どこから書けばいいかな?まずは私が過去に受けた大使館を紹介しましょう。思い出せる限りでは、イスラエル大使館・トルコ大使館・タンザニア大使館・イラン大使館・ノルウェー大使館・シンガポール大使館・バーレーン大使館・ベルギー大使館です。(これでプロフを見れば私がどこで働いていたかがわかるでしょう)

その大使館の給料がいいか悪いかを見極めるのは簡単です。それは中年男性日本人職員がいるかどうか、です。オヤジが働いている大使館というのは、当然家族を養える程度の給料をもらっているので、そこの秘書は女性でも給料は悪くないはずです。それとちゃんとボーナスも出るし、保険にも加入できる。備品も言えばすぐに買ってくれる。でもオヤジがいない大使館では、または世界一出稼ぎ者の多い国出身者(あえて名前は出さないけど。わかるでしょ?)がやたら働いている大使館では給料は安いです。おまけに給料の遅延、というのはざらです。福利厚生という概念すらありません。ボーナスもないし、月給も安い。

秘書にはランクがあります。大使秘書、その他秘書の2種類です。私は当然ながらその他の普通の秘書のほうでした。主に会計官の秘書をしていました。大使秘書というのは給料が秘書の中で一番いいのは当然です。まず限りなく英語がnon nativeレベルは必須条件です。だから場合によっては日本人ではないこともあります。

通常、欠員が出た時にしか求人募集はしません。増員はほぼないと言ってもいいと思います。だからなかなか募集がないんです。入るルートとしては、コネか新聞の求人広告を見ての応募、のどちらかです。倍率は私の経験では50倍と100倍でした。これは入ってからわかったことです。まあ、どこも倍率は高い、ということです。

大使秘書に欠員が出た場合、1つは現職の普通の秘書が繰り上がる場合と、もう1つはいきなりそのポジションを求人募集してしまう、のどちらかです。今回の私の場合は後者でした。

長期雇用を前提にした面接では今回同様、一次面接では英語面接のほか、PC操作のテストやタイプライターのテストや翻訳のテストがありました。そして二次面接が最終面接の場合が多いと思いますが、その時には大使自ら面接(質問)します。まあ、会社でいう社長面接ということでしょうか?

外交官が日本語を話せるかどうか、ということはその国によってかなりの差があります。私がいた職場では全員全く日本語を話すつもりもない(赴任期間が過ぎれば本国に戻るか第三国へまた転勤になる、と割り切っていたようです)ところと、授業料を出してまでして外交官に日本語の授業を仕事中に受けさせていたところがありました。あと奥さんが(この世界ではマダムと呼ばなければならないのですが)日本人の場合は外交官が日本語を話せたりします。それと電話応対で気付いたのですが、日本と密接な関係にある国々の外交官は日本語が非常に流暢です。これって恐ろしいですよ。だって職場では絶対に愚痴れませんので。私のいた日本語を全く勉強しない外交官の職場では日本人の先輩秘書と日本語で愚痴れたのでこれはよかったというかなんというか。お互いに母国語で愚痴りあっていたのかもしれません。日本語が流暢な外交官が多い大使館というのは、もちろん、情報収集のためだと思われます。彼らは職場は勿論、外でも日本語ができれば色々情報収集ができるはずです。

セキュリティー対策は国によってかなり差があります。イスラエル大使館ではどの窓も鉄格子になっていて・・・。空港のように入り口でパスポートを見せて、金属探知機の下をくぐらされ、鞄を開けられて荷物チェックもされました。やはりテロの多いお国柄が出てますね。またはそこまでいかなくても、玄関にモニターがあって、そこでアポなしの人には帰ってもらう、アポがある人は受付の人間の操作によって重い防弾二重扉を一枚ずつ通過して中に入る、というところもありました。私がいたセキュリティーのしっかりしていたほうでは、1階が日本人フロアー(大使秘書を除く)で2階が本国人フロアーになってました。理由は簡単です。万が一の場合、日本人より本国人の人命を優先させるからです。しかも2階はドアがあって暗証番号を入力しなければ入れません。もちろん、機密事項の管理も厳重です。機密事項のファイリング室は2階の一番奥の海軍上がりの本国人(外交官じゃない人も結構雇われています)の部屋になっていました。まあ、彼だったら命がけで情報を守るんでしょうね。私からはいつも机の上のチョコレートをこっそりつまみ食い(私の許可なしに無断で!)するお茶目な一面もありましたが。大使の部屋はこれは確認できませんでしたが噂では地下通路に繋がっていて、万が一の時にはそこから非難する、ということでした。

備品購入も本国の裕福さに比例してました。貧しい国のほうではかなりの文房具を持参してました。なかなか予算がなくてお金を出してくれないから。しかも信じられないくらい遅れていると思いましたが、PCはたった1台しかないんです!全員共有なので、自分が至急使いたくても、前の人が使っていると使えないので、「終わったら内線をかけて」とお願いする状態でした。それが予算のある国では最新の薄型デスクトップに職員全員に仕事専用の携帯電話を貸与、という待遇でした。しかもティッシュペーパーもスーパーなどで5つぐらいセットで売っているような普通のティッシュではなく、カシミアティッシュでしたよ!お茶もインスタントコーヒーにしたって、一番安いものではなく、高級焙煎、とかのラベルの付いたものだったし。緑茶も特売品ではなく、伊藤園のティーバックでした。

余談ですが、帝国ホテルはやはり日本一のホテルだと認めざるを得ませんでした。それは貧しいほうの国でも、必ず毎年、建国記念日には立派なお花を贈ってきたからです。2箇所の大使館とも受付をしていたので、ホテルの営業の人たちとはかなり会ったけど、そこまでするのは帝国ホテルだけでした。さすがです。それに私にもちょこちょことプレゼントをくれたし。

私は自分が貧しいほうの国の大使館でよく働けたというかよく採用された、と未だに不思議に思います。今よりはるかに英語力もなかったのに。でもそれには理由があって、第一候補者とは給料面で折り合いがつかなくて、第二候補の私が繰り上げ当選したということだと後から聞きました。だからすごい安月給でしたけど。でもそちらのほうが仕事内容的には楽だったし、居心地がよかったです。だから給料が安くてもちょっとお気楽なほうを選ぶか、お給料が良いところは倍率が高い、ということを選ぶか、です。

私が後悔しているのはその貧しいほうの国の仕事を辞めなければよかった、ということです。お気楽と書いたけど、しんどかったのも事実です。だってセキュリティー対策が全く何もなかったから受付も兼務していたので、私は「来るもの拒まず」状態で嫌な訳のわからない人の対応もさせられたからです。また外線電話は私が全て応対していたので、これもまたむかつく電話が多く、かなりストレスは溜まりました。でも後悔している理由は毎日英語の環境だったから。自分は英語が好きだから、あそこで毎日英語の勉強を続けていればよかった、と思うんです。英語のレベル的にもあれぐらいがちょうどよかったし。

そうそう「大使館秘書の会」というのがあって、私は一度だけ参加しました。そこで他の大使館秘書の人たちと話す機会があったのですが、大使館によってはその国の言語を話せないとダメ、というところもありました。そーゆー大使館の秘書の人たちは大抵、その国に住んでいた経験がある人たちでした。他の大使館の秘書の人からの電話で「私、英語は苦手なんです」と言われたことがあって、その時は「どうして大使館で働いているのに英語がダメなの?」と思ったので、電話が終わった後に先輩に聞きました。そしたら「そーゆー人たちは英語じゃない他の言語で仕事をしているのよ」と言われました。例えばフランス語とかで仕事をしている、という感じです。

随分と長くなりましたが、またいつか大使館で「普通の秘書」の仕事ができたらいいなー、と思います。