内藤忍氏の8月15日発行の本、早速読了しました。(最後の追記までご覧ください)

我々個人投資家にとって、マネックス・ユニバーシティに在籍していた時のイメージが強い内藤氏ですが、本書表紙の肩書きは「株式会社 資産デザイン研究所 代表取締役社長」となっています。

さて、当ブログでは、管理人である私が読んだ本の中で「良かった本」「お勧めできる本」を基本的にご紹介していますが、今回はさにあらず

ということで、少々辛口にコメントしてみたいと思います。 

1 本書のターゲット読者層
本書「はじめに」では、本書は「ゼロから資産を作る人のための本ではなく、すでに持っている資産をどうするかにフォーカス」した旨が書かれています。

そして、資産規模が大きくなり、年齢が高くなってくると、資産形成期とは違った資産運用、具体的には資産を増やすというより減らさない、守るという発想がより重視される旨コメント。

確かに、そういう部分は否定しないし、年齢にかかわらず、資産の絶対額が大きくなれば、それほどリスクを取る必要がないというのはアグリーです。

ですが、本書は厳しい言い方をすれば「金は持っているが、金融リテラシーに乏しい個人」をターゲットにした、著者のビジネスへの誘導を目的とした本である、と言われても仕方がない内容です。 

2 3分の2は投資「初心者向け」の内容
・リスク・リターンの話に始まって、資産運用の前にやるべき3つのステップ(ステップ1:自分の資産の現状を把握する。→ステップ2:資産運用の目標を設定する。→ステップ3:到達方法を考える。)、主な金融商品の特徴、アセットアロケーションの重要性等殆どこれまでに投資を行ったことがない人を対象とする様な基本的かつ平易な説明(浅い内容)が168ページまで続く。

・上記事項が意味がないとか、重要でないとかを言うつもりは毛頭ないですが、これが、果たして既に相応の資産を持っている人のために書かれた本に相応しい内容かどうかは疑問です。

3 残り3分の1は「リアルアセットを使った資産運用」に関する説明
・株や債券など証券会社や銀行などで取り扱っている金融商品を「ペーパーアセット」とするならば、不動産等の実物資産「リアルアセット」への投資を重要視し、重点的に投資することを推奨するのが、本書の後半の内容。

・割かれているページ数こそ、「ペーパーアセット」に関する前半の説明部分に比べ少ないものの、明らかにこの後半が内藤氏の他の投資本とは違う特徴ある箇所となっています。

・1000万円以上の金融資産を保有している場合、資金の一部をリアルアセットに投資すること、そして、具体的な投資対象として著者の実体験も踏まえ「海外不動産」と「ワイン」への投資について説明がなされています。
(参考:本書によれば著者は2011年から海外不動産に投資を開始)

・なぜ国内ではなく、海外不動産なのかの理由(人口等のマクロ環境等)は概ね首肯できます(少なくとも全否定はできない)。ワインに関しては、フランス産のビンテージワインは「供給が増えるリスク」がないので、推奨するとのこと。

・驚きは第7章「資産金額別運用ガイド」。生活資金3カ月分および10年以内に使う資産(これが曲者)を除いた資金について、以下の投資割合を具体的なプランとして例示。 

(1)資産1000万円未満
・インデックスファンドを使ってペーパーアセットに分散投資

日本株式10%
日本債券30%
外国株式30%
外国債券10%
その他20%(MRF10%・グローバルREITファンド10%) 

(2)資産1000万円
・インデックスファンドの代わりにETFや個人向け国債を導入しコスト下げ。
・ワイン現物に10%投資

上記までは、まぁ、許容できるでしょう。問題は以下から。

(3) 資産3000万円
・1000万円程度をペーパーアセットに、残りの2000万円程度を海外不動産をはじめとするリアルアセットに配分
・リアルアセットで海外不動産に投資するため、海外REITは全て売却、また、海外不動産によりインカム収入が期待できるため、海外債券ファンドも売却可。

(4)資産5000万円
・リアルアセット(海外不動産、ワイン現物投資、ワインファンド)に約8割投資

(5)資産1億円
・リアルアセット(海外不動産、ワイン現物投資、ワインファンド)に約9割投資

4 総括コメント
・上記のとおり、海外不動産とワインに偏った投資例の提示は異常だと思います。おそらく、この点を指摘すると「10年以内に使う資金」は控除しているので、比率は適当である旨の反論が予想されますが。

・なお、私はアンチ内藤忍派ではなく、内藤氏の名を世に知らしめた『内藤忍の資産設計塾【第3版】----あなたとお金を結び人生の目標をかなえる法 (資産設計塾シリーズ) [単行本(ソフトカバー)]』 をはじめとする著者の著作は高く評価しており、「オススメ投資本10冊(初級者編)」においても内藤氏の本を紹介しています。

・本書は、想定とする読者のターゲットが中途半端(初心者向けの様な説明の本に海外不動産等の投資の話は不適切。一方で、リアルアセットに関する説明も深みがない。)と言わざるを得ないですが、リアルアセットへの投資に関心を持ってもらい、著者の現在のビジネスへの誘導を図ることを目的としているとするならば、ちょっと残念な本と言えるでしょう。

貯金が1000万円になったら資産運用を考えなさい
内藤 忍
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2013-08-13


追記)2013.8.21
リンク先の吊られた男の投資ブログでこれに関連した投稿(「内藤忍氏は最新著書で海外不動産投資(とワイン投資)を薦めていますが...」)をされています。
追記)2013.8.24
以下のブログでも当記事について、言及いただきました。
rennyの備忘録:内藤忍さんの「こんな人をお客さんにしたいんです!」宣言。彼がどんな選択をしたのかについての一考察
投資十八番:「ワイン投資は値下がりすることのない投資」と断言するVIN-NETに問題はないのか?

追記)2014.4.29
未読ですが、不動産投資に関しては新しい以下の本の方が良さそうです。


追記)2015.6.28
新装改訂増補版が出ています。



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