June 16, 2019

感動した本の言葉

15juin19e























パーセルを聴きながらバシュラールを読んでて
感動的な箇所がありました。

バシュラール のお書き物はどれもこれも麗しい中、特に心動かされた。それは彼にしては珍しいと言えそうな形で批判を込めた文章でした。


  《デボラ・アイシ夫人は、ともあれ明察に満ちてはいる研究のなかで、右の四行に下降と上昇という「観念」の間の対立を見ている。》


記載の四行とは
-------------------------------------------
やがて私は木々の香に刺激され、力が萎えて、倒れ伏す。
そして自分の顔で自分の夢の墓穴を掘り、
リラが萌えている熱い大地を噛みながら、

私の倦怠が立ち昇るようにと、淵に身を沈めながら、私は待つ....
-------------------------------------------
というマラルメの "陽春"。

15juin19a























この四行を目にした際に多く人々が持つイメージの過誤を次のように紐解くのです。

《彼女にとって問題なのは二つの対応する文構造であって、ひとつは「伏す掘り大地身を沈めながら、という語で表されているもの。もうひとつは、これほど充分に展開されてはいないが、それと対照をなす、萌えている立ち昇る、である」と言う。

(引用者註:鉤括弧の場所は原文のまま)

反対の観念の対応性を際立たせるために、アイシ夫人は、その点で常識的な偏見に従いながら、を機械的に上昇の数のうちに入れてしまっている。まるで地下の生の夢というもの、掘り下げる夢というものが存在しないかのように!》

15juin19c
























鼻血が出そうになるくらい共感し、興奮しました。

《彼女はこうして

-------------------------------------------
そして自分の顔で自分の夢の墓穴を掘り、
-------------------------------------------

という、マラルメの最も大地的で、最もボードレール的な詩句のひとつを読み損なってしまっているのである。》


嗚呼これこそ最も憎むべきもの!

読み損ないとは、読み取る力の不足ではなく観念の種類の貧しさだって教えられた。

15juin19b















バシュラール は続けます。

  《力動的なイマージュに無感覚なまま、彼女はその観念の対照のなかに、噛むというイマージュを取り込んでいない。

ところがこのイマージュが含む物質はただひとつ、事物のなかの大地的要素であり、このイマージュの基本的運動はただひとつ、下降である。

ものぐさに鵜呑みにすることしか知らない蝿取草ででもない限り、噛む存在はみずから進んで大地のほうへ、餌食のほうへと頭を下げるものなのだ。

マラルメが夢みるように「熱い大地を噛む」とは、噛むことの力動的存在論と、餌食の大地的存在論とを同時に発見することなのである。

             (渋沢孝輔様訳)

15juin19d






















この大きな錯誤が、多数の人が読める '文字' で起きる。
文字より少数しか触れない '音' の上ではどれ程歪められてるでしょう。

私たちがミケランジェロの色彩表現を近年の修復後はじめて識ったように、バイアスのかかった思い込みが無根拠に幻を作る。

バシュラール の切取りのエッセンスに感激しました。


■バシュラール 関連リンク

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