私が作った嘘の世界は居心地が良かった。
だが、所詮嘘は嘘だ。

ひょろながい社員のおかげで少しずつ自分に起きた出来事を客観視できるようになった私は、たかだか失恋で人生を棒に振ろうとしている自分の弱さに驚いた。

思えば私は失恋という失恋をしたことがなかった。
これは自慢でも何でもなく、ただ単に本気で人を好きになったことがあまりにも少なかったおかげだ。
本気になったとしても2、3ヶ月で飽きて連絡を取らなくなり、そのうち向こうから別れを切り出してくる。
もちろんそれでショックを受けるはずもなく、振られたという事実はあっても私の中で失恋という括りには入っていなかった。
振られた、つらい、死にたい、そんな経験は修二が初めてだったのだ。


周りから見れば、これはただの失恋だ。
しかし、免疫のない私からすれば人生を大きく変えてしまうほどショッキングな出来事だった。
彼氏に振られたショックで手首を切った友人に心底引いていたが、今となっては痛いほど理解できる。手首の一つも切りたくなるだろう。

しかし、このまま妄想の世界で生き続ければ、私は彼との思い出を永遠に美化し続けるに違いない。永遠に彼に縛られたまま人生を終えてしまうのだ。