ものを書く気持ちが遠ざかっています。
というのも、物語ばりに人々の為に生きて、
壮絶に死んでしまった人を目の当たりにしてしまったのです。
某部位の手術最短日本記録(もちろん正確かつ成功)を持つ外科医で、
何人の癌を切除して、完治させたか数え切れない程の名医。
彼を慕ってくる一日100人の患者を診るために、
彼の診療室だけは通常より30分前に診察を開始し、
遅刻した患者もしっかり診察、そのため昼食もお弁当のオニギリで10分のみ。
そんな生活を送って来た彼は、自分の身体の検査を怠っていたのです。
彼の身体に癌を見つかり、手術を受けました。しかし、転移。
スプレーのように体中の放射された癌は、彼の体のあちこちを蝕みます。
それでも診察を続け、後輩の手術に立ち会い。
定年で退官するまでは、休まずに医者を勤め上げました。
人間の気力というのは凄いもので、
癌の痛みを感じてもおかしくない筈なのに、彼はそれほど感じていなかったようです。
退官後、週一回のアルバイトとして、同じ病院に残る事にしていたのですが、
突然、傷みを感じ始め、傷みが食欲を奪い、みるみる衰弱。
定年退職後、2か月で彼は逝ってしまいました。
彼の口癖である「俺は生涯医者」の言葉どおり、
最後は、自分自身で自分の体の診察を続け、
主治医が言うには、その診断は正確だったそうです。
余命もしっかり言い当てていたと言います。
最後の一週間は、「もう自分の体が分からなくなった」と嘆いていたそうです。
遺されたレントゲン写真では、体中に白い花が咲くように無数の癌がありました。
まるで、彼の退治した患者さん達の癌が逆襲してきたかのように…。
職場の病院で亡くなった彼の遺体は、同僚に囲まれ、自分の診察室を回りました。
医者や看護師が、廊下にズラリと並んで、黙とうを捧げて下さいました。
志なかばで、無念に倒れる人もいますが、
彼は人生を生き切ったのだと思います。
老後に醜態を晒す事もなく、自分の思い通りに生きて、しかも多くの人命を救い…。
鮮やかすぎて、嫉妬すら湧きます。
だからこそ、逝ってしまった後の喪失感は大きいです。
愛読した物語の主人公が死んでしまったのに、ちょっと似ています。
早い彼の死は、老いた私の両親が死んだ時よりも、やるせないです。
彼の妻が遺されました。私の実の妹です。子供はいません。
妹の肉親は、もう私一人だけです。
妹の心情を思うと、私は恐ろしくなります。自分だったらと思うと心底怖いです。
だから、できるだけ側に居てあげたい…。
生きざまとは何か。死にざまとは何か。命とは何か。
老後への不安が叫ばれる現代、
彼への喪失感とともに、深く考えさせられました。
ふと気が付くと、そのことばかり考えています。
というのも、物語ばりに人々の為に生きて、
壮絶に死んでしまった人を目の当たりにしてしまったのです。
某部位の手術最短日本記録(もちろん正確かつ成功)を持つ外科医で、
何人の癌を切除して、完治させたか数え切れない程の名医。
彼を慕ってくる一日100人の患者を診るために、
彼の診療室だけは通常より30分前に診察を開始し、
遅刻した患者もしっかり診察、そのため昼食もお弁当のオニギリで10分のみ。
そんな生活を送って来た彼は、自分の身体の検査を怠っていたのです。
彼の身体に癌を見つかり、手術を受けました。しかし、転移。
スプレーのように体中の放射された癌は、彼の体のあちこちを蝕みます。
それでも診察を続け、後輩の手術に立ち会い。
定年で退官するまでは、休まずに医者を勤め上げました。
人間の気力というのは凄いもので、
癌の痛みを感じてもおかしくない筈なのに、彼はそれほど感じていなかったようです。
退官後、週一回のアルバイトとして、同じ病院に残る事にしていたのですが、
突然、傷みを感じ始め、傷みが食欲を奪い、みるみる衰弱。
定年退職後、2か月で彼は逝ってしまいました。
彼の口癖である「俺は生涯医者」の言葉どおり、
最後は、自分自身で自分の体の診察を続け、
主治医が言うには、その診断は正確だったそうです。
余命もしっかり言い当てていたと言います。
最後の一週間は、「もう自分の体が分からなくなった」と嘆いていたそうです。
遺されたレントゲン写真では、体中に白い花が咲くように無数の癌がありました。
まるで、彼の退治した患者さん達の癌が逆襲してきたかのように…。
職場の病院で亡くなった彼の遺体は、同僚に囲まれ、自分の診察室を回りました。
医者や看護師が、廊下にズラリと並んで、黙とうを捧げて下さいました。
志なかばで、無念に倒れる人もいますが、
彼は人生を生き切ったのだと思います。
老後に醜態を晒す事もなく、自分の思い通りに生きて、しかも多くの人命を救い…。
鮮やかすぎて、嫉妬すら湧きます。
だからこそ、逝ってしまった後の喪失感は大きいです。
愛読した物語の主人公が死んでしまったのに、ちょっと似ています。
早い彼の死は、老いた私の両親が死んだ時よりも、やるせないです。
彼の妻が遺されました。私の実の妹です。子供はいません。
妹の肉親は、もう私一人だけです。
妹の心情を思うと、私は恐ろしくなります。自分だったらと思うと心底怖いです。
だから、できるだけ側に居てあげたい…。
生きざまとは何か。死にざまとは何か。命とは何か。
老後への不安が叫ばれる現代、
彼への喪失感とともに、深く考えさせられました。
ふと気が付くと、そのことばかり考えています。