2021年10月20日

あとは頼んだ

 中村とうよう氏や西部邁氏、加藤和彦氏やキース・エマーソン氏も含まれるのだが、積み重ねて来たキャリアを以って社会的にも一廉の評価を得、年齢も重ねた人物が自ら死を選ぶということは一体どういう事なのだろう。
 極々下世話で狭量な視点ではあるものの「安定した老後」を手に入れられる立場でそれを放棄するのは日々財布の底を眺めながら生きているこちらにとっては勿体ない話だし、そうでなくとも彼らが引き続き生きて功績を重ねる事で生まれたかもしれないものがあるだろうに、と考えてもやはり「勿体ない」という間抜けな感想を禁じ得ない。

 とは言え考え続けているうちに、そうは言いつつ少しだけ理解出来なくもない、と言う思いが湧いて来た。
 わが身を振り返ると若い時分には人生への不安や絶望に苛まされて希死念慮に取り憑かれた事もあった。だが自身が中年になり、それなりに痛い思いなどを重ねて図太くなって来ると若き日の不安や絶望は「まあ俺は死ぬまでこんなもんだろう」という諦念へと移り変わって行く。その諦念と折り合いをつける手段としての自死、というのはなんとなくわかる気がするのだ。そして今でも時折ひどく疲れた時などにはこんな日々がいつまで続こうとも何一つ変わることなど無く寧ろ大切なものをなしくずしの様に失っていくのだからこの瞬間にふと死んでしまってもいいかもしれない、などと思うことが稀ではない。

 そんな事を布団の中で考えながら眠りについたら自死の夢を見た。まわりくどいやり方だが注射針で林檎に毒を入れてそれを食べようとしていた。しかしそこに何故か機動隊のような一群が押しかけてきて待ったを掛けてきた。何をするのだ、おれはもう今死にたくてたまらないのだ、と最前列の男に掴みかかると彼はヘルメットを外してこう呟いた。「あとは頼んだ」と。そこで目が覚めた。
 「あとは頼んだ」がどういう意味なのか暫く理解ができないまま起き抜けの頭でずっと考えていたが、あの男の顔が4年前に死んだカズシゲだったこと、そしてその日が彼の命日だった事を思い出して何か合点がいったような気持ちになった。8月の終わり、まだひどく暑かった頃の話。
 あと、を頼まれたのだな。

lenoir at 10:32│clip!
Profile

山崎怠雅

ミュージシャンです。
お酒大好き。

2007年「Fairy Tale」発表。
2010年「Reset」発表。
2012年「サイレン」発表。
すみません。全て売り切れ中です。

2013年12月25日「フィクション」発売。
2014年9月10日「モノリスと海」発売。
2015年9月9日「アンソロジー」発売。

今やっているバンド、今までやったバンド
・安曇山水(1996〜2001)
・eddy(1995〜2006)
・sekt(2005〜2006)
・巛(セン 2001〜)
・捻転時計(1999〜2009)
・ヤブレカブロドバイバイ(2004〜)
・S.R.I.(2006〜2009)
・ジンギス・パンチ(2008〜)
・鳥を見た(2008〜2017)
・The 不謹慎ズ(2008〜2010)
・山崎怠雅グループ(2011〜)
・Hardy Soul(2013〜2014)
・魔術の庭(2014〜2016)
・サヴァン道(2015〜)
・The Hardy Rocks(2016〜)
・ニューアクション(2016〜2019)
・The Silence(2016〜)
・バラナンブ(2017〜)

その他セッション等多数。
2002年からアコースティックギターの弾き語りも始める。

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