子会社の資産および負債の時価評価と投資消去差額3(仕訳)

親会社の投資と子会社の資本。これらは相殺消去される関係にあるが、投資と資本の金額は通常完全に一致するものではない。投資と資本との差額は「投資消去差額」と呼ばれ、投資>資本であれば「のれん」が、投資<資本であれば「負ののれん」が発生する。のれんは無形固定資産に計上し、20年以内で償却する。負ののれんは発生した事業年度に「負ののれん発生益」といった特別利益で処理する。以下では投資消去差額の仕訳を見ていく。

①投資>資本

これは子会社の純資産額を超えて親会社が投資を行ったケース。この場合、子会社の資本を超えてまで親会社が投資を行うのは、子会社が超過収益力(=将来CFの源泉)を獲得するためである。したがって、株式の対価と取得時の子会社資本の「相殺しきれない部分」は資産計上を行う。

~投資と資本の相殺消去~
(借)資本金 ×××、 資本準備金 ×××、 利益準備金 ×××、 評価差額 ×××、 のれん ××× (貸)S社株式 ×××
※貸借の金額はもちろん一致している。貸方は単純に払い込んだ金額だが、借方の資本金~評価差額までは子会社資本であり、のれんは子会社が自己において計上できない資産を差額として評価したものである。

(借)のれん償却額 ××× (貸)のれん ×××
※のれん償却額は一般管理費として毎期一定の償却方法に沿って処理される。


②投資>資本

対価を支払い他企業の株式を取得し、これを子会社化したものの、取得価額が子会社の評価差額を含む資本を割り込んでいる場合がこちらである。この場合はバーゲンパーチェスの他にも子会社のBS評価の不備が考えられる為、子会社の資産負債の把握や時価評価が適切に行われているかを見直す必要がある。見直しの結果、なお投資が資本を割り込んでいるのであれば、特別利益「負ののれん発生益」として処理される。

~投資と資本の相殺消去~
(借)資本金 ×××、 資本準備金 ×××、 利益準備金 ×××、 評価差額 ××× (貸)S社株式 ×××、 負ののれん発生益 ×××

子会社の資産および負債の時価評価と投資消去差額2

投資消去差額について。
既存会社の株式を購入して子会社化するケースでは(つまり設立でない場合)、親会社の子会社に対する投資額と、これに対応する子会社の資本の金額が完全に一致することはあまりない。親会社は子会社の純資産額に対して(株式の購入代金を)払いすぎているか、少なすぎるかのいずれかである。完全子会社化する場合を考えるとして、子会社の純資産100に対し親会社は120を払うこともあれば90を払うこともあるということである。

おそらく多くの場合は純資産額以上の金額で子会社株式を取得するはずである。特に時価評価がスタンダードとなれば、子会社株式の取得に対する払い込みは単なる対価でしかない(将来CFが生じないかのように考えられる)。つまり超過収益力を持っている会社を買収するのであれば、通常は純資産の時価以上の金額で取得せざるを得ない(そして多くの場合は超過収益力を持った企業を子会社化したい)。投資と資本は相殺されるが、この場合は相殺しきれない(というか、払いすぎた部分を費用処理しなければならない)事態が発生する。しかし子会社の買収が「超過収益力の取得」であるならば、将来的な経済価値を生み出す資産を支配したと捉えられる(ノウハウやブランド力、広く構築された販売網など)。純資産と取得対価はバランスしないが、これは前述の資産を手にするためであり、この資産こそが「のれん」として計上される。考え方としては要するに繰延資産と同様であると思われる。ただしこちらの償却期間は20年以内と長く、定額法その他合理的な方法により規則的に償却し、償却額は販管費の「のれん償却額」として処理される。


反対に、純資産額以下の金額で取得する場合。これは2つのケースが考えられる。まずひとつは子会社の資産および負債の測定上の不備である。取得時は子会社の純資産の金額以下で取得できたものの、時価評価してみればおよそイーブンであるという場合がこれである。例えば土地などは時価が簿価を上回ることは多くあるが、取得時の土地は時価評価されない。もうひとつは経営状態の芳しくない企業を買収する場合、いわゆるバーゲンパーチェスである。こちらはあまり問題ではないだろう。やはり計算上重要なのは前者の、資産と負債を評価しなおすケースであり、見直し後であってもなお安く子会社化した場合は(その取得の事業年度に)特別利益「負ののれん発生益」を計上することになる。

ただし、やはり多く見られるのは借方に発生するのれん、つまり「親会社の投資>子会社の資本」のケースであるから、こちらを重点的に学習したい。

子会社の資産および負債の時価評価と投資消去差額

もう一度連結の手順を確認しよう。
①まず親会社、子会社ともに個別FSを作成する
②それぞれの個別財務諸表に修正を加える(子会社の資産および負債の時価評価)
③修正後の親会社個別FSと修正後の子会社個別FSを合算して、合算FSを作成する
④合算FSに連結修正仕訳を加えて連結FSを作成する

おおまかにこういった手順が連結FSの作成までということになる。今回は「子会社の資産および負債の時価評価」と「投資消去差額」についてなので、②の「個別FS作成後に個別に加えられる修正」のあたりの話。

・時価評価の方法
支配獲得日において、子会社の資産および負債のすべてを支配獲得日の時価により評価する方法(全面時価評価法)により評価する

まず現行では部分時価評価法は廃止されているため、子会社のBS評価方法はこれひとつ(全面時価評価法)のみということになる。また、「支配獲得日」とは読んで字の如くだが、これが「子会社化したその日」であるとか「株式の取得日」といった表現でないのは、株式の保有比率以外にも実質的な支配(=子会社)と見做される場合があるからである。ただし、「こういった場合は子会社と認められるか?」といった問いは考えにくいので、支配=50%超の株式の取得と捉えても問題はなさそうである。

・時価評価の範囲
子会社の資産および負債のすべて(=親会社持分+少数株主持分)

・時価評価のタイミング
これは前述だが支配獲得日である

②時価評価による評価差額
子会社の資産および負債の時価と当該資産および負債の個別BS上の金額との差額(つまり時価と簿価の差額)は、評価差額として子会社の資本を構成し、「投資と資本の相殺消去」の対象となる。

例として、簿価100、時価150の土地が子会社のBSに計上されていた場合
(借)土地 50 (貸)評価差額 50(純資産)
のように修正される。評価差額は当然純資産だが、これも投資と資本の相殺消去の対象となる。相殺消去の対象となる子会社の資本は、①株主資本、②評価換算差額等、③評価差額である。新株予約権は相殺消去の対象ではない。

ここでみている評価差額は「修正後の子会社個別BS」に計上されるが、連結上は、資本連結において親会社の投資と相殺、もしくは少数株主持分へ振り替えられる。したがって「評価差額」といった勘定が最終的に連結BSに計上されることはない。

連結序論2(PL)

ここでは各種財務諸表(PL、BS、SS、CS)について、個別と連結での異同についてみていく。

PL

売上高
売上原価
売上総利益

販管費
(貸引、DEP)、のれん償却額
販管費合計
営業利益

営業外収益
(受取利息、配当金)、持分法による投資利益
営業外収益合計
営業外費用
(支払利息、為替差損)
営業外費用合計
経常利益

特別利益
(前期損益修正益、固定資産売却益)、負ののれん発生益
特別利益合計
特別損失
(減損損失)、持分変動損失
税金等調整前当期純利益
(※個別では「税引前当期純利益」である)

法人税、住民税および事業税
法人税等調整額
法人税等合計
少数株主損益調整前当期純利益
少数株主利益

当期純利益

以下解説。
個別では売上原価を「期首商品+当期仕入-期末商品」のように内訳を記載するが、連結では売上原価を一行で表す場合が多い。
連結の場合、販管費にてのれん償却額が計上される(企業結合でもありうるが)。
営業外収益では「持分法による投資利益」が発生する。これは子会社ではないが大きな影響力をもつ他の企業の利益を当社で計上するもの。
特別利益では「負ののれん発生益」が計上される。のれんについては後に詳しく見ていく。持分変動による損失は特別損失の区分に表示。
次に法人税調整後の下に表示されている「少数株主損益調整前当期純利益」および「少数株主利益」について。例えば子会社の利益1000は一旦親会社に全て計上される。ただしこれは持株比率に応じて当社の利益としなければならない。当社の持株比率が60%だとすれば、当社に帰属する利益は600となる。この場合、「少数株主利益」で400を差し引いて当期純利益とする。

連結序論

連結財務諸表:連結財務諸表は、支配従属関係にある2つ以上の企業からなる集団(企業集団)を単一の組織体とみなして、親会社が当該企業集団の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況を総合的に報告するために作成するもの。

※ここでは親会社はP社、子会社はS社の略称で表す(Parent/Subsidiary)

P社、S社はそれぞれ個別の法人格だが、ひとつの企業集団でもある。個別FSと連結FSの例を見てみる。P社が外部から1000で仕入れた商品をS社に1100で販売し、S社はこれを外部に1400で販売したとする。個別のPLを見ると、P社は売上1100、仕入1000、利益100であり、S社は売上1400、仕入1100、利益300となる。しかし連結上はひとつの企業集団として、外部から1000で仕入れた商品を企業集団外部に1400で販売したと捉える。これは以前見た本支店会計での「内部取引の相殺消去」に通じるものである。

連結の範囲は、親会社による『他の企業の意思決定機関を支配している企業』である。もしくは子会社から見ると、『ある企業が他の企業の意思決定機関を支配している場合における当該他の企業』とされている。具体的に言って、50%超の株式を持っていることだが、一応もうすこし詳しく見ていく。

厳密には『他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業が親会社、当該他の企業が子会社に当たる』こととされる。

もちろん議決権ベースであることは言うまでもない。他の企業の発行済株式の60%を取得しているが、その全てに議決権制限があれば、他の企業を支配しているとは言えないからである。
また、「自己の計算において」とは、必ずしも親会社の法人名義でもって株式を所有している必要はないことを表している。例えば、親会社に加えて親会社の役員が保有する他の企業の株式の合計が50%超である場合は、一般的に連結の対象となる。当然、役員の所有する株式は、役員の個人的な投資活動ではなく、親会社が何らかの資金面等のサポートなどを行っている場合における役員の所有株式である必要があり、これを基準では「自己の計算において所有」としている。


・連結の具体例
P社がS社の発行済株式の80%を保有しており、S社がS2社の発行済株式の60%を保有しているとしよう。P社からしてS2社はいわゆる孫会社だが、これは結論から言って連結の範囲に含めることになる。P社はS社の意思決定機関を支配しており、S社がS2社の意思決定機関を支配しているため、P社は間接的にS2社を支配しているからである。

次に、①40%以上50%以下の保有比率、もしくは②40%未満の保有比率に加えて自己と意見を同じくする者で50%超の保有比率を達成している場合。
この2つの場合でも子会社と判定される場合がある。

①の場合は次の(1)~(5)に、②の場合は次の(2)~(5)に該当すれば子会社の判定基準を充たしたものとされる。この判定基準とは、議決権の所有割合以外の要素を加味した「支配力基準」と呼ばれるもの。以下で「株式」という場合は常に議決権ベースであることに注意。さらに以下で「子会社」と表現されるものは大体が基準では「他の企業」とされるもの。


(1)自己(企業)の株式に加えて「緊密な者」および「同意している者」が所有している株式を合わせて50%超の場合。
※緊密なもの等は特に区別して覚えることはしないが、要は株主総会で親会社の意見に倣う者。

(2)親会社の役員、使用人、元役員、元使用人などが子会社の中枢の過半数を占める場合。

(3)子会社の重要な財務、営業、事業の方針の決定を支配する契約が存在する場合。

(4)子会社の負債の部(資金調達のものに限る)の過半について親会社が融資している場合。

(5)その他、子会社の意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること。

帳簿組織2(英米式簿記法と大陸式簿記法)

・英米式
開始記入と決算における貸借対照表勘定の締め切りを、仕訳帳を通さずに直接総勘定元帳に行う記帳法。
これは大陸式と比して厳密さよりも簡便さを重視している。貸借対照表の締め切りは「次期繰越勘定」を用いる。
貸借対照表の貸借平均は、別途、繰越試算表を作成することで確認する。

・大陸式
開始記入と決算における貸借対照表勘定の締め切りを、仕訳帳を通じて行う記帳法。
これは英米式とひして簡便さよりも厳密さを重視している。貸借対照表の締め切りは閉鎖残高勘定を用いた仕訳(残高振替記入)により締め切る。また、貸借平均も閉鎖残高勘定にて確認される。
翌期首の開始仕訳には更に次の2通りの方法がある。

1.純大陸式簿記法:開始残高勘定を用いる
2.準大陸式簿記法:開始残高勘定を用いない


例として、当期末の後T/Bが以下の場合のそれぞれの記帳を見ていく。
・現金預金4000
・仕入2000
・売上3000
・資本金3000

(1)まず損益振替の仕訳
(借)売上 3000 (貸)損益 3000
(借)損益 2000 (貸)仕入 2000

(2)次に損益勘定を資本振替
(借)損益 1000 (貸)繰越利益剰余金 1000

※これらのPL項目については英米式・大陸式を問わず上のような形の仕訳となる。両者の差異はBS項目について表れる。

①英米式
貸借対照表項目は仕訳帳を通さず総勘定元帳にて締め切られる。ただし便宜上、仕訳の形で示すならば以下のようになる。
(借)次期繰越 4000 (貸)現金預金 4000
(借)資本金 3000 (貸)次期繰越 3000
(借)繰越利益剰余金 1000 (貸)次期繰越 1000
これらは総勘定元帳の上で行われるため、仕訳帳には記帳されない。翌期首は上と同じ金額を(こちらも総勘定元帳の上で)「前期繰越」によって引き継ぐ(開始仕訳は不要)。

②大陸式
貸借対照表項目は閉鎖残高勘定を用いた仕訳を行うことで「仕訳帳を通して」締め切られる。
(借)閉鎖残高 4000 (貸)現金預金 4000
(借)資本金 3000、 繰越利益剰余金 1000 (貸)閉鎖残高 4000
※閉鎖残高の貸借一致をもって貸借平均を確認する。

翌期首の開始記入は次の2通りのやり方に分かれる。
(1)純大陸式簿記法
(借)現金預金 4000 (貸)開始残高 4000
(借)開始残高 4000 (貸)資本金 3000、 繰越利益剰余金 1000


(2)準大陸式簿記法
(借)現金預金 4000 (貸)資本金 3000、 繰越利益剰余金 1000
※こちらでは「開始残高勘定」は用いない

帳簿組織(単一仕訳帳制・単一元帳制)

帳簿は大きく4つに分類できる。
・仕訳帳
・総勘定元帳
・補助記入帳
・補助元帳

①最も重要なのは仕訳帳。全ての取引を時系列に沿って記録する帳簿である。
総勘定元帳は、仕訳の内容を勘定科目ごとに分類してまとめたもの。仕訳帳では「ある勘定科目の残高」を知るには、その都度集計を要する。例えば売掛金残高を知りたいと思ったとき、仕訳帳では上から全ての売掛金に関する取引を集計しなければならない。この点を解決しているのが勘定科目ごとに集計した総勘定元帳である。
このように仕訳帳ひとつ、総勘定元帳ひとつといった形が最もシンプルな帳簿の体系であり、これは「単一仕訳帳制・単一元帳制」と呼ばれる。

・単一仕訳帳制、単一元帳制の欠点

1.特定の重要な取引や項目についての詳細な情報が得られない

※例えば売掛金残高については、これを一般債権や懸念債権の別に分類していない

2.取引が増加した場合に転記が煩雑になる

※これは手書きの帳簿を想定している

3.記帳事務の分担化ができない
補助記入帳は「当座預金出納帳、売上帳、仕入帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、現金出納帳」などが該当する。補助記入帳は「特定の取引の明細を記録する帳簿」である。一方、補助元帳は「特定の勘定科目の明細を記録する帳簿」であり、「得意先元帳、仕入先元帳、商品有高帳」などが該当する。


②仕訳帳と総勘定元帳が「主要簿」と呼ばれ、あらゆる会社になくてはならない帳簿であるのに対し、補助記入帳と補助元帳は「補助簿」と呼ばれる。こちらは業務や経理の体系次第では用いられる場合がある。補助記入帳は仕訳帳の、また補助元帳は総勘定元帳の明細記録である。このように帳簿は「主要簿」と「補助簿」に分けることができる。
また、別の視点から4つの帳簿を「原始簿」と「転記簿」に分けることもできる。原始簿とは取引が行われて最初に記入される帳簿であり、転記簿とは他の帳簿から転記されることによって記入される帳簿である。
原始簿は仕訳帳と補助元帳が、転記簿には総勘定元帳と補助元帳が該当する。

・単一仕訳帳制・補助簿併用制の利点と欠点
利点:上に挙げた単一仕訳帳制の欠点である「特定の重要な取引や項目についての詳細な譲歩が得られない」という点を解消することができる。
欠点:同一取引を主要簿と補助簿の両方に記入する必要は、記帳事務を煩雑なものとする。

[設例]工事契約(進行基準)

[設例]
・当期(×3年4月1日~×4年3月31日)における以下の資料に基づき、進行基準の後T/B残高を算定。進捗度は原価比例法。
・算定する項目
完成工事高
完成工事原価
完成工事未収入金
未成工事支出金
未成工事受入金

①A工事
収益総額:1,440,000
原価総額(見積):1,152,000

~実際工事原価~
前々期:230,400
前期:518,400
当期:432,000

当期末までの入金額:1,080,000
工期:×1年12月~×4年1月

②B工事
収益総額:4,800,000
原価総額(見積):3,840,000

~実際工事原価~
前々期:なし
前期:984,000
当期:1,968,000

当期末までの入金額:4,000,000
工期:×2年7月~×4年11月

※A工事は期日に完成し引き渡している
※B工事は資材高騰により,当期において原価総額の見積を4,100,000に修正し、これに伴い工事収益総額を5,000,000としている。

[解答]
①まずはA工事から。これは当期末には既に引き渡している。
収益総額:1,440,000
原価総額(見積):1,152,000
~実際工事原価~
前々期:230,400
前期:518,400
当期:432,000

一応、前々期から計算してみる。ここでの進捗度は0.2、収益は288,000を認識。
(借)未成工事支出金 230400 (貸)××× 230400
(借)完成工事未収入金 288000 (貸)完成工事高 288000
(借)完成工事原価 230400 (貸)未成工事支出金 230400

次に前期までの累計費用は748800、進捗度は0.65。したがって前期末までに計上する収益は936000。ここから前々期に計上した収益を差し引くと前期分の収益は648000。
(借)完成工事未収入金 648000 (貸)完成工事高 648000
(借)完成工事原価 518400 (貸)未成工事支出金 518400

そして当期。当期末までの累計費用は1,180,800。これは見積の工事原価総額1,152,000を下回るが、A工事は既に完成して引き渡している。よって、当期の実際発生原価を当然に当期の費用とし、収益計上額は、工事収益総額から前期末までに計上した収益を差し引いて計上(つまり残部)。
(借)完成工事未収入金 504000 (貸)完成工事高 504000
(借)完成工事原価 432000 (貸)未成工事支出金 432000

さて、今回集計するのは当期における各項目。A工事は、
完成工事高:504000
完成工事原価:432000
完成工事未収入金:360000
未成工事支出金:0
未成工事受入金:0

となる。売上と売上原価については上で計算したもの。完成工事未収入金はこの場合、収益総額-未成工事受入金によって求められる。未成工事支出金は進行基準においては毎期計上した先から完成工事高に振り替えられるためゼロ。未成工事受入金は売掛金(完成工事未収入金)と相殺されてゼロとなっている。

②次にB工事。
②B工事
収益総額:4,800,000
原価総額(見積):3,840,000

~実際工事原価~
前々期:なし
前期:984,000
当期:1,968,000

当期末までの入金額:4,000,000
※当期に見積改訂。原価総額を4,100,000に、収益総額を5,000,000としている。

まず前期末。進捗度は0.25625。収益認識は、1,230,000。
(借)未成工事支出金 984000 (貸)××× 984000
(借)完成工事未収入金 1230000 (貸)完成工事高 1230000
(借)完成工事原価 984000 (貸)未成工事支出金 984000

次に当期末。前期分と合わせて当期末までの発生原価合計は2,952,000。ただし原価総額を改訂しているため、進捗度は0.72。また収益総額も改訂している為、0.72×5,000,000の3,6000,000が当期末における収益認識の総額。前期分を差し引いて、当期の認識額は2,370,000となる。
(借)完成工事未収入金 2370000 (貸)完成工事高 2370000
(借)完成工事原価 1968000 (貸)未成工事支出金 1968000

さて、この時点で前期+当期の収益は3,600,000である。しかし前受金(未収工事受入金)が4,000,000計上されている。売掛金<前受金という状況である。したがって当期末では、売掛金はゼロ、前受金が差額の400,000計上される。

完成工事高:2370000
完成工事原価:1968000
完成工事未収入金:0
未成工事支出金:0
未成工事受入金:400000

[設例]工事損失引当金2(工事完成基準)

工事損失引当金の設例。
前回は進行基準での仕訳を見たが今回は完成基準。これは計算というよりも勘定の流れを理解しているかがポイントだろう。

[設例]
・×1年度期首において工事契約を締結した。工事契約で取り決められた工事収益総額は10000であり工事原価総額の当初見積額は9500である。
・工事の完成には4年を要する予定である。
・×1年度末において、工事原価総額の見積額は9600に増加した。
・×2年度末において、工事原価総額の見積額は10500に増加した。
・各年度における工事原価の発生額は以下のとおりである。
×1年度:2400
×2年度:4740
×3年度:2520
×4年度:840
・×4年度に工事が完成し、引渡がなされた。

[解答]
一応、問題上は収益や原価の総額を見積もっているが、今回は完成基準ということで、これらの見積は財務諸表に数字を載せる程の信頼性はないものと考える。進行基準と完成基準はつまるところ収益認識のタイミングの問題であるが、収益や費用についてある程度の精度でもって見積もれないのであれば、収益の認識は適当ではない。しかしそうであっても、財務諸表では利益よりも損失の発生に敏感なのがその利用者なのか、損失が見込まれた場合には財務諸表に計上される。同程度の見積精度であってもFSへの計上は利益か損失かにより分かれる。この非対称な処理は工事損失に限ったところではなく、引当金全般の計上は保守主義からの要請によるところが大きい。

完成基準による工事契約の会計処理では、毎期の費用が未成工事支出金(仕掛品)として徐々に資産計上される。この累計額は完成時に「完成工事原価」として(その期の)費用となり、対価との比較でもって利益/損失が認識される。つまり原則的には「完成工事原価が計上されるのは完成時の1度きり」ということになる。ただし損失引当金の計上は、その発覚したタイミングで行われる。工事全体で損失が計上されると見積もられた期末の費用とするのである。である以上、完成ではないものの、損失が見積もられた期には完成基準であっても例外的に完成工事原価を計上することになる。


ということで、もう一度問題を。

・×1年度期首において工事契約を締結した。工事契約で取り決められた工事収益総額は10000であり工事原価総額の当初見積額は9500である。
・工事の完成には4年を要する予定である。
・×1年度末において、工事原価総額の見積額は9600に増加した。
・×2年度末において、工事原価総額の見積額は10500に増加した。
・各年度における工事原価の発生額は以下のとおりである。
×1年度:2400
×2年度:4740
×3年度:2520
×4年度:840
・×4年度に工事が完成し、引渡がなされた。

まず×1年度末には、当期中の費用を資産計上する。
(借)未成工事支出金 2400 (貸)※内訳は不明 2400

次に×2年度。ここでは当該工事による損失が見積もられている。このため、原価総額と収益総額の差額は引当金繰入額として計上される。この借方「工事損失引当金繰入額」なる費用は、すぐさま借方の「完成工事原価」に振り替えられ、当期の売上原価となる。

(借)工事損失引当金繰入額 500 (貸)工事損失引当金 500
(借)完成工事原価 500 (貸)工事損失引当金繰入額 500

※進行基準では前期・当期に計上された収益・費用の総合的な差額がマイナス500となるように計算を行ったが、完成基準のもとではそもそも収益・費用は計上していないため、費用500をダイレクトに計上するだけでよい。

以後は各年度の費用を未成工事支出金として積立ててゆく。
次に完成時。ここで契約に基づく対価をようやく収益として認識するのである。
(借)完成工事未収入金 10000 (貸)完成工事高 10000

最後に完成時には引当金を取り崩す。工事が完了したことで、この工事に関する(売掛金以外の)一切の資産や負債は消滅することになる。ということで、引当金を取り崩す相手勘定は戻入益である。
(借)工事損失引当金 500 (貸)工事損失引当金戻入益 500

もちろんこのままでは完成時に利益があがってしまう。しかし当該工事から生じるのは10000の収益と10500の費用である。そして差額500の損失は上で計上されている。当然だがこれまでの工事に係る出費は合計で10500であり、これは資産計上されている。これを売上原価とするわけだが、完成工事原価は引当金繰入時に500計上されている。つまり差額が戻入益の反対仕訳ということになる。

(借)完成工事原価 10,000、 工事損失引当金戻入益 500 (貸)未成工事支出金 10500

まず貸方の未成工事支出金はこれまで積立てた資産の総額。これは自明だが、完成時には相手勘定にを売上原価(完成工事原価)とするはずである。ただし既に一部(500)の完成工事原価は計上しているため、この期の完成工事原価は10000となる。これはもちろん完成工事高と同額であり、収支はゼロである。というよりこの収支をゼロとするべく工事損失引当金繰入額を計上したのである。これによって×2年度には500の損失が計上され、他の年度ではすべて差し引きゼロの収支という状態。

[設例]工事損失引当金(工事進行基準)

発生が明らかになった損失は通常その場で計上される。この場合は「工事損失引当金繰入額」がそれである。
そもそも工事契約において損失が計上されるということは、「工事原価総額>工事収益総額」であるということ。もちろん契約の時点でこれではそもそも契約を交わさないだろうから、損失を認識するタイミングは工事原価の見積を改訂した場合に限定することができる(工事収益は契約で固定なので)。結論から言ってこれは発覚時に計上される損失となる。4年の工期の中で例えば1年経過段階での損失が見積もられれば、その段階での損失認識となり、これを各期に配分するような手続はとられない(これは引当金全般に共通する)。

[設例]
・×1年度期首において工事契約を締結した。工事契約で取り決められた工事収益総額は10000であり工事原価総額の当初見積額は9500である。
・工事の完成には4年を要する予定である。
・×1年度末において、工事原価総額の見積額は9600に増加した。
・×2年度末において、工事原価総額の見積額は10500に増加した。
・各年度における工事原価の発生額は以下のとおりである。
×1年度:2400
×2年度:4740
×3年度:2520
×4年度:840
・×4年度に工事が完成し、引渡がなされた。なお進行基準のもとでは、決算日における工事進捗度を原価比例法により決定する。

[解答]
(進行基準)
当初は収益10000、費用9500、つまり500の利益が見込まれる工事契約であったが、×1年度末に費用は9600に、×2年度松に費用は10500に改訂されている。つまり×2年度末において当該工事からは損失が見込まれることとなった。

・×1年度末(費用2400、総費用9600=進捗度25%)
(借)未成工事未収入金 2400 (貸)××× 2400
※材料費、労務費などの内訳は不明
(借)完成工事未収入金 2500 (貸)完成工事高 2500
(借)完成工事原価 2400 (貸)未成工事支出金 2400

・×2年度末(費用4740、累計費用7140、総費用10500=進捗度68%)
まず当期の費用を計上
(借)未成工事支出金 4740 (貸)××× 4740

次に原価比例法に基づく収益を計上。収益総額10000のうち68%が「当期末までの」計上額である(6800)。ただし前期末の時点で既に2500を計上しているため、当期の収益とすべきは6800-2500の4300である。
(借)完成工事未収入金 4300 (貸)完成工事高 4300

さて、この時点で工事収益総額10000を工事原価総額10500が上回ってしまった。つまり500の損失を計上しなければならない。
×2年度末の収益と費用は
収益4300、費用4740
として計上されている。つまり×2年度のPLは差し引きで既にマイナスの440である。ただし×1年度にはプラス100の利益を計上している。したがって累計での利益はマイナス340となっており、収益総額と原価総額の差額であるマイナス500にするためには、もう160の損失を計上しなければならない。これが工事損失引当金繰入額である。

(借)工事損失引当金繰入額 160 (貸)工事損失引当金 160

あるいは×1年度と×2年度のPL項目を合計すると、収益6800、原価7140であり、損失340となるため、差分の160を計上すると考えた方が分かりやすいかもしれない。

これを計上したのち、工事損失引当金繰入額は完成工事原価に含める必要がある。つまりこの年の完成工事原価は、実際発生原価である未成工事支出金および引当金繰入額のふたつから構成される。

(借)完成工事原価 4900 (貸)未成工事支出金 4740、工事損失引当金繰入額 160

・×3年度。ここで見積の改訂は行われていない。×3年度中の発生原価は2520である。ここまでの発生原価の累計は9660である。したがって進捗度は92%。×3年度末までに計上する収益は9200、過年度の収益累計額6800との差額2400を計上する。この時の「過年度収益累計6800」は当然純粋な収益であって利益ではない。つまり工事損失引当金繰入額などは加味しないことに注意。

(借)未成工事支出金 2520 (貸)××× 2520
(借)完成工事未収入金 2400 (貸)完成工事高 2400

さて、上のふたつの仕訳を見て分かるように、×3年度においては120の損失が計上されている。しかし実際は収益総額と原価総額の差額である500の損失は×2年度末に計上済みである。もう少し言うと、×1年度に100の利益を、×2年度に600の損失を計上したため、見積上の損失は既に認識されている状態である。その上で上の仕訳による120の損失を計上してしまうと、×3年度末では累計で620の損失となってしまう。これは当然見積とは異なるものである為、修正を必要とする。具体的には前期末に計上された工事損失引当金を戻しいれることで損失を相殺する。

(借)工事損失引当金 120 (貸)工事損失引当金戻入益 120

この戻入益を未成工事支出金と相殺することによって完成工事原価は完成工事高と一致する。
(借)完成工事原価 2400、 工事損失引当金戻入益 120 (貸)未成工事支出金 2520

・×4年度に工事の完成と引渡が行われているため、ここでは原価比例法ではなく収益総額や原価総額の残部を計上することになる。

(借)未成工事支出金 840 (貸)××× 840
(借)完成工事未収入金 800 (貸)完成工事高 800

ここでも支出が収益を上回っている。ただしこの差額は引当金の差額でもあるため、前年同様に戻入を行うことで収支が一致する。

(借)工事損失引当金 40 (貸)工事損失引当金戻入益 40
(借)完成工事原価 800、工事損失引当金戻入益 40 (貸)未成工事支出金 840

次項では完成基準での処理を見る。
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