健康を維持する上で、姿勢というものは非常に重要です。
特に現代人の場合、プライベートではPCやスマホ、仕事では作業の細分化などの生活習慣の大きな変化によって、この姿勢の悪さの積み重ねによって不調が出ている方がとても多いです。

そんな姿勢についてですが、イスでの座り姿勢を良く保つための一つの方法として、背当てが一般的に普及しつつあります。
背当てで良姿勢を保つ事自体はいい事だと思います。
良い姿勢を保つためには悪いクセを直し、その為の筋力を鍛える必要がありますが、既に積み重なっていると悪い姿勢のまま安定してしまうので、少しだけ外力を使ってクセが修正されるまで保つというのはいい発想だと考えます。
しかし、健康グッズとしても販売されているこれは、公式でも結構間違った使い方が書いてあったり、メディアの健康番組でもそのまま情報を流していたりする事があり、間違った使い方も一緒に広まってしまっているようです。

当所にお越し下さるクライアント様は健康に対する意識の高い方が多いのでご自分でいろいろな健康法を試している方が多いのですが、そんな方でも間違えている事もありますので今回はこれについて書いていきます。

それでは、間違った使い方と正しい使い方を見比べてみましょう。
※イスに座っている状態で、赤丸が背当てとして見てください。

【間違った使い方】
イス背当てNG
【正しい使い方】
イス背当て OK

何が違うかお分かりでしょうか?
背当ての位置が違いますよね。

それでは解説します。
頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎のユニットからなるいわゆる背骨は、直立二足歩行の人体においてはS字を2つ連ねたものが理想とされています。(専門用語で生理的湾曲と言います)
頸椎前湾、胸椎後湾、腰椎前湾、仙椎・尾椎後湾、といった具合ですね。
これは直立二足歩行の形をとる人体において、生まれてから成長段階において、力学的に重力(地球の引力)の影響によって形作らていくものです。
生まれた時は全体的にCの形で、首が座るという段階で頸椎の前弯が形づくられ、ハイハイが出来る段階で胸椎の後湾・腰椎の前湾が作られ始め、そして立って行動するという行動が日常になると全ての生理的湾曲が完成していきます。
環境の変化に合わせて、重力の影響を可能な限り緩和する形に変形していくわけです。
仮にずっとCの形のまま固定されるようであれば、直立二足方向を保って生活するのは不可能でしょう。
私は、脊椎動物の発生学的にこの形が完全に決まっているわけではないというのが、姿勢の大事さを物語っていると思っています。

まず、間違った使い方について見てみましょう。
これが結構間違った形で伝わっています。
一見、腰椎の前弯を矯正する形でおさまりがいいように見えるかもしれませんね。
しかし、これでは何の意味もありません。
初歩的な力学について考えてみましょう。支点・力点・作用点。中学校でやりますね。
この状態での支点は、腰椎の前弯部分にかかっています。
考えてみてください。ここに支点があったところで、その上が悪い状態(前傾)にあったら、支点としての意味を成しませんよね。
では、常にピッタリとこの背当てとイスに挟まれる形になればいいのではないか?こういう考え方もあると思います。
はっきり言います。それは間違いです。
姿勢矯正は、正しい勢勢を形作るための筋力の養成も視野に入れています。骨だけで人体はその機能を維持できません。
背当てに骨格を矯正する効果はありません。正しい姿勢を維持する補助的な外力としての意味合いがあるだけです。
仮に、完全にオーダーメイドで理想の形の背骨をキープするイスを作ったとします。
長く使っていれば骨格自体は矯正される、と短絡的に考えがちですが、これではこの状態を保つための筋力が養われません。イスから離れた途端に悪い姿勢になり、堂々巡りの状態になります。
そのうち、そのツケは何かの形で不調として表れてきます。

正しい使い方についてみてみましょう。
胸椎の部分に背当てがあります。
本来後湾する部分なのに、なんでそこ?と思うかもしれませんが、前述の通り、背当てに矯正の効果はありません。矯正効果が出るほどの外力を加え続けては筋力が維持できません。
試してみてくだい。この部分に背当てがあったら、前傾しづらいはずです。
この一見不安定な状態を維持する事で、正しい姿勢をとるための筋力が養われます。
頸椎の前弯についてはこの方法で完全にカバーする事はできませんが、それは道具としての限界といったところでしょう。
もう一つ付け加えると、もし試される方は圧力がずっと一点に集中しないように、一定時間ごとに多少上下に動かしてくださいね。

道具は道具ですので、個々人に合わせた完全なフォローという形は難しいですが、もし間違った使い方をしている方がいたら、少し気に留めて頂ければ不調の改善に役立つとおもいます。

メディアはメディアです。専門家の監修もあるかもしれませんが、経済という大きな社会的なシステムによってその情報が正確に反映されない事は想像に難くありません。
もし、何かの健康法を試そうと思った時は、近くや知り合いに体の専門家の方がいらっしゃれば少し相談をしてみるのがいいかもしれませんね。