尿路結石で問題となるのは 2つ。疼痛再発
 疼痛のコントロールには水分を控え、必要に応じて痛みどめを飲む。水分を多く摂ると、疼痛が強くなり排石しにくくなる。藤沢市民病院をはじめ近隣の病院では、今だ、「水飲んでジャンプ」などを指導し、最悪の場合は尿管内にステントという管を入れたりする(=排石を阻害する)。疼痛時に処方するのは、バカの一つ覚え「ボルタレン座薬」。念のため「座薬」はお尻の中に入れるお薬。医師 1〜2年目と記憶しているが、座薬を正座して飲む薬と誤解し、飲んじゃったご年配のご婦人がいらっしゃいました。閑話休題。不適切な指導で激痛をひきおこすので嘔吐する、だから座薬を処方するらしい。水分を控えれば、内服で容易に疼痛をコントロールできる。欧米では、痛みのコントロールのため、おしっこを止める薬(抗利尿ホルモンの点鼻薬)を用いる。
 他院での不適切な指導を受けた患者が当院を受診された場合、とりあえず激痛をとってあげる。疼痛部の頭側の皮下を横断的に局所麻酔すると、瞬時に痛みは消える。この方法は、英文教科書には記載されていない。若いころ、小さな学会で開業医から学んだ方法である。
 排石を促す方法は 2つ、水分摂取制限と前立腺肥大症で用いる薬(αブロッカー)。
 尿路結石は再発が多い。再発された方は、再々発がある。その予防法を開拓してきたのは、Dr. Pak。35年間に 94の論文に記した。予防法はきわめて簡単、できれば結石の成分、そして畜尿中のある成分を調べるだけ。それにより、患者を体質別に分類し、それに合わせた食事療法、あるいは薬剤を投与する(「テーラーメイド」治療という)。Dr. Pakがその方法を 1980年に考案したとき、体質分類は、いささか複雑だったが、だんだん改良され 2006年には非常に簡素なものになった*。
 僕はこの方法で 30年近く治療してきたが、少なくとも神奈川県でこの方法を知る泌尿器科医は、いないのではないか。北里大学病院(相模原市)時代、結石専門外来の真下講師は何もご存じなかった。
 結石の成分は、主に 2つ、シュウ酸カルシウムと尿酸。教科書的には他に何種類もあるが、みたことがない。尿酸結石は、内服薬で溶ける。シュウ酸カルシウム結石は溶けない。結石が自然排石するかの要因は大きさ、8mmが maxと記されているが、15mmのを産み落とした患者をみたことがある。
 スターフルーツ( Carambola fruits)にもシュウ酸が多く含まれているそうだ。シュウ酸が問題となるのは、シュウ酸カルシウム結石を何回も再発される方。かつては、かかる患者には、オクラをはじめとする緑色野菜や紅茶のティーバックを控えるように指導していた。10数年前、ホウレンソウに含まれるシュウ酸だけが人体によく吸収されることが分かったので、以来「ホウレンソウを食べないで」とだけ指導している。ちなみに、吸収されたホウレンソウのシュウ酸は、ただちに腎糸球で濾過され、尿細管内で水分が吸収されていくと、尿細管内のシュウ酸は濃縮されていく。その出会い系サイトで、シュウさんがカルシウム君に出会うと合体する。
 食材により、シュウ酸の人体への吸収度が異なるということは、食材に含まれる他の栄養素が吸収に影響を及ぼしているはず。ガスクロ分析ですぐ解明できると思う。
 ちなみに、最も硬い結石はシスチン結石。アミノ酸が S-S結合(ジスルフィド・ボンド)でつながっているからガチンコチン。医学生さんにサービス、20のアミノ酸のうち硫黄を含むのは、シスチンとメチオニン(メサイオニンと発音)、S-S結合するのはシスチンで、タンパク質構造を強固にする。だから、生物は硫黄分子なしでは存在しえない。ついでに、硫黄は重く気化しないからどんどん沈む、海流(上昇流)がないと水底の硫黄が上にあがってこないので、生物は絶滅する。
*State-of-Art Lecture(「State-of-Art」は辞書に載っていない単語で「最新鋭の」という意味) Pak C.Y. Medical Stone Mnagement: 35 Years of Advances J. of Urology 180: 813 2008
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) leeshonan@gmail.com
(2008年9月と10月の記事、改訂)