ロチェスター時代(1985〜90年)、同期生の Bob Gravesは、造語やジョーク作りが上手かった。例えば、「sweat box」は、むさくるしい部屋といった意味。「インド人はなぜ、眉間が赤いか知っているか?」「Get Away(あっち行け)とみんなが、指で押すからだよ」(今では、ジョークになりませんが)。それらの中で、医学部中にひろまったのが、GOMER(GET OUT OF MY EMERGENCY Room)、「とっとと、診察室から失せろ」、二度と診たくない患者を指す隠語。
 ところで医師一年目(1980年)、聖路加病院に赴任すると、岡本重禮部長から、外来での心構えとして「リー君、患者とは喧嘩するなよ。患者は弱い立場なんだから」と訓示いただいた。それから 2週間後、部長が外来でアメリカ人牧師と殴り合いの喧嘩を始めたのには、笑いましたね。
 リー湘南クリニックを立ち上げ(2003年)、何がストレスかというと、意外に感じられるかもしれませんが「新患」なのですよ。うちは、経営の基盤である検診を放棄しましたから、開院当初、頼りになったのは前クリニック(1997〜2002年、雇われ院長)からの患者さんです。集客のため、クリニックの前の看板、インターネット、電話帳広告、そして消火栓広告をはじめました。集客効果の高い媒体を知るため、新患さんには「何でこの病院を知りましたか」とアンケートをとります。GOMERが最も多いのは、英語通訳サービスで当院を知った「来日したてのアメリカ人」。ここが日本で、医療システムが違うことを理解できない上、医者を聖人だと思っている。お引取り願おうとすると、時間が無いのに文句をまくしたてる。次に GOMERが多いのは、通りすがりの新患や電話帳で知った患者、うちの方針を理解できない輩が混じる。教養の無い患者は診たくないので、他の病院を薦めることもしばしば。2007年、バカを通り越した二十歳代の男性患者に遭遇しました、いくら言っても失せないので、警官を呼ぶ羽目になりましたよ。ここ数年はいませんが、マスゴミに毒されている患者、例えば風邪に抗生物質や感冒薬が有効だと頭から信じている患者。そして、医師を聖職者と信じている患者、必ず「医者のくせして」とほざく。
 逆に、有難い患者さんは HPを観て来院される方、さらに有難い患者様様は、愛人・友人・家族の紹介、そしてこのブログを読んで来られる方です。2008年頃から HPやブログを観て来院される患者さんが激増し、お陰さまで精神的にも経営的にも楽になりましたです。そこで、インターネット以外のすべての宣伝媒体を取り払いました。
リー湘南クリニック (2007年12月の記事、校正)