LIA ブラジルです。

「CCZ=サンパウロ市人畜共通コントロールセンター」について書きたいと思います。

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サンパウロ市内にあるCCZは現在、人畜共通感染症センターとして人と動物の健康を守る機関として機能しています。今では生命力溢れるこの施設ですがかつてはいわゆる殺処分場としても機能していました。ここに持ち込まれる犬猫は収容期間3日が過ぎると全頭殺処分となり、その数は、毎月千頭を超えていたそうです。
かつてはここで真空殺やガス処分が行われており、当時は死の施設とも呼ばれた場所でした。

2008年動物愛護の声の高まりとそれに票を見込んだ政治家の思惑が一致し、サンパウロ州は新たな法律により、いわゆる「殺処分ゼロ」の行政へと180度大きく方向転換を果たします。但しシステムは劇的な変換を遂げたものの、施設運営や一般の人たちに殺処分ゼロという概念が浸透するまでには4年から5年という長い歳月が掛かったそうです。システムだけ変えても人の意識を変えるのはなかなか容易な事ではないのです。


2008年以前には定時定点回収トラックも走っていました。これは当時使われていたトラックです。

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市内を循環して回るこの車は死のトラックと呼ばれ、当時の負の歴史を背負って今も敷地の隅に置かれています。

現在は、徘徊犬や事故に遭った犬猫やその他にも馬や小動物を保護するトラックが命のトラックとして市内を巡回したり市民の要請に応じて出動しています。

以前、収容動物はまとめて一室に収容されていましたが、現在は写真の母犬と子犬のように、個々の動物の状況や健康状態、年齢、性格などによって個別に収容されています。

こうした取り組みには常駐の獣医によるチェック体制が欠かせません。
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譲渡用スペースもあり、譲渡可と判断された犬達が室内及び室外スペース共用の場所に居ます。

ここも個別の状態別に収容され穏やかに縁が結ばれるまで暮らせるよう工夫されています。
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こうした収容動物の全てに日光浴や定期的な散歩の時間が割り当てられ、虐待など精神的な外傷を負った動物には固別にカルテが作られ、通常の治療の他、専門スタッフによる針治療や指圧、マッサージなども行われています。また常設の診療所もあり、負傷した場合にはいつでも治療や緊急手術が可能な体制が整ってもいます。 
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中には噛み付いて人に怪我をさせたり等いわゆる凶暴だからと引き取りを依頼される犬達が収容されているスペースもあります。

ここは獣医及び専門のスタッフのみの立ち入りとなります。

 

以前はこうした「凶暴と看做された犬達」は即殺処分となっていましたが、現在は凶暴と看做された理由を把握し、90日間掛けて個々の犬の精神状況や性格などを見ながら個別に社会化訓練を行っています。犬種としては主にピットブルテリア、ロットワイラー、ジャーマンシェパードなどが収容される事が多いそうです。

中には猫専門収容スペースもあります。ここは犬スペースからの吠え声などが聴こえないように防音材が壁に使われるなど落ち着いて過ごせる環境になっています。

南国でも高地に位置するサンパウロ市は冬は冷え込みます。その為寒がりの猫達の為には毛布や暖房も完備してあります。
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市営施設であるCCZでは必要な薬や備品、そして餌も常に安定支給される為、寄付に頼る必要の無い経営が成り立っています。
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敷地内には職員や動物のストレスを軽減する為として、こうして自然な環境を多く残し、憩いのスペースとして使われる場所がいくつもあります。

脇道は犬達の散歩コースとしても利用されています。 
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敷地内で出会った盲目のベラちゃん

CCZの永住犬として皆に可愛がられながらこうしてトイレにもスタッフに見守られながら一人で上手に行くことが出来ます。
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大きくて立派なわんちゃんですがとても甘えん坊で人懐こい性格で施設のマスコットとして人気のベラちゃんなのだそうです。
 

こうした、時間にも心にも余裕のある取り組みは、殺処分の心配が無いからこそです。またこの施設で一番感じたのは獣医さんを始めスタッフ達がいきいきと自分の仕事に誇りを持って働く姿でした。個々の動物の健康状態はもちろん精神状態までも心を配るそんな環境はかつて殺処分場として機能していた暗く悲しい面影を微塵も感じさせないものだったのです。
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CCZから新しい家族の元へと旅立って行った動物達の近況を伝える幸せ掲示板です。

現在毎月約100匹収容される犬猫の内6割に当たる60匹が平均して毎月譲渡されています。これも成犬を家族として迎え入れるという習慣が自然に根付いている事が大きく貢献していると言えます。
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対応してくれた獣医さん達です。向かって左のフェルナンド先生は2008年にサンパウロ州で殺処分が禁止となった時、自ら志願して行政獣医師としてCCZに配属されました。

以来急激に生かす行政へと転換した施設をどう変えていくのか、そして生きる事を許された動物達に何がしてあげられるのかを15年に渡って模索し続けて来たそうです。

彼の言葉で印象的だったのは「システムだけ変えても、人も変わらなければ、この殺処分ゼロ行政は上手くいかない。大切なのは教育だ。動物も人間と同じ命ある生き物であり、人間の勝手な都合で殺し続ける事がいかに間違っているのかを子どもも含め地域住民全体に浸透させる必要がある」です。

もちろん夫々の国で異なる歴史背景や文化の違いがありますので、一概に日本の状況と比べる事は出来ません。でも世間で「後進国」とされるブラジルで達成出来た事が「先進国」と呼ばれる日本で不可能である事は決してないはずです。他国の成功例において参考に出来る部分は積極的に取り入れ、絶対に変えて見せるという断固とした意思の下でなら必ず変革の風を起こせるはずではないでしょうか。