2024年02月14日

ランドスケープ研究:「ランドスケープをしよう」運営25年の成果

20240214_073539◇ 今回の記事は、「ランドスケープをしよう」運営25年を記念して、日本造園学会誌ランドスケープ研究87巻4号の「社会連携の最前線から」に投稿した記事をWEB用に編集して公開するものです。

◇日本造園学会「ランドスケープ研究」
https://www.jila-zouen.org/journal/lrj/contents
投稿記事(PDF)



1.はじめに
 ランドスケープによる交流を目的としたホームページ「ランドスケープをしよう」は、1998年11月11日に開設し以来、25年間運営・更新を続けてきた。本稿では、四半世紀に及ぶ「ランドスケープをしよう」運営の経緯と成果を紹介し、今後のランドスケープの可能性を述べる。



2.利用者の声から生まれるコンテンツ
 25年前のホームページ黎明期に開設した「ランドスケープをしよう」は、一定の関心を集め、政府主催の2001年インターネット博覧会のパビリオン参加や、テレビ番組のランドスケープ取材協力など参加と連携の機会が増えていった。また、ホームページへの問い合せは、多様な職種の社会人や他分野の学生が圧倒的に多く、例えば歯科助手やサインデザイナーから「私もランドスケープに関わりたい。」との相談を受けるようになった。私はその都度「どんな立場でもランドスケープに関われる。」と回答した。こうしたQ&Aはまとめてコンテンツとして公開している。

 一方、「ランドスケープについて興味があったがどこに問い合わせていいかわからなかった。」「関係団体に連絡するが返事もこない。」という切実な声も届いていた。これは非常に大きな問題だと感じたが、まずは「ランドスケープをしよう」において、関連の資格や書籍、団体サイトを紹介するコンテンツ(「緑・環境資格リスト」「ランドスケープBOOKLIST」「ランドスケープリンク集」等)を公開するとともに、どんな質問でも必ず回答をするよう心がけた。
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2.海外からの最新ランドスケープレポート
 意外なことに、利用者からのメールの半数は海外在住の日本人ランドスケープアーキテクトからであった。当時、海外にいて日本からの情報がほとんど届かないため「ランドスケープをしよう」の情報がとても助かっていると感謝され、海外コミュティからも支援されるようになった。
 そこで私は海外への留学や就業の様子を教えてもらい、それを「海外ランドスケープレポート」として公開した。今はよく使われる[SUSTAINABLE]も2004年にはアメリカからのレポートで届けられていた。
 一方、日本ではランドスケープが学べないと海外留学をした人が少なからずいることがわかった。こうした人材流出は日本のランドスケープにおいて大きな損失だと感じ、ランドスケープを学べる学校等を調べて「ランドスケープ関連学校一覧」を公開した。
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3.出版社との出会いとメディアミックス
 ホームページを開設して7年目になる頃、出版社の社長から直接連絡を頂いた。「ホームページを見た。面白いから会いたい。」とわざわざ宮崎まで会いに来てくださり、その場で雑誌「ランドスケープデザイン」の連載が決まった。連載に際しては雑誌の発売とホームページの同時公開の形態を取らせていただいた。これがその後4年半の連載となる「ランドスケープMEDIAMIX」である。ここでは対談形式での人と人とのつながりをテーマにランドスケープの可能性を追求した。このコンテンツは、海外やユートピア論の人文学、ビオトープ、樹木医、福祉など、ランドスケープがもつ融合の力を確信する作業でもあった。
 また、メディアミックスの後半では、交流のあった米、英、豪、伊などの海外ランドスケープ事務所での生の仕事ぶりを紹介した。これまでの海外との情報交流の中で、日本の働き方や意識が大きく違うことを知り、日本でのランドスケープの働き方も提示したいと考えたからである。この働き方と意識のギャップは、日本に戻ってきた留学生や社会人が日本の事務所に定着しない大きな理由の1つと私は考えている。
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 さらにテレビ番組とのメディアミックスもあった。造園家を主人公としたNHK朝ドラ「わかば」が放送された事を機に、「ランドスケープアーキテクト」が国内で初めて職業として紹介される番組が作成されることとなり、そのお手伝いをさせていただいた。
 その際、番組のディレクターに「そもそもランドスケープアーキテクトという職業の定義がよくわからない。あなた方は何者ですか?」と問われたが、この質問は今でも日本のランドスケープの問題や課題を表していると思う。さて、実は私もこの番組に出演させていただいたが、後から番組づくりの参考にしていた「ランドスケープをしよう」の運営者が、取材相手の私だと知って大変驚いたと語っていた。
 これらの内容も「ランドスケープMEDIAMIX」の「テレビの中のランドスケープ」で紹介しているので興味があれば一読頂ければ幸いである。


4.ランドスケープの可能性と役割
 現在では多くの分野や学会でランドスケープが取りざたされるようになり、緑や環境がもたらす可能性と社会的なニーズの高まりを見せている。この25年間をみても今ほどランドスケープが社会的な役割を果たせる時代はないのではいだろうか。一方で、WEB技術が著しく向上しており、さすがに個人で更新するメインページは時代遅れになっているが、SNSコンテンツとして「ランドスケープをしよう情報室」を立ち上げ、関連施策やコンペ情報等を発信している。また若手グループとの活動連携を行い、分野間を超えての交流も格段に広がった。

 さて、私は海外のランドスケープ協会のホームページを閲覧してまわって大変驚くことがある。ホームページの内容が、業界関係者や会員向けの情報ばかりでなく、専門知識がない一般市民が見ても楽しめて、学生にも役立つ情報があふれているのである。「ランドスケープをしよう」もその名の通り「ランドスケープを一緒にしませんか?」とランドスケープを知らない一般市民をメインターゲットにして運営してきた。少子高齢化が進む今において、多くの若者や一般市民に対してランドスケープを知ってもらうための交流をはからなければなるまい。そのためにはどうあるべきかの議論と情報発信は今後も続けたいと思う。


5.「ランドスケープをしよう」の継承と未来の声
 本稿の最後は、これまでの「ランドスケープをしよう」運営に対して新たな若手のランドスケープグループの2人の代表から頂いたメッセージを紹介して締めたいと思う。
 一人目は、学ぶための公園をコンセプトとしたコミュニティLegg代表の山岸史弥氏、二人目は、「ランドスケープ井戸端会議」を運営する中島悠輔氏である。彼らは「ランドスケープをしよう」で願ったビジョンの継承と発展を遂げてくれるだろう。「ランドスケープをしよう」共々これからの成長を見守っていただきたい。

東京大学・ランドスケープサークルLegg
代表 山岸 史弥
 「ランドスケープをしよう」25周年、心よりお祝い申し上げます。日本でのランドスケープを学ぶ場の少なさを解消し、ランドスケープを介して多くの人々が集い学ぶ場を形成するために今年立ち上げた「ランドスケープサークルLegg」ですが、まだ何も実績がない状態にも関わらず宮川様には様々な助力を頂戴し、多くの情報を得られる「ランドスケープをしよう」はメンバーにとってなくてはならない存在となっております。
 以前当サークルで宮川様が「ランドスケープをしよう」を用いて行ってくださった講義において、一人のメンバーの「今までモヤモヤしていた部分がスッキリとした」という感想が今でも私の心に残っています。ランドスケープを志す人に道を示し、指針となるようなサイトを25年間も続けてこられたことに敬服いたします。また、一利用者として感謝の念に堪えません。これから、我々も「ランドスケープをしよう」と共にランドスケープの裾を広げる一助となれることができれば幸いです。ますますのご活躍を心からお祈り申し上げます。

ランドスケープをしたい人の井戸端会議
運営者 中島悠輔
 「ランドスケープをしよう」、25周年、おめでとうございます。2020年頃、ランドスケープ留学や海外での就業を経験した人が集まりそれぞれが感じた留学・就業体験や各国のランドスケープ事情を共有するオンラインイベント、U2Wを企画した際、登壇者の多くがランドスケープ留学をする際に「ランドスケープをしよう」の記事を参考にしたと語っていました。私自身も海外の大学でランドスケープを学びたいと思った時に「ランドスケープをしよう」の海外ランドスケープレポートを見つけ、様々な方の留学体験を綴った言葉に背中を押してもらえました。
 25年間、ウェブサイトとしてランドスケープに関連する情報を共有して頂けたことでランドスケープを学ぶ門戸が広がり、ランドスケープを学びやすい土壌ができつつあるのではないかと思います。「ランドスケープをしよう」をきっかけに留学等を経験した世代である私たちがさらに情報を発信し、その土壌を豊かにしていき、これまでのご活動に対して何かお返しができたらと思っております。今後、益々のご発展を心より願っております。

*この他の「ランドスケープをしよう」運営に対するメッセージの寄せ書きはこちらでご覧いただけます。(現在、皆様もご記入いただけます。)
【寄せ書き投稿Memoreeel:25年のランドスケープをしよう】
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landscapemediamix at 00:00|PermalinkComments(0)clip!MEDIA MIX 
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「ランドスケープをしよう」
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