こんにちは、櫛井です。
来る8月21日に、弊社のエンジニア達が執筆した本が発売になります。今回は執筆者を集めてインタビューをしてみましたので、その様子をお届けしたいと思います。インタビューするまでは「技術書読んでもわからないので今回はいいや」と思ってましたが、思いがけずディレクターにも関係ありそうな内容なので早速予約注文してみました。
「4Gbpsを超えるWebサービス構築術」著者


■概要


4Gbpsを超えるWebサービス構築術4Gbpsを超えるWebサービス構築術
著者:伊勢 幸一
販売元:ソフトバンククリエイティブ
発売日:2009-08-21
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タイトル:4Gbpsを超えるWebサービス構築術

著者:伊勢 幸一,池邉 智洋,栗原 由樹,山下 拓也,谷口 公一,井原 郁央
(各プロフィールは本エントリの末尾に記載しております)

内容:実際のサービスでの適用手法を例として、快適なWebサービスを実現するための最重要課題となる高可用性の維持から、キャッシュシステムや分散処理などの高速化技術まで、徹底的なこだわりをここに公開!

Chapter 1 Webサービスの概要と要素技術
Chapter 2 キューイング
Chapter 3 DBキャッシング
Chapter 4 HTMLキャッシング
Chapter 5 検索サービスの技術
Chapter 6 入出力パフォーマンス
Chapter 7 分散ストレージ
Chapter 8 モバイルの技術
Chapter 9 ネットワークを取り巻く技術
Chapter 10 Webサービスの性能評価

単行本: 280ページ

発売日: 2009/8/21

■本を書くきっかけ


「4Gbpsを超えるWebサービス構築術」著者
司会:まず、この本を書こうと思ったきっかけを教えてください

伊勢:一番最初のきっかけはGoogleを支える技術[24時間365日] サーバ/インフラを支える技術という本があって、それがいわゆるPC本と呼ばれているジャンルで去年ベストセラーなんですね。そして今回お声がけいただいたソフトバンククリエイティブさんもそういったインフラプラットフォーム市場に入っていきたいということで執筆のお話をいただいたのがきっかけです。

司会:なるほど。今回の本は社内のエンジニアとの共著ですが、どういった経緯でこうなったのでしょうか。

伊勢:300ページくらいの構成でいこうと考えた時に量が多いのでさすがに一人じゃ無理だなというのと、最近は現場でプログラミングをしていないし、という2つの理由からですね。書くにあたってこだわったのは、実際のエンジニアや技術者が読んで「ほう」と唸るような、o'reilly等の技術書に近いクオリティの内容にしたいというのがあったので、実際に最前線でコードを書いている皆にご協力をいただきました。

司会:書き始めたのはいつ頃なんですか?

伊勢:話があったのは去年の12月くらいで、出版目標は今年の夏休み前だった。

司会:では約1ヶ月ちょっと後ろになったのですね。

伊勢:そうそう。書き始めたのは今年の1月くらいから。

谷口:すいません、私はかなり後から。

井原:言えません(笑)

一同爆笑
※編集部注 井原さんは途中交替で原稿を任されたため結構突貫スケジュールでした

■本のタイトル


「4Gbpsを超えるWebサービス構築術」著者
司会:「4Gbpsを超えるWebサービス構築術」という本のタイトルは伊勢さんが考えたのですか?どういった意味なのでしょうか。

伊勢:あれは編集の方が決めてくれました。4Gbpsというのはライブドアのピークトラフィックの数値ですね。

谷口:ネットワーク屋さんじゃないとなかなかピンとこないかも知れないですね。

伊勢:例えば「365日24時間支える」みたいなキーワードが欲しいと言われていくつか出したんですよ。3000台以上のサーバ、200ラック以上のシステム、総勢230人のエンジニアが動かしてるサービス、とか。その中から選んでもらったのが、あのタイトルです。
井原:Gbps(ギガビーピーエス)は結構わかりにくいですよね。これはライブドア全体の数値なんですよね?アウトだけですか?

伊勢:そうそう、全体。ラック間とかをカウントしだすともっとあるんだけど、インターネットとライブドアを横断してるのだけで4G。まぁ4G超えてるけどね。


■エンジニア以外の人にも読んでほしい


「4Gbpsを超えるWebサービス構築術」著者
司会:ではここからは各章ごとにお話をおうかがいしたいと思います。まず、2章と3章を担当された谷口さんはどのような内容を書かれたのでしょうか?

谷口:本全体の構成から行くと、私が担当したところは特に専門的なことを書いているわけじゃないし、割と今では十分トレンドで語り尽くされている部分なんだけども多分まだそういうテクニックを導入していない企業向けなんじゃないかなと思います。既に使ってる人には読み飛ばしてもらって全然かまわないというか。
ソースコードよりも概念や図解を意図的に多くしているんですが、それはエンジニア以外にも読んでもらいたいなと考えて書いています。Web業界で働く人だったら知っておいたほうがいいというような内容です。

井原:私の章ではソースコードをかなり入れましたけどね(笑)

谷口:例えばディレクターの人とかが自分が担当しているコンテンツの裏側がどうなっているかエンジニアから説明を受けてもいまいちピンと来ない事があっても、「どうしてそういう設計なのか」「なぜそれをやっているのか」を図解付きで細かく書いたので、エンジニア以外の人にも是非読んでほしいです。

伊勢:あと、エンジニアじゃない人も小脇に抱えて街を歩くとモテる。ポップな表紙だから(笑)

司会:それは・・・ちょっと・・・

谷口:あと、電車の中ですれ違い通信とかも出来る。

一同爆笑

司会:なんでそういう嘘をつくんですかね・・・


■検索エンジンに名前をつけてやる


司会:では次に第5章を担当された山下さん、お願いします。

山下:私が担当した章では、「オープンソースでよい検索エンジンがあれば導入したいけどなかなか無いので自社で検索エンジンを作ってます」という話を書きました。
私が入社した当初は検索エンジンを外注していて、月に数百万のコストがかかっていて更に保存できるデータに上限値も設定されていたのをどうにか出来ないかというミッションがあったので自社で開発することにしました。基本的な検索エンジンの仕組みの話がメインです。新しく作ったエンジンも、基本的にはクエリを投げたら結果が返ってくるというの機能しか無かったんですけど、後々GPS情報も検索出来るようにしたりしていて、自社で作ることによって付加機能の追加も可能になりました。

司会:なるほど、今後の機能追加などについては書かれていますか?

山下:ないですね(笑) ただ、分散の仕組みには改善の余地があるのでその点については書いています。巨大なサーバ群で動かせるならいいんですが、出来るだけサーバの台数を少なくしつつという前提だとなかなか難しいのですが。

司会:ちなみに今回書かれた内容のエンジンを実際に使っているコンテンツというのは何がありますか?

山下:livedoor Cliplivedoor Wikilivedoor グルメブログ検索ブログの管理画面にあるブログ内検索などですね。奏(かなで)という名前のエンジンです。

司会:素敵な名前ですね。萌えキャラ化する予定などはありますか?

山下:残念ながら無いですね(笑) ただ、検索を担当しているチームは名前をつける文化があって、奏の中で動いてるエンジンは「オーケストラ」という名前を付けていたりします。他にも、特定のメンバーだけのインデックスを作る機能を開発しているんですが、これには「セレナーデ」という名前を付けたりしています。


■脅されて書き上げた第6章


「4Gbpsを超えるWebサービス構築術」著者
司会:井原さんが担当された第6章について聞かせてください。

伊勢:本自体の執筆開始時って、実は井原くんはBloggerAllianceとかブログの管理画面のリニューアルとかをやっていて相当忙しかったというのもあって原稿どころじゃなかったんだよね。

井原:そうそう、で、ある日突然伊勢さんからメールが来て「キミのブログにあるテキストがいいカンジだから、適当に編集して本に入れるから」って言われて、ちょちょちょ、待ってください っていうすごい脅しをされまして。『じゃあ自分でやります』と言わざるをえない状況に追い込まれたんですよ、多分最初からそれが狙いだったんでしょうけど(笑)

伊勢:どうしても1章分足りないって話になって、社内のエンジニアの文章から探してみたら井原くんのManagedの記事があって、これでいいなって(笑)

井原:結局書き起こしたんですけどね。


■高価なストレージ環境は捨てられる、と気付いてもらいたい


司会:池邉さんの書かれた第7章と第10章ではどのような内容になっているのか簡単に紹介をお願いします。

池邉:ストレージの話を書きました。

司会:どういう思いで書いた、とかそういうのもお願い出来ますか。

池邉:そうですね、うちのサービスでも以前は高価で大容量なストレージを使ってたんですが自社で開発した安価なストレージに切り替えて運用してます。担当した7章では、基本Webでだけ動けばいいんじゃないの?っていう思想のもとで書いてます。大容量ストレージは値段が高いんだけど、そんなにちゃんとしてなくても意外と動くねっていうのを伝えたいなと。

伊勢:けっこう今のIT業界への批判というか、ベンダーとかメーカーとかってストレージをガシガシ売りにくる人達に「Web業界はそういうの求めてない」っていうのを主張してるよね。

池邉:そうですね。Facebookとかが大容量ストレージをやめたりしてて、やっぱりWeb業界はそういうの求めてない方向に向かってますね。流通とかのミッションクリティカルなところは相変わらず高価なストレージを使ってると思うんですけど、そういうものに置き換わる安価なストレージ環境を構築する方法とか概念とかを本書では書いています。「あ、高価なストレージ捨てられるんだ」と気付けると思いますよ。高価なストレージも勿論いいんですけど、Webサービスは無料とか無料に近い価格帯だから過剰に投資出来ないんです。例えばブログのユーザー全員が2000円ずつくらい払ってくれるなら安価なストレージ環境は不要だし広告も出さなくていいんですが、そうもいかない。
あ、これ書いておけばよかったな(笑)





■どちらかというとキャリアへのメッセージ


「4Gbpsを超えるWebサービス構築術」著者
司会:第8章を書かれた栗原さん、お願いいたします。

栗原:モバイルについて担当しましたが、あまり技術的なことは書いていません。キャリア間の相違について困ることが多いので、それについて書いています。

伊勢:けっこうキャリアをDISってて面白いよね。「あー、言っちゃった」みたいな(笑) ドコモの絵文字が貧弱だからドコモに合わせておこうぜ、とか。

司会:お、それはなぜですか?

栗原:それは本に書いてあるので是非読んでください(笑) というのは冗談で、単純にドコモの絵文字が一番少ないからですね。どちらかというと、技術者というよりはディレクターが読んで「へー」となるような内容が多いです。今までモバイルの開発をしたことがないとか、そういった人向けです。

池邉:技術者じゃない人にもおすすめです。


■雑談、次回作


司会:おいくらでしたっけ?

栗原:消費税込みで2,709円

司会:安い!

栗原:バカ安っ

谷口:価格破壊っ

栗原:昼飯3回分っ

司会:たしかに技術書としてみると安い部類ですよね

池邉:普通じゃない?洋書とかだともっと高いし。

司会:最初から日本語で書いてあってこの内容の充実度だと、相当お安いと考えていいのでしょうか?

池邉:ジャパネットほどじゃない

司会:ジャパネットはたしかに安い。では最後に、次回作について

一同:えっ

司会:あ、書く予定があるのかどうかだけでも

伊勢:ないよ、今は

司会:今回の評判いかんでは次回もあるかも、というかんじでしょうか

伊勢:依頼があれば考えなくもないけどね

司会:次のステップというか、もうちょっと踏み込んだ内容を書く予定はありますか?

伊勢:ピークトラフィックが今の倍の8Gbpsとかになったらかなあ(笑)

司会:ちなみに8Gbpsを出していそうなWebサービスはどんなものがありますか?

伊勢:デイリーで1億PVを超えるから、mixiさんとかGREEさんとか。でも動画とかやると一気にハネあがるから何とも言えませんね。


司会:なるほど、今日は皆さんありがとうございました。




■執筆陣者プロフィール


伊勢
・伊勢幸一 職業:執行役員 CTA、情報環境技術研究室 室長
 ゲーム業界において世界的なオンラインゲームシステムの構築を手がけた後、2005年にライブドア入社。新世代ネットワークアーキテクチャやオーバーレイネットワーク技術の研究業務を統括する一方でTech Blogなども担当している。

池邉
・池邉智洋 職業:執行役員 CTO
 2001年ライブドア入社。気軽にバイトのつもりで働き始めてみたら思いのほか仕事が楽しくなり、気付けば執行役員にまで登りつめてしまった一児のパパ。livedoor Blogの立ち上げを行い、現在はCTOとして各種サービスの開発をおこなう。JPA(Japan Perl Association)の理事もつとめている。

谷口
・谷口公一 職業:Webエンジニア/シニアスペシャリスト
 にぽたん、の名で知られるPerlハッカー。にぽたん研究所の主任研究員。モノマネと歌のうまさは素人の域を超えており、YAPC::Asia 2007にて披露した小飼弾氏のものまねは伝説となっている。


栗原
・栗原由樹 職業:Webエンジニア/シニアマネージャー
 1977年生まれ、2001年ライブドア入社。受託制作時代を経て現在はモバイル自社サービスを手がける。デジタルガジェットを愛しすぎて月々の支払いがえらいことになっている。横浜に住んでいないのにYokohama.pmを主宰している。Perlハッカー。

井原
・井原郁央 職業:Webエンジニア
 昭和生まれ、2006年ライブドア入社。livedoor ブログの開発チームを率いる一方でYAPC::ASIAライブドア テクニカルセミナーで講演も行う「話せるエンジニア」。ライブドア社内のマジレス四天王の一人でもある。初出社の日は地検に迎えられたが、今となってはいい思い出。

山下
・山下拓也 職業:Webエンジニア
 「パブリックで大規模なサービスを担当したい!」という熱い思いで2006年ライブドア入社。現在は検索エンジンの開発を担当しており、休日はオンラインゲームをして過ごす色々な意味で健全なエンジニア。



是非、宜しくお願いいたします!
「4Gbpsを超えるWebサービス構築術」著者
左から 栗原、谷口、山下、池邉、井原、伊勢


4Gbpsを超えるWebサービス構築術4Gbpsを超えるWebサービス構築術
著者:伊勢 幸一
販売元:ソフトバンククリエイティブ
発売日:2009-08-21
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