2007年12月28日

(社外)監査役の任期

1月23日 午前10時頃、追記あります。

多分、今日が年内最後の更新です。
まだ初めて8ヶ月の本ブログですが、読者の皆様に適度にツッコミを入れていただいて、楽しく続けることができているのは幸いです。本年のご厚誼に感謝し、新年が皆様にとって素晴らしい年となることを祈念いたします。
-----

さて、予告どおり、(社外)監査役の任期についてお話します。



といっても、後で述べるように、私の意見は「現場の(社外)監査役の皆さんの意見に耳を傾けて決めるべきである」というもので、特に強い私見があるわけではないのですが、これまでの改正を簡単に振り返り、理論的な問題の所在を整理したいと思います。

(1)手元の『三省堂 新六法 昭和54年版』を紐解くと、商法273条1項は「監査役の任期は就任後2年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとす」と定めています。以下メンドイので、単純に「2年」と書くことにします。

当時の商法256条1項は、「取締役の任期は2年を超ゆることを得ず」としています。戦前に遡って調べる根気がないので、昭和25年改正以後をもっぱら扱うことにすると、取締役・監査役とも「2年」というと話は簡単そうですが、取締役の場合は任期を短縮できるのに対して、監査役は完全に法定されている(短縮も延長もできない)という違いがあります。

(1月23日 追記)
昭和49年改正前は監査役の任期は1年だったことをみうらさんからご指摘いただきました。ありがとうございます。少し調べてみた結果を、本文の一番後ろに載せておきます。


なお、非常に細かい話をすると、平成17年の会社法ができるまでは、株式会社設立当初の取締役・監査役の任期は1年だったのですが(商法256条2項、273条2項)、これもメンドイので無視します。

また、以下、もっぱら大会社を念頭に置きます。

(2)監査制度の強化は、昭和49年の商法特例法の制定(監査役に業務監査権限を復活させるとともに、証取法上の外部監査人による会計監査を、会計監査人の制度として商法に取り入れた)、昭和56年の大改正(特例法で監査役会制度を導入し、監査役は2人以上、内1人以上は常勤監査役とした)などがありましたが、ここで重要なのは、平成5年改正です。

同年改正で、監査役の任期が3年に伸長され、監査役は3人以上とされ、かつ1人以上は社外監査役でなければならないとしました。

(3)んで、平成13年12月改正(いわゆるコポガバ改正)がだいたい現在のルールを形作っています(もちろん、会社法による細部の改正もありました)。

13年改正では、監査役の任期が4年に伸長され、社外要件が厳格化され(5年ルールがなくなった)、監査役の半数以上は社外監査役でなければならないとされ、ほかにも取締役会の出席・意見陳述が義務化されたり、権限(特に取締役の責任免除関係)が強化されたり、監査役制度は昭和49年以前と比べると、驚くほどの進化を示しています。

もっとも、以前、昭和49年改正の頃の文献を調べたことがあるのですが、内部統制システムや監査役の監査権限の解釈論などは、当時から余り変わっていない(むしろ部分的には当時よりも後退している)という印象を受けました。が、この点はここでは触れません。

(4)じゃ、なぜ任期が長いほうが良いとされているのか、考えてみましょう。

手元の『岩波コンパクト六法 2008年版』の憲法2条のところを開くと、フランスの憲法は6条で、大統領の任期を5年としていることが分かります(2000年に改正があったようです。私の頭の中ではずっと改正前の「7年」でした・・)。

フランス大統領の任期が長いのは、「国家元首が過度に民意に翻弄されないため」です。つまり、国民の代表として選挙で選ばれる議員や国家元首は、必ずしも民意を忠実に反映することが良いわけではなく、地域や職業団体の個別利害を離れて国家の一般意思(う゛ぉろんて・じぇねら〜る)を追求しなければならない、というのがその心です。

つまり、選挙人と非選出者の関係をリモートにすることによって、より良い政治がなされると考えられているわけです。

他方、日本の株式会社における監査役の任期が4年なのは、ちょっと違いますね。会社法の世界では、取締役であれ監査役であれ、株主の意思になるべく忠実に行動することが期待されているといって良いと思います(株主「だけ」の「生の」意志に従うべきか、もう少し抽象化した「株主共同の利益」みたいなフィクションを立てるか否かはともかく)。

監査役の任期が長いのは、監査役を実質的に選んでいるのは経営トップであり、株主総会はそれをほとんど無条件に追認しているだけという認識があって、それならば一度選ばれた後はしばらくは経営トップの顔色に一喜一憂することなく監査役が腕を奮えるようにしてあげるために、任期という形で身分保障をすることを、商法・会社法は選択してきたわけです。

(5)しかし、社外監査役について考えると、監査役の任期を4年とした理由は監査役が経営トップからの独立性を保てるように身分保障を与えた点にあるわけですが、社外監査役の場合、通常は社外に「本業」があり、それで生計を立てているため、任期を4年として身分保障を図る必要に乏しいようにも思われます。

山口利昭先生はご自身のブログで、「社外監査役の任期は2年とすべきではないか」と主張されています。是非、リンク先のオリジナルに当たっていただきたいと思いますが、少しだけ抜粋します。


理由のひとつめは、4年ということになりますと、就任の依頼を受けるときに躊躇を感じます。最近の監査役制度に期待されている業務からしますと、(中略)月1回の役員会に出席していればいい、といった風潮は次第になくなっていくものと思われます。そうしますと、どうしても本社に近いところで活動できる体制が望ましいわけでありまして、4年といった任期は、本社近くの安定した職場を持った人材が優先されることになります。また、就任するほうも、人材流動化の激しいなか、途中で職務を全うできない不安があれば、会社に迷惑をかけてはいけない、ということで、就任を固辞せざるをえないわけでして、そうなりますと、有用な人材が監査役という役割を敬遠する傾向があるのではないかと思われます。(中略)

理由のふたつめは、社外監査役の任期につきましては、ガバナンスのあり方を法で強制することよりも、株主に評価してもらうことを重視すべきではないか、ということであります。(中略)

そして理由の三つめは、監査委員会における社外取締役は1年の任期であり、そこには社外取締役が過半数を占めているわけでありますので、人材の互換性という意味でも、社外監査役のあり方は接近させるべきではないかということこであります。(以下略)


第1の理由は、4年という任期が適材適所への制約になっているということですね。第2の理由は、事業報告による開示の拡充により、「株主による評価(再任時のチェック)」を期待できる状況が徐々に成立してきているということ。第3の理由は、委員会設置会社となるべく連続的な制度にしておくべきということですね。

以上の抜粋では省略したのですが、1つのポイントが、「監査役の辞任」のインパクトにあります。辞任といえば、一昔前であれば「誠実な監査役が経営トップと衝突して、辞めざるを得なくなった」という状況を想像するのですが(今でもそういう事例は○O○Aのようにもちろん存在しますが)、むしろ社外監査役さんについては、その方の(本来の意味での)一身上の都合で辞めるということもあるわけです。そして、昨今の風潮では、辞任の報道があれば後者の場合であってもいろいろな憶測がなされるわけで、いわば「辞任というオプション」の刃が必要以上に大きくなっている可能性があります。

「辞任というオプション」の刃が本当に必要な場合にのみ発揮されるべきだとすれば、4年という任期を短縮することがたしかに理にかなっています。

(6)いよいよ最後のまとめです。

4年という任期は、主として社内の監査役を念頭に置いて、その身分を保障しようとする趣旨だと考えられます。これに対して、社外監査役の場合、長すぎる任期が、適材の確保を難しくしており、また事後的にも「辞任というオプション」の刃を過大なものにしているように思われます。社外監査役の場合、4年間の身分を保証されることよりも、むしろいつでも辞任できるということのほうが、経営トップに対する交渉力を強める要素であるといえましょう。

他方、社外監査役と社内の監査役の任期を別々に定めるとすれば、法執務上可能なのか、法制策として賢明なのかという問題はあります。

社外監査役が「半数以上」と定められている現行法においては、社外監査役の都合に合わせて、社内もたとえば「2年」とする、と割り切ってしまって良いのではないでしょうか。監査役会が本当に強い力を持つのであれば、取締役と任期がずれることは気持ち悪い結果を生みそうな気がします。たとえば、TOBや委任状勧誘によって敵対的買収が成功したのに、昔の監査役が居残っている、というような。

突飛な連想ですが、いまの衆議院と参議院のねじれを見ていると、(監査役会は参議院のようなものだ、という趣旨では全くありませんが)、「監査役会はどうしても弱いから、4年という任期によってパワーアップする」というよりも、「社外監査役を元気にして監査役会のパワーアップをはかり、任期は2年にする」ほうが現実的でかつ正論と思うのですが、いかがでしょうか。

私の知見は限られているので、むしろ経験者の皆様の意見をお聞かせいただき、私が勉強させていただくべきだと思います(宜しくお願いします(ペコリ))。たとえば、「3年だと役員の人事ローテーションがやりにくいのに、4年になって余計に面倒になった」「けっきょく法律の任期にかかわらず、2年くらいで会社のローテーションの都合で、肩たたき(経営トップから関連会社の取締役就任を告げられて・・・、みたいな)」等の話を、昔耳にしたこともあります。

------
ほかにも、会社法のプチ改正(要望)として、このブログでは「社外要件について、かつての5年ルール(に近いもの)を復活させるべき」との議論を紹介したことがありましたし、「大会社の定義を資本金によってではなく、資産額によって行うべきではないか」という問題提起を他所でしてあっさりと斥けられたこともありましたが、来年もがんばっていこうと思います!

(1月23日 追記)
「監査役の任期は、明治32年の商法では確定的に1年であったが、明治44年改正で最長2年に改められた。さらに、昭和25年改正で、取締役の任期が、明治32年以来の最長3年から、(中略)最長2年に短縮されたのに伴い、監査役の任期も、最長1年に改められた。しかし、昭和49年改正では、監査役の地位の強化を図るため、監査役の任期を取締役の場合に合わせて2年とした(中略)。平成5年改正で、上記の2年が3年に延長されたのである。」
(上柳克郎ほか編『新版注釈会社法 第2補巻 平成5年改正』(有斐閣、1993年)41頁〔北沢正啓執筆〕

で、上記の「中略」のはじめのほうは、次のように述べています。「取締役の権限の拡大と地位の強化に対応して信任を新たにする機会を多くするため、」。でも、「取締役が強くなったからその任期を短縮する」というロジックは理解できますが、「それに伴い、監査役の任期も(短縮)」というのは、あまりつながっていないような気もしますね(笑)。


トラックバックURL

コメント一覧

1. Posted by 監査役改造論   2007年12月29日 01:14
>「辞任というオプション」の刃が本当に必要な場合にのみ発揮されるべきだとすれば、4年という任期を短縮することがたしかに理にかなっています。

>長すぎる任期が、・・・・事後的にも「辞任というオプション」の刃を過大なものにしているように思われます。社外監査役の場合、4年間の身分を保証されることよりも、むしろいつでも辞任できるということのほうが、経営トップに対する交渉力を強める要素であるといえましょう。

全然意味が分かりません。任期と「辞任という刃」は全く関係がないですね。任期が短ければ、「いつでも辞めてやる」という意味でしょうか。だとしたら、本当に必要な場合にのみ発揮されることにはなりませんね。むしろ、辞任は再任を不可能にするという意味があるのではないでしょうか。情緒的すぎて非論理的と言わざるを得ません。
2. Posted by 監査役改造論2   2007年12月29日 01:25
長期間、身分を保証されたって、いつでも辞任できることに変わりないですよね。どういう意味でしょうか。任期が長すぎると辞任しにくいとい意味でしょうか。社外の報酬はどうせ低いですし。辞任という刃が発揮する効果は任期とは関係ないですよね。世間は、長い任期を放棄すれば、その事実を重大視するとは思えません。
3. Posted by toshi   2007年12月29日 02:27
おおすぎ先生、こんばんは。TBありがとうございます。
監査役制度の歴史からみて、任期はコロコロと変動しておりますので、「インセンティブ」とか「株主からのガバナンスへの評価」あたりを考慮して、選択制というのも考えてもいいのかなぁなどと思ってエントリーしておりました。そもそも2年くらいにしておけば、任期途中で辞任することの影響力を残しつつも、一身上の都合で任期満了で退任しやすい環境となり、やってみたいと思う方も増えるかと。
4. Posted by toshi   2007年12月29日 02:35
ただ、監査役自身が身軽であればいいのですが、監査役スタッフが充実していたり、あの英会話教室のように、コンプライアンス委員会が、監査役会の直轄下にあったりするなど、組織的に大きなものになってきますと、辞任することによる会社への迷惑というものが大きくなりそうですので、またけっこうやっかいかなぁと思ったりしております。
5. Posted by おおすぎ   2007年12月30日 13:14
>toshi さま

私のエントリーはすっかり遅くなってしまいましたが、早速来ていただきありがとうございます。toshiさんの問題提起はかなり面白いものだと思いましたので、これからも時々引っ張っていきたいと考えています(笑)。
6. Posted by おおすぎ   2007年12月30日 13:18
>監査役改造論さま

私の文章が分かりにくかったのかもしれませんし、私の論理に説得力がなかったのかもしれませんが、toshiさんの書き込みをあわせてご参照いただけますと幸いです。

辞任には、「経営トップと衝突して辞任する場合」と「監査役の方の都合により辞任する場合」とがあること、「辞任というニュースはそれなりに社会的インパクトがある」ということを踏まえると、・・・ということです。
7. Posted by おおすぎ   2007年12月30日 13:22
>toshi さま

改めて考えると、「(社外)監査役の任期は2年以上4年以下で、選任決議によって定める」で良いような気がしてきました。「2年に戻す」ではなくて、選択制というアイデアですよね。
8. Posted by 埼玉ののよっちゃん   2008年01月01日 14:27
おおすぎ先生
あけましておめでとうございます。
今年も楽しみにしております。

さて、正月早々ですが、企業法務部で平成5年以降の改正に伴い、社外監査役要件、監査役会、取締役責任追及要求対応、定員に関する定款変更などを直接・間接に関与してきたものとして一言感想を述べさせていただきます。

結論として、社外監査役は、
>改めて考えると、「(社外)監査役の任期は2年以上4年以下で、選任決議によって定める」で良いような気がしてきました。「2年に戻す」ではなくて、選択制というアイデアですよね。
という先生のご意見が、最もしっくりきます。

9. Posted by 埼玉のよっちゃん   2008年01月01日 14:29
理由は、社外監査役の供給源をどこに求めるかです。
一般的にいうと
/堂饉辧▲哀襦璽弉饉卞
▲瓮ぅ鵐丱鵐、サブメインバンク
B膰取引先(債権者、提携先)または大株主
し弍勅圓侶弍勅埣膣
コ惻圈∧杆郢痢公認会計士、コンサルタント
Δ修梁勝幣暖饉埣賃里覆鼻
に分けられます。
私の場合、きΠ奮阿老亳海靴討い泙垢、望ましい社外監査役は、↓イ如△修亮,と思います。

そうすると、グ奮阿蓮▲蹇璽董璽轡腑鵑杷標されてくるので、4年でも運営上特に問題なく、、途中退任・交代でも、レピュテーショナルなリスクはありません。

10. Posted by 埼玉のよっちゃん   2008年01月01日 14:31
問題は、イ任后
山口先生の書かれているように4年という期間、毎回、取締役会、監査役会、会計監査人との協議等に出席して役割を果たしていただけるかという問題が就任に影響があると思います。

理由は、
ヾ萄彩鬚亮萃役会出席回数の表示義務の存在
M&Aなどに伴う臨時取締役会は、召集が前日、開催が早朝8時や深夜、休日の場合がある
5遡海叛嫻い粒笋蠅法⊆匈梓萄彩鯤鷭靴蓮低額の場合が多い などです。

11. Posted by 埼玉のよっちゃん   2008年01月01日 14:32
そうすると、学者は教授会研究会、学内業務に弁護士は本業を考えると、バリバリの現役は難しいと思います。

暇な方に来てもらっても、差しさわりのない意見を述べるだけ?なら、意味がありません(とまでは言い切れませんが)

内部統制を外から議論するだけではなく、短期的には企業の中に入って経験することも必要でしょうし、それに短縮してもまさに「独立」社外監査役なので身分保障の必要はないから、忙しい方にも「短期」な社外監査役の経験はいかがかなと思います。
12. Posted by おおすぎ   2008年01月04日 12:36
>埼玉のよっちゃん様

明けましておめでとうございます。
私は象牙の塔の人間なので、よっちゃんさんのご説明を非常に興味深く拝読しました。マル5以外のタイプの社外監査役だと、途中辞任のレピュテーション・リスクはないですし、マル5の場合にはあるというご指摘は新鮮でした。

マル2(メインバンク出身の社外監査役)が(マル5=弁護士等と並んで)良い、というご指摘も、私の腑に落ちるものです(会社と銀行との関係は、様々でしょうが、一般論として)。これからも時々コメントして下さい!
13. Posted by みうら   2008年01月13日 19:55
49改正前は、1年ですね
14. Posted by みうら   2008年01月13日 19:57
ある登記簿にて
・・・・・・・・・
29.6.30
30.6.30
昭和31.6.30重任
33.6.30重任
その後 今も権利義務のまま

32.6.30に退任していますよね・・ということ

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星
 
 
 
訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

Recent Comments
livedoor Readerに登録
RSS
livedoor Blog(ブログ)