先ほど、近隣に勤める風邪の患者がみえた。「ルル」を内服したそうで、内服しないほうがよいと説明したが、風邪薬で治ると信じているので手こずった。一ヶ月ほど前、女子高生が来院し、様子をみる様に説明したところ、モンスター・ペアレンツから「なぜ薬をださないのかと」抗議の電話があった、バカを通り越している。その点、拙ブログを読まれていらっしゃる患者は楽である。
 2008年11月、前立腺肥大症で他院を通院中で、尿閉(尿が出ない)の患者さん(62才、男性)がみえた。「風邪薬を飲みましたか?」「はい、ルルを」「もう一生飲まないでください」。正常膀胱容量は〜300ml、導尿したところ残尿量は 620mlだった。
 泌尿器科の教科書(CAMPBELL's UROLOGY)には、”風邪薬”自体の記載がなく、尿閉の原因不明だが、おそらく、風邪薬に含まれる「抗ヒスタミン剤」が原因。この他に尿閉を起こしやすいのは、深酒です。
 2006年 10月、発疹を主訴に 29歳男性が受診した。2年前に脳炎をわずらい、現在「抗てんかん薬」を服用している。薬疹の可能性があるので、休薬をすすめたが、怖くて休薬できないという。脳炎の経過は「近くの医院で、風邪薬を処方され、続けていたら意識を消失、気づいたら平塚○○病院のベッドだった」そうだ。医者から「風邪の菌が脳に入り脳炎になった」と説明されていた。
 将来、過誤を繰り返さないように「脳炎は風邪薬の副作用で、風邪のウイルスは絶対に脳内に入らない。風邪はウイルスによる疾患だから、風邪薬や抗生物質を飲んではいけない。」と説明したが、理解してもらえなかった、脳炎の後遺症で。

 ちなみに、市販薬より医者が処方する風邪薬の方が有害なのです。
 最近、「OTC医薬品です」と CMが流れる。OTC(Over the Counter;医師の処方箋なしで買える薬)の意味を知る人は少いだろ、在米中に聞いたこともない。
 在米時、風邪で「感冒薬」や「抗生物質」を服用するのは、留学中の日本人だけでした。傑作だったのは、順天大から来ていた眼下医、カナダを旅行中息子が熱をだしたので、ケフラール(第一世代セフェム、抗菌力が弱い)を飲ませ、小児科を受診したそうだ。小児科医から「なぜ、ケフラールを飲ませたか」と言われたそうで、私に「もっと強い抗生物質でないといけないんだね」と言った、私「あんた、バカをとおり越している」と心の中でつぶやいた。
 そろそろ、パブロン、ジキニン、ベンザだとかルルだとかテレビ CMが流れるシーズン。膨大な宣伝広告費をかけるわけですから、総合感冒薬は、よほど儲かるかるのでしょう。製薬会社は大事な天下り先ですから、毎年「風邪薬脳炎」で乳幼児が 100人死のうが、厚労省が規制するはずもない。
 近隣の医師が処方する薬は、次のような内容が多い。(1)ジスロマック 500mg 3〜5日間。(2)いわゆる「感冒薬」、PLやダンリッチ。最悪の場合は、漢方「葛根湯」。(3)いわゆる「消炎剤や去痰剤」、ダーゼンやムコダイン。そして(4)胃薬。

若干、風邪のおさらいを。
・いわゆる「インフルエンザ脳炎」がみられるのは、世界中で日本列島と台湾の一部だけ。かつては、世界七不思議の一つだったが、欧米の医師が日本列島に特有な「総合感冒薬」が原因と看破。無作為対照化試験の結果、総合感冒薬は治癒を遅延させることが判明。そればかりか、日本では毎年 100人の乳幼児が、「インフルエンザ脳炎」で死亡し、100人が重い後遺症を残している(近藤誠・著「よくない治療、ダメな医者から逃れるヒント」や「医原病」にくわしい。
・風邪の諸症状は、ウイルスを排泄(咳や鼻水)し、弱体化させる(=発熱)作業。だから、症状を抑えない方が早く治る。しかし、社会生活をしているので、希望があれば、ひどい咳には麻薬系「咳止め」。鼻水には「点鼻薬」を処方する。去痰剤は何の効果もない、効果的な去痰法は水分をよく摂ること。
・同じ文脈で、感冒様症状を自覚し 2日以内で、「仕事があるので」という希望者には「タミフル」を 2回内服してもらう(自費)。SARS系ウイルスによる感冒には効果なし。
・他にできることは「うがい」。この場合、イソジン(殺菌作用があるので、味方の菌を殺す)などのうがい薬より、水道水がよい。そして、なるべく食べないこと、栄養をつけると免疫能が低下します。
・解熱鎮痛剤は禁忌。ただ、咽疼痛が強い場合や頭痛には、アセトアミノフェン(カロナール)を処方します(OTCは、タイレノール)。
…お大事 
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2006年10月と2008年11月の記事統合、校正)