2007年08月23日

テレビの中のランドスケープ

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LD56◇今回の記事は、ランドスケープ専門雑誌「ランドスケープデザイン」のマルモ出版とのメディアミックスにより、2007年8月23日発刊「LANDSCAPE DESIGN (ランドスケープ デザイン)no.56」と同時掲載になっています。




<今回のネットワークメンバー>
f59d4f40.JPG鈴木 心篤(すずき むねあつ)
NHK制作局生活食料番組 ディレクター
PROFILE



 最近、テレビや雑誌のメディアに<ランドスケープ>という言葉をよく聞くようになりました。今回はNHK教育番組「あしたをつかめ〜平成若者仕事図鑑〜」ランドスケープアーキテクトを紹介するなどの番組制作にあたってきたNHKのディレクター鈴木心篤さんとともにテレビの中に写るランドスケープを探求したいと思います。(宮川)


◇ランドスケープを取材する

宮川:
 お久しぶりです。
 鈴木さんとは2005年1月に放送された「あしたをつかめ〜平成若者仕事図鑑〜」<ランドスケープアーキテクト>編で取材して頂いて、とてもお世話になりました。
 改めて番組でのランドスケープアーキテクトの取材経緯を教えてもらえますか。

鈴木:
 お久しぶりです。
 このメディアミックスのことは、立ち上がりの頃からお話は伺っていましたが、なかなか読むチャンスがなく、今回対談のお話をいただいて、慌てて目を通させていただきました。

 皆さん専門家や学生など、少なからずランドスケープに関わっている方々ばかりなので、ずぶの素人である私が登場してしまってよいのか?安請け合いして一瞬後悔してしまいましたが、乗りかかった船、一市民がランドスケープをどう見ているのか、その一例としてお読みいただければ幸いです。


あしたをつかめ
 さて、番組をご覧になってない方のために紹介させていただくと、「あしたをつかめ」は、10代後半〜20代前半の若者たちをターゲットに、さまざまなジャンルの職業を紹介し、その特徴や魅力を伝える「仕事」番組です。毎回1人の若手を主人公にして、その仕事ぶりに密着し、VTRのみで構成しています。

 制作当時、私は宮崎放送局で仕事をしていて、縁あって番組の主人公となった工藤登紀子さん、そして宮川さんと知り合って、番組を作ったわけですが、それまでは「ランドスケープアーキテクト」の言葉すら知りませんでした。

 ではどういうきっかけでこの職業を番組で採り上げることになったのかというと、その頃NHKの連続テレビ小説で「わかば」という番組が放送されていました。

 宮崎と神戸が舞台で、阪神淡路大震災で建築家の父を失ったヒロインが、緑のある住まいを目指した父の志を継いで造園家となり、震災で傷ついた都市と家族の心を「緑の力」で再生していく、というストーリーです。

 そこで私は、宮崎から番組を出すなら「造園家」がタイムリーだろうと提案したわけですが、デザイン系の分野に詳しかったプロデューサーからアドバイスがあり、同じ緑を扱う職業に、「ランドスケープアーキテクト」という新しい職業があるから調べてみろと「ランドスケープデザイン」という専門雑誌もあるぞと。そう言われたのがきっかけでした。

 宮川さんもご存知の通り、番組作りは大変難航しました。
そもそも「ランドスケープアーキテクト」という職業の定義がよくわからない。

 国家試験を受けたり、資格を取ったりしなければならないわけでもない。専門も造園、土木、建築、環境デザイン…と様々。

「要するにあなた方は何者ですか?」と(笑)。

 でもこの多面性、トータル性、よくわからない性?が、「ランドスケープアーキテクト」という職業の本質の一端であり、価値であり、そして現状なのではないかと思います。

 図書館で見つけた資料はあまり参考にならず、最も便利に使わせてもらったのが、たまたまネット上で見つけた「ランドスケープをしよう」のホームページです。後からこのサイトの運営者が、取材相手の宮川さんだと知って、大変驚いたことを覚えています。

【注釈】
平成若者仕事図鑑「あしたをつかめ」
http://www.nhk.or.jp/shigoto/
 2004年4月〜放送中。社会へ出ることを考え始めた10代後半〜20代前半を対象にさまざまなジャンルの職業を紹介し、その特徴や魅力について考えてもらう“仕事ガイダンス番組”。ランドスケープアーキテクト編は2005年1月24日に放送。

朝の連続テレビ小説「わかば」
http://www.nhk.or.jp/drama/html_news_wakaba.html
 平成16年度放送。父の志を継ぎ造園家として懸命に生きるヒロイン・高原若葉の物語。 恋愛・結婚・出産を経験しながら造園家として悪戦苦闘するヒロインが、震災で傷ついた家族の心の「再生」を成し遂げていくまでの姿を、「緑豊かな宮崎」と「復興した新生・神戸」を舞台に、涙と笑いと人情で描いた。



◇テレビで伝えるランドスケープの仕事

宮川:
 ありがとうございます。
 私もメディアが造園から一歩踏み込んでどのようにとらえてくれるのか、とての興味をもっていました。
 取材はちょうど国立公園のキャンプ場を計画しているときの取材でしたよね。<ランドスケープアーキテクト>という職業にはじめてふれて、ディレクターとしてどう感じましたか?

鈴木:
 番組制作の過程で、工藤さんや宮川さんが、自分たちが設計した公園でその後もボランティアとして関わり、子供たちと遊ぶ場面を撮影させていただきました。
 これは私にとって一番印象に残ったシーンです。

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 公園を設計してもそこで終わりではなく、その運営まで関わる姿に感動したのです。確かに、「何のために公園を設計するのか?」その原点を自分なりに想像してみると、それが本来のあるべき姿にも見えてきます。
 砂場、ブランコ、滑り台の3点セットが並ぶだけの公園で、子どもたちがコンピューターゲームに興じる光景は、見ていて楽しいものではありません。

 それと、ランドスケープというと、私は勝手に自然保護的な性格の強い仕事なのだろうと考えていたのですが、キャンプ場でウッドデッキを計画したときに、利用者にヒアリングをするなど利用者目線が大切にされることに気づきました。

 でもあれは、人間が自然と触れ合う場という「国立公園」という条件だったからなのでしょうか?

宮川:
 人と自然との折り合いをみつけるのはランドスケープの大切な役割と考えています。逆に緑や自然の特性が強い場所でしたので、それを人と折り合いをつけることが大切な場所でしたね。
 でも取材中、鈴木さんも“ランドスケープ”を視聴者に伝えることにとても苦心されていましたよね。

鈴木:
 LANDSCAPE ARCHITECTはそのまま訳せば「景観の設計者」であり、番組冒頭でもそのような説明を加えたのですが、むしろ「緑のある空間の演出家」なんだろうな、と感じました。
 そういう意味で私たちの仕事(ディレクター)とも、職業として似ているところがあると感じました。

 テレビディレクターという仕事は、世間というフィールドから魅力ある人物や事象を見つけて、そこに演出で光を当てることで魅力を引き出し、見る人に感動を与えることだと考えています。
 ランドスケープアーキテクトも、自然というフィールドから素材を見つけ出して、それを活かす設計をして、自然の美しさを人に伝える。同じですよね?

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メディアから見たランドスケープの役割

宮川:
 同じことを、私も鈴木さんの番組作成の過程をみせていただいて感じていました。
 この番組の後、鈴木さんは東京に戻られたのですが、その後も環境や街づくり等に関する番組も手がけらましたよね。
 先ほど子どもと公園の話がありましたが、子どもの遊びの番組の時は私も大変興味深く見せて頂きました。

鈴木:
 今年の2月に、<ご近所の底力>という番組で「子どもが外で遊ばない」をテーマにとりあげたのですが、その取材の中で非常に意外なデータを見つけました。

 いま都会の子どもたちよりも、田舎の子どもたちの方が外で遊ぶ時間が短いらしいのです。なぜ豊かな自然に囲まれながら、外で遊ばないのか?その大きな理由としては、田舎は少子化で遊び相手が少なくなり、遊びの伝承がなくなってしまったということが指摘されています。

 都会では、いま、先進的な親たちがプレーリーダーと呼ばれる「ガキ大将」になって、外遊びの楽しさ、自然との交わり方を必死になって伝えている。でも田舎では、そういった取り組みはまだまだこれからです。

 また、<あしたをつかめ>を作っていたとき、最も苦労したことの一つが、<主人公探し>でした。

 造園会社や建設コンサルタントをいくつもまわったのですが、ランドスケープアーキテクト的な仕事をしている人自体が少なく、ほとんど造園家か土木系の設計者でした。宮崎県は緑が豊かな土地であり、全国でも数少ない造園学が学べる大学(南九州大学)があるので、主人公探しは難しくないだろうと高を括っていたのですが…。

 ビジネスには需要と供給の問題があり、しょうがないのですね。
 でも今ランドスケープアーキテクトの視点、環境整備や教育が必要なのは、都会よりもむしろ地方、田舎なのではないかという気がしています。

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【注釈】
「難問解決!ご近所の底力」
http://www.nhk.or.jp/gokinjo/
2003年4月〜放送中。「難問解決!ご近所の底力」は、放置自転車・落書きなど、身近なお困りごとに悩む町が、全国から寄せられた住民たちの妙案を参考にしながら解決策を探る視聴者参加番組。



宮川:
 確かに、都市部は教育に関しても危機感が違うと思いますし、先進的な取り組みや研究も盛んです。私も地方にこだわって活動をしているので強く意識しますね。
 特に地方と都市との格差意識が広がっているといわれていますが、人と人の結びつきや自然、環境との折り合いをつけることがランドスケープにも強く求められていると思います。

鈴木:
 そうですね、地域の中には、伝承遊びに詳しい人もいれば、植物に詳しい人もいる。様々なプロフェッショナルは点在しているのだけれども、それらを繋ぐコーディネーターがいない、グランドデザインを描ける人間がいない。
 ですから、場と人とを繋ぐ、繋ぎ役の存在が、今必要なのだと思います。

 <ご近所の底力>は、簡単に言えば、問題を抱えて困っているご近所と、問題の解決策を持つご近所をマッチングさせる番組です。
 そこから、いまではどこの町でも見かける「パトロール隊」といったムーブメントが生まれて、世間で一定の認知を得られることができました。

 世間の認知度を上げるということで言えば、ランドスケープアーキテクトも、ランドスケープ的考え方はどこでも有効なわけで、「生活にランドスケープを!」をなんてキャッチコピーを作って、ムーブメントを起こしてしまうっていうのはどうかな。

宮川:
 それは私の活動やホームページ、そしてこの雑誌の「ランドスケープデザイン」の趣旨に非常に近いものです。そうした意味でも、調和とトータルな技術をもつランドスケープの知恵や提案を、広くわかりやすく、多層・多方面に伝えていくことが大切と強く感じています。
 このことからも、メディアからいろいろなコラボレーションの必要性と可能性も感じるのですが、最後にメディアの視点からランドスケープの今後の果たすべき役割のようなものは何か、感じることがあれば教えてもらえますか?

鈴木:
 自然には人の命を守る力、心を癒す力があることはわかっているのだから、自然ってこんなに素晴らしいんだ、美しいんだって感じられる仕掛けをどんどん作って、自分たち市民を「だまして」欲しいっていうのが願いです。

 自然に人間を引き戻して、その大切さをいかに五感で感じさせられるか?
 ランドスケープアーキテクトという職業が担う役割は、地球規模に広がっていると思います。
 そのためには、マスコミに携わる人間として、認知度を高めるためにこれからも応援していければと思っています。

 ありがとうございました。

テレビ表



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