今までにないストーリー構成で話題を呼んでいる「マスター オブ エピック〜The Animation Age〜」(テレビ東京系にて放送中)。この新感覚アニメバラエティで監督であるえんどうてつや氏とアフレコ演出を担当されている三ツ矢雄二氏は、この作品の中で数々の挑戦を試みているという。そのお二人に、お話を伺うことができた。そのインタビューを2回に分けてお送りする。

前編は、「マスター オブ エピック〜The Animation Age〜」の制作の原点を中心にお話を伺った。


Q:「マスター オブ エピック〜The Animation Age〜」は今までにないアニメ構成ですが、そのご依頼が来たときの感想をお願いします

マスター オブ エピックえんどう監督:最初、「Master of Epic」はインターネットでいろんな方が入って楽しむRPGゲームだということで、そのゲームをやってみたんです。よくゲームのアニメ化というのはあるのですが、特にRPG系の場合、長い話を作ってしまうとどうしても決め込んだひとつのメッセージになってしまうんですよね。
「Master of Epic」はいろんな方が参加して楽しんでいるゲームなので、人それぞれの話があるべきであろうと思って、オムニバス形式というか、アンソロジー形式でやりたいなと。類型的でないものを作りたかったので、こちらからこの形式を提案したという感じです。ゲームをやる時に選択できるキャラクターが4種族8人いて、それぞれに担当の声優さんをあてて話によって違う性格を演じ分けるというのも面白いと思って。ショートショートなので余計な説明の部分を全部端折っていますし、逆にそれを語り口に出来るかと思いまして。

三ツ矢さん:えんどう監督から録音の演出をという話をいただきましたが、僕はオンラインゲームをやっていませんし、はっきり言って台本に書かれていることはさっぱり分からず、やっている声優さんたちも分かっていないと思うのですが、何か面白いものを作れそうだなと思ったんです。アニメーションをテレビで放送する場合、不特定多数に流れるわけですから、ゲーマーじゃない人も見ると思うんですね。何か分からないけれども面白いなというものを目指しているという感じです。えんどう監督がたまたま僕が演出していた舞台をご覧になっていたようで、その舞台はコメディで田中真弓さんも出ていたんです。それで求められているテーストは面白いものを作って欲しいんだなと感じたんです。今回はキャスティングも贅沢なキャストが組めたので、とりあえずゲームを知らなくても「いけるぞ、これは!」というような感じで作っています。
今回のように一つにまとまったストーリーがなく、例えば一つのキャラクターがいろんな役を演じるという形式のアニメは、赤塚不二夫さんの漫画にチビ太がいろんな作品に出るとかというのはあっても、なかなかそういうのはないし、逆に一つのキャラクターが違う役を演じていくということは未だかつてなかったので、そういう意味では新しいものに参加できて面白いなと思いました。
今までにも4コマ漫画風のアニメというのはありましたけれども、今回のようにものすごく短いものもあれば中篇くらいのものがあったりとか、様式、形式がないというものはアニメ業界でも始めてだと思いますし、僕もオムニバスがすごく好きなので面白がってやっています。
で、録っているときはほとんど分けがわからないのですが、OAを見ても分けがわかりません(笑)。ただ、僕の周りの評価でも、分からないけれども面白いと。ゲームをやっている人に聞いたら、「何にも分かっていなくて作っているでしょう」と言われましたから、「その通りでございます」と言ったんだけれども、「でも見ているとクスクスという感じで見ることができるので面白い、何か気になる」と言っていました。何かそういう感想を持たれているようなので良かったかなと思っています。

 
Q:演出・演技指導で気をつけている点、ご苦労されている点はありますか?

えんどう監督:ストーリーというよりはネタに近いものがあって、ただ連続ネタになっているものもあるので、その中で役者さんがキャラを育てられると思うんです。ワラゲッチャーVは続きものですが、他の短編なんかはあちこちの話に分かれて出てくるわけです。役者さんによっては、このキャラはこういうように育ててみようというようなことができるんじゃないかなと思って、そういう意味で楽しんでもらえたり、挑戦してもらえそうな役者さんをと三ツ矢さんにお願いしたんです。

三ツ矢さん:どのキャラクターをやっても、ある意味、違う人物に見えてしまうと困るし、同じ人物に見えても困るという非常に危ういところで作られている作品なので、まず技があって個性がある人。何を演じてもああこの人と分かった上で、引き出しが多いというか、すごく技がある人をキャスティングしなくちゃということを心がけました。そういう意味では100%力のある声優さんたちがそろっているので、演出するときは別に苦労はしていないです。
声優さんたちというのは、何をしなければならないかということを分かればきちっとやってくれるんですね。ただ、アテレコ時に絵がないので、そこを上手く拾い出し、どういうものをやってもらいたいかをかなり明確なイメージを持ってスタジオ入りしています。普通の流れがあるストーリーだと、ちょっと分からなくても流れで理解できることがたくさんあるじゃないですか。でも、1分半か2分の中で何かを見せないといけない。流れがないと声優さんたちは何をやればいいのか分からないと思うんです。絵もないですし。ですから、そこを明確に声優さんに伝える。ここでああしてください、こうしてください。逆にいうと自分でも演じられてしまうくらい自分で咀嚼した上でスタジオに来て、演技指導しているという感じなので、事前にビデオと台本でチェックを必ずするのですが、チェックをする時間は通常のアニメーションの倍はかかりますね。

えんどう監督:こちらの言いたいことを先回りして指導して頂くことが多くて、三ツ矢さんに頼んで本当によかった思いましたね。(笑)三ツ矢さんが本当に的確にアフレコを進めて頂いてるので助かります。テストのときのほうが面白い時ってあるんですよ。自然に演技が出来てたりして。今回、テストのときも全て録っておいてそっちがいい場合はどんどん使ってますし、勢いとかノリを大事にしていただいてますので、とても面白くなっていると思います。

三ツ矢さん:せっかくいい声優さんをそろえているのに、皆が頭の上に「?」ばかりで演じられても困るし、もともとこのゲームのことを知らないわけだから二重に「?」になったらどうしましょうということになるので、具体的に伝えられるようにスタジオに入るようにしています。


Q:通常のTVシリーズアニメとの違いを感じることはあにますか

三ツ矢さん:テレビシリーズというのは、ある程度キャラクターを掴んでしまうと、なんとなく分かるじゃないですか。でも今回は、本当にワンカットだけの作品の場合に演じる側は何をどう見せたいかということをきっと分からないと思うので、その部分をどう伝えるかということと、あと、リズムやテンポとか、例えば「愛のロザーリオ」が持つ雰囲気と「チューと武骨」の持つ雰囲気と、その作品によってイメージが違うと思うので、そこを明確に伝えられて行くようになればいいかなと思っています。まったく普通の通常のテレビシリーズアニメとは違うアプローチでやらないとだめですね。

えんどう監督:いろんな作品の監督を平行してやっているような感じになっちゃうんですよ。毎回5、6本の作品をやっているんじゃないかというくらいの感覚で。(笑)お話的にはゲームを知らないと書けないネタなので、ライターには強制的にゲームをやってもらって、だれがどのような話を担当していってというかんじで振っているので、いろいろな味の作品が上がってきていると思います。


Q:キャラクターの魅力を引き出す秘訣は何でしょうか

えんどう監督:最初に脚本を書いた時には、まだ声優さんが決まっていなかったので、コンテの段階でこの人が演じているからというので、
多少ニュアンスを入れたりとかはしました。こういう風にやってみたら面白いかなとか、逆にボソッと言わせたりするような芝居にしようかなということはやっています。

三ツ矢さん:魅力を引き出すのは声優さんだと思うのですが、引き出すきっかけを作るのはこちらかなと思うんです。絵というのはものすごく雄弁です。例えばキャラクターのイメージや動きというのは、自分で役作りをする上でとても大切だと思うんです。最初は絵がなかったので皆さん、迷っていたんだけれども、とりあえず1話ができて絵つきを見て、肩の荷がちょっと抜けたようなところを感じますね。ですから、引き出すというよりも声優さんが自由にできるというか、声優さんのいいところを導いてあげるというのがこちらサイドの仕事かなと思います。
ワラゲッチャーは新人の女の子がやっているので、女の子たちの5色を出すように少しずつ方向性を決めたりということが必要だと思うのです。主要キャラの人たちはベテランなのでこちらがそれほどこだわらなくても、一言いうと、それを何倍にもして面白く膨らませてくれるので、その一言が重要ですね。声優さんがいい気分になって芝居をしてもらいたいんですよ。
だから、はっきりいうと、絵がなかったりして分からないと、皆がイラついたりムカついたりするので、そのイラつきやムカつきをなくすのが僕の役目かなと思います。「分からない」って、よく電話がかかってくるのですが、「大丈夫。当日は、ビデオを全部見てきてやるから」と言っています。何をやったらいいのか分からず消化不良になるというのが、声優さんにとって一番イラつくことになると思うので、そうならないように安心感を与える、説得力を与えるのも魅力を引き出す秘訣ではないかと。声優さんのパワーを導いていくことが重要ですね。とにかくスタジオの雰囲気を良くするというか、こういう作品なので、テンションにつながる笑いの多いスタジオにしたいというのはありますね。
シリアスなものをやっていると、しめなければいけないから余りだらだらはできないのですが、こういう作品は皆が本当にいい気になって、ずうずうしくやってくれないと困っちゃうので、こちらが抑えるくらいの方が絶対に作品的にいいものになるので、それが魅力を引き出す秘訣というか、ノウハウですね。

えんどう監督:三ツ矢さん、録りながら楽しんでますものね。(笑)

三ツ矢さん:イライラしちゃうと、そこで終わってしまうので、なるべく弾んでやるようにしています。


Q:話は変わるのですが、最近の視聴者の中にはアニメを何かと解釈しようとする人もいますが、作り手としてどのように思われますか

三ツ矢さん:それは、見る人たちの自由なので、こちらが作っているものを全く違うように解釈されても、こちらは文句も言えないし正すこともできない。それは小説だろうがなんだろうが、どんな作品でも同じだと思います。送り出す側は、ある種一つの共通意識、共通言語がないと作品はまとまらないと思うのですが、送り出しちゃった以上はもう受ける側の人たちの問題なので、どう解釈されようともご自由にという感じじゃないでしょうか。

えんどう監督:特に今回はお好きに解釈してください的に投げ出しているんです。だから、なおさら見る人によってかなり捕らえ方が違うと思うんですね。こうじゃなきゃいけない的な教訓的なところは余り入れないで、むしろ反面教師的なところとかブラックなままで終わらせたりと、あえてそうしているところがあるので、最初はこれでいいのかと戸惑う方もいらっしゃるかと思いますし、作品をどう捉えるかは年齢層とか、男性だったり女性だったりでいろいろ違うと思うので、いろんな人がその人なりに楽しまれていればそれでいいと思います。


Q:オリジナル作品ということで構成や脚本はどのように生み出されるのでしょうか、また何をヒントにされるのでしょうか

えんどう監督:僕自体、インターネットでゲームをやったのが初めてだったので、かなりインパクトがあって。ああ、こういう世界があるのかと。インターネットでは、相手の顔が見えないじゃないですか。それで字だけチャットで出てきて、その中で想像する。ゲームだとそれにキャラクターがのってしまうので、例えば自分が男でも女のキャラを演じれば女になれるんですよ。そして、チャットしている目の前の男キャラは実は女性が男を演じていたりするかもしれない訳で、その得体の知れない世界で仲良く一緒にゲームをやっている。この状況が面白かったですね。違う自分になれるというか、そういうことも楽しみの一つだと思うんですよね。
だからこのゲームの世界を通してインターネットそのものを描けるといいなと思ったんです。構成は各キャラクターをまんべんなく出していかなくてはいけないのと、各ライターさんたちの個性なんかもあるので、とりあえず書いてもらったものを僕のほうで再構成して組み立てています。30分のフォーマットにしなくてはいけないので。その際に出ていないキャラを脚本からコンテの段階で変更したり、重なったキャラを減らしたりと言うこともしています。例えば「Friends」のコロンはシナリオではエルモニーの男だったんですが、僕がコンテでニューターの女に書き換えました。あの話は第一話に入れたかったのと、ニューターの女の子で中身の人疑惑と言うネタをやっておきたくて、変更したんです。
ライターさんたちには、構成の都合でキャラは変更しますと言うことは了承してもらっています。ネタのヒントは実際にプレイして得ているものがほとんどですね。一話のサクリファイスディナーはゴンゾロッソさんのほうからアイデアを頂いてライターさんが書いたものですね。他のアイデアは実際にプレイして考えたものをシナリオ会議で揉んで作りあげたものです。


Q:ワラゲッチャーVのテーマソングの歌詞はどのようにして作られたのでしょうか

えんどう監督:実は僕は他の作品でも歌詞を書いているんですが、番組のタイアップ曲でなく、作品にあわせた歌が欲しかったので作った訳です。はその作品の雰囲気やテーマなんかを伝えるのに非常に有効なので。ワラゲッチャーVの、正義ぶっているけれども、実は正義ではなく勝手なことをやっている連中という雰囲気をあの歌で出したかったんです。歌詞だとそのままを言ってしまっても、耳障りではないというか、わりとすんなりと入ってくる。ミュージカルの手法ですが、僕はそういう感じが欲しかったので歌にしてみました。で、単純な歌の方が覚えやすいし戦隊もののノリも欲しかったので、あんな感じになりました。ゲームの中でもワラゲッチャーが流行って、みんな歌ってくれるといいなと思って作りました。


Q:監督からご覧になっている方々へメッセージをお願いします

えんどう監督:ゲームをやっている方々に楽しんでいただいて、ゲーム中でも思い出してもらえたらいいなと思います。また、ゲームをやらない方にも、お馬鹿なアニメとして楽しんでいただけたらいいかなと思います。初見だと分からない方もいらっしゃるとは思いますが、むしろ、そういう作りになっているので、二度、三度見ていただくといいかなと。三度目でやっと笑えるかなというところもあるので、何度も見ていただけるとうれしいですね。


後編は、三ツ矢雄二さんにアフレコ演出(音響監督)からみたアニメ業界についてお聞きした。お楽しみに。


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  http://blog.livedoor.jp/ld_anime02/archives/50806890.html

■「マスター オブ エピック〜The Animation Age〜」公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/moetaa/

■「マスター オブ エピック〜The Animation Age〜」特設サイト:http://moepic.com/anime/

■オンラインゲーム「マスター オブ エピック」:http://www.moepic.com/

■三ツ矢雄二オフィシャルサイト:http://www.yujimitsuya.com/