一般にいう膀胱炎は「急性単純性膀胱炎」のことで、女性の病気です、男性はかかりません。膿尿(尿に白血球が多く混ざる)が続くと、「慢性膀胱炎」と診断される場合が多いようですが、症状が無い場合は治療しません(ただし、尿 PH<5 が続く場合は、尿路結核の除外診断を要します)。
 膀胱炎の主症状は「排尿時痛と頻尿」です。教科書には、尿混濁も記されていますが、尿 pHが高くなるとリン酸塩が析出するため、膀胱炎でなくても混濁します。もう一つの特徴は「熱がでない」こと、発熱がある場合は、腰痛が無くても急性腎盂腎炎を疑います(血液検査は補助診断になります)。血尿を伴うことがありますが、これは菌と身体の相性で、診断的価値はありません。ちなみに、尿臭は診断価値はなく「アスパラガス」を食べると臭います。
 膀胱炎は簡単に治る病気です。標準治療は、アレルギーがないかぎり、「バクタ(ST合剤)」という抗菌スペクトラムの狭い抗生物質の朝晩 3日間内服。水分を多く摂ると治りにくくなります。なぜなら、尿中抗生物質濃度が薄くなり、そして膀胱粘膜の自浄作用を阻害するからです。膀胱が空になり、膀胱粘膜が菌に接触すると除菌作用を発揮します。また、抗生物質を 4日以上服用すると再発が多くなります。
 腎盂腎炎の場合、クラビットを朝晩 7〜10日間内服すます。

 他院で膀胱炎を治療された患者は、例外なく「水分を多く摂り、刺激物をさけるよう」指導され、強力な抗生物質を 5日も下手をすると一週間も処方されます。また、必要のない消炎鎮痛剤と胃薬が併用されるのが常です。
 時々患者さんから、「再発を予防する上で何か注意することがありますか」と聞かれます。「ありません」とお答えするしかなく、がっかりする方もおられます。尿を我慢しない、クランベリージュースがよい、排便後前から後ろへ拭くなどなど、様々な俗説が流布されていますが、一流誌(Journal of Urology)の総説で全てが否定されました。
 膀胱炎を繰り返すのは、「不適切な治療と指導」の他は「体質」。膀胱内面(粘膜)はグリコース・アミノグリカンという、ヘパリン様物質で覆われ、これはテフロン加工のようなものでツルツル。侵入してきた菌は取り付く島が無い。ところが、膀胱粘膜表面に菌の手足(P鞭毛)の足場となる突起を有している方がいる。こういう方は、菌がその足場を足がかりに流されないので再発しやすいと考えられています。膀胱炎を年に 3回以上繰り返す場合、ある薬剤で予防処置を講じます。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2007年2月と6月の記事統合、短縮、校正)