2007年06月23日

UFUGと世界で活躍する鍵〜コラボレーション・ランドスケープ〜

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LD55◇今回の記事は、ランドスケープ専門雑誌「ランドスケープデザイン」のマルモ出版とのメディアミックスにより、2007年6月23日発刊「LANDSCAPE DESIGN (ランドスケープ デザイン)no.55」と同時掲載になっています。




<今回のネットワークメンバー>
今回は総勢7名のメンバーです。
UFUG教師:
55profRolandRoland Gustavsson
スウェーデン人 UFUG リーダー


55profThomasThomas Barfoed Randrup
デンマーク人 UFUG リーダー



55prfjasperJasper Schipperijn
オランダ人 UFUGアシスタント




UFUG学生:
55proffannyFanny Gry Møler
デンマーク人


55profhynurHlynur Gauti Sigurðsson
アイスランド人



55profhuangHuang Zhao
中国人


55profkiyohitoKiyohito Tamotsu(保清人)
日本人
(保さんの海外ランドスケープレポートはこちら


>みなさんの詳細プロフィール

 ランドスケープデザインは世界中で研究され発展を続けています。今回はヨーロッパのマスタープログラム、UFUG*(Urban Forestry and Urban Greening)に集まった世界中の若きランドスケープアーキテクトと、ランドスケープの未来と発展を語り合いたいと思います。座談会にはUFUGのメンバーである日本人の保清人さんと、ともに学ぶ仲間と先生たちに集まってもらいました。(宮川)

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UFUG/一昨年に創出されたマスタープログラム。北欧のNOVAという組織下で構成され、Landscape とForestry に重きをおいている。キャンパスはデンマークのコペンハーゲン大学とスウェーデン農業科学大学。各国から学生が集まりUrban Forestry & Greening に関するプランニング、デザイン、マネジメント、コミュニケーション、マーケティング、政治、経済まで総括的に学べるようになっている。


宮川:
 このUFUGマスタープログラムの参加メンバーはランドスケープ、建築、森林、都市計画、農学、生態学、アートなどバラエティーに富んだバックグラウンドをもつ専門家が世界中から集まっていると聞きました。まずはみなさんがこのプログラムに参加した目的を教えてください。


Fanny:
 私は、これまで世界で経験したことを具体化する意味でこのプログラムに参加しました。UFUG は北欧やヨーロッパだけでなく、HuangKiyohitoのようにアジアからも学生が来ます。これから世界のランドスケープ、環境を考える上で、国境を越えてひとつのプログラムに取り組めることが決め手になりました。

Hlynur:
 私は大学の先生に薦められたのがきっかけです。以前から自然の事について考えたいと思っていたので即決しました。アイスランドは皆さんがびっくりするくらい森がないんですよ。僕の家の森はアイスランドで一番大きいんです。だから小さい頃からすごく興味がありました。

Huang Zhao:
 私は建築家として自然、ランドスケープにとても興味がありました。ご存知の通り、中国において環境問題はとても大きな問題です。もうすでに都市化されたヨーロッパでそれを学ぶことは僕らにとってとても重要なことだと思いました。

Kiyohito:
 日本で建築を勉強した僕としては、今の建築、アーバニゼーションには限界があると思ったんです。それでランドスケープを勉強しよう! と。でも緑の勉強はデザインだけ、生態学だけとかじゃ足りないんです。いろんな人、国が協力して、緑、地球を考えること。それはUFUG で実現できるのでは? と思ったんです。
 ThomasRoland はUFUG のリーダーだけど、UFUGをつくったきっかけを教えてもらえますか?

Roland:
 今、kiyohitoが言ったことをそのまま叶えることがUFUG だと思う。本来のコンセプトを簡単にいえば、ヨーロッパの各都市のPeri-Urban area(都市の外形)で起こっている都市化に対して、水と緑の政策やマネジメント、都市と郊外をつなぐ鍵を皆で考えようということだね。特にマネジメント、Linkage(繋ぐ)というのは特別なこと。みどりというのは生き物だし、長く生きる。

 勢いよくプランニング、提案をするランドスケープアーキテクトたちがいるけれど、緑というのは生き物だし、もっと自然はダイナミックなものだ。木を植えて、何年待てばその形になるのか、初期のプランニングよりマネジメントを考えなければ意味がない。それに、拡大する都市とスプロールする都市をどう繋ぐか。ただ繋ぐだけでは都市の拡大に他ならないし、緑は追いやられる一方だね。

 今ある緑をいかに生かすか、価値を与えるか、それがUFUG の趣旨だね。みんなで100年先も緑ある都市をつくるために現実的に、考えよう、プランニングしようということだ。

Thomas:
 そのプランニングも、独りよがりではいけない。君達のような、エキスパートやプロフェッショナルが集まって、チームで考える、実際にやってみる。それにこれからのランドスケープの分野もエコロジーへの側面だけでなく、政治、経済や社会に対してもアプローチしていかなきゃならない。デザインや機能的プランニングだけ、とか経済重視とか、もうそんな時代じゃないよね。世界や、地球はそれを望んでいるんじゃないかな。UFUG はそれを多角的に、積極的にやっていこう!というプログラムなんだよ。

Jasper:
 もちろん国によっての文化や習慣、その人のスキルは尊重されるべきだし、違いはとても大事な要素だね。それでもUFUG におけるフィールドに国境やプロフェッションの境界はないよ。

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宮川:
 非常に実践的かつ創造的なプログラムですね。みんなが今最も注目しているテーマや課題について教えてください。


Fanny:
 RolandのCommunicative Planning はとても価値がある勉強だと思う。私は去年のプログラムに参加したけれど、みんなの経験と、街の人たちと協力してプランをつくることはすごいことだわ。言葉も違うし、文化も習慣も違う。移民が増えている北欧だけど、そんなことは世界でこれからもっと当たり前になるし、コミュニケーションね!これが一番大事。

Huang:
 実際プランをつくるとなるととっても大変だよね。グループだけでもコミュニケーションが大変なのに、町の人たちと綿密に意思疎通を図るのはさらに大変だ。

Hlynur:
 でも楽しいからいいじゃない。

Kiyohito:
 北欧はやっぱり公共福祉国家だから、みんなでつくる。という気運をすごく感じた。Public Participation(公共参加)というのは、プロジェクトの大小関わらず、もう義務化されてるよね。

Fanny:
 義務というよりは、特にミーティングは法律で決められてるのよ。もう当たり前。でも、実際うまくいってるかどうかは疑問。まだまだ議論の余地があるわよ。

Kiyohito:
 Hlynur は何が一番おもしろかった?

Hlynur:
 私もCommunicative Planning とUrban Woodland Silviculture がよかった。UFUG の特色だけど、ただ机に座ってプランニングするだけじゃない。敷地調査は特に、緑が多いところに行くから健康にもいいしね。100年のスパンでこの緑をどう生かすか。実際に目で見て、感じることがプランニングの基本でしょう。

Huang:
 Rolandの自然への姿勢はとても感動した。多分彼は僕ら建築をやっている人たちには到底およばない自然への思いがあると思う。僕ら建築の概念はどこかアーバンデザインに偏っている。マテリアルを操作、デザインして公共スペースをつくる。それって人間だけのものでしかないでしょう? UFUG のランドスケープの概念はそれを越えているよ。緑そのものを考えているね。

Kiyohito:
 そうだね。UFUG ではランドスケープをグリーンリソース(木、公園、森など)って呼んでいるね。緑に関わるものすべて。都市化によってグリーンリソースがまだ豊富なPeri-Urban(都市の外形)エリアが脅かされてるんだ。それはもうヨーロッパ全域に広がっている。アジアはもっと深刻かもね。

Fanny:
 人口の拡大で都市化は余儀なくされてるわね。それはもうランドスケープという分野だけでは手に負えないわ。

Hlynur:
 アイスランドだって危ういよ。ただでさえミドリが少ないのに。

Kiyohito:
 これから、そういった多様なフィールドの人たちが世界中が協力し合って、コミュニケーションをしていかないとだめだ。僕らみたいにね!
 でもみんな苦労したことだけど、こんな多様な人たちが集まってやるのは大変。多国籍、多様なバックグランドが力を最大限に生かせる方法ってありますか?

Roland:
 みんながこれまでやってきたこと。プロジェクトをやることが一番だ。Abstract(抽象的)で、コンセプチュアルなことを机の上でやっても何も始まらない。言葉も違えば文化も違うのに、逐一細かいことを考えていても無意味だね。実際に何か目標があって、みんなでその問題にあたるとうまくいくんだよ。
 だってみんなはその道のプロで、プロだからこそわかる言葉がある。そのプロジェクトの中で話される言葉、コモン・ランゲージでコミュニケーションするんだ。そうすればいいんじゃない?

一同:A-ha!

Kiyohito:
 Ops! ちょっと、話題がUFUG だけになっちゃたよ。みんなはヨーロッパのランドスケープってどう思う?

Hlynur:
 ランドスケープから見たら、ポストモダニズムや今の建築や開発は相当アグレッシブだよね。デザインがコンクリートとガラスで溢れすぎているよ。公園は小さくなる一方だし、緑は毛が生えたようなもんだ。建築はLEGOland だよ。もっとロマンティシズムがあってもいいと思うな。

Fanny:
 そうね。都市の緑っていうのはプランナーや建築家が決め込んで、ここにはこの木!と言って強引に植え込むでしょう。木のことも知らないで。

Kiyohito:
 実際のところ、ヨーロッパのランドスケープは国と風土は違えど、画一的なランドスケープだね。都市化っていうのはどこも一緒に映る。

Hlynur:
 世界中を見たわけじゃないけど、Kiyohito に賛成するよ。都市化は都市化だね。

Kiyohito:
 以前、Roland と都市化に対して、Wilderness について語ったの覚えてる?

Roland:
 Wilderness というのはUntouchable な自然のことを言う。でもそんなことはあり得ない。日本もスウェーデンも同じだと思うけど、メンテナンスされない自然を放置することが自然の保全ではない。だからこそマネジメントが重要で人間が一度コントロールしたのならきちんとコントロールするべきだね。

 それに、ツーリズム!都市の住民はWilderness に憧れて森に行くけど、その周りにすんでいる住民は?ただワイルドな自然なんて彼らには迷惑なものでしかないよ。そこが難しいところだね。

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宮川:
 実際に、こうしたプログラムを生かしたランドスケープ・プロジェクトが、世界中で行われているようですね。


Roland:
 みんなも知っているLandscape Laboratory を今度スウェーデンとアイスランドでやるよ。前回は、使われない農地に一から木を植えて、レクリエーションフォレストをつくったけど、今度は自治体と協力して現存する歴史ある森を、どう保全して生かすかが焦点のプロジェクト。森のリノベーションだね。これは君たちのプロジェクトからヒントを得たんだ。

一同:WOW!

Roland:
 それに、今ベオグラード(セルビア)で学生やプロたちにグリーンストラクチャーのマネジメント法の教育プログラムをつくっている。

Kiyohito:
 戦争とかで大変な地域ですよね。Gordana(セルビア人のUFUG)も言っていたけど、社会はHopeless で、特にPeri-Urbanの緑もそうだけど、地域自体が廃墟のようだと聞いた。

Roland:
 最初ベオグラードに行ったときは、僕も愕然としたよ。灰色の都市だった。でも希望はあったよ。みんな復興させるという意欲に満ち溢れていたんだ。緑を考えることにもね。その教育プログラムもほぼ完成したし、これからだね。

Thomas:
 私の方は今、Jasper と一緒にマレーシアで、UFUGの構想をもとにプロジェクトをやっているよ。

Jasper:
 クアラルンプールは金融都市で、ツインタワーがあるでしょう?

Kiyohito:
 うん。僕もいったことがあるけれど、あそこの周りは。。。

Jasper:
 そう、とても差があるね。。。貧困とまではいわないけれど、格差が激しいし、アーバニゼーションによって緑は失われていく。そこで緑に価値を持たせようというわけだよ。

Thomas:
 去年、中国でUFUG について講演をしたんだよ。すごく興味をもってくれた。アジアのことはまだまだわからないけれど、とても重要な概念なのではないかな。

Kiyohito:
 今度は日本に来てくれますか?

Thomas&Jasper:
 Of course!

宮川:
 世界中で今後の環境問題への解決や社会環境の変革が求められています。これからのランドスケープが担う役割と、みんなの卒業後の夢を聞かせてもらえますか?


Fanny:
 緑への政策や変革はお金より大事よ。私は公務に就いて、都市の緑化や保全の活動をしたいわ。それに次の世代へサスティナブルな環境を残したい。もちろん国は問わず、これまで培ってきたものすべてを使って活躍したいわ。
 Kiyohitoとも一緒に仕事もできたらいいと思う。だってまったく違う国(Far EAST)JAPANESEと一緒に同じことができたら、世界規模の話じゃない。これが実現したら地球は救われるわ。

Hlynur:
 僕は相方のビデオを片手に世界中を巡るよ。それで、地球環境を考えたドキュメンタリーを世界に発信するんだ。Kiyohito も協力してくれよ。

Huang:
 ヨーロッパに来て中国という国が客観的にわかったし、そろそろ上海に帰って兄の建築事務所でコラボレートするよ。今中国は建築ブームだからね。よりいいものをつくらなきゃね。

Kiyohito:
 今は就職活動中だけど…。とにかくUFUG を通して世界を知ることができたと思うし、コラボレーションの可能性も肌で感じることができた。それを忘れないで、近い将来みんなで大きな緑のプロジェクトをしたい。その時はもちろん助けてくれるだろう?

一同:Why not?

Kiyohito:
 ありがとう! 最後に先生たちから僕らにメッセージはありますか?

Thomas:
 仕事というと公務員か、民間のコンサルタント、NGOなどもあるけれど、世界の執行機関でも活躍してほしいな。FAO(Food and Agriculture Organization国際食糧農業協会)とかね! それにKiyohitoにも言ったけど、その道で一生懸命働いてほしいね。でも聞く耳をもつ、話すことはとても重要だ。世界で活躍する鍵はそれだね!

Jasper:
 Kiyohito とカールスバーグのコンペをやったね。Fannyとお父さん(アーティスト)とも一緒だった。まったく違う分野の人が集まって、お互いに刺激しあったり、学びあったりできることはとってもエキサイティングだ! みんなにもこの感覚を知ってほしい。臆病にならずにね!

Roland:
 んー。なんでもやれ! 何をやってもいい。
 僕が若い頃はパイオニアになることが目標だったよ。みんなもそういう気持ち、自信をもってやってもらいたいな。特にプロになってほしい。プロっていうのは、お互いを尊重して助け合うことができる人のことを言う。みんなを巻き込んで自分のやりたいことを叶えてほしいね。もちろん楽しみながら。

Kiyohito:
 今日はありがとう! 論文発表会もお手柔らかに…。

一同:Who knows?


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