ときがめ書房 : 2014年03月

2014年03月30日16:13

カテゴリ: 写生の俳人[敬称略]

『蕗』誌1月号◇七五三

千歳飴引き摺り歩く七五三　　　小田彦左エ門
千歳飴抱き昼寝の七五三　　　　　　〃
クリスマス賛美歌渡る小児棟　　　　〃

　Wikipediaで七五三を調べてみた。始まりは別々の儀式であったようだ。〈数え年3歳（満年齢2歳になる年）：「髪置きの儀」とし、男女とも行う。江戸時代は、3歳までは髪を剃る習慣があったため、それを終了する儀。数え年5歳（満年齢4歳になる年）：「袴儀」とし、男の子が行う。男子が袴を着用し始める儀。数え年7歳（満年齢6歳になる年）：「帯解きの儀」とし、女の子が行う。女子が幅の広い大人と同じ帯を結び始める儀。〉
　小児科の老先生がご覧になられた七五三のひと日。50年前の七五三と今日のそれとには人々の祈りの本質が変わってきていることに微かな不安を感じていらっしゃるのではないだろうか。
　そして讃美歌という永遠なる母性。「千歳飴引き摺り歩く」「千歳飴抱き昼寝の」の愛らしいしぐさが、ビデオカメラではなく、母たちの心に深く刻まれているのだろうかという…。
　不安の本質はそれかもしれない。

余談：それぞれに性別や環境により社会における身分が定められたころの習慣で、欲望の認識がはじまる儀式でもありそうだ。今日、国民の大多数が中流意識をもちこぞってお宮参りにはせ参じ、贅をつくす現象にかつての身分制度に通底する潜在意識があるのかもしれない。　写真は「千歳飴ゆうぜんがま口セット」。御親戚にお配りするものだろうか。

2014年03月28日18:05

カテゴリ: 写生の俳人[敬称略]

『蕗』誌1月号◇黄落

黄落や遷御すみたる宮大工　　　木戸口眞澄
墨壺に冬日を溜めて宮大工　　　　〃
自然薯を掘る細心に大胆に　　　　〃

　つつがなく遷宮がなされることを祈りつつ宮大工らは心身を浄め日々参内したのではないだろうか。ジョークを飛ばしながらの作業などとんでもない。「遷御すみたる」と叙された中に活写された遷宮までの宮大工らの日々を二重写しに見える。
　銀杏が芽吹き、青葉となり、御社ができあがるまでのあらゆる心配りは祈り。そして今は黄落。一年の役目を終えた銀杏の黄葉にすべての心配の主体がメタファされ、降りつもる落葉は産土を渇きから守る。まさに活写。
　近頃、教育の貧困という言葉が話題になっている。これは経済的欠乏ではなく心の渇きからくるのではないだろうか。

余談：素十先生の俳句が解釈または鑑賞されるとき「活写」という表現がよく使われる。映画で言うところのカメラワーク。俳句で申せば叙し方。
　　　　　甘草の芽のとびとびのひとならび　　　素十
　甘草の芽の一本／＼を丹念にそしてゆっくり接写しているありさまが見えてくる。仮に「ひとならび甘草の芽のとびとびに」とカメラを一気呵成に移動または撮影すると、詩情はきえてしまう。もちろん俳句の叙し方の話をしているである。これは小津監督が家族の場面を描くとき台詞や意図したような演技もなく淡々とひとりづつカメラを移動させていくカットのように多くを語り得る。
　爆裂シーンが売りのZ級映画のように詩の世界もインパクトの強い叙述ばやりの昨今だが。写真はwikipedeaより拝借。

2014年03月25日12:23

カテゴリ: 蕗研究：雑記

「おもてなし」を調べた

　古語辞典で「もてなし」を調べてみた。（古語辞典　金田一京助・金田一春彦監修　三省堂刊）
【もてなし】名詞　　1.とりなし。とりつくろい。「いと悪（わろ）かりし形様（かたちざま）なれど―･に隠されて」[源・末摘花]　2.ありさま。挙動。ふるまい。「胸あらはに、ばうぞくなる―･なり」[源・空蝉]　3.取り扱い。待遇。「世の例（ためし）にもなりぬべき御―･なり」[源・桐壷]

【もてなす】他動四　　1.とりなす。取りまかなう。「何事の儀式をも―･し給ひ」[源・桐壷]　2.取り扱う。待遇する。「桐壷の更衣のあらはにはかなく―･されしためしもゆゆしう」[源・桐壷]　3.世話する。引き立てる。「そもそも女は人に―･されて大人にもなり給ふものなれば」[源・若紫]　4.自分の身をそのようにもてあつかう。そのようになす。「時時ははればれしう―･しておはしませ。あたら御身を、いみじう沈みて―･させ給ふことくちをしく」[源・手習]　5.もてはやす。ちやほやする。「今様のことどもの珍しきを言ひ広め―･すこそ（=珍重ガルノハ）またうけられね（感心デキナイ）」[徒然・七八]　6.そぶりをする。態度をとる。装う。ふりをする。「涙を拭（のご）ひ、さらぬ体に―･して申しけるは」[平家・十]　

　行動の主体となれば上から目線、逆に客体となれば謙譲と中々にむつかしい言葉。「冬陽炎」や「ゆけむり」から「おもてなし」を受けた場合、解釈は如何に。

2014年03月23日13:58

カテゴリ: 蕗研究：雑記

ﾒﾙﾍﾝ苦手だがｵｶﾙﾄなら

　毎号拝見していると、格調ある作品も少なくはない。残念なことに入選した数句のなかに「な～んちゃっての一句」があることで鑑賞が妨げられることがある。それはお能の舞台を鑑賞中に突然「子供劇」が跳びだしてきたようで、とにかくオロオロさせられる。そのどれもが一句として完成をみているとしても二つの詩の世界を混在せしめるべき斬新な構造をなす美意識は今後の展開を待たなければならない現況にもかかわらず…。
　だが総合誌のプロの編集者は「な～んちゃっての一句（メルヘン的措辞）」のところで次の作者へと読みとばしてしまうのではないかと察せられる。だからと言ってこういう傾向の一句が混入しなければ入選もしない。選をする側も十二分にそのことをわきまえていて、自誌から新進の作家がでないことも周知である。
　文章を進めていく前にこの村のことをかかなければならない。江戸以前、国中のどこに於いても同じであったろうと思われるが、一旦戦いが起これば百姓は傭兵として働いていた。天正6年（1578）島津氏と大友氏の「耳川の戦い」で大友軍は壊滅し、同時にこの村には女だけが残され、村は存亡の危機に瀕した。だがこの後がいけない。
　平成20年にその存在が明らかにされた民が村民をモルモット代わりにし、両方の民の特性を備えさらに進化した混血種の誕生を模索研究するための飼育箱として、つい戦前までつづいていたということである。戦後に人権問題が厳しくなると労働組合へと研究所は移行したと聞いているが定かではない。
　このため村の二つの民の人口比率が7：3と他の町とは逆になっていて、しかも同和対策室に戦前までの研究結果が名簿として残っていたということである（当時の同和対策室長であったK.N氏が証拠物件を焼却）。3割の純粋種が残されたのもモルモットとして必要であったためと考えられる。この研究、人種の交配には成功しなかったものの、その進歩は目覚ましく対象から感性のみを抜くfishing、運命そものを入れかえるswapなどが呪いで可能になり、人命に至らしめることなく欲する人格・才能、運命を手に入れることができるようになったという。但し、双方の民に依存症や精神発達障害といった痕跡を残す場合も少なくないようである。
　しかしながら対象となるものの合意（金銭の授受など）または「必然の条件」がいる。平成20年以前にこの町では「馬鹿にしている」の一言で命を召されても文句は言えなかったように、法で裁くかわりに「呪いの式」を執るのであり、この「式」という「必然の条件」は捏造することも可能なのである。（「式」については折にふれてブログに書いているので省略。但し、平成20年以前に執られた「式」による被害は本人がそれと分り不本意であると祈ることにより取り戻すことができるようであるが）。
　話を俳句に戻そうとしている。この村はタイガーマスクでいう「虎の穴」的構造なのである。さしずめ俳句会の主催は漁場のマネージャーにあたる。各地に網元にあたる女性を置き眷属を形成させて管理にあたらせ業務拡張をはかり、平成20年以前の句会場でfishingしまくったマネージャーの水揚げは想像を絶する。だが「果たされなかった約束」により「虎の穴」のサポートを失い暴走。だが県内に自分にとって代わるべき俳人はことごとく潰しているので恐れるものはなかったのである。「な～んちゃっての選句」の意味は深いのである。
　俳誌の購読者数を維持しながらのこの巧妙な選は主に社会的経済的力学上（漁場運営）にある。この漁場であるが海神（虎の穴）からの委託業務であり不動の位置をではなかったのである。「果たされなかった約束」がなければ、カーストの厳しい村で彼が浮上するチャンスもなかったであろうと思われる。
　その逸話。村の寄合いではいつも末席に坐っていた彼の父の代。頃合いを見計らって参じていたということだが、ある日のこと早く着いたので上って待っていた。後から来た村人は日頃より上座に座っているのを見てふれを回し誰も来ないようにしたと得意げに話していた。父はこの境遇に負け一度ならずも人生の汚点を作った。
　彼の今の社会的立場からは想像もつかないことであるが、自己の律し方にみえる暗さに触発された狂気は否定し難い。その狂気により自誌の見開きの近詠を呪詛に使い自らをスポイルした。心配はしなくても大丈夫、彼には見えなかっただけで多くの優れた俳人がひしめいているではないか。さてさて「虎の穴」、産業のない人出もないこの村を見限りY市へと移行しつつある。
　虎の穴の跡地を、行き場をうしなった狂人がこの村を再び席巻しないことを祈っているが動きはある。聖徳太子の予言である親と7人の子供。これは7つの「虎の穴」ということではないだろうか。つまり彼を監視しているのは7人の海神である。
　あるステートを形成しかつ維持するには余りにも危険なファクターである。例えればドゴール大統領暗殺に失敗後のジャッカルに今の境遇は似ている。また彼を盾にして虎の穴の覇者に成り上がろうとする動きもあり、I.B氏の存在も動的で、「7人の子」を「6人の子と孫」にせんとする動きも伴いそれぞれに錯綜している。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（人物・名称は全て架空のものです）

2014年03月20日11:43

カテゴリ: 写生の俳人[敬称略]

『蕗』誌1月号◇末枯れ

沼のもの枯れ沼べりのものも枯れ　　　小林敏朗
沼のものばかりに非ず末枯るる　　　　　〃
色もまた乏しからざる返り花　　　　　　　〃
広がれる枝には疎ら帰り花　　　　　　　　〃

　瀟々と枯れつくした沼のほとりにひっそりと佇むとある作者のありようもまた自然の一部なのである。久々に拝見する格調、いや『芹』調ではなかろうか。
　また「淡し」と一気に叙されず「色もまた乏しからざる」とされているところに自然への細やかな慈しみがある。4句ともに同じ調べが保たれているという安定感が無理なく小林氏の詩の世界を堪能させてくれた。深謝。