2012年04月08日

ブラウザ三国志の課金システムを振り返る

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1年前に一度引退宣言をしながらも、諸事情により完全には引退せず、先日まで隠居の身で細々と活動していたブラウザ三国志を、4/4の17鯖6期終了のタイミングで完全引退しました。

よく、「ソーシャルゲームはゲームとしてクソ。金ばかり取ろうとして面白くも何ともない。」というような意見を耳にすることがありますが、この指摘については私は2つ意見があります。

  1. 確かに現在のソーシャルゲームはコンシュマー機向けの一般のゲームやPC向けのゲームと比べるとゲームとしての完成度は高くないが、現状はまだ黎明期であり、これだけお金も人も動いている世界なので、これから進歩しないと考える方が不自然。現時点でもブラウザ三国志のようなゲーム性だけ見ても従来のコンシュマー機に劣らないものもある。
  2. 「もし自分が運営する側だったら」と想定してみると、今でも運営する側はどんなアクションに対してユーザーはどのように反応するか、という人間観察力と人間理解力とが試されるわけで、これまでのゲームデザインとはまったく異なる種類のやりがいと面白さがあることは容易に想像できる。
今回、(2)に焦点を当て、2年間活動してきた振り返りの一環として、ソーシャルゲームの中でもとりわけARPU(1ユーザーあたりの課金率)の高いブラウザ三国志の課金システムについて、ユーザーと運営それぞれの立場を考慮しつつ、どのようなタイプの人がどこで課金するのか、という性格タイプ別の課金傾向について考察してみたいと思います。

・500万円以上使うユーザーも - ショートヘッドとロングテールの共存モデル
ブラウザ三国志はソーシャルゲームの中でもひときわ目立ってARPUの高いゲームです。具体的には、一人で500万円以上使っているユーザーが私が直接リアルで会ったことのある中でも3人おり、私が活動していた17鯖全体では500万円以上の課金プレイヤーは少なくとも10人くらい、100万円以上使っているプレイヤーであれば100人以上いたのではないかと思います。

ブラウザ三国志では、こうした重課金プレイヤーの他、軽課金・微課金と呼ばれる小額課金ユーザーが重課金ユーザーの何十倍もおり、一部の熱狂的な重課金プレイヤー(ショートヘッド)と多数の微課金プレイヤー(ロングテール)のどちらからも収益が上がる構造になっています。公表されていないので正確なデータはわかりませんが、感覚的には完全無課金のユーザーはそれほどおらず、おそらく微課金ユーザーより少ないのではないかと思います。ちなみに私の場合には累計投資額は60万円なので、重課金と微課金の間の中課金といったところでしょうか。

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写真1: 引退時に私が所有していたカードの中で最も投資したR太史慈。中には一枚のカードに何百万もつぎ込む猛者も。

・「風林火山」のブショーダス課金
多くのソーシャルゲームがそうであるように、ブラウザ三国志においても主たる収益源はブショーダスと呼ばれる「ガチャ」となっています。有料のブショーダスには、一回300円のシルバーと一回600円のゴールドがあります。

ブラウザ三国志はゲーム全般に、目立ちたい人、目立たず静かに仲間に貢献したい人等、様々なタイプの人が課金したくなるようにゲームがデザインされており、後述する通り、「ブショーダスは引かないけど資源には課金する」人も多数います。しかも、「ガチャ」であるブショーダスの中でも、目立ちたい人やムキになりやすい人が課金する、という単純な課金構造ではなく、「風林火山」の各要素を極めたい人がそれぞれ課金するような仕掛けになっています。

タイプ
モチベーション
武将スキル例
速度武将を極め、思わぬ地点からの奇襲や、僻地遠征、前線でのドリルを成功させたい。千里行: 武将の速度が大幅にアップ。
神速: 武将と率いる部隊の速度が大幅にアップ。
衝車や斥候などの側面支援で戦況を優位なものに変えて行きたい。兵器の極撃: 衝車の攻撃力が大幅にアップ。
密偵精鋭: 偵察系の能力が大幅にアップ。
エースアタッカーを目指して戦争相手やNPCに大ダメージを与えたい。飛蹄進軍: 武将と率いる部隊の攻撃力が大幅にアップ。
防御武将を極めて味方の援軍を最大限活かしたい。蜀軍の防衛: すべての兵士の防御力が大幅にアップ。
※ 風林火山は私が分析軸として使っているだけで、ゲーム中に風林火山という言葉は出てきません。私はプログラマーも風林火山で分析したりしていたので、どうやら風林火山が好きなようです。

ガチャで「風」や「火」のタイプの人が目立ちたくて課金するだけでなく、「林」や「山」のタイプの人も課金したくなるような武将スキルを用意することで、「他のゲームでは課金なんて一円もしたことない」と言う「林」や「山」のタイプのプレイヤーが何十万も課金してしまうのがブラウザ三国志マジックです。

・ロングテールの課金を支える「賭け事は嫌い」な人たち
ガチャが多種多様なユーザーのニーズに応えるようになっているとは言え、ソーシャルゲームのプレイヤーの中には「賭け事が嫌い」な人も少なからずいます。一か八かの賭けに出てガチャを引くのではなく、例えば一ヶ月間内政が15%上がるオプションや、仕事で自分で指示できない時間の指示を貯めておくキューをお金を払って増やすとか、大当たりもないけれど、外すことも絶対になく、確実にメリットがあり、計画的に使っていけるような各種課金オプションも用意されています。

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写真2: 「確実に役に立つ」小便利機能の一例。

使える金額も大きくなく、賭け事は好きではない、というユーザーでも、やはり皆と力を合わせてやっていくのだから、自分も精一杯のことをしよう、なに、月1,000円程度ならいいじゃないか。こんな気持から、結果的にブラウザ三国志の収益をロングテールで支えているユーザーが多数いるのです。

・責任感 / 使命感から来る課金
もう一つの課金ユーザーの類型として、「仲間が危機の時には迷わず課金する」という類型があります。

これは、実社会での生活に例えるなら、「お客さんとの会議に遅刻しそうな時には迷うわずタクシーを使う」ことと似ています。

「今、自分がここで150円使えば、戦争で陥落しそうな仲間が助かる」。そんな状況になると、「私、出します。」、「俺も出します。」、そんな声がチャットの方々から聞こえて来るのです。

また、戦争の前線に自分の本拠地や拠点がある場合、味方がこれまで心血注いで育ててきた兵士を援軍として送ってくれることがあります。この際、「仲間の援軍を無駄にするわけには行かない」という責任感から、「防御力10%up課金」のボタンを静かに押すユーザーも少なくありません。

これらは、責任感 / 使命感から来る課金と言うことができるでしょう。ブラウザ三国志の課金メカニズムは実に良く人間の心理や行動を考えて作られています。

・「お金で買える」ようにしてはいけなかったもの
ここまで紹介してきたように、多様なニーズに応え、人間心理をよく考慮して作られている神設計なブラウザ三国志の課金システムですが、月日を経るごとに次第に「お金を払えばできること」を拡大していく中で、私はこれだけは絶対やってはいけなかった、ということが一つあると思っています。

それは「出兵予約機能」です。

この機能は、150円出せば、指定した時間に到着するように兵士を派兵できる、というものですが、私の引退エントリを読んでいただくと分かる通り、ブラウザ三国志の戦争では、味方の領地や拠点までの距離と、送る軍隊の速度とを計算し、狙った時間に秒単位で兵士を合わせるために、日頃から秒単位での出兵ができるように各自練習をし、いざ派兵する時は、例え出兵時間が夜中の3時だったとしても仲間を助けるために目覚ましをかけて起きてきて出兵をする、そうした、ゲームを越えて現実世界の生活もなんとかやりくりしながらチームプレイで戦争を勝ち抜いていくのが、戦争ゲームとしてのブラウザ三国志の醍醐味だったのです。

もちろん、リアルの生活があるので、できることとできないことがありますが、それでも動ける人で何とか動いて、どんな時間でも必ず指定した「秒」に味方の部隊が何十部隊も手動で送られてくる。そういう仲間の協力で大きな作戦を成し遂げた時や、危機を回避できた時の喜びはひとしおのものでした。

それが今では、「ok、150円ぽちっとくね」。これで終わりです。

この機能が実装された時、戦争狂として知られていた私は、「戦争ゲームとしてのブラウザ三国志は終わった」と思いました。

この機能はこれからでも「対人戦で使えないように」するべきだと私は思います。そうでなければ、戦争ゲームとしてのブラウザ三国志は勢いを失い、結果として課金ユーザーも失っていくでしょう。

・さいごに
長々とブラウザ三国志の課金システムについて考察してきましたが、最後に触れた予約出兵以外は、ブラウザ三国志の課金システムは本当に良く考えられて設計されており、学ぶところの多いものです。

私はこの2年間でブラウザ三国志にハマるあまり、エントリも何本か書き、Googleで「ブラウザ三国志」で検索すると1ページ目にエントリが2つも出てくる程のブラウザ三国志の大ファンでしたが、本当に出会えてよかったゲームだと思っています。

以上、時間が経てば、その時のことはどうしてもヴィヴィッドには覚えていられなくなるので、引退から間もない今のタイミングで、課金という観点からブラウザ三国志についてまとめたエントリでした。


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lalha at 20:16 │ゲーム  │Comments(6)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by 空白   2012年04月08日 23:36
大筋では共感しましたが、
風林火山と150円機能の所は少し違うと思います。
2. Posted by 小野和俊   2012年04月09日 00:37
空白さんからコメント&言及エントリありがとうございます。ブログ拝見してます :)

反論というわけでもないのですが指摘いただいた2点について補足コメントします。

確かにご指摘の通り、風林火山はそれぞれの要素が均等ではないですね。課金ユーザー数、課金額とも、「火」が突出していると思います。

ただ、(火と比べると額が小さいとしても)「林」や「山」を志向するユーザーは他のゲームだとカード課金しない人たちなので、彼らに対してもカード課金の導線が用意されているのは、ブラ三の特徴のひとつかな、とは思います。

予約出兵機能は17鯖の戦争好きの人たちはほとんどがネガティブな反応でしたが、確かに全鯖で見れば寝られなくて止めた、というような人もそれなりにいるでしょうから、全体としてユーザーの増減どちらに大きく影響したかはわかりませんね。

少なくとも17鯖にいた私のようなタイプの手動戦争好きは、ユーザーとしては残っていたとしても、予約出兵の登場で引退を考えた、という人が多かったです。

それにしてもmzknさんとか懐かしいですね。17鯖で一緒にプログラマー同盟をやっていた時のことや、24鯖で配下同盟をやっていた頃を思い出しました。
3. Posted by 空白   2012年04月09日 01:14
こんな有名人に読んで貰えてたとは気恥ずかしいです。
最近はリアルが忙しくて日記さぼりがちですが、
返事になるかはわかりませんが続きを書いてみました。
4. Posted by 空白   2012年04月09日 01:20
あと、コメント頂いたことのほうの返信ですが
結局、本質(単騎、軍、内政)に力を注がなかった人は、
課金した額に全く見合わない成果しか出せなかったと思います。
本質をきちんと上げた人には相手にもならなかったでしょう。
そこが、ある程度見合ったものであれば、話も違ってくるのかなとは思うのですが、
基本にまずある程度金を突っ込まないと、
一人前として戦場に立つことすら許されないゲームバランスなので。

配下同盟にもいたんですね、それは初耳でした。
ブラ三はもうムリだと思いますが、
次に何か面白そうなゲームを見つけたら教えて下さい。
一度一緒に遊んでみたいです。
今俺のおすすめはオーディンバトルです。
5. Posted by バルト   2012年04月09日 21:01
lalhaさん、別のゲームを開始する時はブログで告知してください。
名前変えて参加しますw

プログラマー同盟に参加できなかったのが自分の心残りです。

お疲れさまでした。
6. Posted by    2012年04月10日 03:41
「課金」って「お金を払うこと」ではなく「お金を払わせること」では?

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