クククの館

十字屋レイ(@crossssray)が書いたSSの書庫

二穂「ライブアライブだと?」モルガナ「ええ」










未完

【クロス・元ネタ 長編】




【クロス・元ネタ 短〜中編】



【クロス・元ネタ 小ネタ】
















唯憂


紬菫


恩那組





平梓


唯梓

   1.開拓軍 先鋒艦隊 艦長の記憶

 ついにこの日が来た。八年続いた地球連合軍との戦争は、我が開拓軍の勝利で終えることができそうだ。小惑星群、コロニー等はすべて勢力下に置き、地球周辺の宙域は完全に支配した。あとはやつらの領土に乗り込み、トドメをさすだけだ。
 数で劣る我らが開拓軍だが、技術力の高さで徐々に優位に立ち、ここまで追い詰めることができた。ここ数年の宇宙研究所メティスの迷走ぶりは不安要素ではあったが、あいつらのヘンテコな新兵器が完成する前に勝利を収められそうでホッとしている。やれ人型兵器だの、バケモノの類だの、失敗したらとんでもないことになりそうな領域に片足を突っ込んでいるからな。
 さあ、出撃だ。我が先鋒隊はやや小型の戦艦一隻と戦闘機数十機のみだが、これだけでも地球連合軍の主力と渡り合うには十分だろう。行くぞ、大気圏突入だ!

 首尾は良好。やつらは何の手も打てず、ただ主力部隊をぶつけてくるだけのようだ。数は多いが、我らの敵ではない。敵の射撃は当たらないし、当たっても最新鋭のバリアにより無効化する。こちらからは、これも最新鋭の技術がつめこまれた弾丸をお見舞いする。やつらの数世代遅れた装甲ではまったく防げず、一撃で貫通、爆破炎上して次々と落ちていく。これは我々の圧勝だろう。
 最新鋭の技術というのは正直なんなのかよくわかっていないが、これはあのメティスの連中が人型兵器を開発していたときの副産物らしい。ふむ、連中もこういうのに専念してくれればよいのにな。どうもあそこの所長は頭がおかし——
 何だ、レーダーに何かゴミのようなものが映ったぞ。小型の戦闘機か? いや、小さすぎる。鳥を誤検知? まさか。では何だ、この動きは……おい、報告しろ!
『人間です! 人間が飛んでいます——うわあああ!』
 何だと……!? 
『報告します! 翼を持った女が単独でこちらに向かってきます! 武器はビーム状の剣、既にこちら二機が撃破されました!』
 そんなバカなことがあるか……撃ち落とすんだ!
『一斉掃射しています、しているんですが……命中しているはずなのですが……!』
 効かない、というのか……
「艦長! 敵は本艦目指して一直線に向かってきます! 命令を!」
 信じられんが、やむを得まい! バリアを展開し、一斉掃射せよ! 主砲使用も許可する! 侵入時に備え総員、白兵戦の準備だ!
 さて……さすがに人っ子一人ではこの戦艦にはかなうまい。遥か昔の世界大戦を思わせる無謀な作戦だな。追い詰められた地球連合軍の最期の悪あがきというわけか。せいぜい美しく散るがいい……主砲、発射だ!
「主砲、命中……いや、コースを変えられました!」
 受け流された……!?
 あの剣は何だ! なぜ弾もビームも効かぬ! 一体あの装備は何だというのだ! あんな人型の兵器があってたまるか……む? 人型の兵器、まさか、奴らのほうが先に完成させていたというのか、装身型戦具インカーネイト・フレームを——! 
「艦長! バリアが破られました! 来ます……ッ! 奴の狙いは動力炉です!」
 バリアが破られるのも当然か。奴らの技術は、我々の技術と同じものを使っていて、しかも、その数段上なのだから——
「火の鳥……? 綺麗だ——」



   2.開拓軍 本艦隊 戦闘機パイロットの記憶


 信じられないニュースが飛び込んできた。先鋒隊が女一人に壊滅させられただって? しかも生身の。そんなSFみたいなことがあり得るってのかい。
 で、結局その女は何者なんだ。速攻で壊滅させられてしまったからか、その辺の情報が入ってこない。よくわかんないまま、先鋒隊の仇を討つべく本艦隊が出撃になった。
 得体の知れない敵に不安はあるが、でもまあ、よくよく考えればこちらの優勢は変わっていない。その女一人だけは強いのかもしれないが、それ以外の敵艦隊はうちの先鋒隊の攻撃で既に半壊状態だ。あとはあそこに浮いてる地球連合軍の戦艦を沈めればこの戦争は終わる。先鋒隊の戦艦は小型だったから敵の特攻で一発で破壊されてしまったようだけど、この本艦はさすがに無理だろう。
 攻撃命令が出た。よし、カタパルト射出だ。その女に遭遇しないことを祈るよ。そいつ以外は雑魚だ、蹴散らしてやるさ。
 って……言ってるそばから、出た! 赤い装備に翼、あとビームみたいな剣。間違いない、あの女だ! って、こっちには目もくれず通り過ぎてしまった。本艦の方に向かって行ったが……まあいい、こっちの任務は敵戦艦の撃沈だ。健闘を祈るよ。
 さて、早速敵艦の主砲がチャージを始めたようだ。問題ない、何世代前の技術だっての。かわすのも楽勝、反撃の隙もありあり。まずはその砲身をへし折ってやるさ、そら!
 おお、キレイに折れた折れた。弱い、弱すぎるよ地球連合軍。もう向こうのカタパルトからも何も出てこないし、残機無しみたいだね。さあ、とどめを……ん?
 なんか出てきたぞ。
 ……え、マジか、変な女、もう一人いたの?
 なんだあれは。台座みたいなのの上に乗ってるだけじゃないか。何しにきた? 武器すら持っていない。いや、あの十字型の棒みたいなのが武器……?
 なんか、嫌な予感がするな。所詮は生身の人間だ、今のうちに撃ち落としてやる!
 ……ウソだろ、当たったのに……どうしろっていうんだ!? クソっ、先鋒隊、何かアイツらの攻略法はわからなかったのかよ! っと、いいタイミングで通信だ。何々……アイツらはうちらと同じ技術を使ってるから通用しない……って、解決策無しだと!?
〝残念でした〜!〟
 って、今、あの女の口がそう動いたように見えた……そうかい、あの十字型のやつは弓ってことかい。へえ、頭おかしいぐらいの威力だな。味方が二、三機ずつまとめてハエみたいに撃ち落とされていく。弓ごときで戦艦の主砲の代役が務まるんなら、確かに勝てっこないかもな——



   3.地球連合軍第一コロニーの住民の記憶

 
 去年、地球に一番近いこのコロニーが開拓軍に占拠されてしまってから、私たち住民は捕虜として不安な日々を送っていました。最後の砦であるここが陥落したということは、いずれ故郷の地球が侵略されてしまうかもしれないのです。
 とは言っても、情報も規制されていますので、いつ地球侵略が始まるのか、私たちには知る由もありませんでした。ただ、このところ開拓軍の動きが活発になっているのを感じるので、そろそろ……とは思っていました。
 そんなある日。突然の爆発音がして、驚いて見上げてみると……コロニーの反対側で、何やら戦闘が始まったようです。あっち側は開拓軍の本拠地や、コロニー内陸軍の基地があったと思いますが……ちょっと望遠鏡で覗いてみましょう。
 すごい、たくさんの戦車が一斉に砲撃しています。歩兵の姿もたくさん見えます。その攻撃の矛先は……何もありません。あれ、地球連合軍が助けに来てくれたんじゃないんでしょうか。じゃあ一体開拓軍は何と戦ってるのでしょうか。
 あれ、よく見たら……人!? 人です。たった一人の人間が、何もない空中をピョンピョン跳ねながら、戦車の砲撃を器用にかわし、銃撃を避け……いや、当たってるよね……でもまったく立ち止まることなく、的確に戦車の砲身を殴って折ったり、歩兵の部隊長らしき人だけ狙って蹴りを入れたり……
 すごい、すごい。一人で大軍を相手に戦ってる。しかも、勝っています。動きが早くてなかなか目で追えませんが、スラッとした長身の女性に見えます。きっと、このコロニーを救いに来てくれた女神なのでしょう。あ、開拓軍本拠地の建物の壁を壊して侵入していきました。頑張って、あなたなら勝てる!



   4.開拓軍 本艦隊 艦長補佐の記憶


 理解不能な事態が続いています。先鋒隊は敵飛行兵一人により壊滅。本艦隊より派遣した部隊は敵戦艦から現れた別の弓兵一人により壊滅。そして第一コロニーが地球連合軍により奪い返されたとの速報が。これも、宇宙空間での戦闘に気を取られている隙に侵入を許した歩兵一人により陸軍が壊滅したとか。このせいで、我々本艦隊への補給経路が断たれてしまいました。
 この不自然な強さ、メティスにて開発していた装身型戦具インカーネイト・フレームを想起させます。地球連合軍はこれの開発に全力を注いでいたということでしょうか。さらに〝適性〟者にも恵まれたと。しかしアレは滅多にいないとのことです。事実、月には約一名しかいなかったのですから。三名も地球にいるという時点で天文学的確率ですし、四名いる可能性はまずありえないでしょう——
 ……警報音が……どうやら、甘かったようです。敵兵の侵入を許しました。先程から本艦の周りを敵飛行兵が飛び回っていましたが、あれは囮だったということですか……
 仮にあれが装身型戦具インカーネイト・フレームそのものだとしたら、その性能から考えて、白兵戦で勝ち目はない……艦長、退避を。
「そうはさせないんだよ!」
 何っ、早い!?
 すぐに護衛兵が飛び出してきて盾になってくれたおかげで、艦長と共になんとか命からがら逃げ出すことはできたものの、あの強さ、護衛兵など時間稼ぎにもならないでしょう。早く、早く脱出艇に乗り込まなくては——
「逃がさないんだから〜!」
 追いつかれた、かくなる上はこの身を盾にしてでも——ぐふっ!
 ……初めて侵入者の顔をはっきり見ましたが、年端もいかない女の子ではありませんか……これが〝適性〟者……まあ、よい……艦長は既に脱出艇に乗り込み、カタパルトから発射された……何、あの女、追うつもりですか……砲身と一体型の飛行ユニット、なるほど……ああ、脱出艇が……撃墜されて……



   5.開拓軍 特殊部隊員の記憶

 
 このまま終わるわけにはいかない。
 長きに渡る戦争を終わらせる千載一遇のチャンス、逃すわけにはいかないのだ。開拓軍の全軍撤退が命じられても、私達の部隊は最後まで諦めない。
 敵は究極の少数精鋭で勝利したようだが、我々とて負けてはいない。起死回生の勝利で浮き足立つ地球連合軍の隙を突き、その喉を背後から搔き切ってくれる。
 今こそ開拓軍の技術、転送装置を使うときだ。これにて我が隊は直接、敵の心臓部である連合軍本部へ潜り込むことができる。いざ、出撃だ。
 ——転送は成功した。連合軍の本部、ちょうど誰もいない部屋に狙い通り侵入した我々は、最短距離で首脳陣の構えるフロアへ向かい——
「ネタは上がってるですよ」
 何……待ち伏せだと! この女もまさか、例の装身型戦具インカーネイト・フレームの使い手か!
「囲むです!」
 まさか……どういうことだ。周りの空間が消滅したかと思えば、新たに構築されたエレベーター状の構造物に閉じ込められ、上空へと運ばれていく。我々の転送装置など可愛いものだ、地球連合軍がこんな技術を持っていたとは。
 既に我々は戦意喪失していた。今この女に銃撃を加えても効かないだろう。雲海の上まで引き上げられた我々は、その女が何か機械を操作し、上空にエネルギーの塊ができていくのを眺めることしかできなかった。
 これで、この戦争はまた振り出しに戻る。人の身でありながらここまでのことができる恐るべき兵器、装身型戦具インカーネイト・フレーム……当然、開拓軍もそれに追いつき、追い越そうと技術開発を進めるだろう。ついに、人類は禁断の領域に踏み込んでしまった……そんなように感じた。

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