October 22, 2013

ランボーと抑圧

21oct13b














赤い表紙に金文字の装丁が可愛くて大好き。
新潮社さんの世界詩人全集9巻ランボー詩集です。

キルケゴール、ショウペンハウエルと続いたから
次は詩集を繰りたくなった。

栗津則雄様の解説も大変興味深かった。

お初に触れる訳者様だと思うけれど、ランボー特有の生命に対する意識への考察が簡潔にまた深い愛情を持って顕されててとっても素敵。

ランボーへの締めつけ厳しい母親の影響、其して母親ヴィタリー・キュイフ自身もまた夫フレデリック・ランボー大尉の軍人暮らしの放浪癖のために一層律格な暮らしの規定に逃げ込んでいった経緯、其れが後世に残る詩に大きく現れる反抗心として少年アルチュール・ランボーが如何に自らの世界を広げることに繋がったかを男性的な文で描かれるのだけど、流石に全集詩を訳されるお方は絵画調に決められていて。

21oct13a














1870年の2通のランボーの手紙を栗津様が引いてらっしゃるから訳者様の文と共に引用します。

《 "もうシャルルヴィルにいらっしゃらないなんて、本当におしあわせです。ぼくの生まれたこの町ときたら、ちっぽけな田舎町のなかでもとりわけ馬鹿々々しい代物です。・・・知らない国にでもいるようです。身体具合は悪いし、腹が立つやら、馬鹿々々しいやら、むしゃくしゃするやら。・・・自分の国にいながら流罪にあっているようなものです。" (1870年8月25日)

"ぼくは死にそうです。凡俗と悪意と灰色の生活のなかで、ばらばらになってしまいそうです。" (同年11月2日)

などという彼の手紙の言葉は、爆発的な生命力を失ったこの死んだような田舎町と、そこに住む人々に対する、彼のおそろしく絶対的な嫌悪と侮蔑とを、なまなましくわれわれに語るのである。

 家庭や環境によってさまざまな抑圧を味わう少年など、これはべつだんめずらしいものではない。誰しも何らかの程度、この抑圧を味わい、何らかの行為によってそれからいくばくかの脱出を試みていると言ってよい。
だが、母親とシャルルヴィルによって二重に閉じこめられているランボーにとっては、この脱出は、空想や欲情や便所などへの逃避にとどまらぬもっと全体的なものである必要があった。

  (中略)

1868年、14歳のときに書いたラテン語詩に、彼は、"なんじ、やがて詩人とならん" というアポロンの予言を書きつけている。おのれの辿るべき道として、詩はすでに、彼の眼前にあった。》

**

抑圧は彼にとって起爆剤だった側面として
抑圧が充分に文芸へ意欲を掻き立てるものになりうること
また其れを用いる術を得る明哲さを称えたい気持ちの一方

無聊に倦んだ田舎町が抱える澱みもまた
多くの作家が描いてきた文学背景として
大きな興味をもったりもする。
観光客的な興味に過ぎないかもしれないけれど
抜け出したい対象としての倦怠の澱 (おり) と
目指す生命の象徴としての生(なま)の澱との間には
どんな隔たりがあるんだろうってふと考えた。


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*****

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