NHN Japanの田端です。(2年強の旅を終えて、出戻ってまいりました。初めての方のために、自己紹介の「田端信太郎の経歴セルフまとめ」にリンクします。紙とネット、広告と編集の間をフラフラしてきた男です。)

東京編集キュレーターズって?


このサイトは「ディレクターブログ」ですから、このページをご覧の皆さんはおそらく「Webディレクター」関連の仕事をされている人が多いと思うのですが、「編集」「キュレーション」という言葉にどのような印象を持っていますか?「自分は編集者だ。キュレーターだ。」という自己認識ってありますかね?おそらくない人が多いですよね・・・?

NHN Japanでは、私が幹事的な存在となり、今月から「東京編集キュレーターズ」というプロジェクトを始めました。第一回のイベント内容(Webのキュレーションに価値はあるのか--編集者・菅付雅信さんが語る)を先日アップしたばかりです。

東京編集キュレーターズ

そもそもなぜこのようなプロジェクトを始めたのかについては、「はじめに」にも書いたのですが、引用します。
2012年のメディア状況は、TwitterやFacebookに代表される「ソーシャルメディア」と、TumblrやPinterestに代表される「キュレーションメディア」が融合した「誰でもメディア」時代であり、「誰でも編集長時代」ではないだろうか。

しかし、技術プラットフォームがどんどんと進化する中、この「誰でも編集長時代」に相応しいスキルやモラル、「編集」に関わる哲学や思想などといったソフト面は追いついていない。

ここに第一線でのメディア編集者を招き、そのノウハウ・スキル・モラルを共有していくことで、まとめサイト作成者らの編集に関するスキルやモラル、編集者としての視野をその影響力に相応しい水準にまで向上させることを目指す。そして参加者同士の緩やかな連帯感醸成から互いに、切磋琢磨する競争意識の向上アカデミーを開く。

というような感じです。思い切り、振りかぶって書いておりますが、今日はもう少々説明をさせてください。これからのWebディレクターにも、編集やキュレーション的なセンスは大いに求められていくようになるのです。

すべてのWebディレクターはキュレーターであり編集者


まず、私が強く言いたいことがあります。今やほとんど全てのWebディレクターは、自覚があろうとなかろうと、キュレーターであり、編集者ではないだろうか、ということです。

編集とは、文章をプリントアウトしたものに対し、赤ペンで手書き修正を入れることだけを指すのではありません。

キュレーションとは、面白い記事へのリンクをコメント付きでTwitterなどにポストすることだけを指すわけでもありません。

そもそも、キュレーションの語源であるラテン語のcurare の意味は、"take care"です。対象について「ケアをする」ことが、キュレーションの始まりなわけです。編集を英語でいうと、Editですが、この語源にはe=ex(=from、out)、dit=L.donare(=give) = 外に出す という意味があります。「編んで集める」と書いて日本語の「編集」です。

つまり、コンテンツを「編んで集め」ながら、「ケア」をして「外に出す」行為は、全て何らかの意味において、キュレーションであり、編集なのです

当人に自覚があるかないかは別にして、いわゆるCMSを利用してウェブサイトを更新しているような人は、この意味に照らせば、全て広義では編集者であり、キュレーターです。CMSに放り込む記事素材を「編んで集め」て、どれをどのように掲載するかを「ケア」して、「外に出し」ているわけなのですから。

もちろん、ウェブサイトやスマホ・アプリのようなデジタルメディア上での編集やキュレーションには、その文脈に即し、最適化された「ノウハウ」があります。しかし、それと同時に、「紙か、ネットか」というようなメディアの区分を超えて、編集者やキュレーターに共有されるべき普遍的な「スピリット」や「価値観」もあるはずです

編集という概念を、紙メディアを作る行為に紐付けて考える必要はありません。だからこそ私は、第一回目のスピーカーである菅付雅信さんの「編集はもっと自由に解き放たれていい」という言葉に深く共感するわけです。
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▲第一回東京編集キュレーターズの様子

サービスに「世界観」をもたらす編集力


ウェブの本格的な普及からもう15年以上が経ちました。私の個人的な見立てですが、インターネットやウェブサービスそのものがメディアとして徐々に「成熟」していく中で、サービスの競争力(平たく言えば「人気が出るかどうか?」)を決める要因において、技術力や開発力だけでなく、「編集」力や「キュレーション」力のようなものが、今後ますますウェイトを増して行くのではないか、とも思っています。

例えばPinterestやTumblrは、設計思想や開発力、UI/UX的な意味においても、とても優れたサービスです。しかし、同じようなサービス群の中で、この2つが圧倒的な支持を獲得した理由はそれ以外にもあるのではないでしょうか。それは、ユーザーが使う基本のテンプレートデザインやCMSの画面の挙動から、ちょっとしたアイコンのボタンに至るまで、サービス上で流通してく画像や情報内容が特定のテイスト感で統一されるように、ユーザーを緩く選別することまで含めて、サービス全体に一貫した「世界観」を染み渡らせるパッケージング能力(これはつまり、編集力であり、キュレーション力)が圧倒的だったことです。

雑誌や新聞といった紙メディアの現状をそのまま肯定するつもりは毛頭ありませんが、例えば、PinterestやTumblrの成功要因である、特定の「世界観」に基づいて、世界の森羅万象からコンテンツ素材を「編んで集めて」、「ケア」して「外に出す」ことで、ユーザーに価値を届けることでは、例えば、紙の雑誌の世界では数十年間の蓄積があるわけです。

その中には、時代を超えて普遍性を持ちうるノウハウやスピリットがあるものと確信しています。私は、東京編集キュレーターズの主幹事として、紙の世界で活躍されてきた編集者の方々から、ウェブサイトの編集レベル向上のために役に立つ言葉をこれからどんどん引き出して行きたいと考えています。

「編集とか俺、関係ねえし」とお思いのアナタ!自分の仕事が果たしている機能・役割から考えれば、きっとあなたも編集者でありキュレーターですよ!

今後も編集キュレーターアカデミーを開催していきますので、Webディレクターの皆さんのご参加を心よりお待ちしています。



NHN Japanではウェブの世界をもっと編集したい!というディレクターを募集しています。