リー湘南クリニックからのお知らせ

院長ブログ−異端医師の独り言

ロチェスター大学医学部時代

2013年06月22日

★ 23年二昔

PICT0004PICT0040お写真はロチェスター大学医学部・付属病院(Strong Memorial Hospital)と病院へ続く幹線道路。右のお写真(クリックで拡大)、右端のサイン「H」は、Hospitalの意味。

 1984頃から、手術に伴う抗生物質適正使用の無作為化試験の結果が報告されだした。在米時 1985年、朝の勉強会で数人のレジデントが Cockett(主任教授)に噛みついた。「抗生物質をなぜ術前に投与しないのか」「なぜ術後 3日も投与するのか」。Cockettは明らかに不機嫌になり「今までこれでやってきて、問題ない」と一蹴した。
 Cockettは 1990年、アメリカ泌尿器科学会(AUA)の会長となった。AUAの公式誌J. of Urology、その 2008年 4月号に「泌尿器科手術における予防的抗生物質の最適な使い方」という論文*が掲載された。さまざまな泌尿器科手術(消化管を使う手術や人工物移植術も含め)に際し、いずれも手術前 1時間以内(薬によっては 2時間以内)に一回投与、術後は最長 24時間まで。
 あなたは、何日間投与されていますか。

*Best Practice Policy Statement on Urologic Surgery Antimicrobial Prophylaxis: J. Urology 179:1379, Apr. 2008.
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com (2008年4月の記事、校正) 2011年の記事

leeshounann at 10:37|PermalinkComments(15)
2013年04月27日

★★ 診たくない患者(GOMER)

ロチェスター時代(1985〜90年)、同期生の Bob Gravesは、造語やジョーク作りが上手かった。例えば、「sweat box」は、むさくるしい部屋といった意味。「インド人はなぜ、眉間が赤いか知っているか?」「Get Away(あっち行け)とみんなが、指で押すからだよ」(今では、ジョークになりませんが)。それらの中で、医学部中にひろまったのが、GOMER(GET OUT OF MY EMERGENCY Room)、「とっとと、診察室から失せろ」、二度と診たくない患者を指す隠語。
 ところで医師一年目(1980年)、聖路加病院に赴任すると、岡本重禮部長から、外来での心構えとして「リー君、患者とは喧嘩するなよ。患者は弱い立場なんだから」と訓示いただいた。それから 2週間後、部長が外来でアメリカ人牧師と殴り合いの喧嘩を始めたのには、笑いましたね。
 リー湘南クリニックを立ち上げ(2003年)、何がストレスかというと、意外に感じられるかもしれませんが「新患」なのですよ。うちは、経営の基盤である検診を放棄しましたから、開院当初、頼りになったのは前クリニック(1997〜2002年、雇われ院長)からの患者さんです。集客のため、クリニックの前の看板、インターネット、電話帳広告、そして消火栓広告をはじめました。集客効果の高い媒体を知るため、新患さんには「何でこの病院を知りましたか」とアンケートをとります。GOMERが最も多いのは、英語通訳サービスで当院を知った「来日したてのアメリカ人」。ここが日本で、医療システムが違うことを理解できない上、医者を聖人だと思っている。お引取り願おうとすると、時間が無いのに文句をまくしたてる。次に GOMERが多いのは、通りすがりの新患や電話帳で知った患者、うちの方針を理解できない輩が混じる。教養の無い患者は診たくないので、他の病院を薦めることもしばしば。2007年、バカを通り越した二十歳代の男性患者に遭遇しました、いくら言っても失せないので、警官を呼ぶ羽目になりましたよ。ここ数年はいませんが、マスゴミに毒されている患者、例えば風邪に抗生物質や感冒薬が有効だと頭から信じている患者。そして、医師を聖職者と信じている患者、必ず「医者のくせして」とほざく。
 逆に、有難い患者さんは HPを観て来院される方、さらに有難い患者様様は、愛人・友人・家族の紹介、そしてこのブログを読んで来られる方です。2008年頃から HPやブログを観て来院される患者さんが激増し、お陰さまで精神的にも経営的にも楽になりましたです。そこで、インターネット以外のすべての宣伝媒体を取り払いました。
リー湘南クリニック (2007年12月の記事、校正)

leeshounann at 07:41|Permalink
2013年04月18日

★ 臨床 vs 研究

アメリカ時代(1985年〜1990年)、丸 5年と一ヶ月研究に打ち込んだ。3年目、助教授になった年、シカゴ大学から泌尿器科医 Bob Mayer (Robert D. Mayer;Robertを Bobと呼ぶ)がロチェスター大学・医学部・泌尿器科に赴任し、研究室で一年を過ごした。彼がしみじみ、「臨床では毎日喜びを味わえるが、研究(research)では年に一回、研究発表のときだけだね」と言った。
 1989年に僕は「腫瘍新生血管阻害と化学療法の併用に関する基礎研究」の予算を NIH(国立衛生研究所)に申請した。NIHの主な役割の一つは研究予算を配分する(NIHグラントという)ことで、申請された研究計画を複数の一流研究者が公明正大に審査し、意見書と共に点数をつける。そして、その年の国の研究予算を申請されたグラントの点数が高い順に配分する。折りしもレーガン革命で、その年の国の研究予算は大幅に削減され、僕が申請したグラントは次点で落選した。もしグラントが通っていたら、今頃、アメリカ在住の腫瘍学者だったね。今、研究計画書を見たらたら 36ページにわたる計画書で、ワープロが普及していない時代、タイプ打ちでよくこさえたものだと我ながら感心した。ちなみに、いつか記したが、日本の研究予算は密室の中で、お手盛りで配分される。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com (2010年 2月の記事、校正)

leeshounann at 10:16|Permalink
2013年04月11日

☆ Bob Mayerの姉さん女房

アメリカ時代(1985〜90年)、Bob Mayer(本名は、Robertだが、口語では、Bobという)の姉さん女房がロチェスター大学・医学部・生化学教授に就任した。Bob Mayerは奥さんを追って、シカゴ大から、1987年に同大・泌尿器科・助教授に赴任し同僚となった。彼は奥さんを心から愛し、また科学者として心から尊敬し、ノーベル賞を受賞すると確信していた。
 ある日、Bob Mayerが共同実験をもちかけてきた。「腎臓のグルタチオン(“グルタサイオン“)濃度が低下すると、シスプラチンの腎毒性が増強する」という奥様の仮説を証明したいと。日本で、多少シスプラチンの腎毒性をかじった僕としては合点が行かなかったが、共同実験をはじめた。
 Buthionine sulfoximine (BSO) という薬剤は、腎を含め組織のグルタチオン濃度を低下させる。これを、あらかじめラット(=大型のネズミ)に投与し、十分に腎グルタチオン濃度を低下させ、そこでシスプラチンを投与した。すると、何と腎毒性が軽減した! 当時、シスプラチンは、抗癌剤のエースで腎毒性が問題だった、これだけで世界的大発見なのに、彼は腑に落ちず、何十時間議論したか。そして、追試を繰り返したところ同様の結果を得た。結局、「奥様の仮説」を否定する結果を 1〜2流誌に三編の論文*としてまとめた。  

* 1) R.D.Mayer, KE.Lee et al. Inhibition of cisplatin-induced nephrotoxicity in rats by BSO, a glutathion synthesis inhibitor   Cancer Chemotherapy and Pharmacology 20:207 1987
2) KE.Lee, R.D.Mayer et al. Effect of systemic glutathion depletion by BSO on sensitivity of murine bladder cancer to cytotoxic agents  Urology XXX: 376 1989
3) R.D.Mayer, KE.Lee et al. Improved use of BSO to prevent cisplatin nephrotoxicity in rats  J Cancer Res Clin Oncol 115:418 1989

そのBobから聞いた話
★ 銃 と お告げが聞けなくなりました
 Rochesterに住んで、心らから relaxできるという。「シカゴ」では、自宅から医学部へ出勤する時「危険地帯」を通過しなくてはならない。万が一、エンジントラブルなどで「危険地帯」に停車すると、撃ち殺されても仕方ないという。「!訳も無いのに」。「そう、without any reasons」。
 私 Rochesterでは、怖い思いをしませんでした。ただ、近郊のフリーウエー(無料高速道路)を運転中、行く手に黒いリムジンが 2台停車し、数人がピストルで打ち合いしていた。今のところ、これまで経験した中で最も怖い、あれほど死を身近に感じた経験はありませんよ。
 Bobはまた、アメリカの医療訴訟に詳しく、ある事例を紹介してくれた。占い師が頭痛を主訴に脳外科を受診した。頭部の CT検査(X線検査の一種)を受けた後から「お告げが聞こえなくなった」と脳外科医を訴えた。事前に「お告げが聞こえなくなる可能性」の説明を受けなかったとの理由で。裁判では、脳外科医が説明責任を怠ったという理由で、占い師が勝訴し、数万ドル(金額は忘れた)を得たとのこと。裁判の判決は、陪審員がくだすので、控訴側の弁護士は、医者を大金持ちの強者、患者を貧しい弱者に仕立て、医者は敗訴しやすいそうだ。ちなみに、日本では、患者側に立証責任があるので、医者が負けることは、まずない。
 医療訴訟にそなえ、医師がかける保険料(malplactice insurance)が高騰し、特に脳外科は、個人では開業できないため、グループで開業するそうだ。
 リー湘南クリニック (2007年7月の記事、統合、短縮、校正)

leeshounann at 11:08|Permalink
2013年02月04日

☆ グリコーゲン

肝臓にはグリコーゲンが豊富に貯蔵され、これが 2つに分解され糖(グルコース)になる。「シジミは、グリコーゲンが豊富だから肝臓によい」と誰かがほざき、伝聞で拡散したのだろう。当たり前だが、シジミと他の貝類のグリコーゲン含量は変らないし、シジミをいくら摂っても肝庇護作用はない。余談ながら、シジミ汁をこさえるとき、シジミをあらかじめ冷凍しておくと美味くなるそうです。
 アメリカ時代(1985〜1990年)、「腐っても東大」の松尾さんに「血管新生阻害剤」のアイデアを話し、彼が帰国後に「血管新生阻害剤」SM407(ハイドロ・コーチゾンの誘導体)をこさえてもらい、アメリカに送ってもらいました。ステロイド剤には「糖質・コルチコイド作用」と「鉱質・コルチコイド作用」があり、前者の作用が強い場合「糖質・コルチコイド」、後者が強い場合を「鉱質・ステロイド」と呼ぶ。ステロイド剤の筋肉モリモリ作用、炎症や免疫を抑える作用、そして重篤な副作用は、前者に由来する。後者は、薬としてあまり使い道がない。筋肉モリモリの対価は、睾丸(精巣)の萎縮。ドーピング試験は、血液中の男性ホルモンを定量する。
 SM407には、強力な血管新生阻害作用がみられ、かつ、ネズミが弱らなかったので「ステロイド作用が弱い」と期待された。試薬の糖質・コルチコイド作用を定量(作用の強さを数字で表すこと)しなくてはならない。糖質・コルチコイド作用は、ネズミに試薬を投与し、ネズミ肝臓のグリコーゲン量で表す。さて、スタッフらに新プロジェクトを説明するが、いくらアクセントを変えても通じない。筆談でやっと「グライコジェン」と発音することを知った。SM407については、念のため特許を出願しましたが、再現性を得られず特許は申請しませんでした。 
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2007年7月の記事、校正)

leeshounann at 15:24|Permalink
2013年02月02日

★ Rosenberg再び

画像 066僕が最も尊敬する 2人の科学者のうちの一人、N.C.I.(米・国立がん研究所)、外科部長、Steven A. Rosenbergが、2009年9月14日号の「Times誌」に紹介されている。
 遠隔転移した悪性黒色種という、黒子の癌にワクチンとIL2を組み合わせると、ワクチン単独あるいは、IL2単独の 2倍の効果がみられたという紹介記事(22%の寛解率)。ただし、大規模な生死をエンド・ポイントとした無作為化試験は、これからというのが主な内容(「The gold standard of new therapy is simple: survival. Do patients who are vacctinated live longer than those who aren't ?」)。Rosenbergのグループは、これに白血病などで実用化されている、宿主免疫細胞を放射線照射で絶滅させ、骨髄移植を組み合わせたもの。
 ちなみに、「がんワクチン療法」の効果が期待されているのは、悪性黒色種、非ホジキン性リンパ腫、子宮頚癌、ウイルス性肝癌だけ、あと多分、精巣腫瘍と悪性絨毛腫(精子と胎盤に抗原性がある)。岩手医大・藤岡知昭教授の膀胱癌のワクチン療法 は、詐欺です。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2009年9月の記事、校正、短縮)

leeshounann at 13:51|Permalink
2012年12月04日

★ 2日続けての心臓手術

在米時(1985〜90年)、1989年、Dr. Uoo(アジア系アメリカ人)が一年間の予定で、研究室に下働きにきた。彼は 50才くらいの泌尿器科・開業医で、研究に一年間携わり、論文をこさえると、サブ・スペシャリスト(準専門医)になれるそうだ。歳は僕よりだいぶ上だが、ここはアメリカ、研究テーマを与え指導した。ある日、背部に違和感があるという。「肩こりですよ」と僕は軽く受け流した。
 アメリカの胸部外科医の凄さを見せ付けられたのは、その日の夕方。Dr. Uooは自ら心疾患を疑い、胸部外科を受診し、「心筋梗塞」と診断され、即刻心臓バイパス手術を受けた。心筋梗塞とは心臓を養う動脈が詰まって、その先に血液が行かなくなる状態。バイパス手術は、詰まった動脈の上流と下流を「太ももから採取した静脈」でつなぐ(当時は)。こういう尊い医療もあるのだ。
 さて翌日、胸腔内出血のため再開胸手術。その 2日後に Dr. Uooはひょうひょうと職場に現れた。アメリカの胸部外科の実力は知識としてはあったが、実物を目の当たりにして驚愕、また自分の診断能力を恥ずかしく思ったものだ。
 ちなみに、副大統領がロチェスターを訪問した時、胸部外科医と脳外科医は待機を命じられ、手術室一つが確保された(ケネディー大統領が暗殺されて以来、そういう体制がとられているそうだ)。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表)(2008年5月の記事、校正)

leeshounann at 14:52|Permalink
2012年03月31日

★★ 動物愛護

僕がロチェスター大学(N.Y)に着任時(1985年)、Cockett主任教授が、研修医*一年生の Garyに「閉所ストレスが、造精能におよぼす影響をラット(大型のネズミ)を用いて検討するよ」命じた。数日後、Garyは「この研究は不可能である」とCockettに報告した。何と「NY州法」でラットを飼育する際、最低の広さが決まっている、そのため閉所でラットを飼育できないのである。(*泌尿器科専門医になるための研修期間は 4年、その最初の一年間は基礎研究をする)。
 私は主に、ネズミに癌を移植して治療実験を行っていたが、何十回も獣医(ベタナリアン)から呼び出された。ネズミが弱ると私と一緒に診察するのである。研究計画書に動物が含まれると、外部の有識者(?)を交えた、動物倫理委員会が開催される。頭の悪い歯科医が「私の研究は残酷である」と主張し譲らない。何十回も主旨を説明したが、バカ歯科医は「対数」を理解できない。何度書類のやり取りをしたのか、うんざりした。動物の屠殺法にも決まりがあり、意外にも「ギロチン」は合法だった(ギロチンはフランスが発明した、人道的処刑法だそうだ)。
 アメリカのテレビの料理番組で、ロブスターを茹でる時「沸騰したお湯に、頭から入れてください」と説明していた。尻尾から入れると、ロブスターが苦しむ時間が長くなるからである。日本の「生きたままの火あぶり」(鮑の踊り焼き)を知ったら、と思うと背筋が凍った。
 1987年ころから、残酷であるという理由から毛皮が売れなくなり、毛皮をまとっているヒトは無教養で低俗とみなされるようになった。良質の毛皮をとるには、動物を生きたまま、数年間寒風に曝すためである。人気稼業の芸能人は、真っ先に毛皮と決別した。
 数年前にシンガポールの公共キャンペーン番組(「フカヒレを食べないでください、そうすればサメを守れます」)を観てから、フカヒレを食べないことにした。フカ(サメ)を捕獲すると、船上で背びれと尾びれを切り落とし、生きたまま海に投げもどす。垂直尾翼・水平尾翼をなくしたサメは、その後一体どうなるのだろうか。鯨を捕獲して、隅から隅まで利用するのとは訳が違う。

 cf フカヒレの保持や販売禁止、中国系住民多い加州で法案成
2011.10.08 Sat posted at: 15:04 JST
 (CNN) 米カリフォルニア州のブラウン知事は7日、中華料理の高級食材として知られるフカヒレの保持や販売を州内で禁じる法案に署名し、同法が成立した。また、フカヒレの在庫分について2013年7月1日までに売り払うことを命じる法案にも署名した。ただ、法案ではサメの油や肉は対象外となっている。法案は、サメの絶滅阻止や海洋生態系の保護を主張する団体などの要請により州議会で審議されていた。フカヒレを狙い年間2600〜7300万匹のサメが殺されていると主張してきた米国の自然保護団体「自然資源保全協議会」は法案成立をサメ保護のための重要な1歩と評価した。しかし、法案はフカヒレだけを取り上げており、州内に居住する110万人の中国人系社会を標的にした措置との批判も出ている。ブラウン知事は法案署名に当たり、サメのヒレだけを切り取り、残りを海に捨てる行為は残酷なうえに海洋の生命を損ねるものだとし、一部の種類のサメは90%以上減ったとの専門家の推定数字も紹介した。カリフォルニア州のフカヒレの輸入量はアジア地域を除き最大規模の水準で、法案の共同立案者であるハフマン下院議員の公式サイトによると、同州の昨年の輸入量は7トン以上。ほぼ全種類のサメの個体数が減少し、仮に絶滅した場合、ほかの魚類などの消滅も招き、海洋生態系の崩壊につながると警告している。米連邦法はフカヒレ漁を禁じ、ハワイやオレゴン、ワシントン各州、米領グアム島や一部の諸国も禁止している。ただ、公海での漁は規制外で、1ポンド(約450グラム)で最高600ドル(約4万6200円)の高値も呼ぶことが、漁が絶えない理由になっている。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2007年5月の記事、校正、加筆)

leeshounann at 11:38|Permalink
2012年03月26日

☆☆★ 米国の専門医と日本の専門医もどき

米国には医局制度がない。医学部を卒業し、専門医を目指す者は偏差値を基に好きな医学部へ応募する。
 ロチェスター大学医学部・泌尿器科では毎年 2人研修医を採用し、4年間教育する。一年目は、研究室で何らかの研究に携わる。2年目からは、難易度の高い検査や手術を経験して行く。当直のバイト先は、経験年数により振り分けられていた。ちなみに、米国語で「当直バイト」は「moon lighting」という。4年間の研修終了後、専門医試験を受ける。毎年、全国一律の予備試験があり、ドロップ・アウトした研修医もいた。
 在米 2年目、全国一律予備試験を終えた Bobが質問にやってきた「○○菌は黄色肉芽腫性腎盂腎炎の原因となるか?」。「は〜」何のことか全く分からなかった。僕は医者になって、この 30年間、黄色肉芽腫性腎盂腎炎を一例も経験していない。米国の専門医とは、一生お目にかかれない疾患にも精通した「まさしく専門医」なのである。
 同期生 Garyはキャンベルの泌尿器科(CAMPBELL'S UROLOGY)とハリソンの内科書(HARISSON'S INTERNAL MEDICINE)をほぼ丸暗記していた。私の手元にある最新版は、索引を除いて、前者 3,954頁、後者 2,630頁からなる。ちなみに、彼は、名門 NY, Einstain医科大卒、専門医を取得後、当時、全米で最難関の NIH、S.A. Rosenberg
 日本にも、専門医「
もどき」は存在するが、簡単な試験と会費を払えば誰でもなれる。1984年、泌尿器科専門医制度ができた時、試験すら無く、一枚の申請書を提出するだけだった、僕は提出しなかったが。日本の専門医や認定医は、患者をたぶらかす単なる「箔付け」、そして、学会出席を義務付け「お勉強した気にさせる」先鋭的(state of art)洗脳制度なのです。例外は「麻酔科」専門医、これはきちっと教育システムができているようだ。僕がみるかぎり、なんとか専門医s・認定医sをならべ立てている同僚ほどバカだが、これに「博士号」すら持たない医者は輪をかけてバカだ。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2006年12月の記事、校正)

leeshounann at 13:39|Permalink
2011年12月24日

☆ TNF

TNFとは Tumor Necrosis Factor(腫瘍壊死因子)の略で、なかなか勇ましいネーミングである。 1980年ころ、癌を移植したマウス(担癌マウス)に「リポ・ポリサッカライドという細菌が作る毒素」を注射すると、腫瘍が壊死し、血清中にかかる蛋白質が発見された。毒素でなくTNFを担癌マウスに注射すると、やはり腫瘍が壊死する。僕ももネーミングにつられ、在米時、TNF関連の研究をし数編の論文になった。
 TNFをマウスに注射すると、背部皮下に移植した腫瘍は壊死するが、筋肉内に移植した腫瘍は壊死しないことが分かった。また、腫瘍が壊死してもマウスの生存期間は対照群に比べ変化がなかった。要は、TNFを投与すると低血圧を引きおこし、血流の悪い部分の腫瘍が壊死する、そしてその様な領域の腫瘍はいずれ自然に壊死するから、生存期間に変化がみられないわけだ。それを裏付けるべく、敗血症ショックをおこさない亜種のネズミに腫瘍を移植し、TNFを注射してみたところ、何もおこらなかった。ちなみに、ヒトでも敗血症(血液中に細菌が見られる状態)からショックを引き起こす原因物質が TNF(およびIL1)である。
 ほどなく、別に発見された「カヘキシン」という蛋白質が TNFと同じものであることが分かった。カヘキシンは「カへキシー(悪液質*)」に由来するネーミングで、寄生虫に感染し「痩せ細った」家畜の血清中に発見された。寄生虫が宿主から横取りするカロリーは微々たるもので、宿主が分泌する「カヘキシンによる食思不振」が痩せの原因であることが判明した。(*悪液質:進行がんなど、慢性の消耗性疾患でガリガリに痩せた状態)
 マリア・カラスが寄生虫(サナダムシ)をごっくんと飲み、ダイエットに成功した逸話を思い出す。宿主がサナダムシに反応し恒常的に低濃度のTNFを産生し、食欲が抑制されたのだろう。昨今、TNF(カヘキシン)は痩せ薬の用途として関心を集めている。   
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表)  早死にするデブ しないデブ

leeshounann at 14:15|Permalink
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