2016/8/30

朝の5時に起床。
ぼんやりと霞がかった頭を無理矢理叩き起こし、手短に身支度を整えてホテルをチェックアウトする。そして鹿児島中央駅から特急に乗って霧島市の霧島神宮駅を目指す。

霧島市

◎鹿児島県・霧島市
人口:125,876人
面積:603.18平方km

鹿児島県本土の中央に位置し、県内県で2番目の人口規模を有する市である。交通の要所として古くから鹿児島県内有数の都市として発展し、また鹿児島空港の開港、九州自動車道の開通による地理的な条件を生かし、国分隼人テクノポリスの指定を受けて、ハイテク産業が発展した。一方で日本百名山の霧島山や、鹿児島神宮の初午祭、霧島温泉郷や日当山温泉、妙見温泉などの温泉で知られる観光地でもある。
(Wikipediaより抜粋)

― 今回目指す霧島神宮は、市の北東に位置する。この一帯は霧島山を中心とした霧島ジオパークに指定されており、その雄大な自然を目指して毎年多くの観光客が訪れる。また霧島神宮は南九州最大の神宮として知られ、こちらも多くの参拝客を集めている。
そして霧島市は、永水六女仙の長である神代小蒔(じんだいこまき)の出身地である。


特急に揺られること約1時間、午前7時に霧島神宮駅に到着。
霧島神宮駅

この日は台風の影響か、半袖では少し肌寒いくらいの陽気だった。8月としては異例の涼しさだ。ひんやりとした空気の冷たさに、私は軽装で来たことを少し後悔した。
ここからバスを二本乗り継いて、高千穂河原ビジターセンターへ到着。今日はここから高千穂峰(たかちほのみね)の登頂を目指す予定だ。
登山MAP
高千穂峰は宮崎県と鹿児島県の県境に位置する火山で、標高は1,574m。
ビジターセンターから山頂までは登りで1.5時間ほどで、登山としては比較的短時間で済む部類だ。
(しかし、今回はこの慢心が元で後々痛い目に逢うのだが・・・)

軽く準備体操を行い、いざ出発!
・・・と、その前にスマホでフェリーの運航情報をチェックする。その結果は・・・本日運行!!
今日も欠航だと旅の予定が崩壊していただけに、何とか計画通りに旅が続けられそうでほっと胸を撫で下ろす。

さて、気を引き締め直して登山開始だ。
まずは旧参道だった砂利道を登り、霧島神宮跡を参拝。

11巻表紙カット
ここは単行本11巻の表紙にもなった場所だ。

神宮跡
鳥居の先はかつて神宮の建物があった痕跡が僅かに残るのみ。手を合わせて一礼し、旅の無事を祈願する。

ここから自然遊歩道を経て、登山道入口へ。
登山道入口

石畳で整備された道をしばらく登っていくと、視界が開けて足元が砂地へと変わる。
高千穂01

ここからが高千穂峰登山の第一の難関だ。

ざれ場
砂と岩が混じった急斜面は非常に登りづらく(登山用語で言うところの『ざれ場』だ)、一歩進んでは半歩下がり・・・の繰り返し。慣れていないと、次の歩の進め先にも迷ってしまう。
それでも何とか這い上がるようにして登ること20分、ようやっとこの難所を乗り越える。


火口跡
急斜面を乗り越えた先に見えたのは、巨大な火口跡。通称・御鉢(おはち)と呼ばれている場所だ。
天気の良い日はここから霧島一帯の眺望が楽しめるのだが、生憎この日は視界が悪く、下界の風景は殆ど見えなかった。

そして、ここからが第二の難所。火口沿いをぐるっと巡る狭路、通称・馬の背だ。
馬の背
道幅は1.5m~2mほど。平地であれば苦も無く歩ける幅だが、両側から吹き付ける突風が厄介だ。特にこの日は風が強く、時折バランスを崩しそうになった。ひとたび足を踏み外せば滑落の危険もあるだけに、ここを通過するには細心の注意が必要だった。
身を屈めるようにしてゆっくりと靴底を摺るようにして慎重に歩みを進め、何とかここも突破。身体も心も冷え切る思いだった。

ここから登山路は一旦下り道になる。足元が不安定な砂地の道をゆっくりと歩を進めると、再び道は平坦となる。
そして、下った先に鎮座していたのは、霧島神宮の元宮だった。
霧島神宮元宮
一説によると、元々霧島神宮はこの位置に建てられていたのだが、火山の噴火による出火で炎上し、麓の古宮の場所へ移されたのだそうだ。しかし、その古宮も火山被害に遭い、現在の霧島神宮の位置へと再度移されたとの事だ。
咲-Saki-単行本11巻の表紙にも古宮が選ばれていることを鑑みると、「霧島神境への入口」とは古宮、或いは元宮の位置から辿り付ける場所なのではなかろうか??
あくまで私の仮説だが、神境とは過去の在りし日の霧島神宮の姿なのではないか・・・と考える。

古宮にも軽く一礼し、頭上に見える頂上を目指す。
時折濃い霧が視界を阻み、雨混じりの強い風が容赦なく私の身体を打ちつけた。延々と続く上り坂に何度も歩みが止まりそうになるが、それでも案内板に刻まれた頂上までの距離の数字を信じ、一歩一歩前へと足を踏み出していく。

頂上手前
― 目指す頂上はもうすぐだ


― そして時刻は11時45分、頂上に到着する。
頂上01
折からの強風は更に激しさを増し、風上を向くと呼吸が苦しくなる程だ。辺りもまるで雲の中に入ったかのような濃霧に包まれ、周囲の風景は全く見えない。そこに高千穂峰の山頂の証である天逆鉾(あまのさかほこ)が無ければここが頂上であるとは気付かなかっただろう。

天逆鉾といえば・・・
アニメの天逆鉾
アニメ1期の最終話で、神代小蒔が天逆鉾のようなものを卓に突き刺すシーンがあった。現時点では原作でも天逆鉾は登場していないが、今後彼女の能力の全容が判明していく過程で天逆鉾の描写が出てくるのだろうか?

天逆鉾
こちらが実物の天逆鉾。

但しこれはレプリカで、本物は火山の噴火で折れてしまったとの事。柄の部分は地中に、刃の部分は人手を転々と渡って現在は行方不明になっているらしい。
天逆鉾については、坂本竜馬が引き抜いたなど幾つか逸話があるのだが、いずれもその真偽は(そもそもこの高千穂峰に存在していたのかも含め)定かではない。・・・ひょっとしたら、霧島神境が存在する咲-Saki-世界では、完全な形での本物の天逆鉾がここに鎮座しているのかも知れない。

もう少し頂上に居たかったのだが、流石に身体が冷えてきた。
まだまだ先を急がなくてはならないし、天候もいつ雨が降り出すやも分からない不穏な状態。ゆっくりしている余裕は無かった。
私は後ろ髪を引かれる思いで頂上を後にする。


下り道は、登りの時にも増して厳しい状況になっていた。
馬の背では台風並みの暴風が左右から襲い掛かり、一時歩けなくなるくらいだった。姿勢を低くしてじっと耐え、何とか乗り切る事が出来たが寿命が縮まる思いだった。そして下りのざれ場は更に難所で、足場を踏み外し何度も転倒した。更に途中から雨が降り始め、視界は霧で10m先も見えないほど。肌を打ち付ける水滴が容赦なく体温を奪い去っていった。
朦朧とする意識の中、「いっそこのまま神境に迷い込めばいいのに・・・」とも思ったが、邪念の塊である私には到底叶わぬ夢。気が付けば霧は晴れ、舗装された登山道に辿りついていた。・・・神境に到達するにはまだまだ修行が足りないという事か。

ここから先は比較的歩きやすい下り坂・・・なのだが、疲労した身体には石畳の道がきつく感じる。スピードが出過ぎないように細心の注意を払いながら一歩一歩進んでいき、予定より30分ほどオーバーして麓のビジターセンターに帰還。

ビジターセンターより
まだ肌寒くはあるが日も照っており、先ほどの雨と霧は何だったのか・・・という思いが去来する。あれは神境が見せた幻だったのだろうか??

軽く一息ついた所で霧島市街行きのバスが到着。余韻に浸る間もなく霧島の市街へと引き返す。霧島神宮前で降りて軽く昼食をとってから神宮を参拝する。やはり九州一の神社というだけあって、境内には多くの観光客が居た。


霧島神宮
霧島神宮を参拝し、舞台探訪も少し。

第73局
第73局・扉絵

神宮から少し歩いて、霧島小学校の近くへ。
比較
全国編アニメはるるのカット
全国編アニメ・第2話のカット

そして霧島神宮駅行きのバスに乗って、霧島神宮駅へ帰還。そこから在来線に乗って鹿児島市外まで帰還。レトロチックな列車の内装が心地良い旅情を感じさせた。



●神境はいったい何処に

少し固めの椅子に腰掛け、私は神境の姫・神代小蒔のことについて考える。

  彼女はまたどこかで深い眠りに就いているのだろうか?
  ここではない、どこか別の世界に居るのだろうか?
  そこには他の六女仙も居るのだろうか?

・・・彼女たち(他の六女仙も含めて)について、私達が知っている事柄はごく僅かだ。
彼女たちが住まう神境は神宮とは別であること、そこは山奥の隠れ里のような場所であること、彼女たちはそこで日々修行に勤しんでいるということ・・・。深く知ろうとすればする程、彼女たちの本質は深い霧に包まれて見えなくなってしまう。そう、私が高千穂峰で見た深い霧のように、だ。
やはり古宮の場所が神境の入口だったのだろうか? それともさらに奥の宮の可能性もあるのか??
・・・今の私の想像力では納得の行く答えには辿りつかなかった。

時刻は夕刻、車窓を流れる黒い木々の影を目で追いながら、いつしかうとうとと眠りについていた。高千穂峰で体力を消耗したせいか、頭までどっぷりと温かい泥の中に浸かっているような気だるさが全身を支配していた。終点の鹿児島中央駅に到着しても、席を立つのにはそれなりに気力を振り絞る必要があった。

市内で軽く夕食を取り、徒歩で鹿児島埠頭へ到着したのが午後8時半。

としま01

― 夜はまだまだこれからだ

永水航路 4 へ続く・・・