2008年02月23日

子どもの夢を叶えるランドスケープ


title059.jpg

LD59.jpg◇今回の記事は、ランドスケープ専門雑誌「ランドスケープデザイン」のマルモ出版とのメディアミックスにより、2008年2月23日発刊「LANDSCAPE DESIGN (ランドスケープ デザイン)no.59」と同時掲載になっています。




<今回のネットワークメンバー>
profilesasaki.jpg佐々木 健一郎(ささき けんいちろう)
そらぷちキッズキャンプを創る会 事務局次長
http://www.solaputi.jp/

PROFILE

 「そらぷちキッズキャンプ」−そこは、難病をかかえる子どもたちが医療や施設のバックアップによって、安心して自然とふれあい、楽しめる夢の公園。現在そんな夢のような公園を実現させるプロジェクトが進められています。
今回は、「そらぷちキッズキャンプを創る会」(以下、創る会)の事務局次長である佐々木 健一郎さんに「そらぷちキッズキャンプ」をとおして、人々が癒され、成長する、やさしさでできたランドスケープの姿を考えてみたいと思います。(宮川)




◇そらぷちキッズキャンプの誕生

宮川:
「そらぷちキッズキャンプ」では、難病などの病気とたたかう子どもたちが、自然の中で、安心して、安全に楽しく過ごせるよう、特別に配慮された自然体験施設になると聞きました。
今現在、日本ではどれくらいの子どもたちが病気と闘っているのですか?

佐々木:
日本では、約20万人の子どもたちが小児がんや心臓病などの難病とたたかっていると言われています。
子どもたちは辛く厳しい闘病生活の中で、自然とふれあう機会がほとんど無いのが現状です。
「外で遊びたい」それが夢だという子どもたちがいるのです。

pic5907.jpg

宮川:
「自然の中で遊ぶ」ことは、子どもたちにとって喜びの一つですから、外にでることが難しい子どもたちにとっては、本当にかけがえのない夢になることでしょう。この「そらぷちキッズキャンプ」のプロジェクトはいつごろから誕生したのですか?

佐々木:
「病気とたたかう子どもたちに夢のキャンプをつくろう」という計画は、医療や福祉、難病児支援、自然療法、ランドスケープの専門家が、アメリカの難病児自然体験施設*「ホールインザウォール・ギャング・キャンプ」の活動などに影響を受け、ほぼ同時にこうしたキャンプをつくろうと動きだしたことに端を発します。

ランドスケープからは、松本守氏(創る会事務局長・元国土交通省審議官)と、浅野房世氏(創る会副会長・東京農業大学教授)が、

「バリアフリーの公園という考え方をさらに発展させた、病気の子どもの幸せをサポートするように考えられた公園というものができないか」

と考え、豊かな自然環境がある北海道滝川市とともに実現に向けて動き出したのがスタートでした。

この「そらぷち」とは、滝川市一帯の土地を表すアイヌ語で「滝下る川」という意味だそうです。このアイヌ語と「Solar(太陽)」、「Petite(小さな)」を重ねあわせたネーミングが「そらぷちキッズキャンプ」で、キャンプに参加する子どもたちの笑顔がイメージできます。

キャンプの場所は、牛や馬、羊が放牧されている丸加高原の一角にあり、約16haの草原と森を滝川市が提供してくれました。

pic5904.jpg


注釈「ホール イン ザ ウォール・ギャングキャンプ」
http://www.holeinthewallgang.org/
(英語のみ)
難病の子どもたちのための診療所付自然体験施設。米国コネチカット州に俳優のポールニューマン氏が中心となって1998年に設立されました。施設建設・キャンプ運営はすべて寄付によって賄われ、これまで多くの子どもたちを無料で招待しています。名前はニューマン氏主演の映画「明日に向かって撃て」に出てくる盗賊一味「Hole in the Wall Gang」に由来し、子どもたちがわんぱくに過ごす様子を想像させます。



◇そらぷちキッズキャンプのランドスケープ

宮川:
素敵な思いが込められたネーミングで、また素晴らしい場所に立ち上げられましたね。既に一部開園に向けての作業が進められてきていると聞いていますが、まずは、これまでに至る活動についてお聞かせください。

佐々木:
まずは多くの人にこの計画を知ってもらうため、学会や様々なイベントでのPR、テレビや新聞を通じた発信を行ってきました。そらぷちキッズキャンプを題材にしたドキュメンタリーやドラマも、テレビ番組として全国で放映されました。

pic5902.jpgまた、キャンプの将来イメージの共有やプログラム、医療支援体制等の検証を行うため、実際に難病の子どもを無料で招待して、プレキャンプを行いました。

そして、東京・北海道連絡所の開設や、滝川市からの土地無償提供の合意書調印、*「高原基金の森」支援の決定、米国キャンプとの提携などを実現させてきました。

「そらぷちキッズキャンプ」は、米国と同じように、施設建設・キャンプ運営をすべて寄付金によって賄う予定です。当面の目標としては、施設建設費を約5億円、年間運営費を約1億円と考えています。
我々の使命に賛同してくれる個人・企業等は徐々に増えてきています。

昨年(07年)は、専従スタッフ1名を常駐させ(僕ですが)、一部ですが念願の工事を開始しました。ゆっくりですが着実に実現に向けて進んでいます。

注釈「高原基金の森」
http://www.urban-green.or.jp/
(「(財)都市緑化基金」公式ホームページ)
高原慶一朗氏(ユニ・チャーム(株)創業者)が、「日本人の心の豊かさを保っていくには、緑がもっと必要だ」との考えから個人資産の寄付を行い、財団法人都市緑化基金が創設した支援事業です。そらぷちの森及び森の案内所等の整備に対して、1億7千万円の支援を決定、昨年(07年)工事を開始しました。



宮川:
これまでもプレキャンプを行ってきたということですが、具体的にどういったことが行われたのですか?

佐々木:
これまで夏と冬あわせ計6回のプレキャンプを実施しました。ここでは、延べ120名を超える小児がんなどの病気とたたかう子どもたちが参加しました。

また、キャンプの活動を支える医師・看護師などのボランティアは、これまで全国各地から300名以上が集まっています。参加した子どもたちは、北海道の大自然を満喫し、笑顔一杯で仲間たちと思い出をつくり、生きるエネルギーを得ています。

プログラムは、自然体験だけでなく、乗馬やグライダー、カヌー、農業体験など滝川のまち全体を利用して楽しんでもらっています。

安全に安心して楽しんでもらうため、滝川市や滝川市医師会、滝川市立病院、地元の農家やその他市民団体など多くの協力を得て実施しています。これらプレキャンプの様子は、完成後のシーンを想像させてくれますよ。

pic5903.jpg

宮川:
その完成後のシーンですが、将来は、どんな施設やランドスケープが描かれることになっているのですか?

佐々木:
そらぷちキッズキャンプは、周囲を森に囲まれた静かな場所で、子どもたちの隠れ家のようになっています。

仲間たちと一緒に数日間のキャンプ生活を送る施設として、宿泊棟やコテージ、食堂、森の案内所(事務棟)、小劇場&体育館等があり、キャンプ中に医師が常駐する医療棟は、子どもたちの遊びの動線から離れた目立たない場所に配置されています。

敷地の2/3を占める「そらぷちの森」を歩くと、花畑や果樹園、テントサイト、野外炊事場、小川、つり橋、魚釣りの池などがあらわれます。アーチェリーや小動物とふれあえる場所もあり、子どもたちは好きな遊びをすることができるように計画しています。

冬には丘の傾斜を利用して、そりやスキーが行える場所もあります。もちろん建物内や屋外空間は、すべてユニバーサルデザインが施されるほか、手すりや扉の取っ手、サインの高さは通常より低く、サインは遊び心を持ったデザインになっているなど、空間全体が病気とたたかう子どもたちに配慮した設えとなっています。

これらのプランは、ランドスケープアーキテクトや建築家だけでなく、医師や看護師などの医療従事者、自然療法の専門家、難病児支援団体などが協働で作り上げたものです。 
 
現在、「そらぷちの森」と「森の案内所(事務棟)」が工事中であり、2009年度には一部供用開始予定です。


◇これからの「そらぷちキッズキャンプ」とランドスケープの役割

pic5901.jpg宮川:
すばらしいランドスケープのイメージが浮かんできますね。
この「そらぷちキッズキャンプ」を通して、ランドスケープに求められていること、そして「これからのランドスケープができること」について佐々木さんが感じることをお聞かせください。

佐々木:
難しい質問なので少し抽象的になるかもしれませんが、そらぷちキッズキャンプは、病気とたたかう子どもたちやその家族が癒され、生きるエネルギーを得ることができるような場所を提供したいと考えています。

医師や看護師、地元市民などのボランティアにとっても、優しくなれる、成長できる場所でありたいと思います。これは、全国の賛同者や支援企業などにとっても同様だと思います。

そういう意味で、人々が癒され、成長する、やさしさでできた場所を創りだすことがランドスケープの役割だと思いますし、いろんな「やさしさ」をつないでいき、このような場所を創っていくことが今の僕の仕事なんだと考えています。

いじめ、自殺、虐待、暴力、孤独死などの言葉が、ニュースで数多く報道されるこの現代社会の中で、「人が癒され、成長する、人のやさしさでできたランドスケープ」は、難病の子どもだけでなく、いろんな人々にとって、なくてはならないとても重要な存在になると確信しています。このようなランドスケープが数多く生まれていけば、もっと多くの人にとって住みやすい世の中になるのかもしれません。

宮川:
「人のやさしさを結ぶ」ランドスケープは、まさに社会から求められている姿であると思います。このプロジェクトの実現には多くの賛同者や協力者が必要になると思います。
最後に、読者のみなさんにメッセージなどありましたらお願いします。

佐々木:
ありがとうございます。
まずは、当会の取り組みを知ってもらいたいと考えています。ホームページをご覧頂くか、事務局(下記記載)に直接ご連絡いただいても結構です。

また、ご支援いただく方法は様々な形があります。ひとつのご支援を紹介しますと、日本チェーンドラッグストア協会(加盟約13,000店舗)が、全国のドラッグストアに募金箱を設置してくれました。この箱で「夢」を実現しようと本気で考えています。

ある尊敬する小児科医師が以下のようにおっしゃっていました。
「現在日本では、200人に1人の赤ちゃんがどうしても病気を持って生まれてきてしまう。自分や家族が元気な199人だったからといって喜んでいるだけじゃなくて、残りの1人を元気なみんなで支援してもいいんじゃないか。」

僕も同感です。そして、その子どもたちが、「外で遊ぶことが夢だ」と言うのであれば、そんな場所を何とかして提供したいと考えています。

pic5905-poster.jpg pic5906-homepage.jpg
  <チラシダウンロード>    <そらぷち公式ホームページ>

【北海道連絡所】
〒073-0033 北海道滝川市新町2丁目8‐10 滝川市医師会内
TEL 0125-22-8100 FAX 0125-22-8110 
E-mail :sasaki@solar-petite.jp
担当:佐々木

【東京連絡所】
〒102-0093 東京都千代田区平河町 2-4-16 平河中央ビル6F(社)日本公園緑地協会内
TEL 03-3265-8551 FAX 03-3265-8553 
E-mail:karasawa@posa.or.jp 
担当:唐澤


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