リー湘南クリニックからのお知らせ

院長ブログ−異端医師の独り言

医者が治せる病気 作る病気

2013年04月15日

☆☆ 常識のウソ

2009年11月に HPが新しくなったので、旧 HP上の「常識のウソ」コーナーを転載しておきました。

漢方薬はインチキ  漢方薬は生薬だから…とか、数千年の歴史の中で淘汰されてきたとか、まことしやかに言われます。しかし、漢方薬の有効性と副作用については、今だかつて一度も科学的に検証されていません。漢方薬が存続するのは、中国に近代医学や科学が芽生えなかったに他なりません。ヨーロッパにも漢方と似た「ギリシャ医学」が存在しましたが、科学の勃興とともに姿を消しました。
 科学的検証とは「プラシボ対照・無作為・二重盲検法」をさします。例えば、新しい頭痛薬の有効性や副作用を検証するには、頭痛持ちの患者さんをくじ引きで(無作為に)2群に分けます:対象となる患者さんの数が多いほど検証の精度が高くなります(=再現性が高くなる)。そして、片方の群の患者さんには新薬を、そして、もう一方の群の患者さんには外観は新薬と全く同じで薬効のない偽薬(プラシボ)を内服してもらいます。また臨床試験に参加する医師も、どちらが新薬でプラシボか知らされません(二重盲検)。こうして、主観を排除した条件下で両群間で有効率や副作用に差があるかを比較します。偽薬でも 3割くらいの人に効果があります(=プラシボ効果という)。したがい、新薬を有効と判定するには偽薬より有効率が高くなくてはなりません。副作用もしかりです。
 漢方薬を処方する医師は主観的経験、そしてメーカー(ツムラやカネボウ)の配るマニュアルを基準にするわけで、病気が良くなったとしても、それはプラシボ効果によるのか、薬効によるのか、あるいは自然治癒なのか客観的に判断のしようがありません。科学を基盤とした診断学と治療学を学んだはずの医師が、どうして未証明の呪術と同じレベルの医療を実践できるのか、僕には到底理解できません。

肺癌検診は有害無益 肺癌検診を実施する自治体は多いのですが、検診の有用性は否定されています。欧米で肺癌検診の大規模な臨床試験が行われました。いくつもの人口集団を対象に被験者を無作為に「肺癌検診を受けてもらう群」と「検診を受けない群」に振り分け、5〜10年経過を観察しました。検診を受けた群では、いわゆる早期肺癌の発見率が激増しましたが、肺癌による死亡率は減少しませませんでした。このことは検診により「放っておくと死に至らしめる肺癌を発見できない」ばかりか、「放っておいても無害な肺癌を発見する」ことを意味します。換言すれば、肺癌検診を受けても命拾いすることはなく、不必要な手術を受けるチャンスが増えます。また、不必要な被爆、そして心配事を増やさないためにも肺癌検診は受けないほうが得です。

最新のインフルエンザを概説します 毎年、小児の約 20%、成人の 5%がインフルエンザに感染しますがほとんどは自然治癒します。犠牲になるのは、慢性の心臓や肺疾患をもつ高齢者と 1才以下の乳児です。
 インフルエンザ・ウイルスは 3種類(A、B、C型)あり、Aと B型のみが大流行します。A型インフルエンザは 2つの表面蛋白、ヘマグルチニン(Hと略される)とニューラミニダーゼ(Nと略される)の違いにより分類されます。Hは 15種、Nは 9種類あり、その組合せで H7N7とか H3N2と呼ばれます。ヒトからヒトへ感染するA型インフルエンザ・ウイルスは、H1、H2とH3、そしてN1とN2だけです。B型インフルエンザは一種類だけです。
 野生の水鳥からは、A型インフルエンザ Hと Nすべての型が検出されています。インフルエンザ・ウイルスは、哺乳動物と鳥類を宿主に遺伝子を変異あるいは組換え、絶えず進化しています。中国南部はヒト、豚、野鳥そして家禽類が密集し、インフルエンザの繁殖所で、新型のインフルエンザ・ウイルスはここで発生し、世界中に広まります。
 話題の鳥 A型インフルエンザ H5N1は、鳥に強い毒性をもちますが、ヒトには感染しないと考えられていました。最近、鳥インフルエンザのヒトへの感染例が発見されましたが、今のところ、ヒトからヒトへの感染例はありません。しかしながら、専門家達はヒトからヒトへ感染する新型鳥インフルエンザ・ウイルスの出現は間近いと考えています。
 ワクチンは、鳥の有精卵中でウイルスを増殖させ製造されています。ワクチン製造は有精卵の供給に依存し、非常に時間がかかるため流行時には対処できません。また、鳥インフルエンザがヒトで流行したら、従来の方法ではワクチンを製造法できません。なぜなら、鳥インフルエンザ・ウイルスは、有精卵を死に至らしめるからです。有精卵に頼らず、迅速に流行株に対しワクチンを製造する技術は確立しています。しかし、この方法は遺伝子組換え技術を用いるので、副作用発生時の補償問題のため、製薬会社は製品化に躊躇します。
 最近、Aと B型インフルエンザに有効な抗ウイルス薬、タミフルが開発されました。非常に安全な薬で、小児への投与も問題ありません。インフルエンザ様症状を呈して 48時間以内に内服します。また予防効果はワクチンよりはるかに高く、ハイリスクの高齢者に対しても、ほぼ 100%の予防効果が示されました。健常人でも、インフルエンザの患者さんに接した後、すぐに内服するとほぼ100%予防できます。鳥インフルエンザに対しても有効です。
文献 Lancet 362:1733, 2003、 Science 302:1519, 2003

リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著 癌患者を救いたい PSA検診のウソ正誤表早死にするデブ しないデブ (2009年10月の記事、微校正)

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2013年02月20日

★ 皮膚科

僕は 1998年に皮膚科学を日本語で独学した(英語の教科書は、あまりにも分厚いので断念)。これまで、診断がつかず悪性の疑いがある 2名を鎌倉にある総合病院に紹介したことがある。
 皮膚病の治療はいたって簡単。教科書通りに、強力なステロイド剤とラップ、保湿剤、水虫の薬、ヘルペスの薬、そして大量のステロイド短期経口投与、これだけで 90%以上の患者をカバーする。
 痒みがある患者には「爪を短くするよう」指導する。爪をたてて掻くと、悪化するからだ。近隣でかかる指導をしているところが少ないせいか、かつては僕の指導に納得できない患者を散見した。そのような患者は、体よく元の皮膚科へお返しする。最近の皮膚科患者さんは、知人の紹介か、評判を聞いて、あるいはブログを読んでいらっしゃるので非常にスムースに数年来の難病が短期間で治る。皮膚科とて、教科書に記されていない治療まがいが横行している。
 近年、またアトピービジネスが再び台頭し始めた感があり、かかる患者には、一度は説得するが、聞く耳を持たない方は、そちらを受診いただく。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) 早死にするデブ しないデブ(2007年7月の記事、校正)


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2012年12月10日

☆☆ 風邪薬の犠牲者

先ほど、近隣に勤める風邪の患者がみえた。「ルル」を内服したそうで、内服しないほうがよいと説明したが、風邪薬で治ると信じているので手こずった。一ヶ月ほど前、女子高生が来院し、様子をみる様に説明したところ、モンスター・ペアレンツから「なぜ薬をださないのかと」抗議の電話があった、バカを通り越している。その点、拙ブログを読まれていらっしゃる患者は楽である。
 2008年11月、前立腺肥大症で他院を通院中で、尿閉(尿が出ない)の患者さん(62才、男性)がみえた。「風邪薬を飲みましたか?」「はい、ルルを」「もう一生飲まないでください」。正常膀胱容量は〜300ml、導尿したところ残尿量は 620mlだった。
 泌尿器科の教科書(CAMPBELL's UROLOGY)には、”風邪薬”自体の記載がなく、尿閉の原因不明だが、おそらく、風邪薬に含まれる「抗ヒスタミン剤」が原因。この他に尿閉を起こしやすいのは、深酒です。
 2006年 10月、発疹を主訴に 29歳男性が受診した。2年前に脳炎をわずらい、現在「抗てんかん薬」を服用している。薬疹の可能性があるので、休薬をすすめたが、怖くて休薬できないという。脳炎の経過は「近くの医院で、風邪薬を処方され、続けていたら意識を消失、気づいたら平塚○○病院のベッドだった」そうだ。医者から「風邪の菌が脳に入り脳炎になった」と説明されていた。
 将来、過誤を繰り返さないように「脳炎は風邪薬の副作用で、風邪のウイルスは絶対に脳内に入らない。風邪はウイルスによる疾患だから、風邪薬や抗生物質を飲んではいけない。」と説明したが、理解してもらえなかった、脳炎の後遺症で。

 ちなみに、市販薬より医者が処方する風邪薬の方が有害なのです。
 最近、「OTC医薬品です」と CMが流れる。OTC(Over the Counter;医師の処方箋なしで買える薬)の意味を知る人は少いだろ、在米中に聞いたこともない。
 在米時、風邪で「感冒薬」や「抗生物質」を服用するのは、留学中の日本人だけでした。傑作だったのは、順天大から来ていた眼下医、カナダを旅行中息子が熱をだしたので、ケフラール(第一世代セフェム、抗菌力が弱い)を飲ませ、小児科を受診したそうだ。小児科医から「なぜ、ケフラールを飲ませたか」と言われたそうで、私に「もっと強い抗生物質でないといけないんだね」と言った、私「あんた、バカをとおり越している」と心の中でつぶやいた。
 そろそろ、パブロン、ジキニン、ベンザだとかルルだとかテレビ CMが流れるシーズン。膨大な宣伝広告費をかけるわけですから、総合感冒薬は、よほど儲かるかるのでしょう。製薬会社は大事な天下り先ですから、毎年「風邪薬脳炎」で乳幼児が 100人死のうが、厚労省が規制するはずもない。
 近隣の医師が処方する薬は、次のような内容が多い。(1)ジスロマック 500mg 3〜5日間。(2)いわゆる「感冒薬」、PLやダンリッチ。最悪の場合は、漢方「葛根湯」。(3)いわゆる「消炎剤や去痰剤」、ダーゼンやムコダイン。そして(4)胃薬。

若干、風邪のおさらいを。
・いわゆる「インフルエンザ脳炎」がみられるのは、世界中で日本列島と台湾の一部だけ。かつては、世界七不思議の一つだったが、欧米の医師が日本列島に特有な「総合感冒薬」が原因と看破。無作為対照化試験の結果、総合感冒薬は治癒を遅延させることが判明。そればかりか、日本では毎年 100人の乳幼児が、「インフルエンザ脳炎」で死亡し、100人が重い後遺症を残している(近藤誠・著「よくない治療、ダメな医者から逃れるヒント」や「医原病」にくわしい。
・風邪の諸症状は、ウイルスを排泄(咳や鼻水)し、弱体化させる(=発熱)作業。だから、症状を抑えない方が早く治る。しかし、社会生活をしているので、希望があれば、ひどい咳には麻薬系「咳止め」。鼻水には「点鼻薬」を処方する。去痰剤は何の効果もない、効果的な去痰法は水分をよく摂ること。
・同じ文脈で、感冒様症状を自覚し 2日以内で、「仕事があるので」という希望者には「タミフル」を 2回内服してもらう(自費)。SARS系ウイルスによる感冒には効果なし。
・他にできることは「うがい」。この場合、イソジン(殺菌作用があるので、味方の菌を殺す)などのうがい薬より、水道水がよい。そして、なるべく食べないこと、栄養をつけると免疫能が低下します。
・解熱鎮痛剤は禁忌。ただ、咽疼痛が強い場合や頭痛には、アセトアミノフェン(カロナール)を処方します(OTCは、タイレノール)。
…お大事 
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2006年10月と2008年11月の記事統合、校正)

leeshounann at 14:33|Permalink
2012年12月01日

排尿時痛

昨日、頭書を主訴に来院した男性患者。「検尿で異常を認めないので、様子を見ましょう」と話したところ、「えッ、薬くれないんですか」ときた。「異常が無いのに薬を出すわけには行きません」と、とっととお引き取りいただいた(こういう輩を診るのは疲れる)。何やら、通院中の診療所で尿道炎と言われ、週に一回薬(?)を飲むように言われ、かかる診療所が休診だたので、当院を受診したらしい。薬について尋ねたところ、ヤクルトみたいな飲み薬(物)。お大事に…。
 排尿時痛を主訴に来院され、検尿で異常を認めない場合、下部尿路感染症の初期のこともある。症状が持続し、一週後の再検査で異常を認めない場合; 男性の場合、排尿に伴う尿道の拡張が原因で、何かの拍子に脳がこの信号を受信するようになる(ゲート・セオリー)。このことを説明し、かつ症状が続く場合は鍼治療を勧めている。女性の場合、酸性尿(pH<5)が原因のことが多く、この場合重曹(ベーキング・パウダー)を短期間服用していただく。
(2011年8月の記事、小校正)

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2012年11月22日

☆  大腸内視鏡検査の名手

医師 2〜4年目、北里研究所病院(前半)時代、外科・K先生(故人)が主催する腫瘍勉強会「ミッキーマウス・クラブ」に参加して、腫瘍の勉強を始めた。K先生は頭脳明晰で、当時は尊敬していた。ところが、何の役にも立たない「制癌剤感受性試験」を普及させるべく、何と保険医療に加えようと奮闘し続けていた。また、腫瘍を専門とする外科医なのに、手術の基本や癌の臨床をほとんどご存じなかった。だから、アメリカから帰国(1990年)後には、反面教師になってしまった。
 2007年 6月 17日ゴールデン・アワーの民放、ミッキーマウス・クラブ時代の一年先輩、W先生(現・北里大学病院・外科教授)が登場していたので、しばらく視聴した。W先生の解説「大腸癌は進行が遅いので、2〜3年に一回大腸内視鏡を受ければ大丈夫です」「早期に発見すれば、内視鏡手術で治ります*」。そして、バカ・タレントが「そう、今の内視鏡、本当に痛くないよ」「切っても痛くないから、これホント」…。あきれ果てることには慣れたが、かつてアカデミックだと思っていた同僚がこの体たらく。
 大腸内視鏡を行えば、7割の人に「ポリープ」が見つかる。医者が「ポリープをちょこんと切ると、売り上げは 3倍増」、「ポリープからは悪性(もどき)病変が見つかるが、決まり文句は「転移しないうちに手術してよかったですね」。
 W先生の内視鏡手術は上手だが、そもそも必要のないことをやってもらうことはない。一流企業の幹部やタレント達は謝礼を包み、外科教授に手術を依頼する、ブラックユーモアー、自業自得?
*大腸内視鏡の有益性やリスクを検討した無作為化試験はない:Gastroenterology 134:1570 2008
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表)(2007年6月の記事、校正)

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2012年11月08日

☆☆ 膀胱炎

一般にいう膀胱炎は「急性単純性膀胱炎」のことで、女性の病気です、男性はかかりません。膿尿(尿に白血球が多く混ざる)が続くと、「慢性膀胱炎」と診断される場合が多いようですが、症状が無い場合は治療しません(ただし、尿 PH<5 が続く場合は、尿路結核の除外診断を要します)。
 膀胱炎の主症状は「排尿時痛と頻尿」です。教科書には、尿混濁も記されていますが、尿 pHが高くなるとリン酸塩が析出するため、膀胱炎でなくても混濁します。もう一つの特徴は「熱がでない」こと、発熱がある場合は、腰痛が無くても急性腎盂腎炎を疑います(血液検査は補助診断になります)。血尿を伴うことがありますが、これは菌と身体の相性で、診断的価値はありません。ちなみに、尿臭は診断価値はなく「アスパラガス」を食べると臭います。
 膀胱炎は簡単に治る病気です。標準治療は、アレルギーがないかぎり、「バクタ(ST合剤)」という抗菌スペクトラムの狭い抗生物質の朝晩 3日間内服。水分を多く摂ると治りにくくなります。なぜなら、尿中抗生物質濃度が薄くなり、そして膀胱粘膜の自浄作用を阻害するからです。膀胱が空になり、膀胱粘膜が菌に接触すると除菌作用を発揮します。また、抗生物質を 4日以上服用すると再発が多くなります。
 腎盂腎炎の場合、クラビットを朝晩 7〜10日間内服すます。

 他院で膀胱炎を治療された患者は、例外なく「水分を多く摂り、刺激物をさけるよう」指導され、強力な抗生物質を 5日も下手をすると一週間も処方されます。また、必要のない消炎鎮痛剤と胃薬が併用されるのが常です。
 時々患者さんから、「再発を予防する上で何か注意することがありますか」と聞かれます。「ありません」とお答えするしかなく、がっかりする方もおられます。尿を我慢しない、クランベリージュースがよい、排便後前から後ろへ拭くなどなど、様々な俗説が流布されていますが、一流誌(Journal of Urology)の総説で全てが否定されました。
 膀胱炎を繰り返すのは、「不適切な治療と指導」の他は「体質」。膀胱内面(粘膜)はグリコース・アミノグリカンという、ヘパリン様物質で覆われ、これはテフロン加工のようなものでツルツル。侵入してきた菌は取り付く島が無い。ところが、膀胱粘膜表面に菌の手足(P鞭毛)の足場となる突起を有している方がいる。こういう方は、菌がその足場を足がかりに流されないので再発しやすいと考えられています。膀胱炎を年に 3回以上繰り返す場合、ある薬剤で予防処置を講じます。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2007年2月と6月の記事統合、短縮、校正)

leeshounann at 11:52|Permalink
2012年11月06日

☆ 漢方薬の副作用

患者・太田さん(指圧師)から、2007年 5月 1日に「原因不明の奇病」 Tさん(72才、男性)を紹介された。数年来の左下肢の運動麻痺のため介助無しに、歩行も椅子から立ち上がることもできない。他院での精査で脳に確たる病変はなくいが「アルツハイマー病」と診断されていた。
 内服歴(どのような薬をいつから使用しているか)をみると、2年にわたり内科医から「漢方薬(ツムラ15、黄連解毒湯)」が処方されていた。すぐにこれを中止させたところ、8日目の再診時、運動麻痺はほぼ消失。21日目の再診時、運動麻痺は完全に消失し、表情が生き生きとして「アルツハイマー病」も誤診。すべて漢方薬の副作用であった。奥様に大変感謝されたが「インチキ」を中止しただけ。それにしても、診断学と治療学を学んだはずの医者が、ツムラやカネボウが配る怪しげな「治療マニュアル」を根拠によく処方できるものだ、バカタレ。
 2009年 8月にも、お元気に来院されたので、あれから 2年以上になる。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2007年 5月の記事、小改訂)

leeshounann at 11:33|Permalink
2012年07月08日

包茎手術

以下の手紙をいただきました。以前にも同じ悩みで「○○○万円用意できますので…」という手紙をいただいたことがあります。かかる問題に私見を記します。元気を出してください。
 「こんにちは。私は神戸市に住む21歳男性です。今回はわらにもすがる思いで、先生にお手紙を書かせて頂きました。
私は先日、某クリニックにて、亀頭直下埋没法という包茎手術を受けました。そして、後日、調べてみると、この術式は性感帯を切りとってしまうということを知りました。私は術後、今日で 22週間になるのですが、そのことが不安で夜も寝れず、食事もとれず、”死”を考える日々を送っています。本当に、本当に苦しいです。インターネットで検索してみると、李先生のお名前が名医としてあがっていたので、ご相談させて頂いています。なんとか性感をもとに戻すことはできないでしょうか。ネット上にも、この術式のせいで、苦しんでおられる方が非常に多くいらっしゃいました。私たちの、この苦しみを救って下さい。生きる希望を与えて下さい。よろしくお願いします。  090-xxxx-xxxx 」

 一般的な包茎手術は、亀頭周囲で余分な包皮を切除します。傷跡を目立たないようにするため、亀頭下埋没法を売りにしているクリニックを散見します。これら手術の欠点は、性感帯の一部を切除することですが、性機能には影響ありません。
 根元切除法*が出現して以来、亀頭下埋没法の欠点が流布されているように思います。すでに手術を受けた方は安心して下さい、それは標準的な手術法だからです。ただ、これから手術を受けられ方には、根元切除法をお勧めします。
* Ohjimi H et al A New Method for the relief of adult phimosis JOU 153: 1607 May 1995

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2012年06月21日

☆☆ 高血圧症

血圧が140/80(mmHg)より高いと「高血圧症」といわれ、バカの一つ覚え、減塩をすすめられ、薬を飲まされることが多い。この血圧の基準値は「談合」で決められ、科学的根拠はないのは、一般に知られていない。2008年 3月の読売(か朝日)新聞によると、高血圧の診療指針を作成した委員の一人「萩原俊夫・阪大名誉教授」は、製薬会社から 3億 3千万円近くを貰ったそうだ。
 血圧が 160/90以上が続くと心血管系の病気が増えるので、降圧治療が望ましい。その場合、患者に運動してもらい、ダイエットしてもらい、乳製品や新鮮な野菜・果物を多く摂っていただくが、ジムやスーパーを儲からすだけで、こちらは儲かりませんからね。たんまりと、お薬を飲んでもらい、末永く通院してもらわねば。
 ここで言う高血圧症は「本態性高血圧症」のことで、「本態性」の意味分かりますか?「原因不明」という意味なのですよ。まれに、原因がはっきり分かる重症高血圧症、例えば、副腎の腫瘍(褐色細胞腫)や腎動脈管狭窄、これらは外科的治療で治るのです。
 ご高齢になると、血管が硬くなり臓器のすみずみまで血が通いにくくなる。だから生体は、血圧を上げて血を通わせるようにする。ご老人の血圧を薬物で強制的に下げると、老化とボケを助長する。お大事に。

近藤誠・著「成人病の真実」、「医原病」に詳しい。
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) 早死にするデブ しないデブ(2007年2月の記事、校正)

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2012年06月16日

☆☆☆ 抗生物質のご乱用 と 膀胱炎

様々な感染症があるが、RCTの結果、それぞれについて最適な抗生物質の種類や投与期間が明らかにされている。それらが、ベッドサイドでも使える小冊子にまとめられている(THE SANFORD GUIDE TO ANTIMICROBIAL THERAPY)。その翻訳本も出版されているのに、なぜほとんどの日本の医者は、マニュアル通りに治療しないのか不思議でならない。
 抗生物質が乱用されている地域や施設では、耐性菌のため抗生物質が効きにくいことがある。また、「使用すべき抗生物質にアレルギーがある方」や「妊婦」にマニュアルにない薬を使う場合、検出された菌に対してどの抗生物質が効きやすいかを知る上で「感受性試験」が役に立つ。予め、菌を寒天培地に播き、抗生物質を浸みこませたディスク(丸い紙)を寒天の上に載せる。するとディスクから抗生物質が染み出し、ディスクの周りに菌が生えない透明帯(阻止円という)できる。この阻止円の大きさから、感受性あり(S)、中間(I)、そして、なし(R)と判定する。
 泌尿器科で最も多い感染症は、膀胱炎で非常に治りやすい。「有史以来、膀胱炎による死亡例が記されていないので、恐らく自然に治る病気」と、聖路加時代に先輩から聞いたことがある。膀胱炎に対する第一選択薬は、バクタ(ST合剤:サルファ剤+トリメトプリム)という抗菌力の弱い古典的な抗生物質である。当院で、膀胱炎で検出された菌の感受性試験では、バクタが効かない(R)場合が多い。にもかかわらず、ほとんどの患者さんはバクタで治る。なぜでしょう。
 これは、感受性試験は「抗生物質の血中濃度」で判定するから。バクタの血中濃度では抗菌作用を示さなくても、尿中濃度は非常に高くなるので、(R)とでても治る場合いが多いのですよ(尿路感染症の場合、抗菌作用は薬剤の「血中」ではなく「尿中」濃度に相関する」。
 手術に際し、抗生物質が投与されるが、最適な使い方は「抗菌力スペクトラムの狭い第一世代セフェム、いわゆる弱い抗生物質を手術前 1時間以内に 1回投与」。術後からの投与は無効。術後、継続投与は感染症を増やす。術後 1週間も強力な抗生物質を点滴し、その後経口投与する病院も多々あります。
 同じ文脈で、歯医者が抜歯から抗生物質を 1週間も投与するのは有害でしょう、抜歯前に一回投与すべき。うちのスタッフがある歯科医を受診し、抜歯に飲む広域抗生物質を処方された。どうすればよいか尋ねられたので、「捨てれば」と助言した。
 日本人の薬好きがいけないのか、医者がいけないのか、風邪で医者にかかると抗生物質、消炎鎮痛剤、去痰剤、胃薬などが処方される。最悪の場合、漢方薬が併用されたりする。私が患者に「風邪はウイルスが原因だから、薬は飲まないほうがよいですよ」と言うと、昔は 2人に一人は不満そうに「それで治るんですか」ときた。最近は、ブログで予習され、わざわざ遠方から来院する方も増えたので、仕事が非常に楽になりました。患者がある程度医学知識を身につけ、医者を選ぶようになれば、日本の医療も少しはよくなると思いますよ。
 ウイルスと細菌と真菌(カビ)の区別がつかない輩がいる。そんな当たり前のことを知らないアホの面倒は見きれないので、他院を受診していただこうと外堀を埋めていくと、頭脳明晰な方も多い、ゆとり教育の弊害なのか。もっとも、風邪(ウイルスが原因)に抗生物質を処方する医者は、もっとアホか。
 抗生物質が発見されたのは、約 80年前。フレミング博士が細菌の研究をしていた時、培地にぽたりと青カビ、食パンなんかに生えるカビが生え、その周りに細菌が生えないことにを発見した。ところで、赤いカビご存知ですか。聖母マリア像が目から赤い涙を流し、その正体が赤カビだったので、そのカビをSerratia Marcescensと命名した、Marcescensは「奇跡」と言う意味。閑話休題、青カビ(Penicillium Notatum)が産生する物質に殺菌作用があることが分かり、その物質を青カビにちなんでペニシリンと命名した。抗生物質は、真菌が細菌から身を守るために出す物質なのです。以降、土壌中の真菌探し、例えば相模原で見つかった真菌が出す抗生物質にはサガミシンと命名。最近は、抗生物質の構造を人工的にデザインして作るらしい。
 抗生物質を投与すると、それに負けない細菌が登場する。その強い細菌は、抗生物質に負けない情報をつめこんだ、プラスミドという DNAを周りの菌に渡す、丁度、焼き増した CDを配るように。かくして耐性を獲得した菌が増殖する。それに負けじと、さらに強い抗生物質を投与するとさらに強い菌が登場する。その繰り返しで、ついに MRSAという屈強な細菌が登場した。その細菌を殺す、究極のバンコマイシンという抗生物質が登場したが、やはりバンコマイシン耐性菌も出現した。医師一年目に読んだドイツ内科学会誌(の邦訳)に抗生物質発見前と後で感染症による死亡率は変わらないというのがあった。当り前か。
 北里研究所病院時代、外科の先生が手術後からの予防投与(?)にバンコマイシンを使っているのには驚いた。日本中の病院に耐性菌がはびこるのは当り前か。 
 抗生物質乱用のため、日本では病院における「MRSA」の検出率は約 80%と、世界一です。そう言えば、北里研究所病院・呼吸器内科専門医・鈴木幸男医師は風邪には抗生物質が持論で、欧米の医療を批判していた、やれやれ。ちなみに、オランダにおける MRSAの検出率はゼロです。(近藤誠・著『良くない治療、ダメな医者から逃れるヒント』(講談社)に詳しい)
 土壌から何百種類もの「抗生物質を唯一の炭素源として消費する」細菌が発見された*。自然界にある抗生物質のみならず、合成した新世代の強力な抗生物質も栄養源にする。科学者たちが恐れるのは、すでに臨床の場で問題となっている耐性菌が、この抗生物質を栄養源とする細菌から遺伝子を獲得すること。治療法のないスーパー病原性耐性菌の登場である。世界一耐性菌検出率の高い日本、鳥インフルエンザどころではない。
*Bacteria Subsisting on Antibiotics, Science 320:100, 2008
リー湘南クリニック leeshonan@gmail.com  拙著「癌患者を救いたい PSA検診のウソ」(正誤表) (2009年4月の記事校正)

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