新年1発目は,質問への回答です。
Q:「さて、あと数か月で本番を迎えるわけですが、まとめノート(論証集)などを作成しておらず、今更焦っております。
 今までは、主に基本書を読むことを中心に勉強してきましたが、記憶定着にはコンパクトなノート類が必要に思えてきました。
 予備校の参考書の論証やまとめ本のようなものをいくつか見てみたのですが、満足いくものがなく、困っています。
 そこで、大変ぶしつけなお願いなのですが、もしよろしければ、作成された論証やノートがあれば、いただけないでしょうか。
難しいということであれば、おすすめの論証集やまとめ素材があれば、教えていただけませんか。」(未修3年生の方からの質問)


A: メールからの抜粋ですが,文面から焦りが感じられ,自分の受験時代を思い出しました(笑)。しかし,残念ながら,私は「論証集」なるものを基本的に使わなかったので,差し上げられるような物はありません。刑法や刑訴で規範をまとめたものをローの1年生の頃に一応作成しましたが,司法試験直前期に見直すことは一切ありませんでした。
 司法試験では,そもそも論証「集」が必要かどうか,かなり疑問です。さきほど昨年の問題も確認しましたが,公法系・民事系については,会社法の見せ金の論証以外は特に論証を吐き出す局面がない気がします。刑事系については,刑法で,不真正不作為犯や過失犯,因果関係については自説を簡潔に論証してあてはめることが求められますし,刑訴で,伝聞法則の趣旨などを書くことも求められますが,いずれも合格レベルの受験生なら,何もしなくてもスラスラ書ける基本的なレベルのものでしょう。わざわざ全範囲にわたる論証「集」を用意するまでもないと思います。

 私は,辰巳のスタンダード論文答練(会場)を2年間,伊藤塾のペースメーカー答練(在宅)を1年間取って,とにかく問題演習の中で必要最小限の規範・論証は頭に叩き込んでいました。そのようなやり方で,上記答練では常に上位10%以内に入っていたので,方法論としては間違っていなかったと思います。
 論文の実力は,とにかく書いた量に比例します。私自身,書けば書くほど実力がついていきましたし,基本書から学んだ知識も定着していきました。周囲を見ても,「まだインプットが終わっていないから」などと,いつまでもまとめノートや論証を作成することに時間をかけ,なかなか論文を書かないタイプの人は,あまり合格していません。
 また,論文の実力をつけるのは結構時間がかかるので,本試験の4〜5か月前に一定レベルにないと,逆転はかなり難しくなります。5月に受験を控えた1月くらいの段階になると,一緒に勉強している仲間内で「この人は受かるだろう,落ちるだろう」というのは予想できるようになり,その予想はほとんど当たります。
 
 ということで,この時期は新たに論証集を作成・記憶するなどということはせず,短答の勉強で知識の記憶・確認を続けつつ,論文を書くトレーニングを続けることが大事だと思います。
 理路整然とした一読了解の分かりやすい文章であること(形式面),答案からその法律,制度を深く理解していることが伝わってくること(内容面)という2点が備わっていれば,基本的知識だけで十分上位10%以内に入れるので,質問者の所属LSから推認するに,そんなに心配は要らないと思うのですがどうでしょうか。
 とにかく
・適切な見出しをつけ,
・(1)問題提起,(2)規範定立(趣旨・理由→結論→考慮要素),(3)あてはめ(事実摘示→評価),(4)結論という区切りごとにナンバリングをし,
・法的三段論法を徹頭徹尾貫き,
・論理飛躍がないことを心がけ,
・できる限り綺麗な字で,
・出題者が設定したストーリー(出題趣旨)を頭に浮かべつつ
・伝聞法則などの基本原則を「正確に深く理解しているな」という印象が伝わるように,法の原理原則,条文趣旨から丁寧に掘り起こし,
・事実を可能なかぎり拾って,それを自分の言葉で意味づけ(積極・消極,程度の大小),
・読み手の気持ちを考えながら,1つの作品を作り上げるような気持ちで答案を書く
ことを心がけることです。
 拙い日本語で,ナンバリングも適当で,見出しもなく,ゴチャゴチャした印象を与える答案,法的三段論法ができていない答案,基本原則についての理解が浅い答案,条文を摘示せず,いきなり暗記した抽象的議論を吐き出すタイプの答案は評価が低くなると思います。
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辰已法律研究所

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Q:「現在非法学部の1学年に在学しているのですが、弁護士になりたいと思うようになりました。予備校代を払うことができないので、既習は難しいと思い、国立大学の法科大学院の未修コース入学を狙うことにしたのですが、法科大学院入学まではどのように独学するのがよいでしょうか。」
 現在1年生ということであれば,他学部でも4年の夏までに十分既修レベルに到達することは可能だと思います。同じローを目指すのであれば,より目線を高くして,既修者コースを目指して勉強することをオススメします。
 私の同級生に,予備校を利用せず,大学1年(当然法律知識ゼロです)から司法試験の勉強をして,3年で旧司法試験に合格したヤツもいます。ヤツは,一般教養の授業をサボって法学部の専門科目の授業を聴講し,基本書を読み進め,早い段階から択一・論文の過去問を解き,百選判例をつぶすというオーソドックスな勉強法をしていました。
 基本書や予備校本を読んで,肢別本などで知識を定着させ,全体を見渡すくらい勉強が進んだら,えんしゅう本あたりで論文の書き方を覚え,スタンダードなどを使って旧司の論文過去問などを実際に書いてみる,という感じでいいのではないかと思います。

 他の方からも質問を頂いていますが,回答は次回以降ということにさせてください。
 
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早稲田経営出版編集部

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