★1・嵐は突然に★
【ユニオン号内、リコリスの私室に通信音が鳴り響く】
【ユニオン号内、リコリスの私室に通信音が鳴り響く】

グラバー『聞こえているかね、我が愛しき娘よ』
リコリス「ええ。明瞭ですわ」
グラバー『愛しき我が娘よ。遂にあれが発売になったことを共に言祝ごうではないか』
リコリス「勿論ですわ、お父様。この時をどれ程待ち望んだことか……」
リコリス「Liar-softスチームパンクシリーズ最新作──
『瞬旭のティルヒア-What a beaufiul dawn-』の発売日を!」
『瞬旭のティルヒア-What a beaufiul dawn-』の発売日を!」
グラバー『ふむ……。無論、それも我が商会にとって非常に重大な商材ではある。が──残念ながら、私が言いたいのは、それではないのだよ』
リコリス「違うのですか? では何を──」
リコリス「お父様!? こ、これはいったい──!?」
グラバー『情報収拾こそは商道の基礎、結社の徒の必須素養だと思わぬかね?』
リコリス「恥ずかしながら……。しかし『GLOVER』とは……まさか、お父様ですか?」
グラバー『左様。なんと素晴らしい時代であろうか! この私を主題としたボードゲームを全世界の非電源ゲーマーが興じる日が来ようとは! 更に第2回東京ドイツゲームショーで大賞を受賞するとは! 喝采せよ! 喝采せよ!」
リコリス(お、お父様が普段ではあり得ないテンションに……)
グラバー『おほん……ともあれ、だ。早速、現物を手配させた。間もなくそちらに着く頃であろうから早速試遊してみたまえ』
リコリス(ティルヒア発売日3日前に着荷したばかりのボードゲームを、発売日当日の記念更新に使おうと考えるだなんて……お父様は正気なの!?)
グラバー『何か言ったかね?』
リコリス「いえ……何でもありませんわ。でもお父様、生憎ボードゲームは1人や2人ではできませんわ」
グラバー『うむ。その点も抜かりない。『瞬旭のティルヒア』の各派閥から選りすぐりの知者達を手配した。是非楽しんでくれ給え』
リコリス(無理矢理ティルヒアに絡めてきたわね……)
グラバー『なにか言ったかね?』
リコリス「いえ、何でもありませんわ、お父様」
グラバー『なにか言ったかね?』
リコリス「いえ、何でもありませんわ、お父様」
グラバー『よろしい。無論、我が許で商道を学んできたお前であるならば勝利は堅いものと信じるが。良い報告を期待しているよ、愛しきわが娘よ』
リコリス「も、勿論ですわ」
【通信切断】
リコリス(いきなりそんなこと言われても──)
★2・役者は揃った ★
★2・役者は揃った ★
リコリス「それにしても。相手はいったい誰が──って。貴方たちは!?」

岩倉具視(朝廷代表)「時機到来であるな。成る程、ここが此度の戦場であるか」
小栗上野介(機関幕府保守派代表)「なぜ私が斯様な見世物に出ねばらぬのだ。長賊までいるではないか」
吉田稔麿(長州代表)「長賊とは、またご挨拶ですね……」
勝海舟(機関幕府改革派代表「まあまあ。めでてぇ日だ。硬ぇことは言いっ子なしさ」
岩倉「ふむ……成る程。『GLOVER』であるか。盤上遊戯(ぼーどげぇむ)愛好家としては腕が鳴るという物」
吉田「機関技術を一手に握るグラバー殿の助力を、どの派閥が最も受けられるかを競う訳ですね。さしずめ、作品外代理戦争と言えますね」
勝「そいつあぁ負けるわけにはいかねぇなあ。なあ、上野介殿?」
リコリス「しかし……機関幕府代表が二人というのは些か、公正と言い難いのでは?」
勝「俺としちゃあ手を取り合って機関幕府を盛り立てたいんだが──」
小栗「まさか。お前なぞに機関幕府の舵取りをさせるわけにはいかぬよ」
勝「──だ、そうだ」
岩倉「まあ良かろうよ。朝廷の権威の前には全て些末なこと」
吉田「よろしい。諸共に藻屑として差し上げましょう」
勝「おいおい。そういう物騒なゲームじゃねえぇっての」
小栗「兵器の購入量を争う遊戯など。物騒もいいところではないか」
リコリス「それにしても……各派代表というのなら、あの人がいてもいいのでは?」
吉田「それがあの男のことならば。「協力者カード」の中で待機しているのでね。商会代表としてはご遠慮頂いたそうだよ」
リコリス「協力者カード?」
勝「なるほど。リコリス嬢はまるきりこのゲームのことをしらねぇみてえだな。まずは軽くルール説明と行こうかい」
★3・ルール概要★
『GLOVER』は各プレイヤーは幕末の長崎商人となり、自らの店で生産した「商品」を取引して、「小銃」「大砲」「軍艦」といった兵器をトマス・グラバー(ジャーディン・マセソン商会)からどれだけ多く購入できたか(&どれだけグラバーの信頼を勝ち得られたか)を競うゲームです。
毎ラウンド「生産フェイズ」「交渉フェイズ」「グラバーフェイズ」を行い、規定ラウンドが終了した段階での得点(勝利ポイント)を比較し、勝者を決定します。
【各フェイズ概要】
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●生産フェイズ
●生産フェイズ
自らの持つ「本店タイル」から、自分の商店の色の商品が生産されます。
商品は5色あり、各商店プレイヤーが最初に1色、自分の商店の色を選びます。
初期の本店の「工作所」で商品2つ、拡張した「大工作所」で4つ生産可能。
「施設」の借用により商品生産力を増加できます(他の色を生産するものも)。
●交渉フェイズ
1ラウンドに一人1回ずつ、他の商会全員を相手に交渉できます。
手番のプレイヤーは場から「交渉カード」を3枚引き、1枚を伏せた状態で使います。1枚は山札(次の人が引く)、1枚はオープンで捨てます。
伏せた「交渉カード」の上に売りたい商品を載せ、他のプレイヤーからのオファーを要求。手番プレイヤーが取引相手を選び、契約を履行します。
契約成立までの間にオファーを変更しても構いませんし口頭で駆け引きをおこなっても構いません。
契約成立時には伏せた「交渉カード」を公開し、その効果をオファーに反映した最終結果をそれぞれが受け取ります。
相手に利益を与える良心的な(白い)交渉カードは自分の受け取り商品が減りますが「信用度」が上がり、逆に相手に不利益を与える不正な(黒い)交渉カードは自分の受け取り商品が増える反面、「信用度」が下がる傾向にあります。
1人の交渉が終わったら時計回りで次の商会に交渉権が移ります。
●グラバーフェイズ
全員の交渉が終わった後で、手持ちの「商品」を使ってグラバーの兵器を購入したり、「施設」を借用したり、「本店」を改築したりできます。
生産性を上げるか、勝ち点を確保しておくか、次のラウンドの交渉やグラバーフェイズのために商品を取っておくかで、次のラウンドの展開が変わります。
グラバーフェイズの行動には一定以上の「信頼度」が必要なものがあります。
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【その他ゲーム構成要素】
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★施設
★施設
ゲーム開始時、18種類ある中から8種類の施設をボード上に配置します(セットした施設以外は、そのプレイでは使用しません)。
各プレイヤーは規定コストを払うことで施設を借用し、その能力を利用できます。
1人のプレイヤーは最大4つの施設まで同時に借用可能です(商人コマを派遣します)。
★「商品の色」と「コスト」
施設や兵器のコストは2~5個の商品で現されますが、「それぞれ別々の色」で支払う必要があります。コスト5の施設や兵器には5色全部の商品が1つずつ必要です。
自分の色と異なる色は他の商人との交渉か、特殊な施設で生産するか、同色3つを任意の色1つに変換するかしなければなりません。
★契約書
グラバーから兵器を購入したことの証の契約書です。
ゲーム中使用することは出来ず、得点(勝利ポイント)としてのみ機能します。
非売品の「グラバーからの礼状」もここに含まれます。
★信頼度
グラバーからそのプレイヤーが得た信頼度を示します。0~5の範囲があります。 初期値は2で、主に交渉フェイズで良心的な交渉を成立させれば上昇し、不誠実な取引を行うと低下します。自分の交渉フェイズが交渉不成立で終わった場合も低下します。
同フェイズで商品を代価に信頼度を上昇させることも可能です。
★協力者
10人いる協力者の中から、毎ラウンドの開始時に1人、協力者が盤上に現れ、全プレイヤーに様々な利益をもたらします。効果は協力者ごとに異なります。施設の効果とのコンボで効果が倍増することも? 協力者は毎ラウンドの頭に変更されます。
★ラウンド
参加人数により規定ラウンド数が変わります。
3人プレイ時で6ラウンド、5人プレイ時で4ラウンドです。
★得点/勝利条件
規定ラウンド終了時点で最も合計得点(主に兵器の契約書、グラバーの感状から獲得)が高かったプレイヤーが勝利者となります。
★得点/勝利条件
規定ラウンド終了時点で最も合計得点(主に兵器の契約書、グラバーの感状から獲得)が高かったプレイヤーが勝利者となります。
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勝「ざっくりと要点を説明するとこんな感じか」
小栗(どこがざっくりだ……。自社のゲームより詳しく解説してどうするのだ?)
リコリス「ちなみにルールは公式サイトでPDF配布されているから、興味のある人は読んでみて」
岩倉「ならば始めから「ルールを読んでこい」と言えばよかったのではないかね……?」
岩倉「ならば始めから「ルールを読んでこい」と言えばよかったのではないかね……?」
★4・いざ開始──?★
リコリス「では、そろそろ始めるとしましょうか──」
グラバー『残念だが、愛しき娘よ。本日はここまでのようだ』
リコリス「お父様? どうしたというのです?」
勝「てえぷの書き起こしに時間がかかるとかなんとか、言っているようだなぁ」
吉田「それに、声がよく聞こえぬとかなんとかいう愚痴も。実に聞き苦しい」
岩倉「でんもうとーくらいぶのじかんがががが──とかいう呻き声も聞こえよる」
小栗「行き当たりばったりで企画するからこうなる」
リコリス「は……発売日記念更新なのに続くの!?」
岩倉「さて。こう言うときに使うと便利な言葉があったはずであるな。確か──」
吉田「待て、しかして希望せよ!」
岩倉「下郎が! 横からしゃしゃり出て掠っていくかっ!?」
★後編へ続く★
※次回更新は6/1の予定です
※次回更新は6/1の予定です