February 07, 2011

「水のほとりに」落合訳

a合わせでたくさん楽譜を頂いた。

フォーレ歌曲のなんて美しいこと。





    《水のほとりに》

             シュリ・プリュドム
             落合訳

過ぎゆく水の辺にふたり 見るは過ぎゆく
流るる雲の虚空にふたり 見るは流るる

遥か藁葺屋根けぶり 見るは煙りて
囲む花々香(か)を放ち 匂やかに満つ 
水の囁く柳葉のもと 囁きを聞く

此の夢の続かん限り 時をば忘る
慈しみ深き思いに 情交わし
世にいさかいの 無き如く
倦(あぐ)ねるに向かいてふたり あぐむことなし

万物の過ぎゆく前にて 愛過ぎ去らず
万物の過ぎゆく前にて 愛過ぎ去らず
 

     《Au bord de l’eau》

               Sully Prudhomme

S'asseoir tous deux au bord du flot qui passe,
Le voir passer ;

Tous deux,s'il glisse un nuage en l'espace ,
Le voir glisser ;

A l'horizon,s'il fume un toit de chaume,
Le voir fumer ;

Aux alentours,si quelque fleur embaume,
S'en embaumer ;

■Si quelque fruit,où les abeilles goûtent,
Tente,y goûter ;

■Si quelque oiseau,dans les bois qui l'écoutent,
Chante,écouter...

Entendre au pied du saule où l'eau murmure
L'eau murmurer ;

Ne pas sentir,tant que ce rêve dure,
Le temps durer ;

Mais n'apportant de passion profonde
Qu'à s'adorer ;

Sans nul souci des querelles du monde,
Les ignorer ;

Et seuls,tout deux devant tout ce qui lasse,
Sans se lasser

Sentir l'amour,devant tout ce qui passe,
Ne point passer!

Sentir l'amour,devant tout ce qui passe,
Ne point passer!

     ■マークはフォーレが作曲時に外した部分です。
     訳はフォーレの曲のままに致しました。

**

相も変わらずよぼよぼ訳。曲に添うのがコンセプトの小さい試み。

  *"ロマンス" 落合訳

書きながらも頭の中をメロディーが流れてる。時を刻むような和音がしなやかなアルペジオへ姿を変えて ゆるやかに昇って降りるメロディーは波のよう・・・

初心者は悩みがいっぱい。訳詩って難しいのネ。例えば最終行 "前"。日本語は時間軸も空間軸も同じ単語ですものね。紛らわしく避けたいけれど重要なdevant はあくまでも "前" って言いたいナ。

流れる水 うつろう雲、その前に居てこそ変わらないものを謳うのだもの・・・。呟きながらせっせと訳す月曜の朝・・・ 変テコなくらい元気ネ。

**

川端康成様ご友人、小松清(1900年~1962年)様訳があるの。言うまでもなく私のよぼよぼ訳なんて足許にも及ばない素敵な訳詩なのヨ。それでもあえて採用しないのは偏に楽曲を語る上でのこと・・・

小松清様はフォーレに関わりなくプリュドムの詩として訳しなさったから しっかりした日本語の語感。加えてどこか無常観が漂うふうも。東洋的な無常観はフォーレの宗教観が齎すものとは異なる空気。

そうして男性的な言葉遣いに説得力がある。今のコンセプトになるフォーレ歌曲に対照すれば、声とピアノが交互に紡ぐ旋律のなめらかさに対して言葉の説得力は重くなってしまう。

たとえばラスト部分cmollのesからフラットが取れ明るみある優しいピアニシモのdurにチェインジする様子は、"過ぎぬを思う" ってnやm発音の籠もる音じゃないのが良いナァって。

楽曲中心のお話でなければ取上げたい魅力ある訳詩。
下に記しておきましょうネ。

    《水の辺にて》

             小松清様訳

過ぎ行く水のほとりにならび
過ぎるを眺め、
虚空を雲の滑りてゆけば
滑るを眺め、
地平の藁屋に煙が立てば
煙るを眺め、
まわりに花の匂えるあれば
匂いにひたり、
水のささやく柳の下に
ささやくを聞き、
この夢にしてつづくかぎりは
時をば忘れ、
ただひたすらに深き思いに
愛してやまず、
世のいさかいに心をかさず
そをば忘れて、
倦まするものの前にたたずみ
心は倦まず、
過ぎゆくものの前にて愛の
過ぎぬを思う。
過ぎゆくものの前にて愛の
過ぎぬを思う。

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