リー湘南クリニックからのお知らせ

院長ブログ−異端医師の独り言

☆ おデブの治療

アメリカの超一流内科誌*に興味ある無作為対照化試験の結果が報告された。
 スウェーデンで BMI(= 体重Kg ÷ 身長m ÷ 身長m)30以上のおデブ、4,047人を 2群に分け、片方、2,010人には所謂一般的ダイエットを指導し(ダイエット群)、もう一方、2,037人には何らかの胃の手術(胃と小腸をつなぐバイパス手術、胃部分切除、あるいは胃にバンドを巻く手術)を受けてもらった。
 平均 11年間経過を観察した結果、ダイエット群では殆ど体重の減少なし。一方、手術群では著明な体重減少が見られ、死亡率も減少した。 
 ダイエット群の方に、当院で実施しているダイエット法(要予約)を伝授すれば、結果は違ってきたでしょう。
*New England of J of Medicine 357:8, 2007
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) 早死にするデブ しないデブ(2007年9月の記事、校正)

leeshounann at 11:12|Permalink医学、科学論文の要約 

☆ Enzalutamideは 転移性前立腺癌に有効らしい

前立腺癌(他のがんも同じ)には、転移する(=命をとる)ものと転移しないものがある。どんなに検診の精度を高めても早期に両者を判別することはできない。転移しない癌を手術し、治したと錯覚している泌尿器科医がごまんといる。
 転移した前立腺癌には、去勢術(精巣摘出あるいは薬剤=リュープロイド)が有効であるが、数年で効果がなくなる。これは、前立腺癌細胞が副腎由来のステロイドを男性ホルモンに転換するためと考えられている。
 去勢術を受け、化学療法(そもそも、延命効果は無い)を受け、効果がみられなくなった転移性前立腺癌患者 1,199人を無作為に 2対 1の割合で、Enzalutamaide(=MDV3100:経口薬)対プラセボ群に振り分け総生存を比較した論文*。何と中央生存期間が、Enzalutamideで 18.4ヶ月に対してプラセボ群では 13.6ヶ月と大差がみられた。
 作用機作から考えると、転移性前立腺癌患者には、Enzalutamideを初期から投与すれば、優れた効果が期待できる。久しぶりの朗報である。
*Scher H.I. et al Increased Survival with Enzalutamide in Prostate Cancer After Chemotehrapy N Engl J Med 367:1187 2012

leeshounann at 12:02|Permalink有害な検診 前立腺癌 

☆☆ おデブの内科的治療

工業圏の住人は、普通に生活していれば肥る、これは環境と遺伝子のミスマッチによる。環境とは「美味しい食品を簡単に手に入れられるようになった、座ったままの生活、交通手段、の発達など」。遺伝子とは「かつて人類が飢餓に際し、発達させてきた倹約遺伝子群」。倹約遺伝子群は「飢餓(ダイエット)に際し、基礎代謝を低下させ、飽食時に余分なエネルギーを内蔵脂肪として蓄える」働きをし、生存の可能性を高めた。
 100人に一人くらい、ダイエットを意識しなくても肥らないヒトがいる。かかる人類は、万歩計で計れない運動を無意識のうちにしている。例えば、椅子に座っていても無意識に体を傾け、腹筋や大腿筋を使ったり、それにより一日数百カロリー(数字は失念)余計にカロリーを消費する。
 さて、ダイエットに科学のメスが入ったのは 1994年、抗肥満ホルモン leptinの発見に端を発する。その後、ghrelinをはじめ食欲をコントロールするホルモンが次々に発見され、2001年頃から超一流の科学誌に肥満やダイエットの総説を散見するようになった。
 2008年8月号の NEJM*に首記の「Nonsurgical Management of Obesity in Adults」という論文が掲載されている。著者(Eckel,R.H.)は、減塩政策で失態を演じた国立心肺血液研究所(NHLBI)のガイドラインをそのまま紹介し、ダイエットを理解しない能天気な論文を鵜呑みにし、そしてダイエット薬服用へと誘導している感がある。しかし、何しろアメリカの超一流内科誌、僕の経験とあわせ、ダイエットの科学を紹介します。
 論文*では、まず食事について諸説が紹介されている。「総カロリーを減らして減量に成功した研究」が紹介されているが、摂取カロリーを減らせれば痩せるのは当たり前。
 低脂肪食については論争があると記されているが、脂肪は肥らない。いくら血中脂肪濃度が高くなっても、それを体脂肪に変換するホルモン、インスリンがでてこない(=分泌されない)からだ。ヨガの修行に「バターと牛乳だけを食べる」のがある。一日の摂取カロリーは7千数百 Kcalになるが、みるみる痩せる。かつては、これをヨガの神秘性に求めていたが、種を明かせば(科学が進歩すれば)仕掛けは簡単。
 低炭水化物食は、一時的ダイエット効果があるが一年続かないと紹介されている。
 意外だったのは、低糖化指数ダイエット。糖化指数とは、食べた後 2時間目の血糖値(血糖値の濃度下面積=AUC)、これが高くなりやすい食品は肥りやすいと考えられている。なぜなら、インスリンとインスリン様成長因子が分泌されるからだ。2つの無作為化試験によると、低糖化指数ダイエットは同等のカロリー制限と減量効果に差がなかったそうだが、前者ではインスリン分泌が抑制された。追試を待つしかない。
 高タンパク食は肥満ホルモンが分泌されず、基礎代謝を高め、ダイエット中の筋肉量低下を抑制する。だからお勧め。
 数社のダイエット食、いずれも減量効果が示されているが、こんなものを一生食うわけにはいかない。
 現在の知見をもって、僕がすすめるダイエット食は、高タンパク・中脂肪・低糖化指数食。
 運動にいたっては噴飯ものであった。一日 80分の歩行、あるいは 35分のエアロビック運動**、これにカロリー制限を加えると、さらに減量効果があったという研究を紹介している。そんなの当たり前、マラソン中毒者やサーファーでない限り、誰がこんな運動を毎日続けられるの? 差を出せばいいというものではなく、実行可能な役に立つ研究を待ちたい。Science誌***によると、過激な運動は食欲亢進ホルモンを増加させ、食欲低下ホルモンを低下させるので、肥りやすくなる。
 FDA(食品医薬品局)で認可されている痩せ薬は 4つ、Diethylpropion、Phentermine、Orlistat、そしてSubtramine。いずれもインターネットで購入できる。
 前 2剤は、覚せい剤の誘導体、日本のサノレックスと似たものと思われる。論文では、習慣性の可能性には言及しているものの、長期投与で安全だったという研究結果を紹介している。まだ比較的新しい薬なので 3カ月以上は連用しない方が無難だと思います。
 僕はサノレックス(食欲抑制剤)を処方して 20年近くになりますが、日本発の薬なのでエビデンスに乏しく、慎重に処方しています。経験的に、連用しなければ習慣性は無いようです。肥満者、2型糖尿病、脂質異常症や高血圧症には、本剤の助けを借り、5日の断食を勧めています。断食により、血中にケトン体という食欲を抑制する物質が出現し、以降のダイエットが楽になります。減量に成功したら、それをいかに持続させるかが重要。詳細は、カウンセリングしています。
 Orlistatは消化管での脂肪吸収を阻害する。結果、文字通り脂肪を排泄する、非常に安全な薬だが便意を感じると待ったなし。論文では、Orlistatを長期間服用しても安全でダイエットを維持できたという研究結果が報告されている。が、だいぶ前に「Orlistatを長期間服用しても痩せない」という論文を読んだ。この痩せ薬、製薬会社を肥らすだけ。
 Subtramineは食欲を抑制する薬。スタッフ全員で飲んでみたが、効いたのは一人だけ、僕に至ってはもりもり食欲が亢進した。本剤による心臓死が続いたため、イタリアでは、本剤の承認を取り消した。論文では、副作用として軽度の頻脈と血圧上昇(時に重篤)と紹介されているだけ。
 誰しも割れた腹筋にあこがれるので、TVショッピングの類では、次から次へと腹筋商品が紹介されます。引き締った二の腕もしかり。残念ながら、部分痩せはできないのです。ボディービルダーは猛烈に食べ、筋トレをして、そして猛烈なダイエットをするのですよ。
 最後に、ダイエットにあたりモチベーションを高める研究結果***を。ダイエットすると、身体がいわゆる「倹約モード」に入り、基礎代謝が低下する。そのため肥りやすくなるのだが、この倹約モードが若さを保ち長寿をもたらすと考えられている。実験に供したすべての動物で、自由に摂食させた場合と強制的にダイエットさせた場合、ダイエット群の方が長生きした。ヒトでは、130歳まで生きると予想されている。アメリカで超一流の科学者たちは徒党を組んで、ダイエットに取り組みだした。彼らの目的は、従来考えられていた天寿をこえて、未来を見たいそうだ。
 これは僕の見方ですが、売れっ子モデルはかなり痩せていますよね、世の男性が好むから。もしかすると、子孫を残す上で、わが遺伝子群が健康な女性を選別しているのかもしれない。
*New England Journal of Medicine 358;18:1941, 2008
**有酸素運動なるもの、誤訳から生じたしろもの。30分運動するとして、30分間続けても、10分ずつ分けても、消費される脂肪量は同じ、念のため
***Research on Aging: The End of the Beginning. Science 299:1339. 2003 
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) 早死にするデブ しないデブ(2008年11月の記事、校正)

leeshounann at 16:06|Permalink医学、科学論文の要約 

☆ バカの一つ覚え γGTP=アルコール性肝障害

数日前、国賊放送局・NHKが「非アルアコール性脂肪性肝炎」特集をやっていた。解説者は、頭の悪そうな、どこかの大学教授。肝機能の推移をみるのに、GOT、GPT(肝細胞に含まれる酵素で肝細胞が壊れると、血液中に放出される)が高くなる、ここまではいい。その一覧表の中に、γGTP(ガンマーGTP)が記されていた。いつか記し、いつか消したが、一つ旧い内科書(HARISON’s INTERNAL MEDICINE)には「γGTPの意味は不明」と記されていた。最新版には、索引に γGTPすらない。
 日本では、検診に γGTPが含まれ、この数値が高いと「アルコール性肝障害とか脂肪肝」と烙印を押される。
 ちなみに非アルアコール性脂肪性肝炎には、ある種の糖尿病の薬が有効です。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表早死にするデブ しないデブ  (2009年9月の記事、校正)

leeshounann at 16:56|Permalink基礎医学・臨床医学 

★ 国別 おデブ女性の割合

appllo 0112000年代のおデブ女性(BMI>30:BMI=体重・Kg÷身長・m÷身長・m)の割合が国別(15ヶ国)に紹介されています*。
 肥満女性割合の多い国から少ない順に: トンガ(70%); サモア、エジプト(69〜40%); USA、メキシコ、ヨルダン、UK、オーストラリア、オランダ(39〜20%); モンゴル(19〜10%); 香港(9〜5%); イエメン、中国、日本、エチオピア(5%未満)。
 これはとりもなおさず、肥満女性を好む男性の割合を反映しているはずである。パラオ(=肥満女性が非常に多い)で、石井さん(お写真、後列左側の方;クリックで拡大)から伺った話です。パラオの男の子が性に芽生えるのは、太いヤシの木に登る時(オチンチンと木がこすれる)だそうで、日本では体育の「棒登り」の時だそうである。説得力のある洞察だと感心しました。
*Swinburm B.A. et al The global obesity pandemic: shaped by global drivers and local environments Lancet 378: 804 Aug 27, 2011
(2011年10月の記事、小校正)

leeshounann at 10:54|Permalink医学、科学論文の要約 

★ 金魚の思い出

 北里研究所・前半時代(1982〜1984年)、熱海での医局旅行でのお話。宴会後、僕は睡魔におそわれ眠りこけたが、院長をはじめ皆さんは、夜の街にくりだした。翌朝、朝食のとき、みなでビールをあおりながら、院長が上機嫌で「あれは、すごかったね」、「あれには驚いた」…。なにやら「ストリップショー」にいき、踊り子がしゃがんで、グラスに入った金魚を膣の中に吸い込み、一踊りしたあと、生きたままグラスにもどしたそうだ。膣息をまぬがれた金魚も気の毒だが…。
 翌日、医局の古参、超潔癖症・嫌われものの N秘書が、だれが金魚を観にいったのか、リストを作成していた。数日間、金魚組の「てんやもの」の注文を拒否していた。

 アメリカ時代、郊外のアパートに 5年間暮らしたわけだが、帰国が近づくにつれ、いろいろなものを処分しなくてはならない。「Moving Sale」とキャンパス内に張り紙を出しておくと、千客万来である。笑いが止まらなかったのは、ポトス(観葉植物)、どんどん増えるから、いつの間にか数十鉢になっていた。これが、飛ぶように売れた。
 車は、2台ともすぐに売れたが、中古シェビー(シボレー)のステーションワゴンを買った中国人は、したたかであった。売価の半分の値段の領収書を求められ、訳を聞くと、消費税を節約できるそうだ(車を登録するときに、領収書を提示し、消費税を納める)。
 困ったのは、金魚である。3匹飼っていたが、どんどん大きくなり、つど大きな水槽を購入し、巨大水槽と巨大金魚が残った。アパート内の巨漢・大工さんが「200ドルで購入する」と約束し、水槽と金魚を持っていってくれた。帰国日直前になっても、お金をもってこないので、請求に行ったら、「すみません、200ドルを工面できませんでした」とのこと。彼に差し上げようとも思ったが、フェアーの国、金魚らを引き取り、オンタリオ湖に注ぐ小川に放流しました。

 1995年ころ、GFに六本木の「金魚」につれて行ってもらった。今でいう、ニューハーフの煌びやかな世界、すんでのところ、その世界にはいらずにすみましたです。どうでもいいのですが、その日、生まれてはじめて「アン肝」を食し、あまりの不味さに驚きました。

 北海道の後藤さんに紹介いただいた、立川談春・著「赤めだか」。とくに、タイトルにある、談志・師匠が金魚を、赤めだかと思って飼いつづけたくだり、腹筋が痛くなりました。それにしても、談志・師匠喉頭がんの治療を受けなかったので長生きされましたね。

リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表)(2009年4月の記事、校正) 

leeshounann at 15:19|Permalink エッセイ 雑学 

☆★★ 英語から隔離された島国

「私は決して自国批判マニアではない。しかし日本人の頭脳を動かす日本語というオペレーションシステムには、さまざまな論理的欠陥があり、その欠陥が、日本人の国民性に重大な影響を与えている。」という文に、かなり前に出会った。自分が英語を操れるようになってから、なるほど正鵠を射た指摘だと思う。「英語は日本語より論理的」で、例えば、数学や統計学を理解するのに英語の方が楽で早い。日本人が書いた日本語も英語で考え出された文を日本語にしたものは、無駄が少なく分かりやすい(例えば、梅田望夫・著「ウェブ進化論」)。蛇足ながら、以前に 記したが「頭の良し悪し」を決めるのは、いかに良書を読んだか、良書がソフトに相当する。
 先日、オランダ(=臨床医学の最先進国、安楽死やドラッグ使用が合法化されている)に在住中、心臓発作と手術を経験された患者さんと「何故、日本にまともな医学が根付かないのか」に話題が及んだ。世界中どこへ行っても英語が通じる、それも奥地に入っても。彼曰く「日本が国際化したなんて、とんでもないよ」。僕の経験では、フィリッピン奥地では「タガロク語」しか通じなかったのが唯一の例外、どこでも英語が通じた。日本人が英語を喋れない理由は、記したが、日本の将来のため、英語教育に力をいれねば、好き嫌いは別にして。ちなみに工業圏で英語が通じないのは、日本と韓国(最近韓国では、英語を操れる人が急増しているそうだ)。人間ドックや間接撮影装置があるのも日本と韓国
 Googleの出現で案外早く日本の真の国際化がすすむと期待したが、自動翻訳は、まだまだ道半ばらしい(梅田望夫、平野啓一郎・著「ウエブ人間論」)。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2007年 7月の記事、校正)

leeshounann at 12:38|Permalink エッセイ 雑学 

愛犬コボ と 関節痛

001一昨年(2011年) 12月中旬に愛犬が突然びっこをひきだし、獣医に診てもらったところ、「右大腿骨頭形成不全」との診断。散歩をあまりさせず、症状が悪化すれば大腿骨頭切断術が必要と告げられた。飼い主としてできることとして「グルコスアミンとヒアルロン酸」錠を購入したが、水に溶けない。ならば、鳥のドラムスティックを大量に購入し、蒸して軟骨をえり分け、毎日与えている。軟骨は消化管で分解されるはずだが、以来 1年以上びっこをひかないどころか、駆け足もするようになった。HARRISONの内科書通りである。
 よく喧伝さている「グルコスアミンとヒアルソン酸」、いんちきではなく、「膝の痛みに」効果があると思います(メーカーとは一切関わりはありません)。

leeshounann at 09:52|Permalink【日 記】 

★ ハマトンの見切り

梅田望夫・著「ウェブ時代をゆく」の中で、“生きるために水を飲むような読書”の最初の一冊が、渡辺昇一・著「知的生活の方法」だったと記されていた。
 それで「知的生活の方法」を 32年ぶりに再読した。多くの印象に残る文に出会ったが、最も印象に残ったのは、「知的生活を志すような人は、はじめっから時間を無駄にすることに無頓着ではない。だから時間をいかにも無駄に使っているように思われるぶん大した問題にはならない。たとえば友達と一晩飲んだとか、ヘボ将棋をしたとかいうのは、まったく無駄な時間のようであるが、気晴らしや気分転換にもなっているので、大したことはない。危険なのはまさに勉強なのだ。」(ハマトンの見切り:159ページ)
 2008年 5月号のScience誌に「道徳の起原*」という記事が載っていた。面白そうなので全訳に取り組んだ。構文が非常に難解で、知らない単語だらけ、3か月たって半ページしか訳せていない。はたと気づいた、この勉強のため、他の論文や本にほとんど目を通していない。全訳はあきらめ、斜め読みに変更。ハマトンの見切りを体現した。
PS 「緩和ケアーと QOL」という総説に取り組んで 2ヶ月になります。ハマトンの見切りが脳裏をかすめましたが全訳できました。これから校正し、数日中にはアップできると思います。(2011年9月24日)
*Miller G. The Roots of Morality Science 320:734-737, 2008
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2007年ころの記事、校正)

leeshounann at 15:17|Permalink エッセイ 雑学 

☆ 転移性乳がん の特集

001が 20011年 10月号の米臨床腫瘍学会誌(J of Clinical Oncology Oct 1, 2011)に掲載されている。
同号に掲載されている薬剤「Halaven」の広告です(クリックで拡大)。既治療の転移性乳がん患者を 2群に分け、Halaven群対主治医選択の治療群の総生存(OS:被験者の生死を評価点『end point』とするので、観察者のバイアスがはいらない)を比較したもの。両群とも 36ヶ月目生存者はゼロ。Halaven治療が有意に総生存を延長したと謡っていますが、効果を実感されますか。いつか記しましたが、統計法(カプランマイヤー法)のマジック。
 ランセット誌の薬剤広告に対する方針(=ある薬剤の効果に関する論文が掲載される号には、その薬剤の広告を掲載しない)とは、雲泥の差です。(2011年10月の記事、校正)

leeshounann at 10:33|Permalink基礎医学・臨床医学 

☆ コーヒーは、前立腺がんを予防する

約 4万 8千人を対象に、1986年から前向き≪prospective:過去の病歴をほじくりかえすのではなく、これからデータを収集しますという研究:それに対して retrospective[後ろ向き研究]はすでにある結果(カルテ)を分析する方法で精度が低い[=再現性が乏しい]≫に前立腺がん発症率を観察した*。2006年まで、5,035人に前立腺がんが発見され、うち 642人が致死的癌であった。一日コーヒーを 6カップ以上飲む集団では、コーヒーを飲まない集団に比べ致死的前立腺がんが 60%低下(decaffeinatd coffee=カフェインを含まないコーヒーでも同様)、一日に 1〜3カップ飲む集団でも致死的前立腺がんが 30%低下した。
 コーヒーには、カフェーインをはじめ様々な抗酸化物質が含まれているが、カフェーインは役割を演じていないようである。
 ≪かつて、コーヒーと発がん性の因果を求め、多くの臨床研究がなされて来たが、シロだった。老化や認知症を遅延あるいは予防する効果も期待されている。おそらく、他のがんの抑止効果もあると推定される。≫
*Wilson K.M. et al Coffee Consumption and Prosrare Cancer Risk and Progression in the Health Professionals Follow-Up Sudy J Natl Cancer Inst 103: 876, 2011
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表)(2011年10月の記事、校正)

☆★ 前立腺がんの PSA検査は受けるべきか 米政府は「推奨せず」

なる記事が 2011 年 10月 17日発売(10.30号)の「サンデー毎日」に掲載されました。
 先日、かかる題材について取材を受け、朝から 2時間近く前立腺がんのイロハを「刺激的に講義(取材記者・談)」しました。取材内容が非常にコンパクトにまとめられ、135ページ「自覚症状出てからでも遅くない」に紹介されています。
 あれから 1年以上、米国でも日本でも PSA検診が衰える気配はないですね。利権複合体(製・官・学)、恐るべし。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2011年10月の記事、加筆)

leeshounann at 15:36|Permalink有害な検診 前立腺癌 

☆ ナチュラルキラー(NK)細胞

ナチュラルキラー(NK)細胞は、先天免疫の主要因子として働く細胞傷害性≪抗体=液性免疫に対して、自ら相手に喰らいつくこと≫リンパ球の 1種であり、特に腫瘍細胞やウイルス感染細胞の拒絶に重要である。細胞を殺すのに T細胞とは異なり事前に感作させておく必要がないということから、生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞(killer cell)という意味で名付けられた。形態的特徴から大形顆粒リンパ球と呼ばれることもある。(ウィキペディア)…そうだ。
 ところで、NK細胞の活性を測る方法をご存じか。Yac-1という細胞を、細胞が必要とする物質に、放射性同位元素をつけたものを培養液に加え、数日間培養する。そして、上澄みを洗い、白血球をまく。いわゆる NK細胞が、標的を食い殺すと、上澄みに放射性同位元素が漏れ出て、これを測定する。
 一回でも、この試験をやったことがある者には常識だが、結果に非常なバラツキがあり、いかようでも、恣意的に、データをえらべる(放射性同位元素に 75-Selenium-methionineを用いると、比較的誤差が小さい*)。NK、NKとほざいている輩は、バカかインチキとみなしてよい。
*Lee K. et al Splenic Cytotoxicity during High Dose IL2 with Cyclophosphamide Therapy in Mice: Dichotomy between Short- and Long-term Assay Kitasato Med. 20: 319, 1990 (李ら マウスにける大量 IL2とサイクロホスファマイド治療中の脾細胞殺細胞活性:短期間と長期間アッセイの乖離)
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2009年9月の記事、校正、加筆)

leeshounann at 11:09|Permalink基礎医学・臨床医学 

☆ セレニウム 再び

1996年に、セレニウムとビタミンEには、前立腺癌の予防効果があると報告され(1)、その後、2009年初頭、大規模な無作為化対照試験で有用性が否定された(2)。
 ところが、セレニウムとビタミンEには、前立腺癌の予防効果があるらしいが、悪性度の高い前立腺癌の病勢を加速する可能性がある。だから、(2)の試験で予防効果が示されなかった可能性がある。であるので、もう一度大規模臨床試験をしましょうというコメントを臨床腫瘍学会誌の編集室が、2009年 8月に記した(3)。
 2011年 10月に報告された 3ヶ国共同(米、カナダ、プエルトリコ)の大規模臨床試験(4)(約 3万5千人を無作為に、ビタミンE単独、セレニウム単独、ビタミンEとセレニウム、そしてプラセボ群に分け、7〜12年経過を観察)によると、ビタミンE単独は前立腺がん発症率を増加、セレニウム単独では低下、セレニウムにビタミンEを加えると更に低下した
 通院中の患者さんへ、従来通りビタミンEとセレニウムの併用をお勧めします。ビタミンEを単独で服用されている高齢者は、認知症や心血管系疾患の予防効果が期待されるので、継続をお勧めします。

(1)Effects of selenium supplementation for cancer prevention in patients carcinoma of the skin: A randomized control trial、JAMA 276: 1957 1996
(2)Effect of selenium and vitamin E on on risk of prostate and other cancers: SELECT、JAMA 301: 39 2009
(3)Selenium, Genetic variation, and Prostate Cancer Risk: Epidemiology Reflects Back on Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial、JCO 27: 3569 Aug 2009
(4)Klein E.K. et al Vitamin E and the Risk of Prostate Cancer、JAMA  306:1513 Oct  2011
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2009年9月の記事、校正、加筆)

☆☆☆ 漢方薬も養子免疫(LAK)療法もインチキ

漢方薬は不当表示である。「生薬だから…、とか数千年の歴史の中で淘汰されてきた」とかまことしやかに言われるが、その薬効や副作用について、全く科学的検証が加えられていない。
 漢方薬を無効と知りながら処方する医者もいるが、その理由は一にも二にも「集客」である。たちの悪いのは、漢方を有効と信じる医者である。科学を学んだはずの医師が、一体何を根拠に漢方を処方するのか(ツムラやカネボウが配る処方本を根拠にしている場合が多いようだ)、私には到底理解できない。
 アメリカの有名病院でも、漢方科を設置しているところが増えているが、理由は「集客金儲け」である。

★★驚きの内緒話
北里研究所病院(港区)には東洋医学研究所があり、WHOの支援も受け、漢方などを研究している。当時の主任研究者 T先生(現在、東大医学部准教授)は、アメリカ一流医学部へ留学経験もあり、アカデミックで、テレビにもよく出演し、「漢方と西洋医学との統合」などを解説されていた。また有名人を多く診ていた。
 僕は T先生に気に入られ、ある日、T先生が「リー先生、漢方薬はインチキなんだよ…。きのこ類に抗癌作用があるというのは、僕がでっち上げたんだ」と述べられた。漢方研究の第一人者から、予想もしない内緒話。それから、懐疑的に漢方を観てみると、なるほど漢方には、エビデンスが存在しない。近藤誠氏の数々の著書に接してから「漢方はインチキ」と確信した。T先生のようにインチキと知りながら、立場上テレビで解説するのと、頭から「漢方を有効と信じている」おめでたいお医者様とは、雲泥の差がある。
 WHOの支援というのも要注意。エビデンスなしに高血圧や糖尿病の診断基準を勧告しているのは WHO、また「WHOにはニセ科学者が巣くう」という記事が Science誌にありましたね。
 鍼灸については、事実上、無作為化対照試験は無理。しかし、筋肉のコリを解除したり、疼痛を寛解させるのを目の当たりにし、また、その作業仮説に再現性がありそうので(鍼灸師により)有効と直感しています。 

☆☆LAK療法
大病院が宣伝する「養子免疫療法」も悪質だ。へんてこな名前は、adoptive immunotherapyに由来する(LAK療法、TIL療法、リンパ球療法、免疫細胞療法など)。これは、患者さんからリンパ球を採取し、インターロイキン2(IL2)という蛋白質を含む培養液で 3〜7日間培養し、患者さんに点滴で戻す行為である。1980年代アメリカ、外科医S.A. Rosenbergが考案し、癌治療の切り札と期待され「魔法の弾丸」とタイムズ紙の表紙を飾ったほどである。しかし、その後の研究で無効と判明、研究プロジェクトは解散した。日本では、大病院がこの効果のない行為を「先進医療」と称し、1回の点滴に 40万とか 110万円とる。1〜4週間毎に延々と死ぬまで点滴をくり返す。これは、藁をもつかむ患者さんをカモにした詐欺である。悪徳病院を見つけるには、「LAK 病院」あたりで、ご検索ください。
LAK細胞のこさえ方
ネズミに一回の LAK細胞を静脈注射(8x10の7乗個)するのに、3匹のネズミ(mice)を屠殺する。脾臓を 3個とりだし、網の上ですり潰す、そして水をかけ、赤血球を破壊する。で、培養器に移し、IL2が入った培養液を加え、3日間培養すると試験管内で標的細胞を破壊するようになる。
 ヒト様で、LAK療法が効かない、簡単な理由の一つは、こんな大量の白血球を、得られないから。もう一つは、点滴しても LAK細胞が標的(がん組織)に達し得ないから*。
*Lee,K.et al Ineffectiveness of Adoptive Chemoimmunotherapy with Lymphokaine-Activated Killer Cells, Interleukin-2 and Cyclophosphamaide on Palpable Intradermal Murine Bladder Cancer(李ら、ネズミ背部皮下に移植した、膀胱癌に対する、化学・養子免疫療法の無効性) J of Biological Response Modifiers 7:43, 1988
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2007年1月の記事、短縮、加筆

★★ 経産省の現役幹部が記した

古賀茂明・著「日本中枢の崩壊」がベストセラーのようだ。 読了して、現在進行形の「原子力村という…ガラパゴス化した産官学連合体」をはじめ、生々しい内部告発。副島隆彦氏の主張とは真逆で、「小泉・竹中構造改革」を高く評価され(退陣後、批判されるようになった理由も記されている)、FTAや TPPに参加すべきと主張されている。

PS  現役(厚生)官僚が実名で内部事情を明かした、初めての著書は、宮本政於(みやもとまさる)・著「お役所の掟」、「お役所のご法度」、「お役所の精神分析」他(1996年前後)だと思う。彼は、若くして不明死され、今思えば、他殺だったのかもしれない。
 わが業界では、「検診『村』や抗がん剤『ワールド』というガラパゴス化した産官学連合体」が跋扈する。(2011年6月の記事、小校正)

☆ 前立腺がん: 進化それとも革命?

という総説が 2011年号の米臨床腫瘍学会誌*に掲載されている。2011年年初頭、超一流誌に掲載された論文**が火を付けたらしい。
 転移した前立腺がんに女性ホルモン(diethylstilbestrol)が著効を示すことをハギンズ博士らが報告し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。しかし、その後の無作為化試験(RCT)で心血管系の合併症のため、総生存(OS)が変わらないことが判明した。現在は、心血管合併症の少ない(諸説がある***)外科的あるいは内科的(リュープロイド皮下注)去勢術が主流である。がんは見る見る縮小するが、2〜3年で効果が無くなる。その場合、Docetaxelという抗がん剤が用いられることが多いが、がんの縮小がみられても延命効果は無い。
 がんがホルモン抵抗性を獲得する機序は長い間不明であったが、がん細胞が血液中微量の男性ホルモンに反応するようになる、あるいは男性ホルモン前駆物質を男性ホルモンに変換させるように進化することが分かってきた。その経路を遮断すべく様々な薬剤が開発されている。先の超一流誌**に掲載された論文は、ホルモン抵抗性・Docetaxel無効の患者に abirateroneを投与したところ、3.9ヶ月の延命効果が見られたという内容。
* Small E.J. et al Prostate Cancer: Evolution or Revolution J. Clinical Oncology 29(27): 3595, 2011
** De Bono JS et al Abiraterone and increased survival in metastatic prostate cancer N Engl J Med 364: 1995, 2011
***Alibhai S.M.H. et al Cardiovascular Toxicity of Androgen Deprivation Therapy: New Door Opens J. Clinical Oncology 29(26): 3500, 2011
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2011年10月の記事、校正)

★ ED治療薬

リー湘南クリニック開設(2003年)当初、製薬会社の営業マンさん(MR)のご接待や、調剤薬局からの盆暮れのつけ届け、ありがたかったですね。あとボールペンなどの事務用品。MRさんと僕が相談に入ると、スタッフたちは聞き耳を立てていましたよ、いつ御馳走にありつけるかと。経営が安定してきたので、身勝手といえば身勝手ですが、面倒くさいので 2005年から、付届けや接待は、辞退させていただいております。で、何か困ったことは、別にありません、得したことは、しがらみなく処方できることでしょうか。
 ところで、ED治療薬の売上高は、うちが神奈川県で第 2位なのですよ(一位は、ソープランド地域にある診療所)。バイアグラのファイザー製薬さんは、以前 2人でうちを訪問されていましたが、片方が、あまりにも頭が悪いので、頭の悪い方の出入りを禁止したところ、お二人とも来訪しなくなり、以来わざわざ東京から来訪されるようになりました。いつも、インポ学会の報告だとか、患者問診マニュアルなんかを持っていらっしゃる。「月に何回性交渉されますか」…。先日、「うちが EDの患者さんが多いのは、こんなくだらない質問をしないから、患者さんのプライバシーに立ち入らないから」と説明申し上げた。だいたい、性生活なんか十人十色でしょうよ、sexの達人でない医者に何が分かるのか。
 もう時効なので。ファイザー製薬さんが、日本でバイアグラの治験を開始した頃(1998年)、僕はヘッドハンティングされ、新宿の本社まで面接にいったのですよ。提示された厚遇にクラクラしましたが、官に人脈をつけやすい東大卒の方が採用されました。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表)(2008年、8月の記事、校正)

leeshounann at 14:29|Permalinkリー湘南クリニック 

★ 詐欺

先週、62歳女性が「肺がん」のセカンドオピニオンを求め来院された。彼女は、近藤誠・著「患者よがんと闘うな」を読破されていたにもかかわらず、職場検診(CT)で発見された肺がんの手術(右肺上葉部分切除と中葉切除術そしてリンパ節廓清術)を 2年前に受け、術後から「ユーエフティー」を処方されていた。そして、驚いたことに術後、横浜の病院で「活性化リンパ球療法」を受けていた。相談の主な内容は「最近、左肺に影が見つかり、切除術を勧められているがいかがなものか」。
 私の助言は「症状が無いのに手術を受けても、得るものはありません。様子見がベストですよ」、「ユーエフティーは有害無益なので即刻中止してください」そして「活性化リンパ球療法は、何の効果もないのに法外な料金をとる、これは詐欺以外の何ものでもありません」。
 それにしても、活性化リンパ球療法、LAK療法、NK細胞療法などなど、何の効果も無いのに効果を喧伝し、患者を集め一回数十万円をぼったくる、大学病院でもかかる行為を施行しているところがあると聞く。これは、藁をもつかむ患者を鴨にした立派な詐欺です。被害者が訴えれば詐欺罪*が成立すると思うが、被害者の生存期間は限られている。同じ文脈で、「効果の無いユーエフティー」を長期処方するのも詐欺に近いと思う。すると、転移がんに延命効果の無い治療を「標準治療」と称して施行するのも詐欺に近いのではないだろうか。
*詐欺罪とは、人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする(例えば無賃宿泊をする、無賃乗車するなど、本来有償で受ける待遇やサービスを不法に受けること)行為、または他人にこれを得させる行為を内容とする犯罪のこと。刑法246条に規定されている。未遂も罰せられる(250条)。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表

leeshounann at 13:36|Permalink医療という業界 

【がんは「治療しない」「発見しない」が一番!】

日刊ゲンダイに毎月曜連載していた、近藤誠氏の「がん相談室」は昨年で終了。今年から「がん治療最終講義」の連載が始まった。
 近藤氏は来年 3月に慶応大学医学部を定年退職されるそうで、これまでの研究・診療の成果をまとめる意味もあり、がんに関する連続講座を開設することにしたそうです。【表題】は、一回目講座のタイトル。

leeshounann at 11:57|Permalink
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