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ライブドアに物申す!書籍化決定! ライブドアに物申す!
書籍化担当者の編集日記 企画主旨・条件について livedoorメディアとしての考え方

2006年02月14日

吉田 望さんより

株式会社ノゾムドットネット(吉田望事務所)代表取締役の吉田 望さんよりご意見をいただきました。

以下、全文を掲載いたします。



・企業としての「ライブドア」について

私はブランド論の専門家です。たまたま個人的理由から旧エッヂ社がライブドア社を購入した経緯を知っていました。堀江氏は共同購入を自ら持ちかけていたIT企業の経営者に抜け駆けしてライブドア社を安値で購入、憤慨する経営者に「だまされたほうが悪い」と言い放ちました。
それにより私は「会社は誰のものか」(新潮新書2005年5月)の中で「合理的理由により社名を変えた会社は再び合理的理由で社名を変えることになるだろう」と予言をしておりました。その本から、ライブドアと堀江さんに触れた箇所を紹介します。

「ライブドアによるニッポン放送買収騒動で進んだのは、キャッチフレーズ的に言えば「事業の事件化」「会社の商品化」「経営者のタレント化」「産業のメディア化」です。経営そのものは、「見出し経営」であり「愉快犯経営」です。最期の結末が「経営者の犯人化」だった、ではしゃれになりません・・・・・・・私の直感では金融とメディア資本主義の融合の上で自己投資を行うビジネスモデルは、ものすごく大きな利益相反の問題を抱えることになると思います。利益相反を起こさないためには、自己投資や自己取引を絶対に行わない、第三者を通じても行わないという高い信任能力と自制が求められます。しかし堀江氏に対して信任を、いったい誰がどうやったら求めることが可能でしょうか。金融とメディアの融合企業が登場するとしたら、厳しい監視は当然のこととして、その経営者には無限責任を担うほどの覚悟が必要と思います。」(p155-158)

会社は氷山のようなものです。氷山の全体像は経営者にしかわかりません。海面の上に出ているのが、利益であり社外(株主)に見える部分です。氷山の全体像を経営者は株主に説明します。この海面に出ている部分を大きくするのが経営者の目標ですが、そのためには海面下でしっかりとした躯体の氷山が実在していなければなりません。それが事業です。利益は致命的に重要ですが、それはしっかりとした海面下の氷(事業)にささえられている、そのごく一部の残余であるという厳然とした事実があります。ライブドアは水面下の部分なしに、氷山の海上の部分だけを最大化しようとしました。
それは経営的にどころか物理的に不可能な行為、継続がありえない、いつかは魔法が解ける「空中浮遊」。どこかで転覆せざるを得ませんでした。

・ 「ライブドア事件」について

何人かの識者が指摘するように、ライブドアとオウム真理教には過激な教義をもった宗教的団体が大衆を先導しながら過激化する点で、共通点があります。ライブドアの場合は「株高がすべてを正統化する」という教義でした。

人間的欠落を匂わせる巨大な頭蓋骨をもった魅力ある悪のトップ。それに従う魂が抜けたようなエリート幹部による情報・意思決定の占有。信者化した社員教徒と株主。美人秘書とか美人信者の劇画チックさ。選挙に出たこと。CDを 出そうとしたこと。「ロシア」が登場する点も似ています。ロシアの旧軍部(旧武器)が関係しています。「こけおどかし」や「強迫観念」もさることながら、マネーロンダリング的動機も確実にあると思います。「事業や購入のミス」と「ロンダリング」の見分けがつかない世界だからです。

しかし会社と宗教で決定的に異なるのは、信教の自由が認められ外部からガバナンスが働きにくい宗教法人と違い、会社は、その歴史的誕生のころからほおっておけばたちまち経営者と株主の間でモラルハザードが生じて悪徳まみれになれることが知られています。そしてそれを防ぐため、監査役、監査法人、大株主などの社会的な厳重な仕組みが作られています。今回そうした立場の方々の責任は極めて重大と思います。またエリートは法律のグレーゾーンに足を踏み入れることに注意深くなければいけません。グレーゾーンに居続けられる強い人はすくなく、足を洗うか、悪にまみれるかどちらかです。後者を通常、舎弟企業と呼びます。特に神なき国、日本では「法律に反していなければかまわない」という価値観はすぐに、「ばれなければ法律を犯していないも同然」という価値観に転化してしまうのです。

・ 「堀江貴文」という人物について

三田のトータルアウトで時々ご一緒しました。ワイドショーに出るときに限って、その映像を背景にして運動をされていました。レッグプレスで14枚、280キロを持ち上げていました。知力、体力抜群の人でしたが、情動や共感に薄そうな、ニヒルな印象を受けました。何が真実で何が真実でないのか。彼はおそらく自らの記憶をも作り変えていることでしょう。拘置所の胸中はたして如何。思索と運動に励んで、思いのほか健康なのではないでしょうか。そして、かれのような悪徳投機家(のみ)が資本主義の新しいページを開く、という逆説もあると思います。

追伸:リクルート事件のときにリクルートの更生の心棒になったのは「かもめ」という独立した編集権を持った社内誌でした。今回はネット時代に即し、社員も外部の人も平等に読む本ブログが、こうして独自の企画編集を行い、同じ役割を果たされることを心より願っています。



吉田 望(よしだ のぞむ)

1956年生まれ。
株式会社ノゾムドットネット(吉田望事務所)代表取締役
nozomu.net - 吉田望事務所 -

会社は誰のものか


ld_opinion at 15:03│TrackBack(8)吉田 望さん 

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2. 会社は誰のためのものか  [ 404 Blog Not Found ]   2006年02月14日 20:35
確信犯的に陳腐なタイトルである。ましてやそれが「バカの壁」を出した新潮新書であることを考慮すれば。 会社は誰のものか 吉田 望 「会社は誰のものか」好評発売中 (新潮新書) | Blog | nozomu.net - 吉田望事務所 -3月ごろからこの出版のお話をいただき...
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2006年2月15日 ライブドア、本体に利益付け替え 金融子会社の3億円 その他の各新聞社の記事は以下から 朝日新聞|日本経済新聞|読売新聞|毎日新聞
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4 ライブドア事件特集ブログ:吉田 望さんより - livedoor Blog(ブログ) 素晴らしい評論であると感服する。 一点申し上げれば、海面下でしっかりとした躯体の氷山が実在...と有りますが、 デジタルのバーチャル世界でありIC技術の発達と共にブログの世界で人間の本心....

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