32秒台で上がった馬は強いのか?
古くは1988年中日スポーツ賞4歳Sでサッカーボーイが33秒9、1991年にはミホノブルボンが新馬戦で33秒1を記録した上がり3ハロンタイム。この2頭だけを書けばどちらも後のG1ホース、このタイムが速い馬は強いというイメージを持たれるのだろうが、サッカーボーイより以前に33秒9を記録していたオギアルバンシア、1993年に日本で初めて32秒台に突入したブランドイメージは共に準オープンが最終クラスだった。上がり3ハロンを速いタイムで走った馬は本当に強いのだろうか?
私は競馬を見はじめて15年ほどになるのだが、近年上級クラスでは上がり3ハロン33秒台がある意味当然のこととなっており、32秒台さえも珍しいものではなくなってきたように思う。そこで調べてみたのが下表、上がり3ハロン33秒台と32秒台の年次別頭数だ。
■上がり3ハロン33秒台と32秒台の年別頭数
年 33秒台 32秒台
2007年 790 15
2006年 540 16
2005年 695 25
2004年 518 6
2003年 396 5
2002年 301 5
2001年 227 8
2000年 99 0
1999年 57 0
1998年 31 1
1997年 68 1
1996年 70 0
1995年 49 0
1994年 34 0
1993年 15 1
1992年 4 0
1991年 4 0
1990年 7 0
1989年 0 0
1988年 1 0
1987年 0 0
1986年 1 0
※新潟直線芝1000mは除く。
新潟芝1000mは上がり3ハロン34秒を切らないほうが珍しいコースなので議論外、この表からは全面カットした。それでもこの増加傾向。新潟競馬場が全面改装された2001年から急激に増えているようにも見えるのだが、確かにそれは間違いではない。33秒台にしても32秒台にしても、半数近くは2001年以降の新潟競馬場で記録されたものだからだ。
とは言え、それだけではない。2000年から徐々にその兆しが見えているように、他の競馬場もつられるように上がりの速いレースが増えてきているのも事実。良好に保たれる芝状態と距離体系の整備に伴うスローペース症候群の影響か、2008年以降もこの傾向は維持、もしくは増加していくものと思われる。
しかしそこで問題になってくるのが、そういった驚異的な上がりを記録した馬は強いのかどうかということ。レコードタイムを記録した馬が強いのかという問題にも絡んでくる話なのだが、そういったタイムを根拠に馬券を買っている人はよく見てほしい。ただし、33秒台は近年珍しくも何ともなくなったので、32秒9以下を記録した馬を調べてみた。
区分 勝率 連対率 単回率
次走 9.1% 18.2% 69%
2走後 8.7% 15.4% 64%
3走後 9.8% 17.7% 69%
記録後全走 7.3% 13.4% 87%
いかがだろう。サイコロを転がして出た目の馬を買った場合の勝率は約7.3%であり、連対率14.6%、単勝回収率は72%前後。勝率、連対率に関しては若干それを上回るも、ほんの気持ち程度。単勝回収率は完全に人気先行の60%台となっている。儲けを出すためにこれを積極的に買う必要性は全くなく、強いて言えば忘れられた頃に人気薄で好走の可能性もあるぐらいだろうか。
ちなみに2007年末現在JRA最速の上がり3ハロンは2003年マルターズホークとイルバチオの31秒6で、新潟芝1000mを除くと2007年カゼノコウテイの32秒4(※1)。ダートでは89年ツキノラデカルなど4頭の34秒1であり、上記カゼノコウテイ以外の馬は最速記録後1勝もできずに引退してしまった。カゼノコウテイはまだ現役なのだが、該当レース後8戦1勝という成績だ(2008年10月現在)。
(※1)2008年5月10日に新潟大賞典でオースミグラスワンが31秒9を記録して更新。
勝率が平均を上回っているにも係わらず、単勝回収率が60%台にとどまっているのは過剰人気の証明。例えばディープインパクトは自己最速33秒1という記録しか残っていないのだが、もし2008年新潟大賞典に出走していたら、31秒9のオースミグラスワンに差し負けていただろうか? 2008年新潟大賞典当日のオースミグラスワンは、新潟芝2000mなら何度走っても31秒9に近い数字が出せるのだろうか? 私はどちらも否だと思う。そこにレースの流れというものが介入してくる。
ディープインパクトはほぼすべてのレースで、2番目に上がりが速い馬より1秒前後も速い3ハロンタイムを記録していた。33秒台、32秒台という数字が重要なのではない。36秒台でも38秒台でもいい、そのメンバー、そのレースで他馬よりどれだけ速く走れたかのほうが重要ではないかと思うのだ。上がり3ハロンで最速を出せる馬がわかるなら、理論上3回に1回はそれが勝ち馬となる。
私は競馬を見はじめて15年ほどになるのだが、近年上級クラスでは上がり3ハロン33秒台がある意味当然のこととなっており、32秒台さえも珍しいものではなくなってきたように思う。そこで調べてみたのが下表、上がり3ハロン33秒台と32秒台の年次別頭数だ。
■上がり3ハロン33秒台と32秒台の年別頭数
年 33秒台 32秒台
2007年 790 15
2006年 540 16
2005年 695 25
2004年 518 6
2003年 396 5
2002年 301 5
2001年 227 8
2000年 99 0
1999年 57 0
1998年 31 1
1997年 68 1
1996年 70 0
1995年 49 0
1994年 34 0
1993年 15 1
1992年 4 0
1991年 4 0
1990年 7 0
1989年 0 0
1988年 1 0
1987年 0 0
1986年 1 0
※新潟直線芝1000mは除く。
新潟芝1000mは上がり3ハロン34秒を切らないほうが珍しいコースなので議論外、この表からは全面カットした。それでもこの増加傾向。新潟競馬場が全面改装された2001年から急激に増えているようにも見えるのだが、確かにそれは間違いではない。33秒台にしても32秒台にしても、半数近くは2001年以降の新潟競馬場で記録されたものだからだ。
とは言え、それだけではない。2000年から徐々にその兆しが見えているように、他の競馬場もつられるように上がりの速いレースが増えてきているのも事実。良好に保たれる芝状態と距離体系の整備に伴うスローペース症候群の影響か、2008年以降もこの傾向は維持、もしくは増加していくものと思われる。
しかしそこで問題になってくるのが、そういった驚異的な上がりを記録した馬は強いのかどうかということ。レコードタイムを記録した馬が強いのかという問題にも絡んでくる話なのだが、そういったタイムを根拠に馬券を買っている人はよく見てほしい。ただし、33秒台は近年珍しくも何ともなくなったので、32秒9以下を記録した馬を調べてみた。
区分 勝率 連対率 単回率
次走 9.1% 18.2% 69%
2走後 8.7% 15.4% 64%
3走後 9.8% 17.7% 69%
記録後全走 7.3% 13.4% 87%
いかがだろう。サイコロを転がして出た目の馬を買った場合の勝率は約7.3%であり、連対率14.6%、単勝回収率は72%前後。勝率、連対率に関しては若干それを上回るも、ほんの気持ち程度。単勝回収率は完全に人気先行の60%台となっている。儲けを出すためにこれを積極的に買う必要性は全くなく、強いて言えば忘れられた頃に人気薄で好走の可能性もあるぐらいだろうか。
ちなみに2007年末現在JRA最速の上がり3ハロンは2003年マルターズホークとイルバチオの31秒6で、新潟芝1000mを除くと2007年カゼノコウテイの32秒4(※1)。ダートでは89年ツキノラデカルなど4頭の34秒1であり、上記カゼノコウテイ以外の馬は最速記録後1勝もできずに引退してしまった。カゼノコウテイはまだ現役なのだが、該当レース後8戦1勝という成績だ(2008年10月現在)。
(※1)2008年5月10日に新潟大賞典でオースミグラスワンが31秒9を記録して更新。
勝率が平均を上回っているにも係わらず、単勝回収率が60%台にとどまっているのは過剰人気の証明。例えばディープインパクトは自己最速33秒1という記録しか残っていないのだが、もし2008年新潟大賞典に出走していたら、31秒9のオースミグラスワンに差し負けていただろうか? 2008年新潟大賞典当日のオースミグラスワンは、新潟芝2000mなら何度走っても31秒9に近い数字が出せるのだろうか? 私はどちらも否だと思う。そこにレースの流れというものが介入してくる。
ディープインパクトはほぼすべてのレースで、2番目に上がりが速い馬より1秒前後も速い3ハロンタイムを記録していた。33秒台、32秒台という数字が重要なのではない。36秒台でも38秒台でもいい、そのメンバー、そのレースで他馬よりどれだけ速く走れたかのほうが重要ではないかと思うのだ。上がり3ハロンで最速を出せる馬がわかるなら、理論上3回に1回はそれが勝ち馬となる。
23:45│その他