2010年06月29日

「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正に対する意見

「1.改正の趣旨」の冒頭の、「新規上場を予定している発行会社においては、通常、上場前に個人投資家に対して自己の発行する株券の勧誘行為を行うことはないものと考えられる」との認識は、事実に反しています。
 そして、直後の、「発行会社による募集又は私募を装った未公開株詐欺事案が後を絶たない。」との点についても、詐欺の多くは会社の上場を目指していない者が企んでいることから、「未上場会社が上場前に個人投資家を対象に勧誘行為を行っていた場合には上場できない」とのルールは未公開株詐欺事件を抑止する効果はきわめて限定的なものであると考えられます。

日本証券業協会におかれましては、1,2の例外的事件に過剰反応されることを避けて、従前どおりの上場審査を粘り強く行っていただくことがその本務であり、未公開株詐欺の抑止に日本証券業協会が果たすことのできる役割はそもそも大きなものではない、と思量いたします。

20年の長きにわたる日本経済の停滞を打ち破り、その活性化を図る上で、起業促進こそが重要です。しかるに、「未上場会社が上場前に個人投資家を対象に勧誘行為を行っていた場合には上場できない」とのルールが導入されますと、わが国における起業に大きな抑止効果を与えることは間違いありません。

今般の規則改正では、規則本体で上場禁止の原則を定め、細則で例外を許容しようとしていますが、このコメントの冒頭でも触れましたように、そもそも真っ当なベンチャー企業がその創業の初期において家族・友人等の出資を仰ぐことは一般的であり、規則改正案における原則・例外の位置付けには大きな疑問を感じます。

以上の理由で、今般の規則改正の全体に対して、謹んで反対いたします。

中央大学法科大学院教授 大杉謙一


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コメント一覧

1. Posted by 褒める。   2010年06月29日 10:40
おっ!
たまにはいいこと言うじゃん。
こんな感じで他のこともしっかり言って欲しいんだけどね。

かのアイヒマンは「私は規則に従っただけ」といった
ホロコーストとはもちろん違うが、私の知る限り2人が自ら命を絶っている。
今回のようにもっと勇気を出して欲しい。
自分の関わる問題から目をそらす者に、世の中の問題など解決できない。
2. Posted by 大崎貞和   2010年06月30日 19:35
至極正論だと思います
3. Posted by 龍のお年ご   2010年07月02日 01:04
これだけ明確な意見表明をされたことに、まず敬意を表します。一読したときは、賛同しかけたのですが、少し考えて、あえて問題提起をしたいと思います。おそらく規制の目的に反対はしないが、規制が適当ではないから、この規制はゼロ点だ、というのが先生の趣旨ではないか、と思います。落第点をすぐにつけるのがいいか、と考えると、目的がずれていれば格別、救ってあげることも必要かなと思います。すぐに反対だけする野党みたいでは、前に進みませんから、どうすればいいか、を考えてみるというのはいかがでしょうか。次に、この規制を知らずに上場前に個人向けに勧誘をした会社がその違反を治癒する方法を制度として導入することで、このような規制が過剰な規制であったとしても、軌道修正できることで、相当性が担保できないか、などもあわせて検討してみる価値があるのではないでしょうか。

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