初に決めなければならないことは、何を伝えたいか。
伝えたいもの、伝えたいことを決めるのが最初。
メッセージが伝わらないとプレゼンテーションは失敗。

・誰に
・いつ
・どこで
・なぜ
・誰が
・どのように

伝えるのか。

伝えたいことが複数ある場合には必ず順位をつける。
これができていないプレゼンテーションが多い。

例えば急に時間を短縮することになった場合に、伝えたいことに順序が決まっていないと全体を短縮しなければならなくなったりする。

■ プレゼンテーションの場面
プレゼンテーションには様々なものがある。

・記者発表
・イベントでの講演
・会社紹介、会社説明
・製品紹介、製品説明
・機能デモンストレーション
・コンペティション
・価格提示
・体制提示
・謝罪・トラブルシューティング
・懇親会、慰労会
・演説/遊説
・打ち上げ

コンペティションが一番顕著なのは広告代理店。

電通、博報堂のコンペティションでのプレゼンテーションなどはそれで案件が取れるかどうかが決まるので、すばらしいプレゼンテーションを用意してくる。

また、以前の職場でこんなことがあった。

自社の製品が原因で、1日に4,000万円の損失が生まれているとお客様は言っている。
この謝罪のプレゼンテーションもある。

この場合伝えるべきことはまず謝罪の気持ち。

ところが、会議の際に座ろうとしたら「どうしてくれるんだ」と灰皿が飛んできたことがあった。
冷静だったので避けた。

席を立たれても構いませんが、1日4000万円損失が生まれてるということで、それを何とかしようという機会自体も損失されるんですが、と話して会議の席についてもらった。

結局トラブルは収束しなかったが、当時の社長が大阪からアポなしでやってきた。トラブルは終わっていなかったが、その節は申し訳なかった、という気持ちを伝えにきてくれた。

■ プレゼンテーションの7つの種類
プレゼンテーションには7つの種類がある。

1. オーソドックス型
2. ビジー(詳細)型
3. フラッシュプレゼンテーション型
4. デモンストレーション型
5. 機能説明型
6. 完全比較型
7. スティーブ・ジョブス型

ビジー型はスライドに情報を詰め込むタイプのもので、例えばこんなもの。
(後ろの席の人が読めないような小さな文字で情報が詰め込まれたスライド)

ビジー型は「おえっ」と感じるが、必ずしも悪いわけではない。
相手が2,3人のエグゼクティブの場合などにはビジー型のスライドを大きな紙に印刷して
「ここを見てください」、「次はここですよ」など、視点誘導していくと効果がある。

フラッシュプレゼンテーションは例えばこんなもの。
(高橋メソッド型のプレゼンテーション資料が画面に映り、90秒で23枚、90秒で25枚のプレゼンを実施)

謝罪の時にフラッシュプレゼンテーションをやってはいけない。
よく言われるエレベーターピッチはフラッシュプレゼンテーション。

■ 人数によって構成は変わる
相手が少人数の場合には視点を誘導しやすいのでスライドの情報は多めに、
相手が大人数の場合には簡潔で情報量の少ないスライドが有効。
また、相手が大人数の場合には視点誘導のテクニックが必要で、動画なども効果的。
「印象」を与えるのが重要。

よく、どのくらいの人数のプレゼンテーションが一番緊張するか、と聞かれるが、
100人前後が一番「考える」。

100人くらいだと相手が見えるので、寝ている人がいると大変心苦しく思う。

■ 「話」で人を動かす
否定的な人を動かすのは難しいが、

・「無関心」だった層を「関心」以上にさせる
・「関心」だった層をより「協力者」に近づける

ことは確実にできる。

+印象を増やすと同時に、−印象を減らすことが重要。

プレゼンテーションのアンケートで、「あまり良くなかった」、「良くなかった」に○をつける人は、
内容ではなく、スライドが見づらかった、立って聞かなければならなかった、話が聞きにくかった、など、環境面のマイナスが理由になっていることがほとんど。これは確実にゼロにできる。

■ トップアプローチを目指す
製品のプレゼンテーションは、物を買ってくれる現場の人たちにプレゼンする。
製品紹介や機能比較、値引きなどの話になりがち。

役員や事業部門長などの上の人に話をするときには、考え方を伝え、
「価値」に共感して戦略を考え直してくれた、そんなプレゼンテーションができるようになることをゴールとして設定してほしい。

昨年は1年間で185回プレゼンした。
このうち61%がエグゼクティブ向け。つまりCEOやCIOなどの上層部。

自分の場合にも、最初からエグゼクティブと会えたわけではない。
最初は担当の方々に説明する。
そこで強烈なインパクトで真似のできないプレゼンをすると指名を受ける。
「役員向けにもう一回やってくれないか」と名指しで呼ばれるようにする。

こうしたリピートの統計も取っている。
昨年のプレゼンのうち、54%がリピートオーダー。つまり「もう一回お願いします」。
エグゼクティブに届くステップが短くなる。
エグゼクティブの人は時間がない。また数字が好き。
なので、フラッシュプレゼンテーションも有効。

■ プレゼン資料の構成
必ず次の5種類の言葉で始まるスライドを入れるようにする。

・「最近は」、「そういえば先週」ではじまる「親しみやすい共通の話」
・「本日は」ではじまる「こちらのペースに誘導する話」
・「ところで」ではじまる「意外?!と感じさせる話」
・「具体的には」ではじまる「へ〜、と興味を持たせる話」
・「まとめますと」で始まる「なるほど、と納得させる話」

プレゼンテーションは必ずドラマにするようにする。

従来は

・自己紹介
・会社紹介
・サクセスストーリー
・なぜ成功したか?
・デモ
・解決できる課題
・比較
・具体例
・まとめ

という構成が一般的だったが、これだと「そのサクセスストーリーはうちとは規模の違う会社の話」などと思われがちだった。

お勧めしたいのは次のような構成。

・会社紹介
・自己紹介
・世間話
・課題提起
・ホラーストーリー
・解決策
・デモ
・効果
・比較
・具体例
・まとめ

ホラーストーリーがあると危機感を共有しやすい。
クライマックス(インパクト)をどこにするかも重要。
流れを考える準備がとても大切。

プレゼンテーションは(女性視点での)デートと同じ。
過程が必ず評価される。

また、プレゼン資料には裏表紙(最後のページ)も必ず作る。
会社のロゴマークや空白のスライドで良い。

また、「良い変化」は必ず右肩上がりで表現する。

アニメーションは多用しない方がいい。

■ 直前までの準備
必ずBプランを持つようにする。
自分は必ずノートPCを二台持ち、ネットワーク接続手段も必ず2つ用意している。
マイナスのことが減っていくのでプレゼンテーションに集中できる。

開始一分前までは話す内容を繰り返し練習する。
ギリギリまで準備していました、などというのは、
もしギリギリまで準備していたとしても言わない方がいい。

特にエグゼクティブは準備がどの程度行われているのかを本当に良く見ている。

■ プレゼンテーション本番
最初の言葉と最後の言葉を必ず決める。
第一声が重要。その第一声を定番のものにしておく。
これを言って終わり、という言葉も決めておく。
例えば「ご清聴ありがとうございました」、「お時間をいただきありがとうございました」、
「きっと皆様のお役に立てることを願ってプレゼンを終わります」等。

第一声から3分間までがプレゼンテーションの勝負。
話を真剣に聞くかどうかはこの時点で決まる。
会場の雰囲気がどうなるかが決まる魔の時間帯。

この3分で含めるべき項目は
・挨拶
・自分の名前
(必ず最初に自分の名前を言い、その後に組織+個人名を言う。こうすることで名前を二回言える)
・自分の所属
・自分のプロフィール
(通常のプロフィールと、今日のプロフィール。今日のプロフィールとは、朝6時の新幹線に乗って東京に来ました等)

つかみは最初の5分、遅くとも10分で決まる。
最初の10分で笑わない客はその後も笑わない。
途中で笑わせようと思うと自虐ネタしかない。

プレゼンの最中は自分が想像している以上に動くようにする。
プロジェクターにかぶるくらい動く。

また、接続詞で振り向く動作は効果的。
多用すると演技になってしまうので、プレゼンの中で一回でもいい。

会場の一人をペースメーカーにすると良い。
ペースメーカーに適しているのは、最初の数分でよく頷いてくれる人。
ペースメーカーがいると安心感を持つことができる。
一番ショックなのはペースメーカーが寝たとき。

■ プレゼンテーションの視点と言葉遣いのマジック
例えばリンゴについて説明するケースでは、次のように視点によって表現が変わってくる。

・自分視点: 新種のリンゴをお届けします
・神様視点: 新種のリンゴが届けられます
・顧客視点: 新種のリンゴが味わえるんです

プレゼン中で一回でいいから顧客視点の言葉を使うようにする。

汚い言葉を避けるようにする。
例えば「見にくい」は「見づらい」、「わかりにくい」は「わかりづらい」という表現を選ぶ。
「汚い」は「美しくない」、「狭い」は「広がりがない」と、汚い言葉の肯定ではなく美しい言葉の否定を選ぶ。
「それって嘘でしょ?」は「それって本当だと思いますか?」と、否定の言葉を返さないようにする。

1分間に3つ以上の数字を織り交ぜた発言を一回はする。

おおよそ、ではなく実数を使う。
「数年前」ではなく、「6年から7年前」

対象者の視点で数字を使う。
「本日来場いただいているぐらいの人数で」
「みなさんと同じくらいの経験豊富な年齢の方が」
「みなさんがお休みになるくらいのお時間には」

名詞は必ず副詞・形容詞などで修飾する。
「皆さんは」
→「お忙しい中ご来場いただき、真剣なまなざしで聞いていただいている皆さんは」

ただし、「もっと」、「すごい」、「とても」、「大変」を多用するのは効果的ではない。
「実は」、「本当は」、「ここだけの話ですが」を多用するのも効果的ではない。

体言止めを使う。
「我々はこうやって危険性を指摘してきたのです」
→「我々が行ってきたのはとても重要なことです、そう、危険性の指摘」

質問と回答を使う。
「我々はこうやって危険性を指摘してきたのです」
→「我々が行ってきたのは何だったと思いますか?、そう、危険性の指摘」

魅力を最後にする。
「我々は素早く完璧な危険性の指摘をしてきたのです」
→「我々は危険性の指摘をしました、しかも、素早く、そして完璧な」」

時間の表現は分単位で表現する。
特にエグゼクティブ向けだと1時間半と言うと時間がないから1時間で、と言われる。
時間という単位は経営者には長く感じられる。
100分を少し切るくらいで、と言うと1時間半もらえたりする。

■ 言い間違えても最後まで言い切る
言い間違えた場合にも言葉は言い切るようにする。
「この季節の電力使用量は」と言わなければならないときに、「今日の」と言い出してしまったら、「今日のような季節の電力使用量は」と無理やり言い続ける。

実際に自分が苦労したのは、オラクルに13年間いたので、マイクロソフトのプレゼンで
「オラ・・・」まで言いかけてしまったことがあった。
「オラ・・・」で止めるとアウトなので、「オラクルにいまして、今はマイクロソフトで仕事をしています西脇です」と続ける。

■ 進行形表現
デモンストレーションでは過去形の言葉は使わず、進行形の表現を使う。
「表示されました」ではなく「表示されます」。

自社の製品なら次の動作がわかるはずなので、動作の前に何が起こるかを説明する。
その方が速く動いているように見える。

スライドについても、次のスライドで何を説明しようとしているのかを先に話す。
そうすることで、PowerPointがリードするプレゼンではなく自分がリードするプレゼンになる。

資料についても
「今、お手元にお配りしました」ではなく
「今、お手元にお配りしております」、
「今、皆様の手にとっていただいております」(+顧客視点)
「今、それぞれの皆様の手にとっていただいております」(+修飾)。

■ 競合についての言及
相手は非難しない。
「考え方が違うので、多分できないと思います」
「機能の違いではなく、考え方の違いで採用いただきたいと思います」

できれば、自分も使っている、と添える。

--------

120分の講義を受けて感じたのは、本当に色々と良く考えられているなぁ、ということ。
プレゼンの中でも「努力している」とご本人も仰っていたが、120分とは思えない密度で勉強になった。

書籍化もされており、デブサミやその他出版社のイベントなどでも同講座をよく開催されているようなので、もっと詳しく知りたい、という方は、書籍を読んでみたり、イベントに参加してみると良いのではないかと思う。



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lalha at 07:29 │仕事 | IT業界Comments(5)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by のぶ   2012年03月17日 08:00
有料講座の内容をインターネット上で公開してしまうのはいかがなものでしょうか?
ごく一部だけ紹介するならともかく、この記事には講座の内容のかなりの部分が含まれていますよね?(私も先日、西脇氏の講座を受講したものです)
このテクニックを教えることで賃金を稼いでいる西脇氏に取って良くない事であるのはもちろん、お金を払ってこのテクニックを聞きに行ったものてしては不愉快です。
自重すべきだと思います。
2. Posted by 小野和俊   2012年03月17日 08:33
のぶさん

本記事の内容ですが、公開の可否、記事の内容についていずれも西脇さんご本人に確認いただき、公開を歓迎していただくとともに、問題のある箇所は編集・削除してあります。

また、プレゼンテーションについての講座ということもあり、文章だけでは伝わりにくい部分も多く、このエントリを読めば講座に参加する必要がないかというとまったくそんなことはなく、文末に記載の通り、興味を持った方はぜひ講座に参加したり、書籍を読んだりしていただきたいと思っています :)
3. Posted by のぶ   2012年03月17日 11:42
私が誤解して早とちりしておりました。
お騒がせして申し訳ありませんでした。
4. Posted by waki   2012年03月21日 14:30
コメントいただいた のぶ さん。本エバンジェリスト養成講座が大変貴重な内容であり、そのことを深くお気遣いいただき、ありがとうございます。おっしゃるように有償でのセミナー講座ですので、貴重な情報を含んでおります。そのうえで、今回その講座を受講された小野さんからの申し出により、講座の一部を記載していただきました。小野さんも、のぶさんも同じように感じていただいたように、「文章だけではなく講座参加」に大きな意味がありますので、本ブログを読んでいただき、そのうえで、再度、書籍や本講座に参加いただければと思っております。
5. Posted by waki   2012年03月21日 14:41
ブログを書いて頂いた小野さん、120分にもおよぶセミナ講座ですのえ、伝えきれないことが満載です。
そんな中丁寧にポイントを抜粋して頂きありがとうございます。
私の尊敬する小野さんのブログですので、逆にぜひ、掲載をしていただきたいと感じました。
そして、多くのエンジニアをはじめとする IT企業の担い手たちが、素晴らしいプレゼンテーションとデモンストレーションを発揮してくれることを期待しております。
ありがとうございます。

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