2005年06月23日

新しいランドスケープを発信する情報ネットワークのカタチ

ld43◇今回の記事は、ランドスケープ専門雑誌「ランドスケープデザイン」のマルモ出版とのメディアミックスにより、2005年6月発刊「ランドスケープデザインno.43」と同時掲載になっています。





ランドスケープを広く市民と結びつけるため、「ランドスケープをしよう」のHPを7年前に開設した宮川央輝氏。今や一般市民や他業種、海外からの問い合わせも多い。こうした取り組みは、誌面刷新した本誌のコンセプト「利用者の視点」と同じである。私たちは意気投合し、お互いのメディアを共有して、雑誌とインターネットのメディアミックスを展開する事になった。
 メディアミックス企画の初回はLD編集長紹介記事を宮川氏のHPに、宮川央輝氏のHPの紹介記事をこのページに掲載する。以後双方のメディア交流で生まれる企画・提案記事を宮川氏に本誌のゲストエディターとして毎号登場いただき、海外情報もネットワークした新しいランドスケープの世界を探求していこうと思っている。(LD編集部)


1-a0.jpg■ホームページのコンセプト
自分の周りの環境や、都市環境、自然、植物等に目を向ける「ランドスケープ」は、これからの未来のために共有意識として必要不可欠なものの一つだと思います。このHPは「ランドスケープ」をみなさんにもっと広く理解してもらうために制作しました。

今までのランドスケープの流れは、環境や自然、商業、文化、文明、歴史など多くの要素を幅広く取り込んで景観(空間)を形成するいわゆる「トータルランドスケープ」の道を歩んできました。そしてこれからもそれが主流になっていくと思います。

その中で私は、この素晴らしいランドスケープの考え方や技術をより広く生活や社会に活かすことは出来ないだろうか、より広めることはできないだろうかと考え、新しいメディアであるインターネットを利用しようと思いました。

私が、このホームページのタイトルを「ランドスケープアーキテクトになろう」ではなく、「ランドスケープをしよう」としたのは、分野や職業を超えてより多くの人々へランドスケープというものにふれあってもらいたいと考えたからでした。そして、新しいムーブメントとして、トータルランドスケープで蓄積した発想や技術を、今度は社会や環境に還元したいと考えています。

 その新しい活動を私はインターネットのホームページ「ランドスケープをしよう “Landscaping & Movement”」の中で意味づけていきたいと思います。


■経緯
ランドスケープをしようは、1998年、11月11日に誕生しました。当時、私は地方の小さなランドスケープ設計事務所に在籍していましたが、都市部に比べて情報が入りにくい面がありました。また、多くの交流の中で勉強したいとおもっていたのですが、それには時間とお金も必要でした。

特に当時はランドスケープという言葉も今ほど普及はしていませんでしたし、広がりを見せ始めたインターネット上でもあまりランドスケープの情報は見かけませんでした。当時はランドスケープが学べる学校の案内さえない状態だったのです。私自身、大学受験が始まる直前まで造園の専門の大学があるなんてことも知らなかったですからね。

そこで私は、「もっとランドスケープの良さやランドスケープをするための情報を伝えなきゃ」と、若気のいたりもあり、当時の学会や協会のホームページに、総合的にランドスケープを知ってもらうような内容を掲載してほしいと要望するメールを書きました。・・・残念ながら当時は返信すらありませんでした。

 返事がない、じゃあしょうがない、自分でつくるか、っというのがホームページ開設のきっかけです。当時は情報もお金もありませんでしたから、図書館で本を借りてきたりホームページ上で調べながら手作りでつくっていきました。

最初のコンテンツは簡単なランドスケープの紹介と、大学紹介、資格紹介、それから自分がいった海外の庭や読んだ本なんかを紹介していました。今考えると非常に幼稚なものでしたが、自分が学生時代に教えてほしかったことを思い出しながら作りました。


■市民のためのランドスケープのカタチ
ホームページを開設して、まもなく私はいかに多くの人が「ランドスケープ」の情報を欲しているのかという事実に気づかされました。私のもとに送られてくるメールの多くはランドスケープの業界にいる方ではなく、別の業種や学生さんたちでしたが、どうすればランドスケープに関する仕事につけるのか、またどんな勉強をすればいいのか、など、多くの質問や感想がメールで寄せられました。

中には、自分の郷土の風景が壊れていく様をつづってくれたサラリーマンの方や、自分の子供の頃の体験や社会の歪みなどを背景にランドスケープの必要性をお話してくださるる人もいました。

そうした質問や感想について私はひとつひとつできる限り答えていき、そしてそれをコンテンツとして少しづつまとめて公開していきました。そして次第にホームページとしての骨格がつくられていきました。

私がホームページを運営していてとても嬉しいのが、こうした人たちと話し合い、それぞれのランドスケープの道を歩むお手伝いをすることによって、その人の人生に関わっていけることです。とても責任を感じていますが、このホームページを通して新しい人生を開拓された方も少なくありません。私はそれをとても誇りに思っています。私はその中で市民の言葉で語るランドスケープの大切さを学ぶことが出来ました。

一方、ショックだったのが、日本での情報が少ないためランドスケープは学べないとアメリカへ留学した人が少なからずいることでした。こうした人材流出は日本のランドスケープ社会において非常にもったいないことだと感じました。

残念ながら、今でも一般の人や海外の人から日本のランドスケープの情報がはいりにくという苦情が届きます。私たちはもっと市民を相手にランドスケープの普及をはからなければいけないと強く感じます。
 

■そしてネットワークへ
 今では「ランドスケープをしよう」を通じて国内外のランドスケープアーキテクツのネットワークも生まれてつつあります。また政府主催の2001年インターネット博覧会パビリオンとしての参加や、インターネットを通じた自然保護企画にも参加するなど、参加と連携の機会を増やしていきました。


ランドスケープは、環境と社会の融和や、景観によるソフトパワーをつくりだす知恵と技術をもっています。こうした知恵と技術は、社会づくりや教育、人生計画、そして最後には“心づくり“にも貢献できると思います。だからこそ、今こうして「ランドスケープをしよう」に多くの方が声を寄せてくれていると思っています。

インターネットでは、立場や分野、国などの垣根を越えて、ボーダレスでリアルタイムに連携することができます。連携する私たちの思いは共通していて、ランドスケープを通じて社会の役に立ちたいという気持ちを抱いています。それが今「ランドスケープをしよう」のもつネットワークと原動力になっています。

今、こうしたネットワークを通じて、「ランドスケープをしよう」の活動をひとつのムーブメントにしたいと強く思うようになりました。私たちは今後も「ランドスケープをしよう“LANDSCAPEING & MOVEMENT”」を合い言葉に、ランドスケープの技術や知識を社会に役立てる活動を進めていきたいと思います。

今回新たに、「ランドスケープデザイン」とのメディアミックスについて大きな期待と責任を感じています。しかし、この2つが組み合わさることにより、大きな情報循環とコミュニティが生まれ、<新しい力>を得ることが出来るのではないかと期待しております。


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