2007年3月7日号のニューズウィーク日本語版です。≪≫内は僕のコメント。

とんでも科学に踊らされる人々  うたい文句は、頭がよくなる、みるみるやせる…。インターネットやテレビが流す誇大広告に、人々はころっとだまされ、健康グッズやサプリメントが一大ブームを巻き起こす。科学の衣をまとった悪徳ビジネスの実態に迫る。
 ジョージ・W・ブッシュにとっての「悪魔」はイランやイラクだったかもしれないが、10年ほど前から ≪少なくとも20年以上前から≫ アメリカの消費者を振るえ上がらせている悪魔は「脂肪」だ。スーパーの棚には低脂肪チーズや低脂肪アイスクリーム、低脂肪牛乳が所狭しと並んでいる。多くの家庭では、朝食のテーブルから卵とベーコンが追放された。脂肪の摂取を控えれば元気で長生きできる ― 人々はそう信じた ≪食塩もまたしかり≫。問題はただ一つ、低脂肪の食生活が体に良いことを実証した科学的な研究がないことだった。06年2月、衝撃的な調査結果発表された。NIHの研究プロジェクト「女性の健康調査」が、2万人の女性を対象とした調査の結果として、低脂肪ダイエットが心臓や肝臓などの病気を予防する効果は確認できないと報告したのだ。「低脂肪食品イコール健康食品という考えは改めたほうがいい」。調査をチームを率いたマルシア・ステファニックはそう語る。低脂肪ダイエットの信者となった何百万ものアメリカ人は、どうやら偽情報に踊らされていただけらしい。こんなに多くの人々が、科学的根拠のない「とんでも情報」に飛びついたのはなぜか。
 エセ科学の流行は今に始まったことではない。しかしアメリカでとくに最近、この大きな現象が問題になっている。インターネットで噂が増幅し、テレビのCMで火がつき、人々はあっという間にブームに巻き込まれる。
癒されるはずがアレルギー症状に
 科学の理論は、厳密な観察と推論に基づき、仮説を立て、慎重に検証を重ねて初めて確立される。だが、エセ科学はまさに科学と似て非なるもの。科学を装った誇大宣伝、作り話、偶然にすぎない。「エセ科学は今や、アメリカでは手に負えないほどはびこっている」と、テキサス大学オースティン校のロリー・コーカ教授(物理学)は言う。
 最近、話題をさらったエセ科学は「マイナスイオン効果」だ。イオンという科学用語を使っているところがミソである。マイナスイオンを発生する「髪にやさしい」ヘアドライヤーが商品化され、なぜ「イオン化された分子」が髪に良いのか理解できないまま、多くの消費者が買いに走った。
 アロマセラピーに科学的な「癒しの効果」があると宣伝されたとたんに、香りつきのキャンドルが飛ぶように売れはじめた。だが医学界が効果を認めた事実はない。精油の配合割合も、原料の植物名も表示されていないことが多く、「アレルギーを起こした例が報告されている」とNC!は警告している。
 古いところでは、アルコール依存症自主治療協会(AA)がある。ここで行われている「治療」の効果を検証しようにも、禁酒希望者が氏名をを伏せて話し合い助け合うことを原則とする AAの世界に、第三者が立ち入る余地はない。AAは 1935年に、アルコール依存症から回復しつつ 2人の男が創設した。今ではアメリカの「自助」信仰の代表的存在といっていい。医学界での評価は割れているが、客観的な検証がなされていないのは事実。したがって科学的とはいいがたい。
 いわゆる「モーツアルト効果」、赤ちゃんにクラッシク音楽を聞かせると頭が良くなるという説は、科学的データねじ曲げられたケースだ。93年にアーバインダ医学のゴードン・ショー教授(物理学)がラットを使った実験で、モーツアルトを聞かせると「短期的に IQが高まることを発見した。ショーは後に、人間の大人でも一時的に集中力が高まるなどの効果が期待できると語った。だが、頭がよくなるというのは誤解で、そのおかげで自分の研究がエセ科学にされてしまったと嘆いている。研究者自身が警告しても、騒ぎは収まらなかった。97年にドン・キャンベルが音楽療法に関する著書を出したこともブームをあおる結果となった。「音楽はストレス発散に役立ち、活力を与え、苦痛を軽減する」と、キャンベルは述べている。ただし、知能を高める効果については口を濁している(測定法の問題もあるから断定的なことは言えない、とか)。それでも親たちはモーツアルト効果を信じ、子供向けのクラッシク音楽の DVDは今も大人気だ。
 しかしエセ科学が最も横行しているのは、おそらく健康食品の分野だろう。なにしろダイエット食品やサプリメントは、処方薬と違ってFDAの承認が必要とされていない ≪エビデンスに基づくサプリメント≫。おかげで、いわゆる「サプリメントの」のたぐいは食品業界で最も成長率高い分野の一つとなった。上場している専業大手ハーバーライフ社の株式時価総額は 27億ドルに達する。だがこうした業者の業績は、商品の質よりも販売戦略の巧みさに依存しているようだ。たとえばネット通販のヌートラサナス社は、体形や健康を気にする人たちに濃縮魚油のサプリメント「スーパーオメガ」などの商品を売り込む。1瓶 30錠入りで価格はたったの 17ドル。これで「健康にいい(とされる)脂肪酸」を摂取できるのだから安いものだ。しかしサイト上にには、ダニエル・コズグローブ博士なる医師による「推薦の言葉」も掲載されている(この人物はヌートラサナスから報酬を受けている)。」だがよく見ると、小さな文字で注意書きが付されている。いわく、「(商品の効能についての医学的な)評価はなされていません」本誌が電話で問い合わせると、ヌートラサナスの担当者は「どの商品にも同じ注意書きをしている」という。「サプリメントを摂取するときは、(政府の)受けた商品でないことを承知してほしい。政府がすべてのサプリメントを規制することは不可能だ」
セレブのCMと専門用語を駆使
 科学的な裏づけがないにもかかわらず、アメリカ人はこの手の商品を買い続けている。それが危険な結果をもたらす場合もある。たとえば植物のエフェドラ(マオウ)は減量効果があるとされ、ダイエット系サプリメントに使われた。その後、エフェドラには心臓発作や脳卒中などの危険な副作用があることが判明。消費者からの苦情を受け、本来はサプリメント類を規制対象にしないFDAも、04年にエフェドラ配合製品の販売禁止を命じている。だがエフェドラ製品が店頭から完全に姿を消したわけではない。最近もテキサスで16歳の少年がエフェドラ配合サプリメントを購入。これを服用した後に脳卒中を起こす事故が起きている。
 エセ科学の売込みには、往年のセレブを起用したテレビCMも「貢献」している。たとえば70年代に人気ドラマに出演していた元セクシー女優のスザンヌ・ソマーズ(60)は、今やエセ科学の広告塔的な存在だ。ソマーズは80年代、太もも引き締め器「サイマスターズ」を数百万セット売った「実績」の持ち主。最近では著書『エージレス』の中で、医師の処方するホルモン剤ではなく、より天然の女性ホルモンに近いという「バイオアイデンティカル・ホルモン」を使って若さを保とうと提唱している。専門家はその効果を繰り返し否定しているが、ソマーズは意に介さない。「医者って、自分にわかららないことは無視したがる」と、彼女は最近のインタヴューで語っている。反対論を無知な懐疑論者と片付けるのは、エセ科学の常套手段といっていい。
 現代アメリカ人の科学に対する理解度は大きく進歩している。アメリカ科学振興協会(AAAS)によると、今の米国民の約28%は一般誌に載る科学記事を完全に理解する知識をもつ。20年前には10%程度だったことを考えると、飛躍的な伸びだといえる。だが皮肉にも、科学への理解が深まる一方で科学への誤解も増えている。エセ科学の感染力は衰えず、本物の科学的研究の基礎を学んだことのない人たち次々に侵している。「単純な答えを求める人は、いつの時代にもいる」と言うのは、ミシガン州立大学にある科学理解力推進国際センターのジョン・D・ミラー所長だ。「そして彼らをターゲットにする巨大ビジネスが存在する。調査によれば、教育水準が高い人はエセ科学を信じにくいが、高校中退者はインチキに引っかかりやすい」実際、エセ科学は本物の科学用語を駆使して嘘を真実のように描き、無知な人をだまそうとする。学者でマジッシャンであるジェームズ・ランディは、いわゆるエセ科学の商品や主張の信憑性を科学的に実証した人に100万ドルの賞金を贈る基金を設立した。しかし今のところ、誰一人としてこの賞金を獲得できていない。「エセ科学商法は人間を破滅させる」とランディは言う。「エセ科学商法は、消費者の金も心も奪い取ってしまう」
 ランディによれば、人がエセ科学を信じるのにはそれなりの理由がある。たとえば、身体の特定の位置に磁石を置くことで痛みを和らげるという磁気療法。誰もが知っているように、磁石は鉄を引き寄せる。ならば、痛みを吸い取る力があってもいい…。もちろん科学的な実験で磁石の鎮痛効果が確認された例はない。ランディは言う。「数えきれないほどのテストをし、具体的にどんな病気や症状に効くのかを問い合わせたが、具体的な答えは一つも返ってこなかった。こんなのは科学じゃない」
 超現象などを批判的に検証する団体、懐疑的調査委員会(CSI)もエセ科学との戦いに取り組んでいる。NPOである CSIは 1976年、科学的知識の啓蒙活動を重視した天文学者で作家のカール・セーガンらによって創立された。CSIのジョー・ニケル上級研究員の元には、エセ科学の被害を訴える電話が数々寄せられる。二ケルは報告事例の科学的真偽を調査し、自分たちのウェブサイトやテレビ番組を通じて、真の科学の啓蒙を行っている。
人気の「筆跡学」も科学的根拠なし
 二ケルは昨夏、画期的な癌治療を行うというクリニックを調べるためメキシコまで赴いた。「覆面調査を行った結果、医学界が制癌効果を否定したレアトリルなどを提供していることが判明した」と、二ケルは言う。「医師から打つ手がないと宣告された癌患者は、わずかな希望を求めて怪しげな代替医療クリニックにすがる ≪活性化リンパ球療法など日本の惨状はご存知の通り。救いがないのは、医学界の重鎮が怪しげなクリニックの顧問とか理事として名を連ねていること≫。彼らは恐怖のあまり感情で考えてしまうが、理性ではなく感情が先立つとき、人はたやすくエセ科学の犠牲になる」
 筆跡学もエセ科学の代表例である。筆跡によって性格などを判断できるという自称専門家は数多い。実際、彼らは企業向けに「従業員の信頼性や向上心の有無、精神状態を筆跡から診断します」といった広告を盛んに打っている。「筆跡学は科学的な化粧を施している」と、二ケルは言う。「『t』の横棒を置く位置は思考力の高さに比例するなどと唱え、さまざまな箇所の長さや角度を測定する。科学的な根拠は存在しないのに、論理的だと思わせるために理論を振りかざしている」カナダのブリティシュコロンビア州で活動する自由人権協会の最近の調査によれば、筆跡による「性格」判断の的中率に関して、筆跡学の「専門家」と素人に有意な差はなかったという。それでも、19世紀のイタリアに始まった筆跡学の伝統は衰えを知らない。現在も、『筆跡を変えて人生を変えよう』といったたぐいの関連本がベストセラーリストの上位に入る隆盛ぶりだ。
 なぜエセ科学はこれほど大衆文化に食い込んだのか。一つには、本物の科学に勝るとも劣らない歴史の古さがある ≪どこかで聞いた常套句、漢方薬の常套句です≫。たとえば「地球は平らである」とか「すべての天体は地球の周りを回っている」とか「人間は神の被造物だ」といった主張は、今ならエセ科学に分類されるだろうが、昔は「本物の科学」とされていた(進化論をエセ科学と決めつけるエセ科学者は今もいるが)。では、真の科学とエセ科学の大きな違いは何か。本物の科学は常に進歩する。エイズの原因や風疹の治療法について理解が深まるのはそのおかげだ。一方、エセ科学は不変だ。筆跡学のメソッドは、筆跡についての研究が登場した 2世紀以上前から何も変わっていない。
疑似科学をめぐるメディアの功罪
 この違いに着目したカール・ポーパは63年、論文集『推測と反駁 ― 科学的知識の発展』を発表。収録論文のの一つで「ほとんどのセオリーの確認ないし証明は、その気になれば簡単に見つかる」と述べ、科学と非科学を区別する際の判定基準を示している。それでもメディアは、しばしばエセ科学の宣伝に一役買っている。「メディアは本物の科学に興味がないようだ」と、テキサス大学のコーカーは言う。「公共放送のラジオ・ニュースでも、科学実験についてのレポートを聞いたためしがない。一般人には理解できないと考えているらしいが、そのくせエセ科学に関する報道は垂れ流す」。どうやら本物と偽物の区別がつかないのは、視聴者ではなくメディアであるらしい。
 だが、ときにはメディアの攻撃でエセ科学の人気が凋落することもある。いい例が、ロナルド・レーガン元大統領の首席補佐官ドナルド・リーガンが88年に回顧録『フォー・ザ・レコード』を出版したときだ。ホワイトハウスの内幕を描いた同書は、レーガンがさまざまな局面で占星術を頼りに決断を下していたことを暴露した。「トーク番組がその話題を取り上げてさんざんジョークのネタにした結果、当時のアメリカではあらゆる世代が星占いの本に近づかなくなった」というのは、フロリダ大学のスーザン・ロシュ教授(教育心理学)だ。「だが、時間がたてば記憶は薄れる。人生の意味やいい伴侶に出会えるかどうか知りたいといういう願いは消えないし、占星術のファンタスティクな魅力は今もあせていない」エセ科学も同じだ。どれほど怪しげでも、そこには人の心魅了する何かがある。本物の科学触れようとしない問題に「答え」を出してくれることもある。人に「ワラにもすがる」思いがあるかぎり、エセ科学は不滅なのだろう。―― ラミン・セトゥデ

空気とゲームと科学の相克  日本 テレビでの捏造が糾弾される一方で、市場や学校で疑問の声が上がることは少ない
 静岡県熱海市に住む河越大朗(74)が、マイナスイオン発生装置を使い始めたのは年2月のこと。肺癌を患っていた河越は、開腔鏡手術で腫瘍を摘出したばかりだった。「担当医には抗癌剤投与を勧められたが、副作用があると聞いて断った」と河越は言う。代わりに、知人に勧められていたマイナスイオン発生装置を病室に置いた。「すぐに病室の空気が変わった。健康状態はますます良くなり、今では手術前より健康になった」。装置の「効果」を実感した河越は昨年2月、1台22万円のこの装置を熱海市に100台寄付した。装置を販売する会社の営業担当者によれば、この22万円の商品の製造原価は約5万円。「内部で起こるコロナ放電現象でマイナスイオンのみを放出させる仕組み」だという。「私どもの装置を使えばストレスを感じた後の回復が早いというデータがある」と、この担当者は言う。マイナスイオンがあらゆる状況において、あらゆる人の健康にプラスに働くとは、この販売会社も主張していない。問題は、テレビ番組『発掘!あるある大辞典』のようなデータの捏造を行っていなくても、科学的根拠があいまいなのに、立証された根拠があるかのような印象が広まっていくことだ。「マイナスイオンが体に良いと証明する科学的根拠はなく、病気に効くという臨床データもない」と、大阪大学サイバーメディアセンターの菊池誠教授(物理学)は言う。「集塵効果はあるかもしれないが、体に良いということとは別問題だ」。東京都生活文化局は「商品で表示されている『マイナスイオン』は、現在のところ科学的・学術的な用語として明確には定義されていない」と警告している。国民生活センターに寄せられる相談には「マイナスイオンが出て健康になるという高額の座布団を勧められている」「体の痛みが治まると勧められ購入したマイナスイオン発生器が効かない」といった内容が多い。
 社会を見渡せば、科学的根拠があるかのようなイメージで商品に付加価値をもたせたり、子育てのあり方を論じる例はあふれている。「納豆ダイエット」のデータが捏造され糾弾される一方で、それらの商品や理論が問題視されることはあまりない。
「ゲーム脳」への批判と反論
 日本物理学会は昨(2006年)年3月、「『ニセ科学』とどう向き合っていくか?」と題したシンポジウムを愛媛県で開催。発起人となった学習院大学理学部の田崎春明教授が「ニセ科学」に対して積極的に発言するきっかけとなったのが、『水からの伝言』だ。『水からの伝言』とは、「ありがとう」という言葉を見せた水は美しい血しょうをを作り、「ばかやろう」という言葉を見せた水は崩れた結晶を作るという実験を紹介した写真集のこと。「この露骨なでたらめが小中学校の道徳の授業などで使われていたことに強い衝撃を受けた」と、田崎は言う。」多くの小学校では、水の血しょう写真を生徒に見せ、人間の体の70%は水だから、人に「ばかやろう」と言えばその人の体の水は汚れるといった具合に使われていたという。「ニセ科学を事実のように見せて子供の道徳教育に利用するのは、人間の心への冒涜だ」と、田崎は言う。
 科学としての位置づけが疑わしいものが、都合のいい教育の道具として転化するケースはほかにもある。とくに注目を集めたのが、日本大学文理学部の森昭雄教授が02年刊行の著書『ゲーム脳の恐怖』で提唱し、大手紙や新聞社発行の週刊誌なども取り上げた「ゲーム脳」だ。森の主張によれば、テレビゲームばかりしていると脳の前頭前野が機能低下に陥るという。だが森の理論で示されている脳波に関するデータには問題点が多く、そこから導かれる結論も妥当ではないと批判する専門家が多い。引きこもり研究の第一人者で精神科医の斉藤環は「脳波の測定方法が適切でなく、信頼性のないデータでこうせいされていて、科学の体ををなしていない」と指摘する。「まちがった偏見を大人に植えつけ、結果として青少年にも押しつけることになる」親が子供にゲームをあてがい放置していた、いわゆるネグレクト状態にあった家庭では、その子供が問題を起こすと、親の責任放棄の言い訳に「ゲーム脳」が使われたこともあるという。「結局親が利用しているだけではないか」と、脳研究の第一人者である京都大学の久保田競名誉教授は言う。『ゲーム脳の恐怖』の刊行後、森がアメリカの神経科学会で行った学会発表に出席した久保田によれば、森は「アメリカの学会ではではゲーム脳らしいことには何もふれなかった」という。「論文すら出していない自作の脳波計で測定し、複雑である脳波が取れているのかもわからない。脳の働きが悪くなるという研究内容を論文なりで公表しないことが科学者として不誠実であり、証拠を示せていないといわざるをえない」森は本紙の取材に対し、「提言としてこういう現象があるから、(ゲームをする)時間を極力制限すべきというのが『ゲーム脳の恐怖』の根本」と語る。斉藤や久保田が指摘する測定方法の問題については、「医療機械メーカーの元技術部長と一緒に作った脳波形を使ったので、まったく問題はない。よくわかっていない人が批判しているだけで話にならない」と、森は反論する。「今も内容には自信をもっている。毎日4,5時間ゲームをやり続けた人で優秀な人で優秀な人がいるというデータがあれば、逆に証明してほしい」
「死にいたることも」と警告
 最近ろく耳にするゲルマニウムも、健康効果への根拠が乏しいと指摘されている。「ゲルマニウムは32度以上の熱を与えると電子が出るといった触れ込みを見るが、健康とはなんら関係ない」と、山形大学理学部の天羽優子助教授は言う。国立健康・栄養研究所では、健康食品などに利用されることもあるゲルマニウムは「経口摂取はおそらく危険と思われ、末梢神経や尿路系の障害をおこし、重篤な場合には死に至ることがある」としている。だが効果をうたう商品は後を絶たない。
 こうした指摘が、誤解を防ぐのにどこまで役に立つかはわからない。「ニセ科学というのは、人が信じたいと思うところで信じられるように働いている」と、精神科の医の斉藤は言う。「新しいメディアデバイス出ると飛びつく日本人の心理もある」
 厚生労働省の研究班は、癌患者の約半数が利用しているとみられる健康食品などに、癌の抑制作用があるのかどうかを検証する臨床実験や実態調査を行っている。だが科学に頼ろうとする心理があるかぎり、非科学的なものの暴走を完全に食い止める力は科学にはない。 ―― 山田敏弘