ご挨拶

garland5-2.jpg

このブログはSF小説「浮き船ガーランド」連載サイトです。
書き手は小説初挑戦のセオと申します。
FC2ブログで2年間連載し、2014年5月にライブドアブログに引っ越してきました。
ご訪問くださった方々に深く感謝申し上げます。

現在、連載は書いてはストックが底をつき、書いてはストックがなくなって、まったくの随時連載中。
未熟者ではございますが、
みなさまを、いっとき、アナザーアメリカの世界へお誘いできれば、書き手冥利でございます。
また、2014年5月より「小説家になろう」サイトへ、加筆訂正した「浮き船ガーランド」の掲載を始めました。
今後ともよろしくお願いいたします。



カテゴリ:
「なるほど。」
トペンプーラは年の離れた友人の新たな一面を知った。
自分の弱点を知り、
その深みにはまらないよう用心している様子を可愛らしく思った。
「本当はワタクシに訊きたいことがあるでしょ。」
カレナードは大きく頷いたが、
すぐに否定した。
「だめですよ、トペンプーラさん。
僕を誘導して御自分のペースに乗せるつもりでしょう。
それより、今日は調停完了式に出たのですか。」
「ちらっと見物にネ。
あの式はほとんど総合施設部と兵站セクションの管轄ですから。
情報部は人物の確認をするくらいです。」
「そうですか。
僕はてっきりあなたも忙しくしているものだと。」
「いや、忙しいですヨ。
でも、この三日間は久しぶりに学生の頃に帰りましたし、
あなたの役にも立てて楽しかったですヨ。
心が洗われましたネ。」
「それは大げさじゃないですか。」
「ふふふ…。ワタクシにも弱点がありマス、カレナード。
このジルー・トペンプーラ、
四十一歳にして人生の謎が一つ解けました。」
「何です。」
「秘密デス。いずれ打ち明ける時があるかもしれません。」
「とても個人的なことでしょう。」
情報部副長はどこか寂しそうな笑みを浮かべた。
「…ビンゴ。」
カレナードが帰ったあとで、 トペンプーラは灯りを消して張出し部屋の窓辺に行った。
「参りましたネ。
ワタクシ、今まで家族が欲しいと思ったことがありませんでした。
なのに、なんということでしょう。
いまここに、妻に居て欲しくなりました…。」

 

カテゴリ:
ハーリはまるで憑き物が落ちたように、
取調べに応じていた。
施療用監房から情報部に送られてくる調書の内容は、
トペンプーラには頭が痛いものが多かったが、
ハーリの動機はまったく彼の個人的な事情と分かって
ホッとしていた。
「ハーリまでも玄街間諜でなくて安心しました…。
あれほどマルゴ・アングレーを慕い、
思い詰めるとは。
ほどほどに出来ない恋は深く傷つきやすいもの…。
艦長が看破したとおり、
紋章人はマリラさまに心を惹かれていますネ。
しかも自覚が出来ている。
女王への想いをエネルギーにして進級試験を突破して欲しいものデス。
あとは女王が隙を見せなければいいだけデス…。」
ダーンリー市の調停完了式の日、
ガーランドは洋上から陸地へと移動した。
ダーンリー調停準備会の面々と招待市民が
ゴンドラに乗って大宮殿に上がってきた。
訓練生は通常の講義をこなし、
カレナードは課外授業の三日目を終えた。
大量の病相比較写真のために少々げっそりはしたが、
トペンプーラが出した鉱泉水で
胃の腑は落ち着いた。
彼は試すように言った。
「ハーリ・ソルゼニンの事をワタクシに訊きませんネ。」
カレナードは年の離れた友人を
そっと見てから答えた。
「そのうちに正式な発表があるはずです。訓練生はそれを待っています。
だから僕もここで余計なことを訊きません。
「…少し変わりましたネ、
以前はマルゴの安否をしつこく訊いたのに。」
「動揺したくないのです…。
平気なふりをしていても、 それほど強くないですから。」

 

カテゴリ:
情報部副長も講義を脱線していた。
「あなたもそれを考えますか。
女王に昔を語られた人間は、二千五百年前に何があったのか、そして創生以前を想像するのです。
なんという好奇心。
紋章人、めったなことでは女王は昔を語らないのに、
あなたは聞いてしまった。
この好奇心をどう飼いならしますか。」
「それよりも、
僕は…女王がなぜ浮き船の船主になり、調停を司り、不死であることを選んだのか、気になります。」
「おやおや、それは厄介ですヨ。
彼女自身の過去は放っておくに越したことはないのです。」
「過去はそうかもしれませんが、
マリラさまは今もこれからも生き続けるのでしょう。」
トペンプーラは淡々と言った。
「我々に出来るのは、
ヴィザーツとしてまっとうすること。
それが彼女の私人の部分を犠牲にしていることに対して報いる方法と、
ワタクシは考えます。」
「私人のマリラさまは辛そうです。」
「カレナード、そこに土足で踏み込むような真似はかえって女王を苦しめますヨ。」
「踏み込むには智恵と心遣いが必要でしょう。」
「智恵と心遣い…、どうですかネ。
彼女は複雑で難しい、仕事以外のことは。
やめておきなさい。
女王を求めるのは死線に立ち続けるようなもの、あるいは鏡に映った花に触れようとするようなもの。
危険で虚しいデス。」
「鏡の中の幻影ではありませんよ、彼女は生身の人間です。」
「カレナード、あなたは紋章人として生かされている。
それ自体が奇跡なのヨ。
今の状況に満足すべきです。
さ、授業に戻りますヨ!」
二人は再び応用重複理論のフィールドに戻った。
トペンプーラはカレナードにハーリ・ソルゼニンと同じような火種を感じた。

カテゴリ:
カレナードはさらに訊いた。
「アナザーアメリカンが誕生呪を自分達で使えるように、
こっそり勉強していたらヴィザーツは逮捕しますか。」
「我々が出る幕ではありません。
各領国の警察に任せますヨ。
もっとも誕生呪だけなら
大したことにはなりません。
あなたがオルシニバレの屋敷で飛行艇を起動させたのも、
飛行艇にキーが挿してあって、
一メートル以内にいたからデス。
カレナード、よく起動コードが言えましたネ。
助産所で耳から覚えたにしては見事デス。」
「偶然です。
おもしろそうだから、偶然表音記号に直しておいただけで…。」
「慣習に反すると知っていたでしょ。」
紋章人は悪びれなかった。
「はい。」
「まったく。おもしろくて危険なのはあなたデス。
我々の側に飛び込んで来てくれて幸運でした。
あなたのようなアナザーアメリカンが他にも多数いるなら、
いっそヴィザーツの道を選んでくれる方がいい。」
「コードを間違って使わないためですか。」
「そう。使う人間の数が多ければ多いほど危険デス。
要するに数の問題。」
カレナードはオルシニバレのヴィザーツ屋敷で寝かされていた時にも同じ言葉を聞いていた。
ミシコの両親がささやいていたは、『数の問題』だった。
『数が多すぎる…』
ベスティアン・カレントはそう言っていた。
カレナードはふと話題を変えた。
「トペンプーラさん、マリラさまは創生以前の世の中をご存知なのですよね。
そこにサージ・ウォールは無く、
人々はもっと多くて自由に行き来をしてたのでしょう。」

このページのトップヘ

見出し画像
×