「技術力強化、PM力強化」

この1年間、私がCTOとして向き合うべき主たる課題はこの2つだった。

■ 技術力強化
技術力強化については、昨年4月に私が管轄するテクノベーションセンターを立ち上げ、「ものづくりの技術の会社への原点回帰」という方針に基づいて1年間で様々な施策を講じてきた。モダン開発推進チームの立ち上げによってCI/CD、テスト自動化等の概念が徐々に浸透し始めてきたし、一度モダン開発推進が支援したチームからは、その後さらなる改善に向けて継続的に相談が来たりもし始めた。全社的に利用されるようになったSlackでは毎日のようにプログラミング談義も含めた多数の技術的な質問と回答、情報共有が行われるようになった。

この6月からは三ヶ月に一度の定期的な開発合宿も始まった。これは、事業部ごとにそれぞれ合宿参加メンバー3名を選出してもらい、テクノベーションセンターからはその場で技術相談・支援・ペアプロなどができるよう、クラウド/インフラ、サーバーサイド、フロントエンド、セキュリティのそれぞれのスペシャリストが参加する総勢20人弱で実施する木金土の二泊三日の合宿だ。SIの事業部からは、既存システムのモダンなフレームワークへの移行や、従来のシステムをその後出てきた機能追加要望を踏まえてゼロから設計構築するとしたらどうなるか、などのお題が出され、開発合宿に特化した千葉の旅館で全員でコーディング漬けになって開発した。CTOとして私も参加し、サーバー再構築というお題のサーバー部分を一気に4時間くらいでゼロからスクラッチで書き上げたり、夜の飲み会ではプロジェクターで超大画面にPCの画面を写してそのサーバーへの機能追加をライブコーディングしたりした。

開発合宿

さらに、全社的に技術面での成長が実感できるよう、技術力評価指標を策定する取り組みも着々と進んでいる。こうした取り組みにより、技術力強化については次第に取り組んでいたことが形になってきたかな、という手応えを感じ始めている。

しかし問題はPM力強化だった。

■ PM力強化
技術力強化がひとつまたひとつと取り組みが具現化し、手応えが得られ始めてきたことと裏腹に、PM力強化については、決定打となり得る方策が見つからない状態が半年続いた。

PMP取得の有無やこれまでこなしてきた案件規模と経験年数などをまとめ、点数が高い人を認定PMとしてはどうか、というような意見もあった。しかし、それでうまくいくとはとても思えなかった。受講すべき研修をリスト化し、一定の講義を受けるとレベルアップしていくような制度にしてはどうかという意見もあった。しかしこれも、座学での研修の経験値ばかり上がっていきそうで、案件がシビアな状況の時、状況を打破する力のあるPMがこのプロセスの中で出てくるイメージがまったく沸かなかった。

そもそも資格というものは、その資格保有者としての最低限の知識や能力を持つことを指し示すものに過ぎない。その資格を持つ者の中で交換可能である、ということ以上の意味を持たないのだ。それに資格を取ったり試験の点数が上がったりすることは、達成感や成長している実感があるだけに気をつけなければならない。「速く走るための本」を何冊読んだところで足は速くならない。繰り返される練習と実践を通じてしか能力は身につかないのだ。

・・・だが、「事業部で一番頼れるPMは誰か?」と聞くと、答えが返ってくる。ならば、客観的な指標やエビデンスは問わないので、一番頼れる、窮地を救わなければならない時にはこの人に頼みたい、というPMを各事業部で二人ずつ推薦して欲しい。そして「認定PM」などと呼んでしまうと名前だけでもう硬直化しそうだしやたらと偉そうになってしまうので、かっこよさ、強さ、頼りがい、目指すべき人物像、そして時として自ら戦う実践力、そういうニュアンスを精一杯込めて、彼らを「PMジェダイ」と呼ぼう。スター・ウォーズの作中ではジェダイは自らライトセーバーを手に各地の紛争や課題を解決していく。各事業部から選ばれたPMジェダイは評議会を結成し、新規性が高く難易度が高いプロジェクトや、思うように進んでいない重要プロジェクトには、事業部を超えてPMジェダイが参加してプロジェクトを成功に導いていくようにしよう。これがPMジェダイ評議会制度である。

まだ始まったばかりであり、真価が問われるのはまだまだこれから、といったところだろう。しかし試験運用期間も含めて4ヶ月、PMジェダイ評議会制度は今のところ良い形で機能しているように見えている。


あ、そうそう。最後に、「美しいコード」の価値や重要性はSIerにおいても色褪せることがないと私は考えている。その話をしたところ、Enterprisezineで対談連載を始めることになったので最後に紹介しておきたい。いまのところ2回で、今後も続く予定である。

ユーザーとSlerをつなげる「美しいコード」の物語 -「美しいコード」という概念のない世界で
ユーザーとSlerをつなげる「美しいコード」の物語 - コードの美しさがもたらすもの