おときき通信

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クラウドワークスなどで、ウェブライターとして活動している大学生。 ロック、メタル、ジャズ、フュージョン、ブラックミュージックなどなど… 自分の好きな音楽を発信します。 ギターもやってます。愛機はフェンダーアメリカンスタンダードテレキャスターです。 お気軽にコメントください。 よろしくお願いします!


横溝正史の本を読んでいるからか、今は人間椅子の気分。

今回は彼らの3枚目のアルバム、『黄金の夜明け』について。

駄作の無い人間椅子の作品の中でも、以前書いた『人間失格』、そして2枚目の『桜の森の満開の下』と合わせて、初期の3部作は特に完成度の高さが際立っていると思います。

前作までと比べると長く複雑な展開を持つ曲が多く、プログレッシブロックからの影響が色濃く表れている作品です。

イギリスの秘密結社、「黄金の夜明け団」から名前を取った本作。
アルバム全編に漂う胡散臭さも、何か秘密結社めいているように感じないこともありません。




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ジャケットを手掛けたのは、漫画家の大越孝太郎
怪人二十面相』などのジャケットも彼の筆によるものです。

01. 黄金の夜明け
02. 独裁者最後の夢
03. 平成朝ぼらけ
04. わ、ガンでねべか
05. 水没都市
06. 幸福のねじ
07. マンドラゴラの花
08. 素晴らしき日曜日
09. 審判の日
10. 無言電話
11. 狂気山脈

☆参加メンバー

・ 和島慎治 - ギター、ヴォーカル
・ 鈴木研一 - ベース、ヴォーカル
・ 上館徳芳 - ドラムス 

本作で上館氏は脱退。
現在は何をしていらっしゃるんでしょうか?




日本的な音階のリフから厳かに幕を開ける黄金の夜明け』。
ミドルテンポのヘヴィな曲に乗って、怪しい宗教団体のような歌・語りが入ります。
歎異抄から、夏目漱石の『草枕』の冒頭の文句まで引用していますが、何を言ってるのか全く分からないあたり、それがより一層怪しさを放ってますね(笑)
しかし、曲自体はタイトルに相応しいスケールの大きさを持っており、イエスの『Close to the Edge』と同じような、静と動入り混じる見事な構成を持っています。
そして、この曲でのワジーのギターソロが本当に凄い!
アウトロソロでのワウのタイミングなどセンスが爆発しており、個人的には『晒し首』や『もっと光を!』に並ぶ、最も好きなソロの一つです。




まんまブラック・サバスな疾走ナンバー独裁者最後の夢』は、本作の中では数少ないストレートな展開の曲です。
正統派ブリティッシュメタルらしいリフやバッキング、耳に刺さるようなメタリックなトーンのギターには、アイアン・メイデンっぽさもあります。
スズケンの邪悪なベース、上館さんのタイトなドラムなどの、各プレイヤーの存在感を際立たせる音の隙間に3ピースらしさを感じますね


スズケン作曲の平成朝ぼらけ』は、和歌を引用した歌詞が特徴的
かなりヘヴィさを強調した曲ですが、美しい歌詞を殺していないのが何とも不思議です。
ワジーのプレーが非常に多彩で、ソロにはブルースからの影響が見つけられます。
十八番の三味線のフレーズも登場し、彼だと一発で分かる強烈な個性を改めてアピール。
①と同じく、日本人だからこそ作れるメタルと言えるでしょうね。

津軽弁のコミカルな歌詞にクスッとできるわ、ガンでねべか』、後期キング・クリムゾンの『One More Red Nightmare』のリフを1.5倍速にしたようなフレーズが印象的です。
自分がガンなのではないかと疑う男が滑稽に描かれていますが
、曲の終盤の“リズム感悪いベーシストなんて”というフレーズには、スズケンのどこか切実な思いも現れてますね(笑)
また、この曲では上館さんのドラミングも目立っています。

彼らの数ある大作曲の中でも、水没都市』の完成度は群を抜いています。
海の底を思わせるヘヴィで恐ろしいフレーズだけでなく、古の魂に祈りを捧げるような美しいメロディーもあるところに、ワジーの卓越した作曲センスを感じますね。
ドゥーミーなサウンドで、これだけの儚さや虚しさを表現できる構築力には脱帽
滅び去った都の情景を歌い上げる2人のヴォーカルは、まるで詩人のような風格に満ちています。
この曲を聴いたら、多くの人が息苦しさを覚えるんじゃないでしょうか





シングルカットされた幸福のねじ』は、人間椅子の代表曲の一つですね~。
不協和音を織り交ぜたパワフルなリフでゴリゴリと押しながらスピーディーに走り抜ける序盤は、まさにヘドバン必至。
このまま終わるかと思えば、突然ネジが逆回転したかのようにテンポが加速。
一層スラッシーになったかと思うと、今度はテンポを大きく落としネジ屋のオヤジが登場です。
スズケン演じる胡散臭すぎるオヤジがネチネチとグロテスクな台詞を吐き、再び曲調が戻ってフィニッシュ。
コロコロと表情を変えまくる、ジェットコースターの如き展開には一切退屈しません。
バンドのメタル要素とプログレ要素が高次元で融合した曲ですね。
絶対にシングルカットされても売れないとも思いますが…(笑)




マンドラゴラの花』も、サバスの『Master of Reality』あたりに収録されていそうなミドルテンポのサイケハードロック。
後の名曲『踊る一寸法師』を思わせる構成ですが、長さの割には①のような爆発力が無く、物足りなさが残るかもしれません。
おどろおどろしい雰囲気、退廃的でダークな歌詞を楽しむ曲と言えるでしょうか

同じタイトルの黒澤明の映画を思い出す素晴らしき日曜日』は、クラシックギターが奏でる寂し気なメロディーが耳に残るインストナンバー。
意外にも作曲者はスズケンで、彼の意外なセンスを垣間見た気がします
旋律は西洋風なのに、どうしてここまで和を感じるんでしょうね。


そんなスズケンのベースから始まる審判の日』、これが一番プログレっぽい展開を見せます
曲の多くの部分に印象的なリフがあり、ついメロディーよりもそちらに耳が行ってしまう…
スライドギターなど、ワジーのギターはここでも様々なテクニックを披露していますが、これもスズケンと上館さんの堅実なリズム隊があってこそでしょう。
しかし、この曲のワジーは本当にトニー・アイオミからの影響丸出しですね~。

無言電話』はタイトル通り、無言電話に悩まされる男を歌った歌詞と神経質な曲調が特徴的。
電話の呼び出し音のように執拗に繰り返されるリフは、ハードロックとしてもイカしたフレーズであり、曲のテーマにも非常に忠実です。
中盤からの陰鬱なアルペジオを聴くと、暗い部屋の中で1人虚ろな顔で佇んでいる男が浮かびます。
病んだ現代の闇を描いた、彼らの中では異色のテーマかもしれません
もしもぉ~し!!

ラヴクラフトの名作と同名の狂気山脈』も、本作の大作路線を象徴する力作
彼らにはラヴクラフトの作品を元にした曲が幾つかあり、これもそのうちの一つです。
南極を舞台にしていた小説とは違い、この曲はチベットや中国あたりが舞台になっているんですね。
曲の展開は⑦あたりと同じような感じですが、この曲の纏わりつくような不気味さは素晴らしい!
底の無い闇の世界を克明に表現し、尚且つ小説とは違ったエグさを盛り込んだ椅子流ホラーに仕上がっています。




♪まとめ

11曲中5曲が7分超えという大ヴォリューム!
初期の彼らのイマジネーションがピークに達した作品であり、の曲も個性がありすぎて学級崩壊一歩手前です
次作『羅生門』からキャッチーな曲(あくまで椅子の中では)も増え始め、特に最近は聴きやすい作品が多くなりましたが、本作は完全にやりたい放題なため、ファンの間でも好き嫌いが分かれるかもしれません。
しかし、彼らを語る上では外せないほど優れた曲ばかりですので、曲の長さはあまり気にせずに聴いてみてください。
メタラーなら、きっと黄金の夜明けを感じられるでしょう。


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現在はシティポップブーム。

フリッパーズ・ギターなどと同じく、キリンジの評価もグングンと高まってきてますね。

そんなキリンジの作品の中でも、今回ご紹介するセカンドアルバム『47'45"』は影が薄め。

衝撃的なデビューを飾った『ペイパードライヴァーズミュージック』と、日本ポップスの大名盤とされる『3』に挟まれている本作。

制作期間は半年ほどだったようですね。

青さの残るファーストを更に煮詰めたような、且つ『3』ほど洗練されていないということから、立ち位置的に微妙なのかもしれませんが、個人的には『3』は冨田ラボの色が強く、本作の方がより彼らの個性が出ているなと感じるのです

アコースティックな曲が多い中で、歌詞の黒さ・難解さはキリンジの作品の中でも屈指。

今一度、この名作を振り返ってみてはいかがでしょうか。




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01. Drive Me Crazy
02. 耳をうずめて
03. 唐変木のためのガイダンス
04. 恋の祭典
05. BBQパーティー
06. 牡羊座ラプソディ
07. くよくよするなよ
08. 銀砂子のピンボール
09. ダンボールの宮殿
10. V.I.P
11. 口実

☆参加メンバー

・ ヴォーカル - 堀込泰行、堀込高樹
・ ギター - 堀込高樹
・ ベース - 渡辺等、岡田次郎
・ ピアノ、オルガン - 大山泰輝、KYON
・ ドラム - 鈴木達也
・ パーカッション - 山口とも
・ マリンバ 、ビブラフォン - 大石真理恵
・ ヴァイオリン - 武藤裕生
・ バンジョー - 桜井芳樹
・ フルートなど菅楽器 - 山本拓夫
・ ホーン - 藤田乙比古、高野哲夫
・ オーボエ - 庄司知史
・ クラリネット - 山根公男、佐野路世
・ ベースクラリネット - 小林聡
・ フリューゲルホーン、トランペット - 小林太
・ 色々やってます - 冨田恵一



可愛らしいマリンバのイントロから始まる、Drive Me Crazy』。
最初は恋人とオシャレにドライブデート…といった感じなのですが、突然飛び出してきた歩行者を跳ねたことで愛車は一気に地獄の火の車へ
完全にひき逃げを題材にしていながら、曲はほのぼのした柔らかなポップス…、アンバランスさが狂気を演出しています
ヤスのヴォーカルに何の感情も入っていなさそうなのが恐ろしい~。

僕がキリンジのバラードで一番好きなのが耳をうずめて』なんですが、これもマイナー?
ファーストとサードアルバムの中間を行くようなフォーキーで温かみのある演奏と、どこか壊れそうに繊細な美メロが素晴らしい。
曲調とは異なり、歌詞は解釈が分かれそうな難解な部分が多いものの、アニキの優しさや迷いに満ちているように感じるんですね。

凄い名曲なんだから、もっとみんなに聴いてほしいなあ

唐変木のためのガイダンス』は、何ともあっけらかんとしたカントリー風ナンバー。
バンジョーにフィドルなどの能天気な音と、ヤスの意味不明なフワフワした歌詞のヴォーカルが乗っかることで、深そうで深くなさそうな、要するに良く分からないキリンジワールドの出来上がり
ヤスの滑らかな高音が心地よい、何気にお気に入りの曲です。

夏の恋の浮つきを皮肉ったような意味深な歌詞が毒々しい恋の祭典』、これは前作にも収録されていそうな感じがしますね。
ホーンやフルートなどを入れながら決して華やかにはしすぎない、どこか70年代風な曲といった印象。
明るさと冷めた感覚を持ち合わせた、彼ららしいバランスの取り方ですね。


曲も歌詞もダラダラしたBBQパーティー』も、本作だからこその一曲と言えるでしょうか。
パーティーらしい弾けた雰囲気は一切なく、肉を食い終わった後に誰かがやっているフリスビーを眺めているような、ボンヤリした曲調
オルガンの平和な響きが眠気を誘います。
本作のヤス作曲の作品はゆったりしたものばかりですね~。


牡羊座ラプソディ』は、タイトルからすると双子座グラフィティ』の兄弟のような一曲。
しかし実際は、ポップ&キャッチーな『双子座~』とは似ても似つかぬ超捻くれナンバーです。
ツインドラムの忙しないビートだけでなく、全体的にコミカルさが際立っています。
ファンキーなアニキのギターは、『イカロスの末裔』と同じくシャープなカッティングがカッコいい!
歌詞の難解さ、理不尽さは本作でもトップクラスですが…




ヤスの素朴なヴォーカルとアコギが中心のくよくよするなよ』は、まあ地味ですね。
牧歌的で、劇的な展開も無くサラリと流しています。
アニキよりもラフさを重視したような曲がヤスには多いですが、彼のソロプロジェクトである馬の骨なんかでは、それが顕著ですね。

ウキウキと通りを駆け抜けるような銀砂子のピンボール』を聴いたら、恐らく多くの人がマライア・キャリーの『All I Want for Christmas Is You』を連想するんじゃないでしょうか?
特に、グロッケンやハンドクラップなんかがクリスマスっぽさを演出しています。
エイリアンズ』のカップリングにはこの曲のクリスマス風ミックスが収録されており、バンド側も同じことを考えていたんだなと分かりますよ




ダンボールの宮殿』は、明らかにスティーリー・ダンの『The Royal Scam』を意識したようなシリアスな曲
ホームレスに落ちぶれた主人公に、澱んだ皮肉が並んだ歌詞にはアニキの非凡なセンスが伺えます。
喧騒の裏で腐っていくのは落伍者だけではなく、仕事に耐えきれず自ら命を絶つ者もいる。
ダンボールを宮殿として暮らすか、道のシミになるか、どちらが良いのか?
この曲を⑧の次に置くなんて、何と意地が悪いのでしょう(笑)


前作の『P.D.M』のように、V.I.P』というインストもあります。
進行はブルース的で、オーボエやクラリネットなど管楽器が多く登場するジャジーなアレンジです。
ちなみに、本作のジャケットのシチュエーションは、公園かどこかでランニングしているVIP(=アニキ)にヤスが突撃リポートしている、といったものだとか。


⑩と同じ楽器隊を率いながら、口実』ではリズムマシンを使用しているのがミソ。
ビッグバンドっぽい雰囲気とダレた歌詞の相性は意外に良く、ふんわりと静かにアルバムを締めくくります
曲が終わって1分半ほど待っていると、③のリプライズが…
何だか眠りにつくような終わり方です。



♪まとめ

クセの強い曲が多いながらも、それと比例してバラエティーも豊かな内容になっています。
確かに他の作品よりも分かり易さはありませんが、アレンジの味わいは『3』よりも深いんじゃないかなーと。
冨田恵一のプロデュースとキリンジの魅力が、一番自然に結びついているような気がしました。
春に聴くとピッタリですので、これからの生活に是非どうでしょうか。


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以前、荒井由実の『MISSLIM』についての記事を書きましたが、今回もティン・パン・アレーが参加したことで知られている隠れた名作をご紹介します。

いしだあゆみという名前を聞いた時に、大多数の方は『ブルー・ライト・ヨコハマ』を思い浮べるのではないでしょうか?

女優としての活動の方がメインかもしれませんが、オリジナルアルバムも何枚か発表しているんですね。

本作『アワー・コネクション』は1977年発表の作品で、ティン・パン・アレーに加えて山下達郎なども参加しているなど、ニューミュージックファンにとっては正にマストアイテム

同じようにティン・パン・アレーの参加作品では、荒井由実の初期作品は勿論、雪村いづみの『スーパー・ジェネレイション』などがありますね。

その中でも、本作はクロスオーバーの色がかなり強めではないでしょうか?

何はともあれ、これから更に再評価されるアルバムかもしれません。




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渋いジャケットを見ると、楳図かずおの『おろち』が浮かんできます。

01. 私自身
02. ひとり旅
03. 六本木ララバイ
04. ダンシング
05. バレンタイン・デー
06. 黄昏どき
07. 真夜中のアマン
08. 哀愁の部屋
09. ウィンター・コンサート
10. そしてベルが鳴る
11. ムーン・ライト
12. バイ・バイ・ジェット

☆参加メンバー

・ 細野晴臣:ベース、アコースティックギター
・ 鈴木茂:エレキギター
・ 林立夫:ドラム
・ 浜口茂外也:パーカッション
吉川忠英:アコースティックギター
・ 矢野顕子、岡田徹、佐藤博、羽田健太郎:キーボード
・ ジェイク・H・コンセプション:ホーン
・ 山下達郎、吉田美奈子:コーラス


ティン・パン・アレーと言っておきながら、松任谷正隆は不参加。
アジアを代表するサックス奏者、ジェイク・H・コンセプションが参加しているのもポイントですね。

作曲は細野晴臣荻田光雄という、これまた豪華な組み合わせ。
作詞は『ブルー・ライト・ヨコハマ』と同じ橋本淳が担当し、彼はプロデュースも兼任しています。




鈴木茂のセクシーなギターがジャジーに東京を彩る私自身』、ティン・パン・アレーのファンには堪らないクロスオーバーです。
勿論、細野晴臣大先生の動き回るベースラインは日本人離れしたグルーヴの嵐。
語りから入るいしだあゆみのヴォーカルは非常にサラッとしており、何の変哲もない「私自身」を生々しく描いています
このさり気ない歌い方に色気を感じますね。




ひとり旅』も、バックの弾む演奏とは対照的な淡々としたヴォーカルが印象的。
ストリングスやホーンを配したアレンジは、完全にクロスオーバーです。
サウンドは完全に洋楽寄りでありながらここまで昭和の空気感が漂っているのも、いしだあゆみの歌の存在感が非常に大きいからではないでしょうか。
瑞々しさもありながら色褪せた雰囲気もある、独特な感覚の曲です

六本木ララバイ』のボサノヴァ風のリズムを包む優雅なアレンジ、何ともニック・デカロっぽいですねぇ。
鈴木茂のオクターブフレーズを多用した、雑踏に消えていってしまいそうな寂しいフレーズが耳に残ります。
昭和歌謡らしさが濃いこの曲、ソフトロックと言うには哀愁が強すぎでしょうか。

細野さん作曲の、ダンシング』はベースラインが目立ってますね。
ミドルテンポのどこかボンヤリした曲調は、あまりダンシングという感じはしませんが(笑)
ここではコーラス2人組の存在感も強く、どちらかというとバックが主役という印象を受けます。
昔は、都会にもこのような呑気さ、野暮ったさがあったのでしょうか。

アレンジこそ凝っているものの、バレンタイン・デー』の寂寥感が押し寄せてくる雰囲気は、フォークギター1本でも成立するであろうと思えるほど完成されています。
消え入りそうに歌い上げる優しいヴォーカル…、いしだあゆみってこのような陰のある歌詞を表現するのが抜群に上手ですね。

黄昏どき』も、これまでと同じくモノクロームなメロディーですが、間奏ではティン・パン・アレーの演奏力を存分に発揮しています
林立夫の手数の多いドラムと細野さんのベースが曲をリードしていく展開は、荒井由実の『生まれた街で』でも見られますよね。
鈴木茂も弾き方に変化を入れつつ、多彩なコードバッキングで曲に貢献しています。

かなり渋めの曲が続きましたが、真夜中のアマン』はいしだあゆみの可愛い一面が出ているんじゃないでしょうか。

ピアノが中心となったアップテンポな曲で、丸みのあるソフトなポップスとして聴けます。
失恋した女性が主人公ですが、歌われているのは悲壮感というよりも疲労感。
彼女の生活が目に浮かぶような描写が巧みです。

スパニッシュなアコースティックギターをはじめ、異国情緒あふれる哀愁の部屋』も趣深い楽曲。
アンニュイなヴォーカルも相まって、どこか遠方の国から吹き込んできたような、日本のポップスとは思えないような雰囲気ですね。
ただ、久保田早紀の『夢がたり』を聴いていた時も思いましたが、日本人のジメッとした情念を描くにはこのような曲調は適しているんじゃないでしょうか。

ウィンター・コンサート』、実にティン・パン・アレーらしいファンキーな演奏が素晴らしい!
短い曲ですが、彼らのグルーヴがやはり半端じゃないことが良く分かります。
特に細野さんの躍動するベース、流石の天才ベーシストぶりです。
時の流れの無情感を歌った詞も、短編小説のように味わい深い内容。
ぶたれた事もあったりしたが”という部分には時代を感じますが…

ほのぼのしたイントロから始まるそしてベルが鳴る』は、シンプル且つ奥行きのあるサウンドメイクが特徴的。
曲調からすると地味に感じるかもしれませんが、よく聴くと美しいメロディなんですね。
いしだあゆみのまろやかな歌い方も耳に優しく、いつまでも聴いていたくなる中毒性があります。

Hosono House』に入っていそうな、少しヨタッとしたリズムが親しみやすさを感じさせるムーン・ライト』も、ロマンティックなメロディーが素敵な佳曲。
鈴木茂のギターはこういう曲には相性がピッタリで、サラリとしながらもハッキリとした芯のあるトーンがメローなアレンジに光ります。

アルバムのラストを切なく飾るのが、コーラス組が再び登場するバイ・バイ・ジェット』。
ドラマチックなストリングスアレンジ、ドラムとベースのキレのあるコンビネーションが歌詞のストーリーを演出します。
囁くようなヴォーカルは歌詞とは対照的にどこか弾んでおり、楽しそうに歌っている姿が伝わってきますね。
本作では割と取っつきやすい方かもしれません





♪まとめ

ティン・パン・アレーのプレーを目当てに聴く方が殆どだとは思いますが、いしだあゆみの自由なヴォーカルも大きな聴きどころです。
現在聴いてみると、流石に歌詞や音質は時代を感じます。
しかし、歌謡曲とポップスが複雑に結びついたメロディー、アレンジはやはり突出してクオリティーが高いですね
いくらバックが優秀でも、フロントが実力不足であれば本作のようなアルバムは出来ないはず。
そう考えると、ヴォーカリスト、いしだあゆみの素晴らしさを知ることができる作品と言った方がいいのかもしれませんね。


アワー・コネクション
いしだあゆみ
日本コロムビア
2013-07-24


いしだあゆみ・しんぐるこれくしょん
いしだあゆみ
コロムビアミュージックエンタテインメント
2004-04-21


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