監査基準

監査基準 第四 報告基準 まとめ

冗長な監査基準を少し噛み砕いて自分なりにまとめてみる。理解が深まったら適宜修正していく。

まず監査に基準が必要であることは当然の前提として始める。監査人は監査基準を中心として監査を実施するが、正確には監査基準を含んだ一般に公正妥当と認められる監査の基準(Generally Accepted Auditing Standards)に準拠することを求められる。

このGAASは「監査基準」で大枠を取りまとめてあり、それを実装レベルまで落とし込んだものが日本公認会計士教会の指針、具体的には「監査基準委員会報告書」や「監査・保証実務委員会報告」である(と思う。未読だけど)

さて、この抽象的基準である監査基準は以下の4つから構成されている。
1.目的基準(監査という行為の目的を規定)
2.一般基準(監査人の適格性条件、遵守すべき規範、業務全般)
3.実施基準(監査手続の選択適用方法)
4.報告基準(監査意見形成の判断、意見の表明方法)
である。今回は4の報告基準について。

<監査基準 第四 報告基準>

<一 基本原則>
1.GAASに準拠して監査しましょう。BS、PL、CSについて(全部ではないけど)重要部分を監査して、それから適正性について意見表明しましょう。(範囲区分に載る部分です)

2.GAAPの適用範囲について。いくつか選択の余地のある会計方針ですが、経営者がそれを選択します。その選択は適切ですか?そこまで監査しましょう。

3.(細かい)重要な虚偽記載を見落とさないようにしましょう。その上で全体も見渡してみましょう。

4.調べるべき部分の情報が得られなかったときは、FSが適正とか不適正とか言えないはずだから、素直に「わかりません」ていいましょう。

5.意見表明の前に、GAASにちゃんと準拠したか審査を受けましょう。


<二 監査報告書の記載区分(監査報告書の書き方についての決め事。実際にはテンプレ固定)>
1.どんな書類(BS、PLとか)を監査したか、どんな監査をしたか(試査とか)、その結果、適正かダメそうかを報告書に書きましょう。ちゃんと監査できなかったら、「わかりません」ていいましょう(もちろん自分の都合でできなかった、てのは無理です)。

2.適正意見を表明するけど、それとは別に説明とか追記する場合は、しっかり区分しましょう。

<三 無限定適正意見の記載事項>
GAAPに照らして適正だったら、そう言わなきゃいけません。その場合は次のように書いてください。

(1)どの書類を監査したのか。それからFS作成者は経営者で、それに対する意見表明が監査人です、と。

(2)GAASに準拠しました。GAASは全部じゃなくて、重要っぽいとこを監査するような仕組みです。一応経営者の未来予測についても検討しました。やりたい監査をちゃんと実施できました。

(3)経営者の作ったFSはGAAPにならったものです。大きな間違いはなさそうです。


<四意見に関する除外>
1.「ホントはこういう会計方法使うべきなのに」とか、「こういう事象はこういう記録が適切なのに」とか、思うところがあるんだけど、でもまぁ全体としては及第点(大嘘つきではない)かなって時は、そういうふうに言いましょう。この場合は、意見が食い違う部分についての説明とか、違った結果こんな影響があるよかも、とかも書きましょう。

2.「ホントはこういう会計方法使うべきなのに」とか、「こういう事象はこういう記録が適切なのに」とか思うところがあって、だめだこりゃって思った時はそう言いましょう。なんでそう思ったかも書きましょう。

<五監査範囲の制約>
1.調べたい事があるのに調べられなかった(書類無かったとか、見せてくれなかったとか)。それでその部分は重要だし捨て置けないけど、死ぬほど重要でもないって時は、「適正だけど、ここ分かりませんでした」って書きましょう。それが及ぼしそうな影響にも言及しましょう。

2.調べたい事があるのに調べられなくて、その部分が見れなきゃお話になりません!って時は、「全体的に分かりませんでした」って言いましょう。FSが正しいとか間違ってるとか、そんなふうには言わないでください。調べられなかった部分と、調べられなかった理由も書きましょう。

3.(※よく理解できなかったので想像で書きます。)
他の監査人が持っている重要な情報を、何らかの要因で得られなかった場合は、上の1.2.で見たような感じで処理してください。

4.これから起こる事態が、かなりの複雑系みたいな感じで、どうにも先が読めませんって場合は、1.2.に準じる感じで、分からないことをちゃんと言いましょう。

<六 継続企業の前提 ~会社が潰れそうな時は~>

1.財務諸表に対しては適正意見を言うんだけど、会社がちょっと潰れそうな状態で、その事についてもきちんと経営者が明示してるときは、大事なので「これ明示してますよ」って追記しましょう。

2.会社が潰れそうなんだけど、経営者がそれを書いてない時は、これ書かれてませんよっていう限定付適正か、書いてないんでダメです(不適正)って言いましょう。その理由も書きましょう。

3.潰れそうな時は、それに対処する方法を経営者が書くものだけど、これも監査の対象です。この対処法が書いてなかった時は、調べたい物が調べられなかった時と同じような状況です。それに準じて限定付適正か意見不表明にしましょう。

4.潰れそうな時は、そうじゃない時とFSの作り方が異なります。潰れそうなのに継続を前提としてFS作っちゃった時は、「それ違いますよ(不適正)」と言いましょう。その理由も言いましょう。


<七 追記情報>

次にあるものか、または潰れそうな場合はしっかり追記します。でもそれ以外は普通、追記できません。

(1)ちゃんとした理由で会計方針を変えるとき

(2)(期末において)将来おおきな損失が出るかも、出ないかも、、、でも出たらやばい時(係争中の裁判に敗訴する可能性、多額の債務保証等)

(3)決算はだいたい3月末だけど、そうすると定時株主総会は6月末くらい。監査は3月末に終わるけど、FSの承認を得るまでの3ヶ月くらいに何か困ったことがけだしありそうな時は書きましょう。

(4)(※これもちょっとよく分からないので想像力を駆使して変換します)
監査はちゃんとやったんだけど、監査してない書類について、自分の監査と矛盾する表現があったりしたら追記しましょう。

第四 報告基準 (六.継続企業の前提、七.追記情報

<六 継続企業の前提>
1 監査人は、継続企業の前提に重要な疑義が認められるときに、その重要な疑義に関わる事項が財務諸表に適切に記載されていると判断して無限定適正意見を表明する場合には、当該重要な疑義に関する事項について監査報告書に追記しなければならない。

2 監査人は、継続企業の前提に重要な疑義が認められるときに、その重要な疑義に関わる事項が財務諸表に適切に記載されていないと判断した場合は、当該不適切な記載についての除外事項を付した限定付適正意見を表明するか、又は、財務諸表が不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載しなければならない。

3 監査人は、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在している場合において、経営者がその疑義を解消させるための合理的な経営計画等を提示しないときには、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明の適否を判断しなければならない。

4 監査人は、継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切でない場合には、継続企業を前提とした財務諸表については不適正である旨の意見を表明し、その理由を記載しなければならない。

<七 追記情報>
監査人は、次に掲げる事項その他説明又は強調することが適当と判断した事項は、監査報告書に情報として追記するものとする。

(1)正当な理由による会計方針の変更
(2)重要な偶発事象
(3)重要な後発事象
(4)監査した財務諸表を含む開示書類における当該財務諸表の表示とその他の記載内容との重要な相違

第四 報告基準 (四.意見に関する除外、五.監査範囲の制約)

四 意見に関する除外

1 監査人は、経営者が採用した会計方針の選択及びその適用方法、財務諸表の表示方法に関して不適切なものがあり、無限定適正意見を表明することができない場合において、その影響が財務諸表を全体として虚偽の表示に当たるとするほどには重要でないと判断したときには、除外事項を付した限定付適正意見を表明しなければならない。この場合には、財務諸表に対する意見において、除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響を記載しなければならない。

2 監査人は、経営者が採用した会計方針の選択及びその適用方法、財務諸表の表示方法に関して著しく不適切なものがあり、財務諸表が全体として虚偽の表示に当たると判断した場合には、財務諸表が不適正である旨の意見を表明しなければならない。この場合には、財務諸表に対する意見において、財務諸表が不適正である旨及びその理由を記載しなければならない。

五 監査範囲の制約

1 監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、無限定適正意見を表明することができない場合において、その影響が財務諸表に対する意見表明ができないほどには重要でないと判断したときには、除外事項を付した限定付適正意見を表明しなければならない。この場合には、実施した監査の概要において実施できなかった監査手続を記載し、財務諸表に対する意見において当該事実が影響する事項を記載しなければならない。

2 監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、財務諸表に対する意見表明のための合理的な基礎を得ることができなかったときには、意見を表明してはならない。この場合には、財務諸表に対する意見を表明しない旨及びその理由を記載しなければならない。

3 監査人は、他の監査人が実施した監査の重要な事項について、その監査の結果を利用できないと判断したときに、更に当該事項について、重要な監査手続を追加して実施できなかった場合には、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明の適否を判断しなければならない。

4 監査人は、将来の帰結が予測し得ない事象又は状況について、財務諸表に与える当該事象又は状況の影響が複合的かつ多岐にわたる場合には、重要な監査手続を実施できなかった場合に準じて意見の表明ができるか否かを慎重に判断しなければならない。

第四 報告基準 (二.監査報告書の記載区分、三.無限定適正意見の記載事項)

<二 監査報告書の記載区分>

1 監査人は、監査報告書において、監査の対象、実施した概要及び財務諸表に対する意見を明瞭かつ簡潔に記載しなければならない。ただし、意見を表明しない場合には、その旨を監査報告書に記載しなければならない。

2 監査人は、財務諸表の表示が適正であると判断し、その判断に関して説明を付す必要がある事項及び財務諸表の記載について強調する必要がある事項を監査報告書におて情報として追記する場合には、意見の表明とは明確に区別しなければならない。


<三 無限定適正意見の記載事項>

監査人は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められると判断したときは、その旨の意見(この場合の意見を「無限定適正意見」という。)を表明しなければならない。この場合には、監査報告書に次の記載を行うものとする。

(1) 監査の対象
監査対象とした財務諸表の範囲、財務諸表の作成責任は経営者にあること、監査人の責任は独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにあること

(2) 実施した監査の概要
一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行ったこと、監査の基準は監査人に財務諸表に重要な虚偽に表示がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めていること、監査は試査を基礎として行われていること、監査は経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りの評価も含め全体としての財務諸表の表示を検討していること、監査の結果として意見表明のための合理的な基礎を得たこと

(3) 財務諸表に対する意見
経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められること

第四 報告基準 (一.基本原則)

~構成~

第四 報告基準

一 基本原則

二 監査報告書の記載区分

三 無限定適正意見の記載事項

四 意見に関する除外

五 監査範囲の制約

六 継続企業の前提

七 追記情報


~本文~

一 基本原則

1 監査人は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて意見を表明しなければならない。

2 監査人は、財務諸表が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して適性に表示されているかどうかの判断に当たっては、経営者が採用した会計方針が、企業会計の基準に準拠して継続的に適用されているかどうかのみならず、その選択及び適用方法が会計事象や取引を適切に反映するものであるかどうか並びに財務諸表の表示方法が適切であるかどうかについても評価しなければならない。

3 監査人は、監査意見の表明に当たっては、監査リスクを合理的に低い水準に抑えた上で、自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得なければならない。

4 監査人は、重要な監査手続を実施できなかったことにより、自己の意見を形成するに足る合理的な基礎を得られないときは、意見を表明してはならない。

5 監査人は、意見の表明に先立ち、自らの意見が一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して適切に形成されていることを確かめるため、意見表明に関する審査を受けなければならない。この審査は、品質管理の方針及び手続に従った適切なものでなければならない。


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