2009年06月15日
なぜ資本金、資本準備金、剰余金などのカテゴリー分けが必要なのか?
きょうは、だめだめロー生さんからいただいた質問にお答えしたいと思います。
【6月17日9:10頃、訂正あります】
【6月17日10:00頃、更に訂正あります】
【6月17日9:10頃、訂正あります】
【6月17日10:00頃、更に訂正あります】
1.頂いた質問
---------
なぜ、資本金、資本準備金、剰余金・・・などのカテゴリー分けが必要なのでしょうか?
私の理解は、資本金その他の規定は会社と株主の間を規律するものであって、細かいカテゴリー分けがなされていたほうが、計算書類が会社の資産の実態に反映しやすく、それによって会社制度が利用しやすくなるというものです。
---------
最後の部分は、違います(残念)。会社の資産(固形物だけでなく、金銭債権などももちろん含みます)は、貸借対照表の左側(資産の部)に、分類されて、表示されます。大まかには、流動資産と固定資産に分けられ、その中でさらに再分類されて、それぞれの合計額が示されます。
つまり、「計算書類が会社の資産の実態に反映」しているのは、貸借対照表の左側です。質問いただいた「資本金、資本準備金、剰余金・・」は、貸借対照表の右下の「純資産の部」の項目なのですね。
さて、細かい、難しい話は私の説明能力を超えるので、今日はざっくりした説明で行きたいと思いますが、まず、
純資産 = 資産 − 負債 です。
「資産の部」の項目や「負債の部」の項目は、それぞれ会社の積極財産・消極財産に対応しています。これに対して、「純資産の部」の項目である資本金とか準備金とかは、会社の財産・権利義務とは直接対応しておらず、むしろ技術的に導かれる「数字」です。
付言すると、資本金その他の項目は、「会社と株主の間を規律するもの」というよりも、むしろ「会社・株主と、会社債権者の間の、ゲームのルールを決めるもの」というべきです(この点は、以下の「3」以降で説明します)。
2.資本と利益の区別
以下の話は、昔の葉玉先生のブログの「2006年03月12日 持分会社の利益配当等」と合わせてお読みいただきたいのですが、企業が一定の期間の経過や特定のプロジェクトの終了とともに解散・清算するのではなく、長期にわたって存続することになると、「出資者が会社に払い込んだ『元手』」と「それを使って稼いだ『利益』」とを区別するニーズが高まります。「払込資本と稼得利益の区別」「資本取引と損益取引の区別」が、企業会計の第一歩なのですね。
なぜかというと・・・ この理由を説明することは難しいのですが、出資者は、経営者に対して経営成績の説明を求めます。経営者の説明の仕方として、論理必然というよりも、慣行として、上記のような考え方が定着し、多くの人がその有用性を認めているため、現在に至るまで上記の会計のお約束が連綿と続いているのですね。
(余談ですが、会計学の議論で、あたかも公理系から論理的にあるべき会計規範が導かれるように説明するのを見ると、私は、「とても法律学に近いなあ」と苦笑するとともに、「そんなこと、本当はありえないよ、このお茶目さん」とか思ったりします。会計の生命は論理的整合性ではなく、社会がそれを受け入れているという事実にあると思っているためです)
話を戻して、株式会社では(細かい項目を無視すると)、「払込資本」が資本金および資本剰余金で、「稼得利益」が利益剰余金です。
3.債権者の保護
これに加えて、(以下、荒っぽい説明ですが)社員が有限責任しか負わない会社形態(株式会社など)では、会社財産の分配(配当・自己株式取得)により会社が支払い不能になることを防ぎ、会社債権者が一定の信頼を抱くことができるような仕組みが必要になります。
で、このための仕組みとして、「これが正しい」という唯一の制度は存在しないのですが、(以下、話題を株式会社に限定しますと)、日本はヨーロッパ諸国とともに、資本金・準備金の制度によって会社財産の分配に歯止めをかけるという仕組みを採用しています(アメリカの制度設計はかなり異なります)。
つまり、出資者が会社に払い込んだ財産の評価額は、必ず資本金か資本準備金を増加させるものとして会計処理されます。そして、資本金や資本準備金は「分配可能額」(461条)を計算するときに純資産の額から控除されます。
1つの考え方としては、「会社は純資産がプラスであれば、つまり
資産 > 負債
であれば、これを全部株主に配当しても構わない」というのもありえます(本当は「>」はイコールを入れた記号とすべきですが、機種依存文字のような気がするので、「>」にしています)。
しかし、計算書類に計上される資産の額は、必ずしも資産の現在の価値を反映しているとは限りませんし、一般には債権者が債務者の財産を差し押さえて競売に付し換価するとかなり低い値段でしか落札されませんし、また、経済的には、債務者の個々の財産の価値よりも企業のキャッシュフロー(平たくいうと資金繰り)のほうが債権者が弁済を受ける上では重要です。これら諸々の理由から、
資産 > 負債
ならば配当を認めるのではなく、一定のバッファー(とかクッションといわれます)を観念して、
「資産−負債−(一定の額)」
を配当可能と定める、
そのときに、過去の出資の額(資本金+資本準備金)を大体のバッファーの額にしようというのが、世界的に見てそこそこメジャーなルールです。
4.補足
さて、上記の説明はかなりアバウトです。まず「利益準備金」について補足しておかなければなりません。
稼得利益は「利益剰余金」という項目に分類されることになりますが、そのうち一定の金額につき「利益準備金」として積み立てる(分配可能額から控除する)ことが、法律により強制されることがあります。
ただ、この制度は明治時代の商法の遺物というか尾てい骨のようなところがあり、平成13年改正によって利益準備金を積むべき場合はきわめて限定的になってしまいました。ここでは、「分配可能額の算定において、純資産から控除される項目の主要なものは資本金と資本準備金だが、利益準備金というのもある」くらいで結構です。
(この部分、イキ→)補足第2点。資本金は実は出資に由来するものばかりではなく、利益剰余金を資本金に組み入れる(=利益剰余金を一定額減らして、その額だけ資本金を増やすという会計上の処理を行う)こともできます。(←イキ)
【訂正:この箇所、故元助手A.T.@はじめまして さんのご指摘のように誤りでした(ありがとうございます)。お詫びして削除いたします。そういえば、昔この点が話題になっていたような気がしてきました・・・】
【再訂正:と思ったら、今年4月1日に施行された、会社計算規則の改正(旧会社計算規則48条1項→ 新25号1項、旧52条2項→ 新29条2項1号)により、「その他利益剰余金」を「資本金」に組み入れることができるようになっていますね(会社法の前に戻ったということ)。
トラックバック頂いた「税理士試験 簿記論 講師日記」により知りました。
俺は、時代から2周も遅れていたのか(吐息)・・・・・】
補足第3点。資本金や資本準備金は、一定の手続を取って減少させることができます(このとき、原則としては、減少分だけ「その他資本剰余金」が増える)。
要するに、
「資産 − 負債 − (一定の額)」
を配当可能と定めるとき、「一定の額」(クッション)は大まかなには出資額ですが、出資額以外にもクッションに含まれるものとして利益準備金 (この部分、イキ→)や利益から資本金に組み入れられた金額(←イキ) があり、出資額であっても資本金・資本準備金の減少手続が採られれば、その減少分は上記のクッションの額には含まれなくなる、
ということになります。
5.資本金と資本準備金の区別
資本金と資本準備金がなぜ区別されるかというと、後者のほうが「拘束」が緩い(総会の普通決議で減少させることができる。欠損のてん補に用いるのであれば、債権者保護手続を踏まずに減少させることができる)という違いがあり、「硬い資本金」と「少し柔らかい資本準備金」とを用意しておくことが、会社・株主と会社債権者の間の利害調節をきめ細かに行う上で有益と考えられているためです。
6.資本金・資本準備金の減少
先に3で述べたように、現在の法律では差し当たりは出資額をクッションと定めることで債権者保護を図っていますが、クッションとしてふさわしい額が出資額によって決められることには必ずしも経済的合理性はありません。
(会計学で、「払込資本を社内に留保し、稼得利益だけを配当可能とすること」云々が語られることがありますが、これは現状の大筋を単に説明しているだけで、それが論理的・政策的に正しいことを全く含意しません)
ただ、(いろいろな試みがないわけではありませんが)これに代わるルール(クッションの大きさの決め方)にも名案がないため、日本法は差し当たり出資額を資本金・資本準備金として「クッション化」するとともに、債権者保護手続を踏めばこれを減少させることができる(分配可能額に含めることができる)として、いわば「動的」に、「会社・株主と会社債権者との利害調節」をしています。
7.まとめ
以上、無駄に長く、かつかなり大雑把な説明に終始しましたが、質問に対する解答は次のようになります。
「なぜ、資本金、資本準備金、剰余金・・・などのカテゴリー分けが必要なのでしょうか?」
−> (1) 会計という社会的営為において、「払込資本と稼得利益を区別する」ことが有用とされてきたこと、(2) 株式会社における会社債権者保護のために、純資産のうち株主に分配できないバッファーを定める方法が必要であること、の2点から、
すっきりと(1)を実現するとともに、動的に(2)をはかるための制度として、つまり2つの要請をともに充たすための制度的工夫として、「資本の部」の項目が細分化されているのです!
・・・って、この説明では分かりませんよね・・・
(ではまた)
---------
なぜ、資本金、資本準備金、剰余金・・・などのカテゴリー分けが必要なのでしょうか?
私の理解は、資本金その他の規定は会社と株主の間を規律するものであって、細かいカテゴリー分けがなされていたほうが、計算書類が会社の資産の実態に反映しやすく、それによって会社制度が利用しやすくなるというものです。
---------
最後の部分は、違います(残念)。会社の資産(固形物だけでなく、金銭債権などももちろん含みます)は、貸借対照表の左側(資産の部)に、分類されて、表示されます。大まかには、流動資産と固定資産に分けられ、その中でさらに再分類されて、それぞれの合計額が示されます。
つまり、「計算書類が会社の資産の実態に反映」しているのは、貸借対照表の左側です。質問いただいた「資本金、資本準備金、剰余金・・」は、貸借対照表の右下の「純資産の部」の項目なのですね。
さて、細かい、難しい話は私の説明能力を超えるので、今日はざっくりした説明で行きたいと思いますが、まず、
純資産 = 資産 − 負債 です。
「資産の部」の項目や「負債の部」の項目は、それぞれ会社の積極財産・消極財産に対応しています。これに対して、「純資産の部」の項目である資本金とか準備金とかは、会社の財産・権利義務とは直接対応しておらず、むしろ技術的に導かれる「数字」です。
付言すると、資本金その他の項目は、「会社と株主の間を規律するもの」というよりも、むしろ「会社・株主と、会社債権者の間の、ゲームのルールを決めるもの」というべきです(この点は、以下の「3」以降で説明します)。
2.資本と利益の区別
以下の話は、昔の葉玉先生のブログの「2006年03月12日 持分会社の利益配当等」と合わせてお読みいただきたいのですが、企業が一定の期間の経過や特定のプロジェクトの終了とともに解散・清算するのではなく、長期にわたって存続することになると、「出資者が会社に払い込んだ『元手』」と「それを使って稼いだ『利益』」とを区別するニーズが高まります。「払込資本と稼得利益の区別」「資本取引と損益取引の区別」が、企業会計の第一歩なのですね。
なぜかというと・・・ この理由を説明することは難しいのですが、出資者は、経営者に対して経営成績の説明を求めます。経営者の説明の仕方として、論理必然というよりも、慣行として、上記のような考え方が定着し、多くの人がその有用性を認めているため、現在に至るまで上記の会計のお約束が連綿と続いているのですね。
(余談ですが、会計学の議論で、あたかも公理系から論理的にあるべき会計規範が導かれるように説明するのを見ると、私は、「とても法律学に近いなあ」と苦笑するとともに、「そんなこと、本当はありえないよ、このお茶目さん」とか思ったりします。会計の生命は論理的整合性ではなく、社会がそれを受け入れているという事実にあると思っているためです)
話を戻して、株式会社では(細かい項目を無視すると)、「払込資本」が資本金および資本剰余金で、「稼得利益」が利益剰余金です。
3.債権者の保護
これに加えて、(以下、荒っぽい説明ですが)社員が有限責任しか負わない会社形態(株式会社など)では、会社財産の分配(配当・自己株式取得)により会社が支払い不能になることを防ぎ、会社債権者が一定の信頼を抱くことができるような仕組みが必要になります。
で、このための仕組みとして、「これが正しい」という唯一の制度は存在しないのですが、(以下、話題を株式会社に限定しますと)、日本はヨーロッパ諸国とともに、資本金・準備金の制度によって会社財産の分配に歯止めをかけるという仕組みを採用しています(アメリカの制度設計はかなり異なります)。
つまり、出資者が会社に払い込んだ財産の評価額は、必ず資本金か資本準備金を増加させるものとして会計処理されます。そして、資本金や資本準備金は「分配可能額」(461条)を計算するときに純資産の額から控除されます。
1つの考え方としては、「会社は純資産がプラスであれば、つまり
資産 > 負債
であれば、これを全部株主に配当しても構わない」というのもありえます(本当は「>」はイコールを入れた記号とすべきですが、機種依存文字のような気がするので、「>」にしています)。
しかし、計算書類に計上される資産の額は、必ずしも資産の現在の価値を反映しているとは限りませんし、一般には債権者が債務者の財産を差し押さえて競売に付し換価するとかなり低い値段でしか落札されませんし、また、経済的には、債務者の個々の財産の価値よりも企業のキャッシュフロー(平たくいうと資金繰り)のほうが債権者が弁済を受ける上では重要です。これら諸々の理由から、
資産 > 負債
ならば配当を認めるのではなく、一定のバッファー(とかクッションといわれます)を観念して、
「資産−負債−(一定の額)」
を配当可能と定める、
そのときに、過去の出資の額(資本金+資本準備金)を大体のバッファーの額にしようというのが、世界的に見てそこそこメジャーなルールです。
4.補足
さて、上記の説明はかなりアバウトです。まず「利益準備金」について補足しておかなければなりません。
稼得利益は「利益剰余金」という項目に分類されることになりますが、そのうち一定の金額につき「利益準備金」として積み立てる(分配可能額から控除する)ことが、法律により強制されることがあります。
ただ、この制度は明治時代の商法の遺物というか尾てい骨のようなところがあり、平成13年改正によって利益準備金を積むべき場合はきわめて限定的になってしまいました。ここでは、「分配可能額の算定において、純資産から控除される項目の主要なものは資本金と資本準備金だが、利益準備金というのもある」くらいで結構です。
(この部分、イキ→)
【再訂正:と思ったら、今年4月1日に施行された、会社計算規則の改正(旧会社計算規則48条1項→ 新25号1項、旧52条2項→ 新29条2項1号)により、「その他利益剰余金」を「資本金」に組み入れることができるようになっていますね(会社法の前に戻ったということ)。
トラックバック頂いた「税理士試験 簿記論 講師日記」により知りました。
俺は、時代から2周も遅れていたのか(吐息)・・・・・】
補足第3点。資本金や資本準備金は、一定の手続を取って減少させることができます(このとき、原則としては、減少分だけ「その他資本剰余金」が増える)。
要するに、
「資産 − 負債 − (一定の額)」
を配当可能と定めるとき、「一定の額」(クッション)は大まかなには出資額ですが、出資額以外にもクッションに含まれるものとして利益準備金 (この部分、イキ→)
ということになります。
5.資本金と資本準備金の区別
資本金と資本準備金がなぜ区別されるかというと、後者のほうが「拘束」が緩い(総会の普通決議で減少させることができる。欠損のてん補に用いるのであれば、債権者保護手続を踏まずに減少させることができる)という違いがあり、「硬い資本金」と「少し柔らかい資本準備金」とを用意しておくことが、会社・株主と会社債権者の間の利害調節をきめ細かに行う上で有益と考えられているためです。
6.資本金・資本準備金の減少
先に3で述べたように、現在の法律では差し当たりは出資額をクッションと定めることで債権者保護を図っていますが、クッションとしてふさわしい額が出資額によって決められることには必ずしも経済的合理性はありません。
(会計学で、「払込資本を社内に留保し、稼得利益だけを配当可能とすること」云々が語られることがありますが、これは現状の大筋を単に説明しているだけで、それが論理的・政策的に正しいことを全く含意しません)
ただ、(いろいろな試みがないわけではありませんが)これに代わるルール(クッションの大きさの決め方)にも名案がないため、日本法は差し当たり出資額を資本金・資本準備金として「クッション化」するとともに、債権者保護手続を踏めばこれを減少させることができる(分配可能額に含めることができる)として、いわば「動的」に、「会社・株主と会社債権者との利害調節」をしています。
7.まとめ
以上、無駄に長く、かつかなり大雑把な説明に終始しましたが、質問に対する解答は次のようになります。
「なぜ、資本金、資本準備金、剰余金・・・などのカテゴリー分けが必要なのでしょうか?」
−> (1) 会計という社会的営為において、「払込資本と稼得利益を区別する」ことが有用とされてきたこと、(2) 株式会社における会社債権者保護のために、純資産のうち株主に分配できないバッファーを定める方法が必要であること、の2点から、
すっきりと(1)を実現するとともに、動的に(2)をはかるための制度として、つまり2つの要請をともに充たすための制度的工夫として、「資本の部」の項目が細分化されているのです!
・・・って、この説明では分かりませんよね・・・
(ではまた)
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トラックバック一覧
1. 株主資本は難しい [ 税理士試験 簿記論 講師日記 ] 2009年06月15日 16:46
大杉先生のブログ記事のご紹介です。
・なぜ資本金、資本準備金、剰余金などのカテゴリー分けが必要なのか?
最近、つくづく思うのですが、純資産項目は難しいです。
純資産項目を明確に区分して示すことが適正な財政状態の表示につながる。
こんなことをい...
コメント一覧
1. Posted by IWC 2009年06月15日 23:26
資本金と資本準備金に分ける理由が、総会の決議に必要な条件で説明できるとなると、確かにその通りだなあとすっと理解できました。
2. Posted by 理系上がりの弁護士 2009年06月16日 16:02
余談部分の感想は私がロー時代に法律学に関して思った感想の通りです。
法学は議論の出発点すら議論の対象という面白い学問だとおもいます。
一方で、精緻すぎる議論を見るとな〜にやってんだか、と思います。そんな砂場で綺麗な城たてんでも、と。
法学は議論の出発点すら議論の対象という面白い学問だとおもいます。
一方で、精緻すぎる議論を見るとな〜にやってんだか、と思います。そんな砂場で綺麗な城たてんでも、と。
3. Posted by 故元助手A.T.@はじめまして 2009年06月17日 01:35
いつも拝見させていただいておりますが
初めて書き込ませていただきます。
補足第2点ですが
現行法下では資本金は「資本」性のある勘定項目に限られるために
利益剰余金・利益準備金からの資本金振替は認められないのではないでしょうか?
(会社計算規則48条1項、51条2項、52条2項)
これは、会社法が資本と利益の区別を会計学者の一部(半分?)ですら
驚くほどに徹底したことの表れと伺っております。
もちろん、利益性の勘定項目に
減少のために総会決議を必要とするという形での
債権者へのコミットメント付与手段がないというのは立法論的に疑問(というより明白に反対)と考えています。
ですが現行法の説明をするなら
やや否定的なニュアンスで紹介なさっている
資本取引と利益取引の区別による会計学の説明しかないと思っております。
授業では斎藤静樹先生の論文を読み漁って
まとめたものを話しているのですが
完全に付け焼刃です・・・
ただ、コンバージェンスが叫ばれる今日になって
なぜ、概念フレームワークによる手法が会計学で
流行りだしたのかは、法律学にも通じる一大テーマだと思っています
東大の法の再構築掲載の論文によると
「社会的に有用な情報」基準だけでは
それぞれ勝手に実証研究をしてしまい
議論がまとまらなかったので
枠をはめること必要に迫られたとありました。
助手論文以来、ずっと気になっていることでしたので
長文・駄文失礼いたしました。
初めて書き込ませていただきます。
補足第2点ですが
現行法下では資本金は「資本」性のある勘定項目に限られるために
利益剰余金・利益準備金からの資本金振替は認められないのではないでしょうか?
(会社計算規則48条1項、51条2項、52条2項)
これは、会社法が資本と利益の区別を会計学者の一部(半分?)ですら
驚くほどに徹底したことの表れと伺っております。
もちろん、利益性の勘定項目に
減少のために総会決議を必要とするという形での
債権者へのコミットメント付与手段がないというのは立法論的に疑問(というより明白に反対)と考えています。
ですが現行法の説明をするなら
やや否定的なニュアンスで紹介なさっている
資本取引と利益取引の区別による会計学の説明しかないと思っております。
授業では斎藤静樹先生の論文を読み漁って
まとめたものを話しているのですが
完全に付け焼刃です・・・
ただ、コンバージェンスが叫ばれる今日になって
なぜ、概念フレームワークによる手法が会計学で
流行りだしたのかは、法律学にも通じる一大テーマだと思っています
東大の法の再構築掲載の論文によると
「社会的に有用な情報」基準だけでは
それぞれ勝手に実証研究をしてしまい
議論がまとまらなかったので
枠をはめること必要に迫られたとありました。
助手論文以来、ずっと気になっていることでしたので
長文・駄文失礼いたしました。
4. Posted by おおすぎ 2009年06月17日 09:18
>理系上がりの弁護士 さま
もしや貴方は・・
>故元助手A.T.@はじめまして さま
ご指摘、本当にありがとうございました(最近も、某所で接近遭遇しましたね)。ところで、なんで1年ほど前から「故」なんですか???
平成2年改正で最低準備金制度が導入された際、猶予期限までに中小企業がこれを達成する方法として利益の資本金組み入れをしていた(その最中に阪神大震災が起こって、その地域では期限が延長された)ことなどが印象に残っていて、その後の時代の流れに完全に取り残されました、って私の努力不足ですが(爆)。
たしかに立法論としては、おっしゃるように、利益性の剰余金について債権者保護に提供するための手段があって良いはずですよね。
ご紹介の論文、読んでみます。なお、たしかに実証研究だけでは決着がつかないことが多いのですが、(以下、暴論ないし妄言です)IFRSなどの立場はあまりにも実証を軽んじて形式的論理に走っているように感じられることもあります。最近、日銀・金研で暴論をワーキング・ペーパーにまとめて公表したのですが、それを書いている際に、「ストラクチャリングを批判するのであれば、それがどのくらい蔓延しているのかの資料くらい出せよ」、とか思ったりもしました。
会計基準設定主体や大手監査法人の効用は、良い会計基準を作ることよりも会計基準を変更すること自体によって増加するのではないか、とか(← 最近、とみに保守化しています。苦笑)。
引き続き、宜しくお願いいたします。
もしや貴方は・・
>故元助手A.T.@はじめまして さま
ご指摘、本当にありがとうございました(最近も、某所で接近遭遇しましたね)。ところで、なんで1年ほど前から「故」なんですか???
平成2年改正で最低準備金制度が導入された際、猶予期限までに中小企業がこれを達成する方法として利益の資本金組み入れをしていた(その最中に阪神大震災が起こって、その地域では期限が延長された)ことなどが印象に残っていて、その後の時代の流れに完全に取り残されました、って私の努力不足ですが(爆)。
たしかに立法論としては、おっしゃるように、利益性の剰余金について債権者保護に提供するための手段があって良いはずですよね。
ご紹介の論文、読んでみます。なお、たしかに実証研究だけでは決着がつかないことが多いのですが、(以下、暴論ないし妄言です)IFRSなどの立場はあまりにも実証を軽んじて形式的論理に走っているように感じられることもあります。最近、日銀・金研で暴論をワーキング・ペーパーにまとめて公表したのですが、それを書いている際に、「ストラクチャリングを批判するのであれば、それがどのくらい蔓延しているのかの資料くらい出せよ」、とか思ったりもしました。
会計基準設定主体や大手監査法人の効用は、良い会計基準を作ることよりも会計基準を変更すること自体によって増加するのではないか、とか(← 最近、とみに保守化しています。苦笑)。
引き続き、宜しくお願いいたします。
5. Posted by くぼ 2009年06月17日 09:45
おおすぎ先生、故助手A.T.さん
訂正後にもうしわけありませんが、本年4月1日改正後の会社計算規則25条1項2号は、改正前48条1項1号・2号における括弧書き(資本金に組み入れられるものを資本性のあるものに限る旨の規制)を削除しています。したがって現在は、利益準備金・利益剰余金から直接に資本金に組み入れることも可能です。
取り急ぎご指摘まで。
訂正後にもうしわけありませんが、本年4月1日改正後の会社計算規則25条1項2号は、改正前48条1項1号・2号における括弧書き(資本金に組み入れられるものを資本性のあるものに限る旨の規制)を削除しています。したがって現在は、利益準備金・利益剰余金から直接に資本金に組み入れることも可能です。
取り急ぎご指摘まで。
6. Posted by おおすぎ 2009年06月17日 11:57
>くぼ 先生
ご指摘ありがとうございます。
ちょうど、コメントいただいたのと同じ時間帯に、私も上記の経緯でそのことに気付き、再訂正いたしました。
今回の改正を記に、法務省令をもっと読み込まねば、と思っております。引き続き宜しくお願いいたします。
ご指摘ありがとうございます。
ちょうど、コメントいただいたのと同じ時間帯に、私も上記の経緯でそのことに気付き、再訂正いたしました。
今回の改正を記に、法務省令をもっと読み込まねば、と思っております。引き続き宜しくお願いいたします。
7. Posted by だめだめロー生 2009年06月17日 13:39


大変よくわかりました・・・・と言えればよかったんですが、今のところ私の会計の知識が足りないみたいです。
(´・ω・`)ショボーン
でも、払い込まれたお金と会社が得た利益を分けなければならないという点と、キャッシュフローが会社資産の実態に重要な役割を果たし、そのためにバッファが必要であるという点は目からうろこでした。
将来的には会計の知識も身につけますので(具体的には新司終了後)そのとき、またこの記事を読みなおしたいと思います。
お忙しい中、丁寧な回答本当にありがとうございました。
さしあたり日々の生活の収支が、どんぶり勘定にならないよう注意したいと思います。
8. Posted by 故元助手A.T. 2009年06月18日 10:34
4月改正をリファーしておらず
誤った指摘をしてしまい失礼いたしました。
日本語サイトとはいえワールドワイドに
恥をさらしてしまいました
勉強しなおします
誤った指摘をしてしまい失礼いたしました。
日本語サイトとはいえワールドワイドに
恥をさらしてしまいました
勉強しなおします
9. Posted by Kazu 2009年07月15日 11:33
今年の決算では、損失を計上する企業が多く、こうした資本の部の項目の処理に苦労した方々も多いと思います。
その中で、大変恐縮ではありますが、大杉先生に、「繰越利益剰余金」と「別途積立金」の区別についてのご見解をご教示いただければと思います。また、中間配当を多額に行った結果繰越利益剰余金がマイナスになった場合や、中間決算時点で繰越利益剰余金がマイナスであるにもかかわらず中間配当を行って繰越利益剰余金のマイナスを更に増加させることは、会社法等に抵触しないのでしょうか(前提として、多額の別途積立金があるため分配規制(会461)違反にはならないこと、また、取締役会決議のみで剰余金の分配を決議できる旨の定款の定めがない会社です。)。
この点について明確に記載した文献が発見できなかったので、資本の部のテーマとなったので、思い切って質問させて頂きました。
その中で、大変恐縮ではありますが、大杉先生に、「繰越利益剰余金」と「別途積立金」の区別についてのご見解をご教示いただければと思います。また、中間配当を多額に行った結果繰越利益剰余金がマイナスになった場合や、中間決算時点で繰越利益剰余金がマイナスであるにもかかわらず中間配当を行って繰越利益剰余金のマイナスを更に増加させることは、会社法等に抵触しないのでしょうか(前提として、多額の別途積立金があるため分配規制(会461)違反にはならないこと、また、取締役会決議のみで剰余金の分配を決議できる旨の定款の定めがない会社です。)。
この点について明確に記載した文献が発見できなかったので、資本の部のテーマとなったので、思い切って質問させて頂きました。
10. Posted by おおすぎ 2009年07月20日 17:04
>Kazu さま
済みません、調査中ですが、急ぎの用事があり、ご返事が遅れそうです。お時間を下さい。
済みません、調査中ですが、急ぎの用事があり、ご返事が遅れそうです。お時間を下さい。
11. Posted by おおすぎ 2009年08月04日 15:53
> Kazu さま
済みません、調査したのですが、私の手に余ることが判明しました。引き続き調べますが、長時間の宿題とさせて下さい。
済みません、調査したのですが、私の手に余ることが判明しました。引き続き調べますが、長時間の宿題とさせて下さい。
12. Posted by Kazu 2009年08月10日 20:10
大杉先生、ご迷惑をおかけしました。
「先生の手に余る問題」というとんでもない問題とは露知らず、失礼しました。お忙しい日々の中で、無理をなさらないでください。
ただ、先生がすぐに分からない問題ということに、とても強く惹かれております。先生のお答えを楽しみに、日々仕事に励みたいと思います。
「先生の手に余る問題」というとんでもない問題とは露知らず、失礼しました。お忙しい日々の中で、無理をなさらないでください。
ただ、先生がすぐに分からない問題ということに、とても強く惹かれております。先生のお答えを楽しみに、日々仕事に励みたいと思います。
13. Posted by Bottega Veneta 2015年12月12日 02:29
「大地震をお祝い」横断幕の制作者が判明!韓国の30歳の会社員 ネット上の謝罪文を韓国メディアは本人のものと報道