リー湘南クリニックからのお知らせ

院長ブログ−異端医師の独り言

有害な検診 前立腺癌

2012年03月04日

☆☆ アメリカで前立腺癌手術がやまないわけ

1990年頃から、早期前立腺癌に対する根治的前立腺全摘術(以下、全摘術)の有効性に疑問を挟む疫学的研究が北欧を中心に報告されるようになった。
 Patrick. C. Walshは「前立腺癌手術の第一人者」である。泌尿器科の雑誌で、一番ランクが高いのがJournal of Urologyで、他の一流誌と同じように、〜軅癲↓∈7邱罎離魯ぅ薀ぅ函併笋力席犬ハイライトに選ばれたこともある、自慢)、8驚と症例報告、そしてだこγ罎留儻賚席犬ら主なものを紹介する「紹介記事」からなる。「紹介記事」での前立腺癌関連は、すべてWalshがコメントを加える(一時、いなくなったが、2009年から復活)。
 2002年まで、Walshは順風満帆だった。2002年「全摘術が有用か否かを検討した、初の無作為対照化試験(RCT)の結果」が米国の超一流医学雑誌に報告された*。「早期前立腺癌患者、600人近くを無作為に 2群に分け、片方の群の患者には全摘術を受けてもらい、他群の患者は無治療で様子を見た。約 10年観察したところ、両群間で生存率に差がなかった」。Walshはこの重要論文に一言「総生存は変わらなかった」とだけコメントを加えた。その後、同様の臨床試験の結果が欧米から報告されたが、Walshはいちいち、それら論文の微細な欠点を指摘した。一方で、全摘術を支持する論文は、ほめちぎる、なりふり構わずに。「利益を甘受する集団(= 泌尿器医)内から、利益を放棄する意見に真理がある」のは自明の理。
 かつての同僚、Bob Mayerが言っていた「米国の専門医は儲け過ぎ」。専門医達は豊かな生活を甘受湯するために、専門医になった(専門医になると、爆発的に収入が増す)。専門医たちは、すでに邸宅、高級車、ヨット、自家用機、別荘などを購入し、ローンを返済しなければならない。手術を中止できないのである。また、医者のほとんどは白人で、前立腺癌に罹りやすいのは、黒人やヒスパニック系である。
New England J of Medicine 347: 781, 2002
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2006年11月の記事、校正)

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2012年02月09日

☆☆ 癌の病期

正常細胞は「contact inhibition」といって、むやみやたらに増殖しない。正常細胞の複数の遺伝子が傷つく(変異する)と癌細胞となり、この掟を破り増殖をはじめる。たった一個の細胞が癌化した時点で、転移する能力が「ある」か「ない」かに分けられる。
 病期は「stage」の訳で「進行度」とも訳される。鬼は局所(粘膜内*)に限局した癌、挟はその周囲に拡がりをみせる癌、郡は近くのリンパ節へ転移がある癌、そして 鹸は他の臓器に転移がある癌である(癌の種類で多少分類は異なる)。生存期間は機↓供↓掘↓犬僚腓肪擦なる。業界の常套句は「癌を放置しておくと、帰侠窟 犬里茲Δ某覆鵑任罎。だから、気鉢挟の癌を早く発見しましょう」である。(*癌とは細胞分裂増殖の活発な内臓の上皮細胞から発生した悪性腫瘍。例えば、大腸の粘膜から大腸癌、肺の上皮から肺癌。)
 ところが科学がすすんだ現在、これは事実ではない。靴鉢鹸の癌は転移する能力のある癌細胞だから、手術、化学療法、放射線療法をはじめ、どんな治療を施しても(癌が縮小することはあっても)治ることはなく、延命効果はゼロか最長 3ヶ月である。(胎盤や睾丸の癌は治る)
 問題は気鉢挟の癌である。気鉢挟の癌は、2つに分類される、転移する能力が「ある」か「ない」かである。気鉢挟で転移する能力が「ない」癌は放置しても絶対に「→窟検廚箸垢垢泙覆ぁ手術して再発せず、医者も患者も手術で治ったと錯覚するのがこのタイプである。患者の中には自らの体験を「癌病棟からの生還…」みたいな本にまとめ、結果、被害者を多くする(生存バイアス)。
 転移能力の「ある」癌は、すでに転移しているが、検診時に転移巣が小さいので発見できない。この場合、手術をした後に転移巣が出現する(見える大きさになる)。医者から「転移しないうちに手術をしましょう」といわれ、術後数ヶ月して「転移が出現しました、最大の手をつくして癌と闘いましょう」といわれ、転移巣を摘出したり、化学療法で死ぬまで苦しまなくてはならない。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2006年10月の記事、加筆、校正)

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2012年01月30日

☆ まだまだやまぬ 前立腺生検

カナダ、オンタリオ州で 1996〜2005年までに超音波ガイド前立腺生検(お尻の穴に、プローブという太い棒を入れ、前立腺にブスブス針を刺し組織を得る検査、少なくとも快適な検査ではない)を受けた 75,190人を対象に、合併症(主に急性前立腺炎と敗血症)による入院率を調べた。
 1996年の入院率は、1.0%だったが、2005年には 4倍(4.0%)になった。全体で、7人(0.009%)が死亡した。合併症が増えたのは、恐らく刺す箇所が増えたから:昔は、1〜6箇所; 2005年には、最高 21箇所!  ≪最近読んだ論文によると、前立腺生検による死亡率は 0.05%(2千人に一人)。必要でない検査に金を払い、検査を受けなければ入院せずに済んだのに入院・治療費を払い、そしてある確率で死亡する。≫
Nam R.K. et al   Increasing Hospital Admission Rates for Urological Complications After Transrectal Guided Prostate Biopsy  J. of Urology  189:963 March 2010
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2010年3月の記事、微校正)

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